« プレイバック武蔵坊弁慶・(05)常磐と静 | トップページ | 大河ドラマ鎌倉殿の13人・(03)挙兵は慎重に ~頼朝ついに挙兵へ! 都の法皇を救え~ »

2022年1月21日 (金)

プレイバック武蔵坊弁慶・(06)愛憎乱舞

13年ぶりに再会を果たした母・常磐の家で、遮那王はひとりの少女と出会います。その名は静、今まさに初花の匂うばかりの美少女でした。静は無数に散る桜の花びらをそっと手のひらにのせて遮那王に見せるのですが、遮那王がちょっとしたいたずら心で「フッ」と吹き飛ばしてしまいます。少し拗ねる静ですが、また散るぞ…それ静も、と遮那王に促されて、すぐに笑みに戻って花びら遊びに興じます。

今回の母と子の再会には、母への愛憎が深く影響しているとふんだ弁慶が馬を買いに行くという話をダシに、金売り吉次の力を借りて成しえたことであり、弁慶は吉次に深々と頭を下げ、礼を言います。吉次は2~3日のうちに奥州平泉へ戻りますが、もし遮那王のことで困ったことがあれば、その時は八条女院にご相談を、と言われます。八条女院とは鳥羽上皇の姫君のことで、後白河院の腹違いの妹にあたり、全国に230もの荘園を持っているので、その財力と権力は平 清盛でさえ一目置く存在であります。しかも大の源氏びいきの方なので何かと力になってくれそうです。ただ心配なのは、弁慶のような身分の低い者はなかなかお近づきにはなれないという点です。しかし吉次が言うには、八条女院はなかなか気さくな方で、いま吉次が常磐のお世話をしているのも八条女院の口添えがあったからといいます。とにかく弁慶には、強い味方を得た力強さがありました。

遮那王と静にも、いよいよお別れの時となりました。遮那王が静を「花のようじゃ……桜のように美しい」と言えば、静は遮那王を「遮那王さまも鷹のように凛々しくて」と言って、ふたりくすっと笑います。またどこかで会うこともあるであろう、と二人は名残惜しみつつ別れます。屋敷を出るときには常磐と一条能成も見送りに出てきてくれます。いつでも遊びにいらっしゃい、と言いたいのはやまやまなんですが、一条長成の立場もあり、そうもいきません。「なれど、母はここにおりますゆえに」 そう言う常磐に、会いたくなったら館に近づいて、かつて母にもらった笛を奏でます、と遮那王です。遮那王は馬上の人となり、館を去っていきます。

 

鞍馬へ帰る道すがら、弁慶の名を叫ぶ常陸坊海尊が走ってきました。平家の公達たちが遮那王が戻ってくるまで動かぬと鞍馬寺に入っていったそうで、今帰ると危ないと言いに来たのです。遮那王は特に悪いことはしていないから捕まることもなかろうと、馬から下りてスタスタ歩き出します。弁慶は海尊に馬を預け、遮那王の後を追います。

帰って参りました! と声が上がり、遮那王・弁慶主従を凝視する平 知盛は、ここにいろんな法師が出入りしているようだが…と弁慶を意識した一言で断ったうえで、「ひとつ忠告しておく。愚かな夢は見まいぞ遮那王」と顔色一つ変えずにくぎを刺します。遮那王に関しての処遇は知盛が任されているのです。そしていきり立っている資盛も、仇の情けにすがって生きているお前が夜な夜な外を出歩くな! と強く出れば、遮那王はフッと笑みをこぼして たまの散歩もできぬとは…困ったな弁慶、とつぶやきます。「夜な夜な出歩けねば、明日からは昼から出かけましょう」と弁慶が上げ足を取り、ふたりでゲラゲラ笑います。ちょぅどその時、海尊や他の法師たちがほら貝を吹き始めました。弁慶は「それそれぃ、山法師たちが騒ぎ出した」と知盛と資盛を鞍馬寺から追い出します。

知盛たちが帰った後、みんなで集まって話し合いがもたれます。阿闍梨は、このままここに居続けるのは自分は構わないが、遮那王の命を狙われてしまいやすくなる、と危惧します。弁慶は、遮那王にはもっと広々としたところで過ごしてもらいたいと、奥州平泉の館を挙げます。奥州平泉とは鎮守府将軍・藤原秀衡の館のことです。北方の王者と謳われながら覇権を望まず、都から数百里離れた辺境の地に仏法の花咲く一大理想郷を作り上げたところでありまして、天下広しと言えども遮那王をかくまえるのは秀衡しかいなさそうです。

 

翌朝、京・七条の市を訪れた弁慶は再び吉次を訪ね、昨日のように知盛らが遮那王の首を狙ってくる可能性も出てきたので、安全な地でのびのびと暮らさせるために平泉に行きたいと吉次に相談します。吉次は、平泉で過ごすことには賛成なのですが、それを平 清盛が知ってしまったときにどういう報復があるかが分かりませんで、それであればいっそ八条女院に紹介状をいただいてみてはどうかと提案します。八条女院は後白河院の妹君にもあたるので、八条女院の口添えとなれば反対を唱えることすら難しくなってしまうわけです。とりあえず弁慶は、吉報を持ってくるゆえ一日だけ待ってほしいとの吉次の言葉を信じるしかありませんでした。

一方、源氏の御曹司の家人になったと聞かされて悲観にくれる玉虫でしたが、弁慶からもらった熱い温情を忘れることはできず、空を見上げては会いたい会いたいとつぶやいています。その真横では、今を時めく右大臣平 重盛の長男・維盛から玉虫への恋文の橋渡しを頼まれたと鈴の前が大騒ぎしています。「あんな乞食法師のどこが良くて」との一言にカチンときた玉虫は、鈴の前から恋文を取り上げて維盛に返しに行きます。

自分に好意があると勘違いした維盛が御所内で玉虫を襲います。必死に逃げ、抵抗しつづける玉虫も もはやこれまでか──という危機の時、知盛が玉虫を助け、維盛を平手打ちし叱責します。後から現れた右京太夫が玉虫を下がらせると、邪魔された腹いせに、知盛は右京大夫が好きなのにそれを言えぬ小心者から我らに八つ当たりする、迷惑な話だ!と捨て台詞を吐いて退場します。

右京太夫は、玉虫を助けてくれた礼をしたいので弘徽殿(こきでん)にお越しください、と知盛を誘います。裏で維盛に聞いたらしい資盛がそこに走りこんでくるのですが、資盛の気持ちを知っている知盛は右京太夫を弘徽殿にお送りするように頼み、その場を後にします。資盛は、恋している右京太夫を知盛に取られたかと思ってヒヤリとしています。

知盛から聞いて、弁慶が源氏の御曹司の家人になったことを知った右京太夫は、好き合っているのであれば源氏だの平氏だのとそれを隠す必要もあるまいと玉虫を諭しますが、玉虫にはやはり、平氏と源氏は敵同士というのが念頭にあって右京太夫には言い出しにくかったようです。玉虫は、これ以上右京太夫に迷惑をかけたくないとお暇願いを申し出ます。右京太夫は、玉虫が自分の恋を全うしたいのであれば止めはしないが、もし自分(右京太夫)のことでお暇を申し出たのであれば、心配しなくてもいいと言葉をかけます。

 

その夜から弁慶は知盛らの討手に備えて、鞍馬山のふもとの廃屋に泊まり込みます。そこに、雨に打たれて千載がやってきて、弁慶に一晩の宿を借りたいと頼み込みます。千載は、弁慶が書写山円教寺にいたころ、遊び女探しに室津に行ったときに出会った女です。千載は丹波の傀儡の出で、弟がひとりいるのですが、ちょっとしたことで弟が仲間を裏切ることになってしまいました。姉としても室津にはいられなくなって、安心して暮らせる場所を探して旅に出ることになったわけです。弁慶は、千載の弟が かつて吹き矢で自分も命を狙われたことがある頑入であると知り、元の傀儡の頭である太平に話をしてみることを約束します。

ほどなくして、頑入を筆頭に兵たちがその廃屋になだれ込んできます。弁慶は千載を守りながら複数人を相手にするのですが、攻撃のさなか、廃屋が崩れ落ちてしまいます。頑入は弁慶に太刀打ちできないとあきらめると、仲間の兵に弁慶から奪い取った薙刀を押し付けると、身を隠してしまい、兵たちも薙刀をお互いに押し付け合って慌てて逃げだします。弁慶は物陰に隠れる頑入を薙刀でくるくるともてあそぶと、頭を冷やせと川に向かって放り投げました。「これでよいか? 達者でな」と、弁慶は鞍馬寺に戻っていきます。

 

奥州ゆきを願う弁慶と遮那王が吉次に伴われて、八条女院の御所に参上したのはその翌日。直答を許されたので、遮那王と弁慶は名を名乗るのですが、弁慶が名乗ると八条女院の笑いが止まりません。百人力の法師の力をこの目で見たいというので、屋敷の庭に網代車を持ってこさせます。そして女御を2人ずつ抱えて網代車に乗せ、合計4人になったところで網代車ごと持ち上げて披露します。それを面白そうに眺める八条女院と、頼もしそうに見る遮那王。弁慶の凛々しい表情です。


原作:富田 常雄
脚本:杉山 義法
テーマ音楽:芥川 也寸志
音楽:毛利 蔵人
タイトル文字:山田 恵諦
語り:山川 静夫 アナウンサー
──────────
[出演]
中村 吉右衛門 (武蔵坊弁慶)

川野 太郎 (遮那王)
荻野目 慶子 (玉虫)
麻生 祐未 (静)
岩下 浩 (常陸坊海尊)
──────────
真野 あずさ (右京大夫)
堤 大二郎 (平 資盛)
新井 春美 (千載)
寺尾 聰 (金売り吉次)
──────────
隆 大介 (平 知盛)
信 欣三 (東光坊阿闍梨)
光本 幸子 (八条女院)
藤村 志保 (常磐御前)
──────────
制作:村上 慧
演出:外園 悠治

|

« プレイバック武蔵坊弁慶・(05)常磐と静 | トップページ | 大河ドラマ鎌倉殿の13人・(03)挙兵は慎重に ~頼朝ついに挙兵へ! 都の法皇を救え~ »

NHK新大型時代劇1986・武蔵坊弁慶」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« プレイバック武蔵坊弁慶・(05)常磐と静 | トップページ | 大河ドラマ鎌倉殿の13人・(03)挙兵は慎重に ~頼朝ついに挙兵へ! 都の法皇を救え~ »