大河ドラマ鎌倉殿の13人・(04)矢のゆくえ ~始まる源平合戦絵巻 歴史動いた夜~
北条時政の後妻・りくがガチャガチャとくじをまぜて源 頼朝の前に置き、お願いします とうやうやしく頭を下げます。目をつむった頼朝はその中から一本のくじを引き、目を見開いてつぶやきます。「挙兵は……17日!」
17日は三島明神の祭りの日ですが、その方が守りは手薄になっているだろうからむしろ好都合です。まず北条時政と宗時の先陣隊が目代の山木兼隆の館を襲って放火し、これをもって平家討伐、関東挙兵ののろしにします。義時は、山木館を襲撃するのと同時に目代後見役である堤 信遠も討ってしまいたいと提案します。平家に味方した時の見本とするわけですが、信遠に受けた恥辱を晴らす時政と義時の思いに、宗時は信遠にも兵を差し向けることに賛同します。
三浦義澄・義村勢はこれと同時に衣笠を発って北条勢に加わり、相模の鎌倉に根城(ねじろ)を作ってそこに坂東中から兵を集めます。頼朝の父・義朝が本拠としていた場所、源氏の名の下に坂東武者たちが集まるのにはもってこいの場所です。
──宿敵平家を倒し、後白河法皇を救い出せ。それは、踏み出せば二度と戻れない、長く苦しい旅の始まり──
治承4(1180)年・夏。軍議が終わってりくの前で寝っ転がる時政は、頼朝がくじで17日を引き当てた運の強さに感心しています。慎重な頼朝が必ず挙兵して勝ち、時政は頼朝の舅として坂東武者を率いて上洛するために、りくがすべてのくじを17日にしておいたのです。
前日の16日、館内を歩き回る義時は祐討つそうな表情を浮かべています。頼朝に呼び出されて兵の数を報告させられるのですが、北条9人、仁田4人、加藤5人の合計19人……。幸先いいぞ! と宗時は満面の笑みですが、ちょっと…ちょっといいかな、と頼朝は話を止めます。「兵が少なすぎないか?」
小四郎義時は「ざっと300」と予測し、頼朝はそれでも控えめに見積もっているものだと考えていたのに、18人とはあまりにけた違いです。しかし宗時は、佐々木勢も来ていないし、頼朝に縁の深い山内首藤勢もこれからなので、さほど気にしていない様子。勝ち進めば相模や武蔵から味方する兵が次々に加わり、じきに大きくふくれあがると笑う宗時に、頼朝は「初戦が大事だと言ったのは誰だ!」と声を荒げてしまいます。
では、と急に方向転換した宗時は、以仁王がまだ生きていて伊豆で再起を図っているとうわさを流せば……と笑い、頼朝は頼りない宗時にあきれ果てています。苛立ち始めた頼朝に、義時は「明日までに200は揃えます、必ず!」と言ってしまいます。
館から出ようとする義時に、姉の政子は江間館のほうをずっと見ながら、もし頼朝と八重がどうにかなるようなことがあったら、自分は何をするか分かりませんからね、とくぎを刺しておきます。義時は、そう言われても……と困惑気味です。
もう一度、頼朝の味方になってくれそうな人を探しに館を出た時、八重に呼び止められます。八重はずっと北条館のほうを見ているのですが、あわただしい様子に「戦でも始まるんですか」と尋ねてみます。とぼける義時に、八重はぐいっと身を乗り出してさらに聞いてくるのです。問いに答えられずに一度は八重に背を向けて立ち去ろうとする義時ですが、くるりと振り返り「仮の話としてお聞きください」と断ったうえで、戦になったら北条と江間が戦うことになるので、いつでも逃げられるように支度をしておいた方がいい、と伝えます。
北条の者たちはことを容易く考えすぎると頼朝が愚痴を政子に吐いています。父・時政と兄・宗時はのんきで物事をいいようにしか捉えないと政子は分析しています。どちらにしても負ける戦はできぬという頼朝に、気分転換に大姫と遊びませんかと提案する政子ですが、頼朝の頭の中は戦のことでいっぱいいっぱいになっておりまして、大姫どころではありません。しばらく離れていようという頼朝の提案を受け入れて、政子は離れて暮らす覚悟を固めます。
「そんなことは一言も言ってない!」 宗時の話に従って土肥実平の館を訪れた義時ですが、実平はまったく言っていないそうです。もし仮に戦になったら、自分の土地は平家の好きにされないようにきっちり安堵してもらえるのか、そこの保証がなければおいそれと参陣できないわけです。頼朝を信じていいのか、と。
夜、北条館に戻った義時は、実平に頭を下げてほしいと頼朝にお願いするのですが、源氏の棟梁である自分が何ゆえ坂東の田舎者にそこまでせねばならぬのか、と拒否します。お前がやれ! と怒鳴りつける頼朝に、義時は恐ろしい表情のまま頼朝に近づきます。「そのお考え……一日も早くお捨てになられた方がよろしいかと存じます」 自分たちは確かに坂東の田舎者ではあるのですが、今はその坂東の田舎者たちの力を結集しなければならないときであるわけで、彼らあっての頼朝であることを忘れないように、と迫ります。
義時は実平を北条館に呼び、頼朝と対面します。「わしが一番頼りにしてるのは実はお前なのだ。お前なしでどうしてわしが戦に勝てる?」 頼朝は実平の手を握り、涙をいっぱい浮かべて説得します。実平は感激し、味方に加わることを固く約束します。
対面ののち、義時は頼朝の術を感心していますが、嘘も誠心誠意つけば誠になるのだ と頼朝は表情を変えずに言うのです。「実はもう一人来ております。岡崎義実殿が」という義時、ちゃっかりというか懲りないというか……(笑)。頼朝は、とても何かを言いたげでしたが、今や義時の手のひらで転がされているような扱いになっています。そして頼朝は、たった今実平にやったように、義実にも同じ手を使って味方に引き入れたわけです。
山内首藤経俊は頼朝の乳母のひとりである山内尼の息子で、源氏とは深いつながりがありました。安達盛長が山内首藤館に向かい勧誘するのですが、経俊の口から出たのは「頼朝は流人ではないか、本気で勝てると思うておるのか」という信じられない一言でした。平 清盛と頼朝とでは虎とネズミほどの差があるわけです。食い下がる盛長に経俊は、武士の情けとして大庭景親には言わずにいてやると半ば強引に追い出します。
盛長が北条館に帰って報告すると、ひどくがっかりする頼朝です。経俊が味方にならないのは頼朝にとっては手痛いことで、人の心のむなしさを痛感せずにはいられないのですが、そこに現れたのは佐々木秀義でした。頼朝の祖父・源 為義の娘婿で、このとき68歳。再会を喜ぶ頼朝に秀義は、頼朝に挙兵の裏切りはないかと探っていた大庭景親には適当にはぐらかし、佐々木一族が身命を賭して平家打倒に尽くすと約束してくれました。ちなみに加勢するのは秀義の息子たち4名です。
次々に集まってくる者たちを見ていると、年寄りの寄り合いのような集団やら太りすぎの役に立ちそうもない者たちやらで、頼朝は「これは……負けるぞ」と義時に言います。
八重は伊東館に赴き、義時の言葉から頼朝が挙兵するであろうことを父の伊東祐親に伝えます。でかしたと喜ぶ祐親に、もし頼朝が戦に負けたら討ち取られるか首を刎ねられるところ、八重はまた流罪にしてやってほしいと頭を下げます。自分のせいで頼朝が死罪というのはいささか都合が悪いと考えたようですが、祐親はしばらく考え、未然に挙兵を防ぐことができたら考えよう、と答えます。
頼朝はまたも後白河法皇の夢を見ます。枕元にいて、挙兵を促す夢です。うなされてうなされて目覚める頼朝ですが、こうも毎日続けて悪夢に襲われてはとてもつらいです。そして迎えた8月17日、頼朝は無心に読経しています。
早朝、祐親は景親の館に赴いて頼朝挙兵の情報を伝えます。そこに経俊がやってきて、頼朝挙兵の事実を報告するのですが、いつ、どこに攻め込むかという重要な情報は持っていませんで、もうよい、と追い出されてしまいます。どうやら頼朝は兵集めに苦労しているらしい、という状況は景親にバレてしまいました。
堤館から出てきた家人の話では、三島明神の祭りで家人が出払ってしまい、堤館も山木館も手薄となるようです。しかし山木兼隆本人が祭りの最中にどこにいるのか分からなければ首を取れないわけで、首が取れなければ戦の意味がありません。頼朝は仕切りなおそうと考えているのですが、祐親は頼朝の動きを怪しんでいるので遅くとも今夜挙兵しなければなりません。今夜挙兵できる人数は、佐々木勢4人を含めて24人です。「取りやめだ! 取りやめ!」
義時は、今日の兼隆の居場所を聞き出すべく八重のところに向かいます。じいさま(=祐親)に今夜の兼隆の居場所を聞いてほしい、と依頼する義時ですが、察知のいい八重は、「今夜」「山木の館に」という、景親や祐親が最も知りたかった情報を簡単に入手してしまいます。「佐殿の挙兵のこと、父に伝えました」 八重の一言で顔面蒼白になる義時は、そういうことでしたか、としか言葉が出せません。北条も愚かな、と言われた義時は、飢饉が来れば多くの民が死ぬことになる、と戦の大義名分を八重に訴えるのです。
江間次郎は、三島明神ご案内しますと“妻の”八重に提案しますが、使用人とともに並んで祭りに行くなど屈辱でしかありません。父に見られるのも癪なのですが、祐親は祭りのような場は嫌いらしく参加しません。そして兼隆も参加しないそうですが、昨日落馬して足を痛めたため屋敷にいるとのことです。
八重は川べりまで進み、白い布を矢に結び付けて北条館に向けて放ちます。
頼朝によれば、伊東の庭の梅の枝に結ばれた白い布は今夜会いたいという八重からの暗号なのですが、それを聞いた義時は「今夜出陣せよとの合図です。山木は館にいます!」 大きく頷く頼朝と義時です。
無数のかがり火が焚かれる中、兵が次々と集まってきます。山木館と堤館を襲撃する途中で祭りをやっているので、牛鍬(うしくわ)大路を避けて蛭嶋(ひるがしま)通りを進もうという声もありましたが、今から大事を成すのだから堂々と大通りを行けとの頼朝の命により、牛鍬大路を通ることになりました。「一同、都におわす院の思し召しでござる。山木が首、見事挙げて参れ!」
治承4年8月17日深夜、北条宗時率いる頼朝の軍勢が北条館を出発。堤館の周囲を取り囲み、持ち場についたところで襲撃を開始します。佐々木経高が放った一本の矢、この瞬間、4年7ヶ月に及ぶ源平合戦が始まります。
一方頼朝は、離れて暮らす政子と大姫のところに出向き、政子に膝枕してもらって恐ろしさを切り抜けようとしていました。
作:三谷 幸喜
音楽:エバン・コール
語り:長澤 まさみ
題字:佐藤 亜沙美
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小栗 旬 (北条義時)
新垣 結衣 (八重)
小池 栄子 (政子)
片岡 愛之助 (北条宗時)
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山本 耕史 (三浦義村)
横田 栄司 (和田義盛)
阿南 健治 (土肥実平)
佐藤 B作 (三浦義澄)
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國村 隼 (大庭景親)
浅野 和之 (伊東祐親)
坂東 彌十郎 (北条時政)
宮沢 りえ (りく)
大泉 洋 (源 頼朝)
西田 敏行 (後白河法皇)
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制作統括:清水 拓哉・尾崎 裕和
プロデューサー:長谷 知記・吉岡 和彦
演出:末永 創
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