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2022年2月15日 (火)

プレイバック武蔵坊弁慶・(13)異母兄弟

──世に言う「富士川の合戦」の幕切れは、あっけないものであった。数万という水鳥が飛び立つ羽音を源氏の奇襲と思い込んだ平家方は、我先にと陣を捨て戦わずして敗走したのである──

平 清盛は、源 義朝と思しき亡霊が急に襲ってきたのを見るや刀で義朝を斬り捨てますが、その首は床にころがり、どくろがはっきりと見えます。そんな悪夢にうなされていた清盛は、養和元(1181)年2月、京の都・西八条の館で原因不明の高熱で病に倒れます。夢から覚めた清盛は知盛の顔を見据え、そちの言う通り源氏の小倅どもに情けをかけておったのは誤りであったとつぶやきます。そして跡継ぎの宗盛には、自分亡き後は仏事供養、寺、塔は一切いらないから、即刻兵を差し向けて頼朝の首を刎ね、我が墓前に備えよ、と言い残してこの世を去ります。
享年64、狂乱怒涛の人生でした。

平家の不幸はさらに続き、金銀をちりばめて作られた清盛の西八条屋敷が放火によってか焼け落ちてしまいます。知盛は、この手でつかんでいたものがさらさらとこぼれ落ちていくような様子に言葉も出ませんが、右京太夫は知盛を励まし、いつでも聞き役を務めると言ってくれます。しかし知盛はその申し出を拒絶、今日から自分は鬼になると宣言するのです。

 

鎌倉の頼朝は坂東の地盤を着々と固めつつありました。由比ヶ浜の鶴岡八幡宮を鎌倉の地に移したのもこのころです。頼朝の家来ともなれば、これまでは先頭を走っていた義経も、兄との間で少々我慢を強いられることも出てくるでしょう。それを思って、義経の家来たちが素人ながら義経のために屋敷を建ててあげまして、義経はとても喜んでいます。

主従で酒を酌み交わしながら、義経の嫁鳥の話に移ります。まだ早い、と顔を赤くする義経もすでに24歳、奥州平泉でくすぶっていた時期が長かっただけに適齢期もすぎてしまっています。義経の北の方(=妻)としてふさわしい人物で弁慶にこころあたりがあるようで、名前を言おうかとするのですが、義経が極度に恥ずかしがって宴会の座を蹴ってしまいます。

 

知盛が動き出したらしい、という情報を義経が耳にしました。義経は弁慶に、都の様子を探ってきてほしいと命じます。そんな時、金売り吉次が奥州から山のようなお祝い品を持って到着しました。弁慶は吉次も一緒に酒を飲もうと誘うのですが、連れがいまして…と言葉を濁します。「参られよ、静どの」の吉次の声に義経はびっくりするのですが、入ってきたのは、一条大蔵卿のところで別れて数年ぶりの静御前です。

つい先日、弁慶とばったり会ったときには静の父親が危篤という話でしたが、残念ながら父との対面はできませんでした。それを聞いて義経はし、「わしも父の顔を知らぬ」と静に同情するのでした。母親はしばらくその地にとどまるそうで、静の居場所として吉次がこの館を紹介してくれたわけです。ご迷惑でなければ、と控えめに言う静に、義経は大歓迎です。

 

頼朝の館──。義経には荷駄十頭分の祝いの品を送りながら頼朝にはなんの挨拶もないと、家臣の土肥実平は奥州平泉の藤原秀衡の心の内を測りかねています。義経が誰から祝いをもらおうと大して気にするそぶりを見せない頼朝ですが、梶原景時は八幡太郎義家のおかげで今の奥州藤原氏があるのだから、何を置いてもまずは源氏の棟梁である頼朝に挨拶がなければならないという持論です。そして白拍子を京から呼び寄せたという話まで伝わってしまって、頼朝の表情が暗くなります。

 

数日後、鶴岡八幡宮宝殿の上棟式当日、周囲の者が一瞬だけヒヤリとする事件が発生してしまいます。狩衣姿の頼朝が馬に乗ってやってきましたが、家臣たちがみな下馬して頭を下げる中、義経ただひとりが馬にまたがったまま頼朝を出迎えようとしています。景時らにとがめられてようやく下馬した義経でしたが、頼朝が「九郎、馬を引け」という命に、一瞬「なぜ弟であるわしに」と思いつつも頼朝の命に従って馬の轡(くつわ)を引く役目を果たします。時政や景時は満足げに頷き、義経家臣の佐藤継信・忠信兄弟はくやしそうに唇をかんでいます。

 

屋敷に戻った佐藤兄弟は、伊勢三郎からさんざんに責められますが、あの場では何も言えなかったと弁明します。とはいえ、主人を円座の中で恥をかかされたことに立腹する三郎が暴れ出し、弁慶を巻き込んでの乱闘になったところで、義経が止めに入ります。義経は自分のふがいなさを詫び、家臣たちに悔しい思いをさせてしまったことを詫びます。

あの時義経は、自分の軽率さを恥じつつ轡を取ってみると、兄のぬくもりを直接手で感じることができたというのです。黄瀬川で対面してからついぞ笑顔を見せてくれなかった頼朝の、兄としてのぬくもりが感じられて義経にはとても幸せだったのです。弁慶は、何もお気に召すことはありません、ただ御曹司の後からついていくのみ、とほほ笑みます。

夜、弁慶は三郎のけがを手当てしながら酒を注いでいます。どうやら馬の轡取りでのうっぷんを晴らすための弁慶と三郎の芝居だったようです。そこは弁慶なりに手加減したつもりだったわけですが、みんなのためと考えればこそ本気になってしまいまして、三郎もイテテテテと苦笑いです。しかしこの三郎、ホントにワルなのか気が利く善人なのか分かりませんw

 

吉次は、これ以上館にとどまっては義経の迷惑と考え、さっそくに館をでることにしました。それにしても頼朝の義経への恥かかせは吉次もとても驚くことで、立場をはっきりとさせなければならないにしても将来的にも非常に心配点だといえそうです。吉次は弁慶に、秀衡こそが末の末までの味方だと目を輝かせます。

 

尾張墨俣川で新宮十郎を打ち破った 知盛率いる平家軍は、一門の総力を挙げて木曽義仲攻略に向けて北陸へ兵を進めようとしていました。一方、失意の右京太夫は病に倒れて御所を退き、嵯峨野の尼寺に身を寄せていました。風雲急を告げる都へ向かう弁慶、彼を待ち受けるものとは──

 

静は、弁慶を海のように大きい人と評せば、義経のことを星と評します。海人は星を頼りに船を進めますが、義経はそんな星のような人になると言いたいわけです。さしづめ海にさまよう小舟だと自分自身では考えていた義経は、なれるかのう…とニッコリしています。義経が頼朝に呼ばれたのは、まさにそんな時でした。

「嫁を!? それがしに嫁をとれと」 頼朝が考えていたところに北条政子もとても乗り気になっているようで、特にこういったときは女の方がはしゃいでいますがw つまり義経が河越太郎重頼の娘を嫁に取れば、それは義経だけではなく頼朝にとっても益あることなのです。頼朝挙兵に集まってくる坂東武者はたくさんいても信じるに足る人物かどうかは別問題であり、義経が嫁を貰えば他の坂東武者に与える影響はとても大きなものになるのです。ただ、義経の心の中には静が……。「九郎、白拍子はいかんぞ」

 

義経が館に帰ってきても、何やら思いつめたような表情をしていて静は声をかけることすらできません。ふと廊下に立った時、片岡経春・為春兄弟が義経の嫁取りについてひそひそと会話しているのを聞いてしまいます。大きなショックを受けて居室に戻ると、義経が座って待っていました。「静……わしの妻になってくれ」 覚悟を持って座った静の想定よりもはるかに大きな、逆の言葉が義経から発せられました。しかし……とつぶやく静を義経は固く抱きしめるのですが、せめて翌朝まで待ってくれというのがやっとです。

翌朝早く、義経が静の居室に向かうと「おゆるしくださりませ しづか」という義経への手紙と、羽織が置かれていました。なぜだ……なぜわしを置いて逃げる……。まだ遠くへは行っていないはず、と義経は馬で追いかけ、静の名前を叫びながら探し続けます。静はそのすぐ近くの岩に隠れて義経をやり過ごします。静としては、義経の嫁取りの話を知ってしまった以上、邪魔をするわけにはいかなかったわけです。陰ながら義経の幸せを祈りつつ、義経から離れる決意を固めます。

 

熊野の弁慶生家に寄ってみますと、桃の前がただひとり暮らしていました。玉虫・小玉虫母子は都へ帰って不在です。桃の前が言うには、右京太夫が病に倒れたと聞いて、居ても立ってもいられない玉虫を見ていると、不憫に感じた桃の前が都へ帰るように勧め、飛んで帰っているわけです。桃の前は弁慶に、男の道があれば女の道もあり、妻はずっと夫の帰りを待ち続けているというわけではないと説くのです。

都への道中、状況をよく理解できていない小玉虫は、ととさま とずっと呼んでいて、玉虫はそれをなぐさめながらの旅路です。そしてそれを追いかける弁慶、ところどころで玉虫の名前を叫びながら俊足で追いかけていきます。──時が親子を隔つとも、時代が愛を分かつとも、泣くな弁慶明日がある!──


原作:富田 常雄
脚本:杉山 義法
テーマ音楽:芥川 也寸志
音楽:毛利 蔵人
タイトル文字:山田 恵諦
語り:山川 静夫 アナウンサー
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[出演]
中村 吉右衛門 (武蔵坊弁慶)

川野 太郎 (源 義経)
荻野目 慶子 (玉虫)
麻生 祐未 (静)
寺尾 聰 (金売り吉次)
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真野 あずさ (右京太夫)
ジョニー 大倉 (伊勢三郎)
東 恵美子 (北の方時子)
長岡 輝子 (桃の前)
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芦田 伸介 (平 清盛)
神崎 愛 (北条政子)
隆 大介 (平 知盛)
菅原 文太 (源 頼朝)
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制作:村上 慧
演出:松岡 孝治

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