ぜひとも北海道は自分にまかせてほしい、と大隈重信に圧力をかける岩崎弥太郎の動きは、他の商人たちの気持ちを逆なでします。三井物産会社総括の益田孝や東京日日新聞主筆の福地源一郎は「三菱をどうにかしてください!」「あくまでおのれ一社でこの国の経済を動かそうとしている」と渋沢栄一に窮状を訴えます。栄一は、単独で力を保持しようとする弥太郎に対抗して、合本による新しい船の会社を作ろうと立ち上がります。そうして、海運業者の合本組織『東京風帆船会社』を設立しました。
その動きでも弥太郎は特に動じるところもなく、風帆船会社については栄一の謀であると大隈に耳打ち。激昂する大隈を見送ると、弥太郎は「風船玉のようにしぼめちゃる」と高笑いしています。
飛鳥山の渋沢屋敷では、栄一の長女のうたが縁談を断ったことを次女ことが心配しています。特にお相手に不満があったとかいうわけではなく、家族みんなで一緒に暮らしていければ幸せだと笑ううた。そこに渋沢喜作が顔面蒼白で飛び込んできました。「栄一は! 銀行がうまくいかなくなったから首をくくったと!」
千代と喜作は栄一の執務の部屋に向かいますが、どうした? とケロッと返事をする栄一のいつもの姿に、千代も喜作も胸をなでおろします。そこには五代友厚がいて、すでに街中でのうわさ話を本人に伝えたところらしいのです。弥太郎は、三菱社員や出入り業者を使って風帆船会社の悪口を言いふらしている、と。栄一も、でたらめなうわさとはいえ大隈を敵に回せば風帆船会社は終わりだと考えていて、開業もしないうちから暗礁に乗り上げてしまいました。
弥太郎が着々と商売の手を広げるなか、栄一が院長を務める養育院では、物価の上昇や収容者が増え続けたことでさらなる財政難に陥っていました。「貧困は己の責任、貧民を租税をもって救うべきではない」と東京府会で主張する田口卯吉は、そもそも誰かが助けてくれると望みを持たせるから努力を怠らせるんだと言って多くの賛同をもらいます。それでも栄一は「救済はせねばならぬ」と首を縦に振らず、経費削減をしている最中だからもうしばらく様子を見ていてほしいと言います。国が守らなければならないのは人だと言う栄一に、「理想論は不要!」と沼間守一が反対を唱え、府会議は紛糾します。
掲げた『東京風帆船会社』の額を下ろし、疲れた様子の栄一がソファに腰かけると、かつて弥太郎が自分に投げかけた言葉が脳裏を流れます。「経済には勝つもんと負けるもんがある」「おまさんの言うことは、理想は高うとも所詮はおとぎ話じゃ」「才覚あるもんが力づくで引っ張らんと、国の進歩はないき」
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