« 大河ドラマ青天を衝け・(42-4)総集編第四部 渋沢栄一91年の物語を第1部から第4部まで一挙放送・民間外交にも尽力し走りつづける | トップページ | プレイバック武蔵坊弁慶・(02)驕(おご)る平家 »

2022年1月 4日 (火)

プレイバック武蔵坊弁慶・[新] (01)恋の荒法師

古来、数ある英雄伝説の中で、弁慶ほどその生涯が謎に満ちた人物はほかに見当たらない。
弁慶の名を記した室町時代の物語『義経記』にその出生を辿れば、関白藤原道隆の子孫である熊野別当・弁生を父に、二位大納言の姫君を母として生まれた、やんごとなき出自ということになる。また一説によれば、義経や頼朝とはいとこの間柄にある熊野別当・湛増の子であるといい、あるいはまた、歴代の熊野別当の中に弁生なる人物の名がないことから、弁生と湛増を同一人物としてその子とする説もあるが、いずれも決定的資料に欠けていることは否めない。
ともあれ、熊野は弁慶伝説の故郷であり、800年にわたって日本人の心の奥底に生き続ける類いまれなスーパーマンであることは確かである。果たして、武蔵坊弁慶とはいかなる人物であったのか──。

海辺を、列を崩さずにあるく総勢5名の山伏の一行。口々に京を唱えながら一歩一歩前へ歩いていきます。最後尾をついてくる編み笠の山伏は源 義経。後ろを振り返り、弁慶の名前を叫びますが、強風で砂が舞い、人の姿を見ることはできません。しかし「御曹司ーッ!!」という弁慶の声がしてパッと明るい表情になり、安堵する義経です。


原作:富田 常雄

脚本:杉山 義法

テーマ音楽:芥川 也寸志

音楽:毛利 蔵人
演奏:東京管弦合奏団

タイトル文字:山田 恵諦
監修:鈴木 敬三
語り:山川 静夫 アナウンサー

考証:白井 孝昌
風俗考証:磯目 篤郎
殺陣:林 邦史朗

笛:福原 百華
法儀指導:市原 孝信
協力:書写山円教寺

 

[出演]

中村 吉右衛門 (武蔵坊弁慶)

 

川野 太郎 (源 義経)

荻野目 慶子 (玉虫)

加藤 茶 (徳)

樋浦 勉 (信濃坊海円)
福原 秀雄 (覚証)
──────────
大島 宇三郎 (法師)
竹内 のぶし (法師)
くぼた ごろう (法師)

岡本 隆 (法師)
車 邦秀 (法師)
新 みのる (法師)

竹田 寿郎 (法師)
小田島 隆 (法師)
千葉 清次郎 (法師)

勝田 武 (法師)
佐藤 友弘 (法師)
真木 仁 (法師)

小林 大介 (法師)
猫俣 博志 (法師)
中村 正人 (法師)

 

高品 格 (太平)

岡安 由美子 (ほくろ)

新井 春美 (千載)

岩下 浩 (常陸坊海尊)
──────────
加瀬 幸市 (郎党)
加藤 治 (郎党)
中島 次男 (郎党)

中西 由香力 (遊女)
梅津 直美 (遊女)
内山 智子 (遊女)

若 駒
劇団いろは
劇団ひまわり
鳳プロ

 

制作:村上 慧

美術:田島 宣助
技術:斎藤 政雄
効果:大和 定次

照明:野下 清
撮影:杉山 節郎
音声:谷島 一樹
記録編集:久松 伊織

演出:重光 亨彦


播磨国、書写山円教寺(えんぎょうじ=兵庫県姫路市)は「西の比叡山」と呼ばれる天台宗の名刹です。承安4(1174)年、この寺で多くの法師が読経する中、ふらりと現れたのが旅の荒法師でした。下駄と杖をコツンコツンと鳴らし、堂々とした姿です。「なるほど比叡山にそっくりだぁ」ひとつやっかいになるか、と中に入っていきます。

誰でも、入って早々大飯を食らい徳利をあおって酒を飲む新人を見れば、先輩法師としては決して気分のいいものではありません。信濃坊海円という法師がどうやらボスのようで、かわいがってやる、と笑いながら出ていきますが、弁慶はさほど気にしてはいません。

 

書写山から20kmほど離れた室の津の湊(兵庫県御津町)は、万葉の昔から日の本の五泊の一つとして栄えた天然の良港です。その船着き場に近い遊女屋の館の前に、宿坊を抜け出して遊びに来た直垂に小袴姿の弁慶がいました。通りを奥に進んだ小屋に美しい娘・千載がいて、弁慶は出会いを果たします。「お坊さまでござりましょ」と弁慶の身分を一発で当てた千載によれば、弁慶のように書写山から山を下りて通う法師が他にもいるそうで、かのボス信濃坊は千載が逃げてしまってここで暴れたとか。弁慶は怖気づいたのか、千載が猛烈に誘うのを断り、翌朝書写山に戻ってきました。

 

弁慶の帰りを待っていたのは信濃坊らで、室の津で遊んだだろと図星を言われますが、動揺するどころか「お主、遊女に逃げられて暴れたそうだな」と逆に小ばかにして信濃坊をさらに怒らせます。信濃坊の合図に一斉に弁慶に襲い掛かる先輩法師たちですが、一人で立ち向かっても5人で立ち向かっても、弁慶に投げられ、なぎ倒され、押し付けられで全くかないません。たちまち逃げていく信濃坊たちです。

「鬼若──」と弁慶の幼名を呼ぶ声に振り向くと、昨晩の遊女屋から弁慶を追ってきた傀儡子衆の棟梁・播磨の太平(たへい)が現れます。昔、悪さが過ぎて山を追われた鬼若を引き取り、比叡山に入るまで面倒を見てきた、弁慶にとっては育ての親とも言うべき人物です。太平がやって来たのは、弁慶をもう一度傀儡の仲間に引き戻すためであります。しかし弁慶にはその気はありません。

そして太平はもう一つ、熊野にいたころに出会った玉虫という娘の話を弁慶にします。先日 玉虫がやってきて、自分を助けてくれたお坊さまに会いたいと言っているそうです。弁慶は、うろ覚えの様子を装っていますが、玉虫のことははっきりと覚えています。そして玉虫が自分を探してくれていることに素直に喜んでいます。現在の玉虫は京で中宮徳子の女房・右京大夫に仕えているそうです。ただ、玉虫のことはほどほどにしろよとくぎを刺しておきます。「女は遠くで見るものぞ。さらば」

 

書写山に入った時から弁慶を遠くから見ていた常陸坊海尊は、信濃坊たちは弁慶を八つ裂きにしてくれん! と、まるで戦が始まるかのようないでたちでいきり立っていると弁慶に知らせに来てくれました。やがてたいまつを片手に法師たちが集まってきますが、弁慶は海尊に「見てな」とだけ言うと、彼らの前に躍り出て法師たちを蹴散らし、信濃坊に向かっていきます。

ただ、弁慶にしてみればほんの憂さ晴らしのつもりだったのですが、悪僧として天下をとどろかす落とし穴がありました。一部の法師がお堂に火をかけてしまったのです。この出火については武蔵坊のせいにされてしまい、弁慶が攻撃をかわしながらお堂にたどり着いたときには手の施しようがなかったため、手を合わせて祈るよりほかに方法がなかったわけです。海尊は、弁慶を追い出すために信濃坊が仕組んだ罠にはまったのだと教えてくれ、弁慶は信濃坊への怒りがさらに倍増します。

そこに太平が手下の者を連れて救援に現れ、弁慶を書写山から逃がそうとしますが、弁慶は怒りのあまりそれどころではありません。おとなしく成仏しろ! と、信濃坊の足首をつかんでぐるぐると振り回し、遠くへ投げてしまいます。太平、徳、ほくろと、海尊はあっけにとられて信濃坊が飛ばされるのを見ているのみです。
この時、武蔵坊弁慶26歳、惜しむらくは、人生の目的を持たなかったことであります。弁慶は燃え盛るお堂に手を合わせ、涙を流します。「無念なり武蔵坊、汝ついに仏法の仇となるか──」

|

« 大河ドラマ青天を衝け・(42-4)総集編第四部 渋沢栄一91年の物語を第1部から第4部まで一挙放送・民間外交にも尽力し走りつづける | トップページ | プレイバック武蔵坊弁慶・(02)驕(おご)る平家 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 大河ドラマ青天を衝け・(42-4)総集編第四部 渋沢栄一91年の物語を第1部から第4部まで一挙放送・民間外交にも尽力し走りつづける | トップページ | プレイバック武蔵坊弁慶・(02)驕(おご)る平家 »