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2021年11月 7日 (日)

大河ドラマ青天を衝け・(34)栄一と伝説の商人

明治10(1877)年、鹿児島の西郷軍と明治政府の戦争が勃発。「戦争とは、なんと多くの金が動くことか」と、三菱商会の岩崎弥太郎もうなるほどです。渋沢栄一は、なんとばからしい! と怒りに震えますが、それもそのはず。政府の税収の9割近くがこの戦費に費やされたのですから。

西郷隆盛、大久保利通の亡きあとの明治11(1878)年、日本の財政を動かしていたのは、大蔵卿・大隈重信でした。栄一は大隈に不換紙幣がばらまかれていることを追及します。紙幣をたくさん刷っても信用が落ちれば貨幣価値は下がり、物価が上がって民が苦しむことになるわけです。大隈は「せからしか!」と栄一を睨みつけて出て行ってしまいます。
大隈の積極財政で景気は一時的に良くなり、この機に乗じて銀行を作りたいと人々が栄一の元に押し寄せます。銀行が増えることには賛成である栄一ですが、あくまでも国益のために銀行が存在すべきだと強く主張する栄一には、その目的が金もうけであることが気に入らないのです。
銀行作りが殺到していると聞いて弥太郎は、静岡で商人を集めて合本の商いをし 第一国立銀行を成功させた栄一に興味を持つようになります。「おもしろそうな人や」


──こんばんは。徳川家康です。お久しぶりですなぁ。
さて、ようやく武士は消えたが、まだまだ日本は栄一の目指す一等国には程遠い。いやぁ、私も心配でねぇ。そうだ! 覚えていますか。家定のころに結んだ「安政の五か国条約」です。日本が世界と並び立つ国になるには、この20年前の不平等な条約がネックになっていました。ん? 徳川のせいだって? ううん…20年間前のことですからねぇ。さて、新しい世の者たちはどうするかな?──

国内産業は打撃を受け税金も入ってこない。条約改正は我が国の世論である。大隈と伊藤博文は、西南戦争で金のかかりすぎた今こそ条約改正が急務なのだと、イギリス公使のハリー・パークスに訴えます。しかしパークスは、日本は見かけが多少変わっただけで議会も民を代表する集まりすらない現状に、大隈や伊藤がどうやって世論を知ることができるのだ? とあざ笑って相手にしません。

反論すらできなかった伊藤はさっそく栄一たちを招集し、日本政府も文明国の第一歩として民衆の声を集め、民衆代表として商人たちの会議所を作ってほしいと指示します。欧米には“Chamber of commerce”という、そこでの意見が民の声とされる商人たちの集まりに倣ったのです。三井物産会社総括の益田孝や東京日日新聞主筆の福地源一郎は、商いで手いっぱいで寄り合っている暇はないし、そもそも政府の外交上の都合であるわけです。
そんな中、栄一は「おかしれえ」と会議所作りに賛同します。蚕卵紙の一件の際も、横浜で外国商人は集まっていました。商人が手を組み、知恵を出し合う仕組みが必要だと栄一は常々考えるようになっていたのです。これがうまくいけば、自分たちは官ではないのに民の代表として堂々と声を上げることができます。

こうして栄一は、商人たちが業種を超えて手を組むための組織、東京商法会議所を作りました。運輸事務委員として栄一は弥太郎を第一指名していますが、弥太郎は欠席です。栄一はぜひとも参加してもらいたい意向ですが、「三菱は大隈を後ろ盾にしている」「己が参議であるかのごとく横暴なふるまい」との悪評もあります。栄一はそういった声をはねのけ、外国と負けない商売をするためにもできるだけ力の強い商人を集めたいと意欲的です。
弥太郎の元には会議所からのお誘いの書状が届いていますが、「有象無象の集まりだ」と参加への気が進みません。五代友厚は、実は大阪に会議所を作りたいと考えていながら栄一に先に会議所を作られてしまったと笑いますが、参加すべきか迷っている弥太郎への、遠回しのアドバイスでもあります。

 

渋沢家には、栄一を慕って学ぼうとする若者たち(書生)が住みこむようになりました。渋沢千代は、書生たちの言動から彼らがどうも高みから他人事のように世の中を見ているような気がしてなりません。確かに今の政府は、貧しいのは己の努力が足りないのだから一切関わらない態度です。しかし栄一は、貧しい者が多いのは間違いなく政治のせいだと考えていて、それを救える場がないとため息をつきます。
養育院も入ってくるものが増えるばかりで、寝る場所を確保し食べ物を与えるだけで精いっぱいです。優しく接してやってくれと言っても、無駄飯食らいを怠惰に育てるわけにはいかないと厳しく接する職員に、栄一はなすすべがありません。千代はそんな話を聞いて、今度養育院に視察に行くときには連れて行ってほしいと願い出ます。

亡き平岡円四郎の妻・やすはひとりの芸者に三味線の手ほどきをしています。その日はどうやらにぎやかで、たくさんの芸妓が御座敷に呼ばれて置屋から出ていきます。岩崎様が銀行主の渋沢様を呼びなさるんでと女将が言うのを聞き、渋沢…? と聞いたことがある名前にひっかかります。

栄一は弥太郎に座敷の席に呼ばれます。弥太郎は下士という百姓のような身分出身で、役人の理不尽に腹を立て「官は賄賂を以て成り」と書きつけたほどです。故郷を出るときには妙見山に登って「吾(わ)れ志を得ずんば再び山に登らじ」と誓うなど、栄一がやってきたことそのままに同じことを弥太郎はしてきたようで、栄一は弥太郎になお一層の親近感を抱きます。ただ、武士の世は終わったと言っても、今の政府は頭の中が武士のままで行き当たりばったり、国を豊かにする術を知らないわけです。それに引き換え、国を豊かにする先頭に立つ弥太郎はすばらしい! と栄一がもてはやすものだから、弥太郎も気分は悪くありません。
弥太郎は、これからの実業について栄一に聞いてみます。栄一は合本こそが大事だと言うけれど、合本法だと商いは成立しないのでは? と。強い人物こそが上に立ち、その意見で人々を動かしてこそ正しい商いができるとは弥太郎の主張です。「いいえ、むろん合本です」と弥太郎の主張を遮って栄一は答えます。多くの民から金を集めて大きな流れを作り、得た利益でまた多くの民に返し多くを潤す。この制度を大いに広めなければならない、と。つまり、船頭が多くては船が進まないという弥太郎に対し、ひとりが利益を独占するようなことがあってはならず みんなで大きくなるべきだという栄一。しかし「理想は高うとも所詮はおとぎ話」「力のある者がたくさん儲けて税を納めんと明日にも日本は破産する」と弥太郎に言われて、栄一は貝殻のように口を閉ざしてしまいます。
いっそわしと手を組まんか?──いいや、お断りする! あなたとは根本から考えが違うっ!!

栄一が座を蹴ろうと立ち上がったとき、座敷の向こうの廊下からこっちに来いと手を振っているやすが見えました。まさかこんなところでお会いできるとは、と栄一もたちまち笑顔になります。昔ばなしもそこそこに、芸者が裏口への逃げ道を確保してくれました。「逃げるなら逃げな。困ってるんだろ? あんたはあんたの道を行きな」。恩に着ます、とその裏口へ向かう栄一。
そんな栄一に、叱咤するつもりでやすは声を掛けます。いい世にしておくれよね! みんな言ってるよ。徳川様の世のほうがまだましだったってね。きっと…いい世にしておくれよ。あの人のためにも!

日本の経済が発展する中、成功する者と没落する者が出てきました。横浜の豪商・伊藤八兵衛の伊勢八も、店を潰した挙句に八兵衛が亡くなってしまう災難が続きます。28歳の五女 兼子が置屋に転がり込んでくるのですが、誰かのお妾になるのは伊勢八の名にかけてイヤだと言う兼子は、妹たちを養っていくために自分が芸妓となって身を立てると言って聞きません。

 

栄一が再度の視察に訪れた東京養育院。隣には千代の姿もあります。大人たちが栄一をわいわいと取り囲んでいる間、千代は子供たちの様子を見に案内されるのですが、挨拶をしても子どもらしい元気さがないのが気がかりです。近所の人たちから古着を引き取ってきたのを子どもたちに分けるのですが、破れている古着にがっかりしている子どもには千代がその場で縫ってあげ、その様子をおもしろそうに眺める子どもたちの目はらんらんと輝いています。千代は子どもたちに裁縫を教える一方、ケガをした子どもには我慢せずに泣いていいんだと教え、ぎゅっと抱きしめます。その後 栄一の提案で、月に一度は養育院に来ようと千代と約束し、千代は頻繁に養育院を訪れるようになりました。

栄一はガスや電気など人々の暮らしに役立つ事業を発展させていきます。そのさなか、岩倉使節団の時のアメリカ合衆国第18代大統領で、退任後は将軍となったユリシーズ・グラントが来日することになり、日本が一等国として認められる好機であり、20年来の不平等条約改正の糸口を見つける千載一遇の好機でもあり、日本政府としては国の威信をかけて将軍を大いにもてなすことに決定します。ただ、国の賓客を迎えるときには王室や政府のほかに熱烈なる市民の歓迎が必要ということで、栄一や渋沢喜作、福地たちが盛り上げていくことになりました。
「新しい日本力を外国に示しましょう!」
家に戻った栄一は、さっそく千代とうた、喜作の妻・よしへ説得にあたります。欧米のような一等国は、日本のように男と女が表と裏に分かれたりしておらず、公の場に夫人を同伴するのは当たり前のことで、千代にもよしにも、国の代表として将軍一家をもてなしてもらいたい、と。男にとっても女にとっても、そして日本にとっても大きなイベントが始まろうとしていました。


作:大森 美香
音楽:佐藤 直紀
題字:杉本 博司
語り:守本 奈実 アナウンサー
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[出演]
吉沢 亮 (渋沢栄一)
高良 健吾 (渋沢喜作)
橋本 愛 (渋沢千代)
成海 璃子 (渋沢よし)
大島 優子 (伊藤兼子)
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ディーン・フジオカ (五代友厚)
山崎 育三郎 (伊藤博文)
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北大路 欣也 (徳川家康)
山内 圭哉 (岩倉具視)
岡部 たかし (大倉喜八郎)
三浦 雅己 (前島 密)
安井 順平 (益田 孝)
堤 真一 (平岡円四郎(回想))
大倉 孝二 (大隈重信)
木村 佳乃 (やす)
中村 芝翫 (岩崎弥太郎)
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制作統括:菓子 浩・福岡 利武
プロデューサー:板垣 麻衣子・橋爪 國臣
演出:川野 秀昭

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