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2022年1月16日 (日)

大河ドラマ鎌倉殿の13人・(02)佐殿(すけどの)の腹 ~頼朝政子危険な接近 姉を守れ義時~

北条館の城門前、館を完全に取り囲む伊東祐親軍と しきりに追い払おうとする北条時政と三郎宗時。八重にお届け物に上がった北条小四郎義時を問い詰めた祐親が、逃亡した源 頼朝は北条館にいると取り囲み、引き渡しを要求してきたのです。はじめこそシラを切る宗時でしたが、時政がつい「命に代えても頼朝を守ってみせる!」と墓穴を掘ってしまい、頼朝を北条館で匿われていることを認めてしまいます。「でも武士として、一度匿うと決めたからには、死んでも佐殿を渡すわけにはいかないんじゃ!」

──平家を恐れる伊東と、それに抗う北条。坂東の片隅で起きた、一族同士のささいな諍いがやがて……。義時の運命が動き出す──


福原(後の神戸)──。平 宗盛が父・清盛に伊豆からの知らせを伝えに来ました。頼朝という名前を聞いて懐かしむ清盛は、敵将の子どもであるので本来であれば殺してしまうのが常套であるところ、命を助けて伊豆に流したのでした。その頼朝が、伊豆で預けていた伊東祐親の娘に男児を産ませたとかで、怒った祐親が頼朝の命を奪うべく攻撃したところ、すんでのところで逃げられてしまったと……。「いちいちつまらんことをわしの耳にいれるなっ!」 清盛に怒られた宗盛は神妙に頭を下げます。

 

頼朝を連れて逃げた北条義時は、富士の山すそにいました。追っ手はまいたと思っていましたが、矢が飛んできたりしてまだまだ近くに敵はいそうです。矢の記名を見ると「山内首藤(やまのうちのすどう)」とあります。ちょうど鷹狩りか何かで通りかかったようです。頼朝は、山内首藤経俊との久々の対面を喜びます。実は経俊の母親は頼朝の乳母なので、経俊とは乳兄弟ということになるのです。源氏の恩を忘れない者たちは、頼朝の旗揚げを心待ちにしていると聞いて、固い握手を交わします。

 

北条館の城門前では伊東と北条が一触即発ですが、そこに大庭景親が兵を引き連れてたどり着きます。出る幕ではない景親が割って入ったことで、祐親はますます不機嫌になります。「身内同士のいさかいなんぞ見ちゃいられねえぞ」と笑う景親は、清盛を後ろ盾に相模の武士団を束ねる存在であり、その勢力は伊東をも上回ります。ちなみにこのころの北条は伊豆の端の、そのまた一角を治めている弱小豪族にすぎません。

実は昨晩、北条が頼朝をかくまっていると三浦義澄に教えてもらったそうで、このままでは伊東と北条が衝突してしまうと義澄が気を利かせたのでしょう。時政は頼朝を引き渡すつもりはありませんし、三浦も清盛からの預かり者なので北条に移す道理がないわけです。「しかしそれなら平相国のお許しもなく勝手に命を奪っていいはずもあるまい」と最もらしいことを言われて、ぐうの音も出ません。景親は譲歩案として、頼朝は伊東から北条に移し、今後一切 伊東の娘とは縁を切るとの起請文をかかせることで双方納得させます。

その帰り道、祐親は突然の急襲を受けます。いずれも祐親の強引さに恨みを抱いたものの犯行ではありますが、その中に不在中に所領を奪われてしまった工藤祐経もおります。ただ祐経の攻撃は腰が引けており、祐親に雑魚とみなされた祐経は相手にすらされませんでした。

 

夜遅く、門で宗時と仁田忠常は頼朝の帰りを待っていましたが、義時とともに北条館に無事帰り着きました。これまでは流人を匿っていた時期、これからは流人をお世話する時期。養うには同じですが外面的には180度変わります。ともかく時政らはできるだけの世話をするつもりです。義時は実は、頼朝を北条館でお世話するのには大反対なのですが、兄も、父も、姉も大歓迎なのだから、それに飲み込まれてしまっています。

ただ、伊東の八重がどんな目に遭ったかを考えれば、うかつに姉の政子を頼朝に近づけてしまっては、あとあと面倒なことになりそうです。懸命に床掃除をしている時政に、義時は口を酸っぱくして忠告しますが、時政の心はまさにここにあらずで全く話を聞いていません。時政は、新しい妻・りくのことで頭がいっぱいです。

 

「佐殿のこと、大庭に言ったらしいじゃないか」と義時は三浦義村にかなりご立腹です。確かに言うなと口封じまでしておいたはずなんですが、いともたやすく裏切られ、漏れたのです。怒るのも無理ないわけですが、言ったおかげで丸く収まったんで逆に礼を言ってもらいたいぐらいだ、と悪びれた様子はありません。義村は、頼朝の首を刎ねてしまって清盛に届ければ? などとけしかけ、無責任極まりない発言をしていますが、義時にはそのような大それたことができようはずもありません。

 

伊東館では、八重が祐親に呼ばれていました。あの男(頼朝)は北条が預かることになった……と。「二度と会ってはならぬ」と言われて、父上にお任せいたします、と返答する八重。「嫁に行ってもらう」と言われても無表情のまま、父上にお任せいたします、と返答するのでした。それは父の意向にはすべて従うように育てられたからというのもあったかもしれませんが、ここまで従うのだから自分のわがままも通させてほしいという意思表示にも受け取れます。

八重は「千鶴丸に会わせてください」と懇願しますが、祐親が認めるはずもありません。会わせてくれなければ川に身を投げると脅しても、好きにせいと、娘の要求にはあくまでNoを突きつけます。とはいえ娘を不憫に感じたのか、千鶴丸は出家させて伊豆山権現に移した、と説明しています。

 

八重の再婚が決まったとのことで、義時は八重の再婚は早すぎるという直感です。特に相手の男は見張りをしていた番人らしく、身分が違いすぎると悲しい表情になります。ただ、八重は嫁ぐ前にどうしてももう一度頼朝に会いたいと言い出しまして、「やめておきましょう」と義時は言うのですが、宗時は頼朝と八重を会わせることにしたそうです。ここでも自分の意見は全く取り入れてもらえず、なんとも複雑な義時です。

2日後の比企館での対面に備え、宗時は比企に根回しに行き、伊東九郎祐清は八重の湯治を名目に八重を連れ出し、義時は頼朝を比企館まで連れてくる。その段取りのために頼朝の元へいやいや向かった義時は、「それは…会わねばならぬのか?」と会いたくない意思表示をした頼朝にあきれ果ててしまいます。

加えて、宗時はいろいろと頼朝の世話を焼いていますが、どこか頼朝が源氏再興に向かって旗揚げするのを期待しているようなので、宗時に対してくぎを刺しておきます。「わしに多くを望むな。兵など挙げぬ」

 

姉上が化粧してる、という実衣の告げ口で政子の部屋に向かった義時は、やはり頼朝に誘われて三島明神に行くことになったとかで、せっせとお化粧に精を出しています。反対を唱える義時ですが、口を差しはさむなと政子に一蹴されます。弟としては、八重の不憫さを考えれば、姉にそういう体験をしてほしくないからなのです。八重に会わないと言ったとき、その言い方は八重への愛情がなくなったとしか思えなかったのです。それでも政子に義時の気持ちは届かず…。

 

武蔵国比企──この地を治める比企能員の母親・比企尼は頼朝の乳母です。山内首藤経俊が頼朝と乳兄弟であれば、比企能員も頼朝の乳兄弟にあたります。乳母とは生涯の後見役であり、頼朝が伊豆に流罪となった時に比企尼も関東に下り、以来15年にわたって頼朝を援助し続けています。能員は、ひと悶着あった直後なだけに今回は頼朝とはあまり関わりを持たないほうがよさそうだ、と母に進言するのですが、結局は母に押し切られて場所だけ提供することになってしまいます。

その武蔵に向かう街道筋で、義時は伊豆権守・堤 信遠と出くわします。信遠は、清盛から直々に伊豆権守を仰せつかっておる! と権力者の威を刈っていまして、頭を下げてやり過ごそうとする義時に、家臣たちを使って無理やりにでも跪かせます。「源氏なんぞありがたがって何になる? すべては我らの胸三寸」身の程を知れ! と捨て台詞を吐いて、信遠は行ってしまいました。

 

平治の乱で敗れた源 義朝には何人かの男子がいましたが、戦で命を落とした者もあり、平家に捕らえられて命を奪われたものもあり。生き残った頼朝は運が良かったのかもしれません。頼朝が信心深くなったのはその時からです。三島明神に向かう道を頼朝と一緒に歩きながら、政子は頼朝の話を聞いています。

「伊東の八重のことは存じておるか」と突然問われて返事に窮していると、頼朝は話を続けます。八重は自分の子どもを産んでくれて、掛け替えがない、支えとなる女性だったのですが、そのせいで八重を苦しめることになってしまった、と告白するのです。「同じ過ちを繰り返したくはない」と頼朝に言われて、政子は八重の代わりはできないけれども、自分なりに頼朝を支えたいと伝えます。

 

やっとの思いで比企館にたどり着き、頼朝は八重に会いたくないから来ないことを伝えると、伊東祐清には 妹にどう話せばいいのだ と言われ、半ばキレ気味に「それはそちらで考えてもらって」と返します。とりあえず母に謝ってもらおうかと言い出した能員に従って、またも宗時の代わりに義時が頭を下げに比企尼の前に出ることになりました。

能員の妻・道には、頼朝のために支度を調えてお待ちしていたのに料理もすべて無駄になったと怒られ、頼朝の意向を確認することなく勝手に話を進めたのではないのかと能員に疑われ、義時としては言葉もなくただ頭を下げるのみですが、比企尼は義時をかばいます。頼朝がこの館に来なくてホッとしているのは紛れもない文句を垂れる能員夫妻なのです。

 

頼朝の到着を待ちわび、庭の小石を楽しそうに拾う八重ですが、そこに義時が現れて頼朝が来ないことを伝えます。たちまちふくれっ面になる八重は、「もっとまともな嘘をつきなさい!」と握っていた小石を義時に投げつけます。こちらは父にとがめられれば自害する覚悟を持つほどに命がけでここにきているというのに、なぜ義時は命がけでうそをつかないのか。「そんなことで私をだませると思ったか? なぜじゃ…なぜ佐殿はお見えにならぬ? 言いなさい!」

ひと悶着あったあと宗時の元に戻ってきた義時ですが、そもそも頼朝は宗時に“兵を挙げる”と言ったのか。義時としてはここははっきりと確認しておかなければなりません。宗時は聞こえないふりをしているので、そんな話はしていないというのは容易にくみ取れるわけです。義時には“兵は挙げぬ”とハッキリ言っているので、打倒平家の気持ちが強すぎる宗時のスタンドプレーなわけです。となると伊東祐清の側もいろいろと話が変わってくるわけですが、なぜか能天気な宗時が「ここは佐殿が我らを試しておられる。すぐには人を信じてはいかん、さすがとしか」などと勘違いしてしまい、話も大事なく進んでしまいます。

 

伊豆・北条館──。時政が新しい妻・りくを家族に披露しようと思ったのに、館には誰ひとりおりませんで拗ねております。宗時と義時は比企館へ、政子は頼朝と湯河原へ……。政子と頼朝がもうそこまで進んでいることに歓喜している宗時は、もし頼朝を婿に取れば北条は盤石! と義時の忠告も聞こえないほどに舞い上がっています。それで、湯河原のどこに行ったのか義時が時政に尋ねても、時政の頭の中はりくのことでいっぱいになっていますが、なんとか聞き出して土肥実平のところと判明します。「行ってきます!!(怒)」

 

朝早くから実平の屋敷にお邪魔することになった義時は、頼朝が朝風呂に入っているというので、実平の勧めで朝風呂に一緒に入らせてもらうことになりました。しかし……。「お前の姉なら来てはおらぬぞ」と言うではありませんか。頼朝が言うには、政子は伊東館へ向かったそうなのです。どうしても八重と話したいことがあるそうです。

 

頼朝とともに旅をして、途中で分かれて伊東にたどりついた政子と、比企から帰って来たばかりの八重が、伊東館の客間で対峙しています。政子は、頼朝の気持ちがすでに八重から離れていることを伝え、もう二度と頼朝に会いたいなどと思わないようにとどめを刺すつもりで伊東館まで来たのです。「伊東から北条へ乗り換えたということか……何もかも」 八重も一度は好きになったわけなので、すぐに頼朝への思いを断ち切ることはできないし、未練も当然あるけれど、断ち切るように努めると政子と約束します。

 

姉をどうするつもりなのかと、義時は頼朝に思い切って尋ねてみます。まるで馬を乗り換えるかのごとく、八重から政子に乗り移ろうとしている頼朝には、政子を渡したくはないわけです。どうしても承服できません。頼朝は、姉思いの弟だ、とほほえましく眺めていますが、それについイラッとしてしまい「出て行ってください。北条から」と言ってしまいます。

頼朝はひとりで伊豆にやってきました。安達藤九郎盛長のように世話を焼いてくれる者がいて、比企尼のように何かと気遣ってくれる者もいますが、頼朝には身内がいません。いざというときに力になってくれる後ろ盾がいません。頼朝にとって、伊東の者たちがそうなってくれることを望んでいましたが、頼朝の考えが甘すぎました。

ところが、そこに北条が現れたわけです。もう失敗はできない、自分には時がない。北条の婿となり北条を後ろ盾として悲願を成就させたい──。「お前だけには話しておく。いずれわしは挙兵する」 都に攻め上って憎き清盛入道の首を取り、この世を正したい。後白河法皇を支え、この世をあるべき姿に戻す。そのためには、政子が、北条が、欠かせないわけです。したがって、事は慎重に運ばなければなりません。このことは兄の宗時にも話さないように言われます。

「小四郎……お前は、わしの頼りになる弟じゃ」 これまでの頼朝とは違う、明らかに違う頼朝を、義時は目の前の男に見ていました。頼朝の凄みに圧倒され、取り憑かれたように「ははっ」と返事する義時です。


作:三谷 幸喜
音楽:エバン・コール
語り:長澤 まさみ
題字:佐藤 亜沙美
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小栗 旬 (北条義時)
新垣 結衣 (八重)
小池 栄子 (政子)
片岡 愛之助 (北条宗時)
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山本 耕史 (三浦義村)
堀内 敬子 (道)
阿南 健治 (土肥実平)
佐藤 B作 (三浦義澄)
小泉 孝太郎 (平 宗盛)
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松平 健 (平 清盛)
國村 隼 (大庭景親)
佐藤 二朗 (比企能員)
草笛 光子 (比企尼)

浅野 和之 (伊東祐親)
坂東 彌十郎 (北条時政)
宮沢 りえ (りく)

大泉 洋 (源 頼朝)
西田 敏行 (後白河法皇)
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制作統括:清水 拓哉・尾崎 裕和
プロデューサー:長谷 知記・大越 大士
演出:吉田 照幸

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