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2021年10月 3日 (日)

大河ドラマ青天を衝け・(29)栄一、改正する

──こんばんは。徳川家康です。

明治2(1869)年も末になったというのに、まだ新政府は名ばかりだ。薩摩も長州も、我が徳川との戦を終えた兵たちが、その後の処遇に不満を抱いて内輪もめを起こしましてね。その対応に手いっぱいだったのです。

維新の主役がこのありさまだ。いまだ制度も整わず、外国には文句の言われ放題。金もない。新政府どころか日本そのものが危機でした。

そこへ助け舟を出したのが、皮肉にも我が徳川の家臣です──

 

徳川家康のように、5年、10年、100年先を考えて政治に励んでいる者がひとりもいないことを憂いた渋沢栄一は、『改正掛』という役目を新たに政府内に設置することを大隈重信に提案します。大蔵省や民部省、外務省などの垣根を越えて、日本に必要なものごとを考えて決定事項を即実行できる集団を作りたいわけです。人員は各省から兼務で集め、さらに静岡藩から人材を召し抱えたいところです。

大隈も、佐賀は日本一の洋学通だと胸を張りつつも、今はやれ薩摩だ長州だというのはどうでもいい、と伊藤博文に言われて意気消沈。大隈の本音のところは、藩主も公家も人数は減少したとはいっても、頭でっかちな旧派の人たちがのうのうと過ごしていては、新政府が行う改革もいつになったら完成するのかと呆れてもいるのです。

こうして大隈や伊藤の賛同を得て、11月に『改正掛』を設置します。栄一は大蔵省に勤めながら、その掛をまとめることになりました。掛をまとめるのが旧幕臣であることに不満をもらす者もいる中で、静岡からは杉浦 譲や前島 密、赤松則良も合流し、徳川の名を辱めぬように努めたいと栄一の味方となってくれます。

栄一はさっそく『改正掛会議』を開き、旧幕臣、藩出身の垣根をとっぱらい、闊達な意見交換を求めます。出された改正案は「金を集めるために租税の改正」「場所ごとにばらばらな貨幣の一本化」「正しい丈量を全国的に行うために測量法をひとつに決める」といろいろあるのですが、金がないのにそんなことができるかという意見の次には、そのために租税、そのために測量、そのために戸籍…と話が堂々巡りとなっていきます。喧々諤々な会議に大隈は頭を抱え、しかし栄一は、もっとこい! とみんなをあおります。

やはり、百姓あがりの旧幕臣のもとでは働けねえ! という声が噴出するのですが、栄一はそんな声には全く耳を貸しません。各藩発行の藩札の調査に入り、租税と統一通貨、全国測量の支度にかかります。同時に租税勘定帳のつけ方を統一し、鉄道敷設予定の東京~横浜間の測量も来春から入ることにします。
「さてと…時が足りねえ!」


栄一が静岡から東京に転居するにあたり、大きな屋敷を元旗本から譲り受けて移り住みます。愛娘のうたは、度重なる引っ越しに疲れてしまったようで、女中はるに水を所望しますが、千代は「おごってはなりませぬ」とうたを叱ります。単なる百姓の娘が父上の威光をいいことに、立派な輿で箱根の山を越えてきたというのに疲れたとは何事か、と。おごるような態度を取って父上に恥をかかせるな、と懇懇と諭すのです。

改正掛で栄一は、次々とみんなのアイデアを立案実行し、夜になれば築地の大隈邸に集まってさらに意見を交わします。大隈はフランス商人から日本の生糸の質が悪いと文句を言われたようですが、大隈も杉浦も、どうやって生糸が生まれるのかを知りません。養蚕農家出身の栄一はカーッと頭に血が上り、蚕から生糸が生まれるまでを丁寧に説明します。
「よし! 養蚕のことば一番知っとるのは渋沢や。君に任す」

翌日、大久保利通が改正掛に怒鳴り込んできます。大久保が東京を離れている間に、太政官によくよく話し合うこともせず改正掛を作るなど出過ぎたまねを、と怒りが収まりません。「そいをやっちょったとが旧幕臣とはたまがった!」と働く者たちを軽蔑の目で見る大久保に、栄一が黙っているわけはありません。新政府となって2年が経過しているのに税収が安定せず、太政官札は信用なく、そのために我々は粉骨砕身しているのです、と睨み返します。その勢いに押された大久保は、これ以上勝手なことはするな、とくぎを刺すことしかできず、改正掛を去っていきます。

春になり、市郎右衛門とゑいが東京の渋沢邸を訪れます。想像以上の立派な屋敷に驚く市郎右衛門は、栄一などと呼び捨てにはできねえな、とつぶやき、「あ! 奥さま! 茶など己で入れまする。奥さまの手を煩わせるわけには」と千代が持っていた急須を取り上げようとします。
そしてその「殿さま」「奥さま」と呼ぶ剛情っぷりは栄一が帰宅してからも続いておりまして、栄一も千代も、市郎右衛門がなんだかよそ様のように思えてむずがゆいというか、やめてくれと笑い合います。そんな市郎右衛門だから、勧められるままに屋敷で泊まることをよしとせず、真夜中に血洗島に帰ってしまいます。自分は百姓だから、分不相応なものを身に着けたくないし、それよりも息子の立派に成長した姿がとてもうれしく、満月の夜に気持ちよく帰りたかったわけです。

市郎右衛門から、蚕で国を富ませてやるんだ! と頑張っている血洗島での尾高惇忠の様子を聞き、ふと、栄一自身が新政府で役人として働いていることを知ったらどう思うだろうか、と不安になります。

 

新政府が東京~京都間の通信費用として飛脚に月1,500両も払っていることが判明しました。前島は、1,500両の金があれば東京~京都、さらには大阪まで一日一便の定期便を仕立てることができ、さらに一般の通信も取り扱えば送達料金を徴収することができるため、1,500両の費用はそのままほかの基金に充てることができる、と主張します。元来、飛脚に払わなければならない費用を使うのだから、新政府には文句はないはずです。

改正掛が提出した建議書に目を通した岩倉具視や三条実美らは、飛脚の仕事を政府が横取りすることに嫌悪感を示しますが、諸外国では飛脚の仕事は政府が行っているため、国家事業としてやるべきだ、と大隈は提案します。そんな大隈を、また勝手なまねを、とギロリとにらむ大久保の横で、伊達宗城らは「改正掛の仕事は早いのう」と評判も少しずつ上向き始めます。

飛脚印を張り、運送料を先払いする…この事業の名前決めが悩ましいところですが、公用文書の中継ぎを行う宿場という意味の「郵」と、便りの「便」で『郵便』と決まります。前島は立ち上がり、私は日本郵便の父になる! と宣言すると、方々から「ほんならわしは戸籍の父じゃ」「私は測量の父だな」「造船の父!」「そしたらわしは海軍ぜよ」と声が上がります。それだけみんながプライド高く仕事に取り組んでいるのです。

しかしその数日後、前島は鉄道借款の処理を命じられてイギリスにわたることになり、その後の事業について杉浦に引き継ぎます。さらに大打撃なのは、大隈が民部省から追い出されてしまったことです。まさか大久保ににらまれて、ということではないかもしれませんが、ともかく改正掛の大きな後ろ盾はなくなってしまいました。

「なにが八百万の神だ!」と腹煮えくり返りながら栄一が帰宅すると、惇忠が横浜への商いの途中に立ち寄ってくれていました。惇忠は、栄一が新政府で働いていることを知ってとても驚き、気まずそうに「邪魔したな」と帰ろうとしますが、栄一は惇忠を引き止めます。
「兄ぃも、新政府に来てくれないか」

惇忠の心の奥底では、平九郎は新政府に殺されたんだ、という思いが強く、新政府に手を貸したら平九郎にどう顔向けしろというのだと、温厚な惇忠にしては珍しく感情をむき出しにするのですが、栄一は静かに、自分たちだって異人を殺そうとしたじゃないかとつぶやきます。戦というものは、一人ひとりはいい人間でも敵だと思い込めば簡単に憎み、無残に殺してやりたいという気持ちが生まれてしまうのだ、と。
「壊すんじゃねえ、作るんだぃ。己の手でこの国を救えるんなら、なんだってやる」

 

大隈に代わる上役として、井上 馨が赴任しました。そして明治4(1871)年、ついに郵便が開始。書状集箱には「毎日八ツ時開凾」「驛逓司」と文字が並び、栄一と杉浦はお試しで投函してみます。それを箱ごと東京郵便役所に持っていき、貼られた切手には押印がなされ、分類していくというシステムです。
3日後、杉浦が弟の禎次郎に宛てた書状の返信が、改正掛の杉浦の元に届けられます。

そんなとき、栄一のことばに動かされた惇忠が改正掛を訪ねてきました。栄一はさっそく、惇忠を製糸工場顧問のブリュナに引き合わせ、ブリュナには惇忠こそが生糸のスペシャリストと紹介します。ふたりは固い握手を交わし、ともに励んでいくことを誓います。

さて、郵便が開始された日、栄一が投函した書状は、静岡の徳川慶喜に届けられていました。
──前様、それがしは新政府にて改正掛という掛を新設しました。この郵便をはじめ、日本を新しく生まれ変わらせるために、粉骨砕身して参ります──

 

「改正掛は潰してしまわねばないもはん」と、国家の大事をほんの一握りの若手が勝手に立案し、勝手に進めていることに納得がいかない大久保は、岩倉に談判するのですが、岩倉にとっては改正掛がやることなどもはやどうでもよく、西郷がいまだに鹿児島に引っ込んでいることにいらだち始めています。武士という存在がこれほどまでにまとまらないとは驚きよりほかになく、このままではせっかく覆した王政も先は長くはありません。岩倉のことばに圧倒された大久保は、ただただ頭を下げるしかありませんでした。


作:大森 美香
音楽:佐藤 直紀
題字:杉本 博司
語り:守本 奈実 アナウンサー
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[出演]
吉沢 亮 (渋沢栄一)
橋本 愛 (渋沢千代)
田辺 誠一 (尾高惇忠)
村川 絵梨 (吉岡なか)
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草彅 剛 (徳川慶喜)
朝倉 あき (大隈綾子)
三浦 誠己 (前島 密)
高木 渉 (玉乃世履)
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北大路 欣也 (徳川家康)
福士 誠治 (井上 馨)
山崎 育三郎 (伊藤博文)
志尊 淳 (杉浦 譲)
山内 圭哉 (岩倉具視)
金井 勇太 (三条実美)
菅原 大吉 (伊達宗城)
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大倉 孝二 (大隈重信)
石丸 幹二 (大久保利通)
和久井 映見 (渋沢ゑい)
小林 薫 (渋沢市郎右衛門)
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制作統括:菓子 浩・福岡 利武
プロデューサー:板垣 麻衣子・石村 将太
演出:田島 彰洋

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