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2022年2月 4日 (金)

プレイバック武蔵坊弁慶・(10)泣きぼくろ

激しい雨が降る日の夜、平 清盛の嫡子・平 重盛が亡くなります。42歳の若さでした。重盛の嫡男・維盛は泣きじゃくりますが、清盛は我が子の死にもいたって冷静で、平家には宗盛もいるし知盛もいると、平家の天下は全く揺るがないと笑います。しかし重盛の死は、これより6年後に訪れる平家滅亡への序曲でした。


鹿ケ谷の事件以来、弁慶は新宮十郎義盛とともに京に入り、平家の動静を探っていました。平泉の源 義経の元を出てからはや2年が経とうとしていました。道理が分かる重盛が亡くなったということは、ますます平家は図に乗るかもしれません。弁慶は、源氏の旗揚げには失敗は許されないと、じっくりと状況を見極めるつもりでいます。

 

奥州平泉の高館(義経の居館)では、再興を待ちわびる義経が酒にのまれて荒れています。雑仕女の妙はこれ以上の酒はいけないと止めるのですが、「もうよい。その方には頼まぬ!」と拗ねてしまいます。妙は命がけで義経に奉仕しているので、今日を限りにお暇を…と言うのですが、考えが足りなかった、だから暇をくれというのはやめてくれ、と妙に詫びます。そんな義経の元にも重盛の訃報が吉次によってもたらされ、義経は内心、いよいよ旗揚げの時がくるか、と覚悟を決めます。

 

福原・雪見御所──。清盛は知盛に、次男宗盛が天下を治める器にあるかを尋ねてみます。もともと知盛は清盛亡き後の世が心配で、清盛にそれも具申したこともあるのですが、当時の清盛は平家政権が盤石ゆえに知盛を叱責したのでした。しかし今は、確かに不安になってきたのも正直なところです。重盛がこんなに若くして亡くなるということだけが、清盛生涯の計算違いと言えそうです。

そんな中、突如として清盛の跡継ぎということになった宗盛は、維盛や資盛らを集めて“おもしろいものを見せて”くれます。おもしろいものとは1頭の馬でして、「叔父上、ひょっとして…名馬と噂に高い『木下(このした)』?」と資盛が気づきます。宗盛は得意顔で、源氏の冷や飯食い(三位入道 源 頼政の嫡男・仲綱)が見せようとしなかった馬を、宗盛が右大臣になると地位と権勢で強引にその馬を送らせたのだと笑います。仲綱からは木下を返してほしいと矢の催促ですが、宗盛は返そうとしないどころか、そんなに惜しいのなら名前を焼き付けてやると言って、馬の尻に『仲綱』と焼き印をいれようとしたとき、天地を揺るがす大地震が福原を襲います。

うろたえるでない、平家の世は盤石ぞ! と繰り返す清盛は、高倉天皇を廃して愛娘の徳子との子を帝の位につかせると言い出します。高倉天皇と徳子の子は皇太子ではありますが、まだ2歳の幼子でありまして、知盛は後白河法皇らが賛同するとは思えないわけです。しかし清盛には聞く耳がありませんで、反対者は捕らえて諸国に流罪とし、都を福原に移して皇太子を帝としてお迎えする、と狂気の沙汰は止まりません。

 

弁慶は十郎の仲介で、源氏でありながらただひとり御所への昇殿を許された頼政と対面します。十郎は、福原遷都など平家の横暴は目に余り、源氏が黙って耐え忍んだ20年間から立ち上がるのは今しかない、と旗揚げを打診します。畏き(かしこき)あたりの令旨をもらって天下に号令すれば、諸国に散らばる源氏が一斉に立ち上がるのは間違いないと。頼政は、平家追討の令旨をもらうとすれば以仁王しかいない、と声を絞り出します。以仁王とは後白河法皇の第二皇子であり、八条女院の養子にあたります。本来であれば高倉上皇より先に帝になるべき人だったのですが、我が子を帝の位につけたい平家の阻害に遭って帝にはなれなかったのです。

そこに、木下が単騎帰ってきたと仲綱から報告があります。しかし木下の尻には『仲綱』の焼き印があり、客があるたびに 仲綱を引き出せだの やれ仲綱に鞭を当てよなどと、宗盛は仲綱や頼政をなぶりものにしていたのです。頼政は宗盛への恨みを強く大きくします。

 

弁慶から事のあらましを聞いた八条女院は、世を束ねる右大臣宗盛が人の心を知らないというのもほどがある、と激怒します。そこで弁慶は、恨みを持つ頼政が信用できる人物なのかどうかを忌憚なく八条女院に尋ねるのですが、それは九郎の旗揚げの時期を慮って尋ねるのだろう、と弁慶の思惑は八条女院には手に取るように分かっていて、さすがの弁慶も頭が上がりません。頼政は平氏の世にあってひとり源氏の誇りを保ち続ける人物です。それを分かったうえで、頼政の本意がどこにあるのか分からないし、たかが馬のことで平家に反旗を翻すというのでは頼りないわけです。以仁王から平家追討の令旨をもらうと言っていても、それができることなのかどうなのか。八条女院は、以仁王の気持ちを確かめてみようと言ってくれました。八条女院のお墨付きは何とも心強く、仮にも以仁王の令旨が下ればその時こそ待ちに待った義経の旗揚げです。弁慶の気持ちは昂ります。

 

ちょうどそのころ、熊野の弁慶の生家を右京太夫が訪問していました。最近の都はいろいろと気ぜわしく、清盛の福原遷都にまで話が及ぶと、右京太夫は「もう宮仕えは疲れました」とため息交じりです。玉虫のように好きな人とどこか遠くで暮らしたいとも思ってしまいます。小松殿重盛が亡くなってからというもの、都では大風が吹き地震が起き、不吉なことが続いています。来たばかりだというのにもう帰ろうとする右京太夫は、何か言いたそうにしていましたが、この幸せを大切に、と玉虫に言って京に戻っていきます。

「それはもう一度、玉虫に都に戻ってきてほしかったのであろう」 熊野に戻った弁慶は、玉虫に話を聞いてつぶやきます。実は玉虫もそうではないだろうかと考えていて、このような混乱期に気の置けない女房もおらず、心細くておいたわしい、と涙ぐみます。実は玉虫に話があって戻ってきたという弁慶は座り直し、そろそろ平泉に戻らねばならないと打ち明けます。そして次にここに戻ってくるのは、今度ばかりは弁慶には見当がつきません。

「源氏と平氏が戦になるのでございまするかっ」と玉虫の顔色が変わり、弁慶はただ黙って頷きます。無論、戦を好むわけではありませんが、清盛の悪夢を覚まさせるものはもはや源氏の旗揚げしかないわけです。玉虫は、仕事のためであれば何年でも辛抱できるものの、愛すべき旦那とお世話になった元主君が敵味方に分かれることこそ最もつらいことなのであります。右京太夫の命にかかわることがあれば、弁慶は必ず守り通すと玉虫に約束してくれました。

 

八条女院からの知らせを待ちきれず、弁慶は3日後に京に戻りますが……。入道頼政の屋敷は炎に包まれていました。平家討伐の企てが発覚したのです。すきを見て屋敷に突入した弁慶は炎の中頼政を探し、息も絶え絶えの頼政を抱き起します。「喜べ武蔵坊……。以仁王の令旨が下されたぞ……新宮十郎が令旨を奉じてすでに関東へ飛んだ」 平家の者たちが以仁王の命を狙っていると言い残して頼政は落命しました。弁慶は急いで以仁王を探しますが、懸命の捜索もむなしく以仁王の行方は分かりませんでした。

 

弁慶が播磨の傀儡子衆のねぐらを訪ねると、ほくろが洞穴(ほらあな)に案内します。そこには以仁王の亡骸が横たわっていました。弁慶は以仁王から直垂の羽織を一枚はぐと、ほくろに手渡します。「ほくろ、頼む! これを着てくれ! 身代わりになってくれ!」 思い高ぶる平家に鉄槌を下し真っ当な世の中にするために、平家討伐の機運が高まっているこの時に、以仁王に今死なれては困るのです。義経が旗揚げをするためにも、平家追討の令旨が必要なのです。

ほくろは、弁慶と一緒に旅ができるから「やる! 身代わりでもなんでも」と二つ返事ですが、徳がひとり反対を唱えます。平家の者に見つかればほくろはなぶり殺されてしまう。それでも身代わりにというのなら自分はこの群れを抜ける。ふらっとやってきて好き勝手抜かして、そんな弁慶にみんなが迷惑している! と主張します。そうだろうな、とつぶやいた弁慶は、徳に謝ると黙ってねぐらを去っていきます。ほくろは、どうしても弁慶の力になりたいわけで、徳にどれだけ止められても「俺の好きなようにする…惚れた男のために死ぬるなら本望だ! 誰の指図も受けぬ!」と以仁王の亡骸から衣類をはぎ取り出します。

 

以仁王が存命でなければ、平家の連中は“令旨はニセモノだ”と触れ回るでしょう。諸国の源氏が一斉に決起しなければ、義経の旗揚げも意味がなくなってしまいます。弁慶がこれからについて考えていますと、直衣姿になったほくろと直垂姿の徳です。弁慶はほくろと特に感謝しながら、涙ぐみます。


原作:富田 常雄
脚本:杉山 義法
テーマ音楽:芥川 也寸志
音楽:毛利 蔵人
タイトル文字:山田 恵諦
語り:山川 静夫 アナウンサー
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[出演]
中村 吉右衛門 (武蔵坊弁慶)

川野 太郎 (源 義経)
荻野目 慶子 (玉虫)
加藤 茶 (徳)
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真野 あずさ (右京太夫)
ジョニー 大倉 (伊勢三郎)
堤 大二郎 (平 資盛)
新 克利 (新宮十郎)
高品 格 (太平)
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隆 大介 (平 知盛)
寺尾 聰 (金売り吉次)
光本 幸子 (八条女院)
芦田 伸介 (平 清盛)
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制作:村上 慧
演出:黛 りんたろう

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