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2021年11月21日 (日)

大河ドラマ青天を衝け・(36)栄一と千代

ぜひとも北海道は自分にまかせてほしい、と大隈重信に圧力をかける岩崎弥太郎の動きは、他の商人たちの気持ちを逆なでします。三井物産会社総括の益田孝や東京日日新聞主筆の福地源一郎は「三菱をどうにかしてください!」「あくまでおのれ一社でこの国の経済を動かそうとしている」と渋沢栄一に窮状を訴えます。栄一は、単独で力を保持しようとする弥太郎に対抗して、合本による新しい船の会社を作ろうと立ち上がります。そうして、海運業者の合本組織『東京風帆船会社』を設立しました。

その動きでも弥太郎は特に動じるところもなく、風帆船会社については栄一の謀であると大隈に耳打ち。激昂する大隈を見送ると、弥太郎は「風船玉のようにしぼめちゃる」と高笑いしています。

飛鳥山の渋沢屋敷では、栄一の長女のうたが縁談を断ったことを次女ことが心配しています。特にお相手に不満があったとかいうわけではなく、家族みんなで一緒に暮らしていければ幸せだと笑ううた。そこに渋沢喜作が顔面蒼白で飛び込んできました。「栄一は! 銀行がうまくいかなくなったから首をくくったと!」
千代と喜作は栄一の執務の部屋に向かいますが、どうした? とケロッと返事をする栄一のいつもの姿に、千代も喜作も胸をなでおろします。そこには五代友厚がいて、すでに街中でのうわさ話を本人に伝えたところらしいのです。弥太郎は、三菱社員や出入り業者を使って風帆船会社の悪口を言いふらしている、と。栄一も、でたらめなうわさとはいえ大隈を敵に回せば風帆船会社は終わりだと考えていて、開業もしないうちから暗礁に乗り上げてしまいました。

弥太郎が着々と商売の手を広げるなか、栄一が院長を務める養育院では、物価の上昇や収容者が増え続けたことでさらなる財政難に陥っていました。「貧困は己の責任、貧民を租税をもって救うべきではない」と東京府会で主張する田口卯吉は、そもそも誰かが助けてくれると望みを持たせるから努力を怠らせるんだと言って多くの賛同をもらいます。それでも栄一は「救済はせねばならぬ」と首を縦に振らず、経費削減をしている最中だからもうしばらく様子を見ていてほしいと言います。国が守らなければならないのは人だと言う栄一に、「理想論は不要!」と沼間守一が反対を唱え、府会議は紛糾します。
掲げた『東京風帆船会社』の額を下ろし、疲れた様子の栄一がソファに腰かけると、かつて弥太郎が自分に投げかけた言葉が脳裏を流れます。「経済には勝つもんと負けるもんがある」「おまさんの言うことは、理想は高うとも所詮はおとぎ話じゃ」「才覚あるもんが力づくで引っ張らんと、国の進歩はないき」


元宇和島藩主の伊達宗城が「彼が穂積陳重くんだ」と栄一と千代、うたに紹介します。お見合いの席なのです。
(伊達宗城は、栄一が静岡から新政府に出仕した時の大蔵卿であり、その時から栄一を高く評価していて、第一国立銀行を立ち上げた際も出仕したほどだったのですが、宗城側近の西園寺公成が栄一に用意したお見合い話なのです)
宗城によれば穂積家は伊達家の旧臣の家柄で国の命を受けて留学していましたが、東京大学に法学教員として勤めることになったそうです。「娘は結婚には乗り気ではない。まだ18だ」と渋る栄一に、結婚に乗り気ではないのはお前さま、と即座に千代につっこまれるわけですが、「私も同じ年でお前さまに嫁ぎましたよ」とさえ言われてしまえば、栄一には撃つ弾が残されていないも同じことであります。
庭を歩いていた穂積がひとこと どんな両親ですかとうたに尋ねれば、うたはたどたどしく でもいろんなエピソードを明るくペラペラと話し続けていて、その様子を屋敷内からうかがっていた栄一は「うたが一人でしゃべってるでねぇか」と不安げです。そんなうたを楽しい人だと感じた穂積は、うた自身のことをもっと知りたいし、そして次には自分のことももっと知ってほしい、と言います。「…なんだい、楽しそうでねぇか」「ええ…よかった」

そのころ、政府では大問題が起きていました。「五代友厚は薩摩出身の御用商人、薩長で固められた藩閥政治を許すな!」と、北海道開拓使の官営工場が五代に不当に安く払い下げられると報じられたのです。井上 馨は、払い下げに反対した大隈だけが褒めたたえられているが、それも弥太郎に便宜を図って賛成しなかっただけなのに、と悔しがりますが、伊藤博文は「うん…大隈さんなぁ…」と表情ひとつ変えません。
夜中に大隈邸を訪れた伊藤は、臨時の御前会議が開かれたことを伝え大隈に辞任を求めます。こうして大隈を政府から追い出し、代わって権力を握った伊藤を井上たち薩長の人々が支える体制になりました。「明治十四年の政変」です。

「おいは汚か商いは何もしちょらん」と民衆の目の敵にされたことを迷惑がる五代は、名誉や金よりも大切なものは目的だとし、協力一致して豊かな日本を作ることこそ正義だと言います。商売人としては弥太郎や栄一の方が優れていると五代が言えば、「は!? 私は岩崎さんとは違う」とムッとする栄一ですがww
井上は、いよいよ三菱が政府の手に負えなくなってきたと、栄一に三菱に対抗できるだけの海運会社を作ることを勧めます。かつて立ち上げた風帆船会社に、北海道海運会社と越中風帆船会社などの各社を合同させ、資本金600万円のうち260万円に関しては政府が融通する、という話に、栄一はなぜ政府がそこまで肩入れするのか疑問に持ちます。実は政府を追い出した大隈が三菱からの金を資金に新しい政党を作り出そうとしているらしいのです。「あの佐賀人は不死身じゃ!」

大隈夫人の綾子に依頼していたものが井上夫人の武子を経由して千代の元に渡されます。大隈家の養子取りの時に頼んだ食事の献立で、渋沢屋敷で行われるうたの結婚式に使われるようです。ちなみに栄一の一存で、結婚式には政治家は一切呼ばないつもりです。そしてその春、うたは穂積陳重と結婚します。
うたを送り出して静かになった渋沢屋敷で、栄一は五代に欲深いと言われたと笑いますが、「お前さまは昔から欲深いお方でしたよ」と千代は頷きます。正しいと思えば故郷も妻も子も投げうってどこへでも行ってしまうし、働いて得たお金を攘夷のために使ってしまったこともあるし、思う道に近づけると思えば敵だと思っていたお家にでも平気で仕官するのですから。そう聞けば、栄一はとんでもない男ですが、千代は、栄一の心が誰よりも純粋で温かいことも分かっています。むかし栄一が見た夢のように、今まさに異人相手に堂々と商いをしていると言われて、栄一はいつまでもめそめそしてないで励まなければと思いなおします。

千代が病に倒れました。「コレラと見てまちがいありません。お子さまたちを決して近づけないように」と診察医師は言うのですが、あまりのショックで栄一は立ち尽くします。
「共同運輸会社発起人大会」が開かれる会場に栄一の姿がありませんで、井上や益田は栄一はどうしたのか喜作に尋ねますが、千代が寝込んでいて今日は欠席と伝えます。千代は栄一の妻だけではなく、喜作にとっては初恋の相手でもあるのです。

「虎列刺(コレラ)アリ ハイルベカラズ」と貼り出され、入ることができない扉の前で、子どもたちが心配そうに見守っています。栄一はひとり千代の枕元に座って、千代の平癒を祈っています。お前がいなくては俺は生きていけねえ、お前さえいればいいんだ、と言って千代の手を握りしめます。
生きて…
生きて…ください…
生きて…必ず…
あなたの…道を…
栄一の袖をつかんでいた手から力が抜けていき、やがてしおれた花のように手首から先がカクンと折れます。
お千代! 逝かねぇでくれ! という中からの栄一の叫び声で察知したうたが、入るなという警告を無視して飛び込んでいきます。「一目だけでも! 母さま!」とわめきますが、医師や穂積に抑え込まれ、拒絶されます。篤二は扉の所で、茫然と立ち尽くしています。

千代の遺体は荼毘に付され、後日、訃報を聞いた実兄の尾高惇忠が渋沢屋敷に駆け付けます。「なぜ…こんな急に」と顔は青ざめ、信じられない様相です。一番ショックを受けているのがうたで、嫁いだ直後の訃報に、どこをとっても素晴らしい、非の打ちどころのない母がなぜコレラで命を失わなければならないのかとやり場のない怒りで泣き崩れます。
栄一は、座敷をじっと見つめて千代がいなくなったことを改めて感じ取ります。


作:大森 美香
音楽:佐藤 直紀
題字:杉本 博司
語り:守本 奈実 アナウンサー
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[出演]
吉沢 亮 (渋沢栄一)
高良 健吾 (渋沢喜作)
橋本 愛 (渋沢千代)
田辺 誠一 (尾高惇忠)
成海 璃子 (渋沢よし)
藤野 涼子 (渋沢てい)
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ディーン・フジオカ (五代友厚)
山崎 育三郎 (伊藤博文)
愛希 れいか (井上武子)
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大倉 孝二 (大隈重信)
岡部 たかし (大倉喜八郎)
朝倉 あき (大隈綾子)
安井 順平 (益田 孝)
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菅原 大吉 (伊達宗城)
忍成 修吾 (岩崎弥之助)
福士 誠治 (井上 馨)
中村 芝翫 (岩崎弥太郎)
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制作統括:菓子 浩・福岡 利武
プロデューサー:板垣 麻衣子・石村 将太
演出:黒崎 博

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