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2022年2月13日 (日)

大河ドラマ鎌倉殿の13人・(06)悪い知らせ ~洞窟抜けて海越えて 源氏再起動!~

「私は信じておりました」 源 頼朝が挙兵に及んだという知らせは比企能員のところにも届き、頼朝の乳母だった比企尼は源氏再興のために頼朝が必ず立つと信じていたようです。

能員の妻・道は能員に頼朝に助太刀するのか問い詰めますが、頼朝が坂東に下って20年、その間ずっと比企尼が金銭の援助をしていたほどなのですぐに支度をしたほうがよさそうです。しかし道は大反対です。味方した後で平家に滅ぼされた場合、比企家も巻き添えを食う危険性が大きすぎます。

決めかねている能員は母・比企尼に、しばらく様子を見て見るという伺いを立ててみますが、「早く戦の支度をなさい!」という鶴の一声で、戦じゃ! と下知するのですが、その直後に戦の続報が舞い込みます。石橋山の合戦で源氏方は大敗、頼朝は行方知れず──。

 

長雨の中、山内首藤経俊に促されて茂みの奥を捜索する梶原景時は、洞穴の中に敵将の頼朝がいるのを発見します。しばらくにらみ合いが続くのですが、景時の視線が上の方に移った時、反対側から偵察に来た兵たちが「なんだこの穴は?」と覗き込もうとしていました。ちょうど落雷があり、慌てて駆け戻る兵たちですが、景時も誰もいなかった風を装って引き返していきます。「梶原景時……覚えておこう」

──頼朝の軍勢は壊滅した。援軍を求めて甲斐へ向かう義時。兄、宗時がすでにこの世にいないことを、彼はまだ知らない──


山梨に勢力を保っていた甲斐源氏、信義はその長(おさ)でした。彼の陣に到着した北条時政と義時はさっそく通されるのですが、源氏の棟梁は頼朝ではなくこの自分であると、頼朝が認めるのであれば加勢を約束するという条件を出してきました。時政は、頼朝を説得するつもりで「かしこまりました」と頭を下げるのですが、誰がどう考えたって頼朝を納得させることはできるはずもありません。

信義は、頼朝はともかくとして、北条は助けてやってもいいぞと甘い言葉で時政を見据えます。時政は頼朝の陣を離れるとき、大庭に寝返って頼朝の首を差し出すという考えをほんの少しだけ出した人間でもあるので、「わしの家人になれ」という言葉に歓喜して義時にたしなめられるのですが、手土産として……頼朝の手元にあるらしい後白河法皇の院宣を渡せ、と言ってきます。本来であれば源氏の棟梁たる信義自身が持つべきものである、と主張しているわけです。

義時は時政の言動にほとほと呆れかえっていますが、時政は、妻となり大姫も授かった娘の政子には申し訳がないが、先の見えた頼朝から手を切るにはいい機会だと本気で考えているようです。しかし他に北条がとるべき道があるかと迫られて、義時は何も答えられませんでした。

 

洞穴の中で読経をして心を穏やかに落ち着かせている頼朝ですが、土肥実平は真横で、自害の作法についてやんややんやとうるさくつきまといます。後で聞く! と実平を一喝し、物見に出ていた安達盛長からの報告を聞きます。周辺に敵兵はいないものの油断はできないという盛長は、北西に25里(=約100km)進んだ箱根権現に身を移すことを進言。あまりの遠さにうんざりする頼朝を、いざいざと促す盛長です。

 

信義の陣から頼朝のところに戻る途中の時政と義時は敵兵の攻撃を受けますが、やっとのことですべてを倒し切ります。どっかと腰かけた時政は心が折れたと院宣を取りに行くことを諦め、伊豆山権現に向かって一族ひっそりと暮らそうや、などと言い出します。しかし義時は頼朝を裏切る気にはなれません。どうせもう殺されておるわ、と鼻で笑う時政に、そろそろ宗時が戻ってくるはずだし、兄がいる限り道は開けると時政を鼓舞します。

 

伊豆山権現に身を寄せる北条政子、実衣、りくの3人は、寺の規律を守りながらどうにか暮らしていました。りくにどうして頼朝と一緒になったのかを聞かれた政子は、いつか必ず何かを成し遂げる人だとピーンときたからだそうです。一方で、政子や実衣の実母が時政に文句を言うところは見たことがないほどにおとなしくて優しくて、盾突くこともないし言われるままで、いわばりくとは正反対だったようです。

とはいえ、りくと一緒になった時政はどこか楽しそうに過ごしているところを見ると、もしかしたら実母にもいろいろ言ってほしかったのかもしれない、と考えたりもします。「戦が終わったら、もっともっとたきつけてやります!」 ウフフと笑い合う3人です。

 

時政と義時は戻る途中で三浦平六義村たちとばったり遭遇します。頼朝を助けに来たという義村に頼もしさを感じながら、石橋山の合戦でどうして川を渡ってきてくれなかったのだと恨み言を言う義時ですが、三浦は三浦で大変だったそうです。石橋山惨敗の報を受けて引き上げるとき、鎌倉由比ヶ浜で三浦の前に立ちはだかったのが頼朝から裏切った畠山次郎重忠だったのです。

坂東武者同士が戦っても無益、会わなかったことにしましょう、と来た道を引き返す三浦軍と畠山軍でしたが、草むらに隠れていた和田小太郎義盛が義村の「包囲網を解け」という合図を早合点して畠山軍に矢を降らす攻撃を仕掛けたものだから、だまし討ちのような形になってしまい、めちゃめちゃになってしまいました。

ともかく、味方である安房の安西景益(あんざいのかげます)のところで立て直す、と立ち上がった義村に、頼朝を連れてくるからしばらく待っていてくれと返す義時です。

 

伊豆山権現の3人のところに八重がやってきました。石橋山の合戦での負け戦の後に行方知れずとなった頼朝の身を案ずる一同にお見舞いを申し上げた八重は、頼朝は生きていると断言するのです。「昨日の明け方、夢枕に立たれたのです」と言う八重は、生きているから案ずることはないと言ったのだそうです。

夢枕、という言葉が出てきて確実にうろたえている政子は、ゆうべ私のところにも来られました、と負けず嫌いを出してしまいます。八重が心穏やかな表情で帰った後、なんであの女の夢枕に立つの? 腹が立つ! とお怒りモードの政子です。「うちには来てません! だって悔しいじゃないですか!!」

 

政子たちのもとを辞する時、大姫のかわいらしさに目を細める八重ですが、5年前に父・伊東祐親から「千鶴丸は出家させて伊豆山権現に移した」との説明を受けていたのを思い出し、文陽坊覚淵に確認するのですが、何かの間違いでは、と覚淵は相手にしません。しかし食い下がる八重を放ってはおけず、覚淵は草むらの中の墓に案内します。「ここへ来た時にはすでに骸(むくろ)になっておりました」

祐親のたっての願いによりそれは立派な墓石で、しかし八重は覚淵に聞いたことが初めてのことでなかなか現実を受け入れることができません。母は、子の墓の前で泣き崩れます。

 

小四郎義時がようやく洞穴に戻って来ました。実平によれば、25里離れた箱根へ向かったものの、大庭勢がうようよしていてたまらず引き返してきたのだそうです。武田の援軍のことは忘れてくださいと伝えた後、岩浦海岸に三浦の船を待たせていることを報告します。その岩浦海岸は東に25里と聞いて、頼朝の全身から力が抜けていきます。

義時は宗時の姿がないことを気にして、実平に所在を聞いてみますが、まだ戻ってきてはいないそうです。戻っていないことにも驚きですが、戻らないことを大して気にしていない彼らの態度にも驚く義時です。

 

その宗時の首は、大庭景親の館にありました。首実検を終え、景親は大勝利を確信します。頼朝の首がないことだけが心残りですが、頼朝を追い詰めておきながら見逃した景時は、複雑な表情を浮かべます。

それにしても、景親がどうしても許せないのは三浦です。ぎりぎりまで味方に思わせておいて、最後の最後に裏切っていきました。景親は次郎重忠に、三浦の本拠地である衣笠の館を攻撃せよと命じます。ただ、重忠は小坪で三浦の奸計(だまし討ち)にまんまとはまっていて、反対の声も上がりますが、だからこそ命じるのだと景親。「次は遮二無二、戦ってくれるはず。のう次郎」 喜んで、と重忠は精いっぱいの笑顔を見せます。

 

頼朝と義時が戻ってくるのを海岸で待つ時政と義村ですが、そこに伊東軍が40~50人で奇襲を仕掛けてきます。まともに戦っても勝てないと時政はすたこらさっさと逃げ出し、矢が無数に飛んでくる中、義村もやむを得ず舟を出して逃げるしかありません。

夕暮れ、ようやく頼朝一行がたどり着くのですが、舟はすでに出ていてありません。頼朝も盛長も愕然とした様子ですが、実平は少し戻って真鶴の岬から土肥の舟に乗りましょうと提案。どうするのだ! どうして最初からそこに連れていかぬのだ! などと言いたい放題の頼朝に、足元に転がる弓を手に取る義時は思うところがありながら、一切の感情を抑えて「急ぎましょう」と頼朝を励まします。

 

祐親は、岩浦海岸から舟で逃げたものがいると聞き、頼朝がまだ生きているのではないかと息子の祐清に調べさせます。今度こそは頼朝の命を奪うつもりでいるのです。

 

土肥の舟でどうにか海を渡る頼朝たちはそのまま三浦沖を通過し、東京湾も横断して房総半島へ。ようやく陸に上がった頼朝には、もう力という力は残っておらず、砂浜に突っ伏して上陸を喜びます。

安西景益の館に到着した一行は、時政の「ご無事でなにより」という何ともしらじらしい出迎えを受けつつ、景益の恩には感謝しながらしばらく休養することにします。ちなみに三浦義澄と和田小太郎義盛は衣笠で平家方と戦の真っ最中です。

そして心配していた宗時の姿は、この館にもありません。時政は館で食事をとっている面々に、三郎(宗時)を見た者はいないか尋ねてみますが、誰ひとりとして見たものはおらず。わいわいと盛り上がっていた館は、一瞬のうちに静まり返るのですが、景益が酒を勧めて回り、もとの活気を取り戻します。

 

衣笠で戦っていた三浦勢がやってきました。衣笠の館が落ち、義澄の父・三浦大介義明は時を稼いでいる間に義澄たちを安房へ落ち延びさせ、一人で城を守って戦死します。その怒りは、攻め手の畠山重忠のみならず大庭景親にも伊東祐親にも、そしてまだ戦を続けるつもりの頼朝にも向かいます。これからは頼朝がどうのということではなく、坂東武者が決める話だ、とみないきり立ちます。

「はっきり言うが、この戦、勝ち目はないぜ」と義村は義時に言います。頼朝の身を差し出せば大庭も伊東も許してくれるのでは? との義村の考えに、できるはずないと自分を納得させるように義時はつぶやきます。ただ、義村は頼朝と心中するつもりはさらさらありません。

直後、義時は仁田忠常とばったり再会します。伊豆山権現に出向いてお味方大敗北の報を伝えたあと、北条館に戻った忠常ですが、どこもかしこも伊東の兵でごった返しており、身を隠そうと館に入ると観音のご本尊が残っていたので持ってきた、と義時に見せます。それはまぎれもなく、兄・宗時が北条館に取りに戻ったご本尊です。

 

時政が心ここにあらずという感じで海を見つめています。宗時がまだ戻ってきていないことを心配する義澄に、彼の父親の死を弔う時政。立場は違っても、仲間意識が強く、励まし励まされの関係です。そこに現れた義時は、忠常が届けてくれたご本尊を時政に見せます。「兄上はこれを取りに館に戻られました。これが残っていたということは……」

三郎のばか! と時政は肩を震わせ、義時は涙を流します。時政は、自分より先に死ぬなと義時を諭します。これからは義時が北条を引っ張っていくんだ、宗時がやりかけていたことを義時が引き継ぐんだ──。

「俺はこの坂東を、俺たちだけのものにしたいんだ。坂東武者の世を作る、そしてそのてっぺんに北条が立つ!」 生前、宗時が言っていたこの言葉を思い出しています。

 

坂東武者みんなが広間で待っているというのに、頼朝の腰は重いようです。戦はもうやらぬ、どうせまた負ける、とつぶやく頼朝は、この逃避行で相当辛い目に遭い、もうたくさんだという思いが頂点に達しているのかもしれません。風向きが変わり、こんな戦いでも死ななかった頼朝が天に守られているという現実は、どんな大義名分よりも人の心をつかむと義時は説得します。

そううまくはいかぬ! と言う頼朝ですが、このままでは石橋山の合戦で命を落とした者たちが浮かばれません。平家の横暴に耐えてきた者たちの不満がひとつのかたまりになろうとしている。頼朝がいなくても坂東武者の手で戦は続け、平家一味を坂東から追い出す。少なくとも義時は、まだ諦めてはいないのです。

戯言を……と鼻で笑う頼朝は、戦を率いるのは自分だ! とやる気になります。一礼して先に広間へ向かう義時に、宗時のことはすまなかった、わしがあんなことを頼んだばかりに、と頼朝は詫びます。義時は「戦をするために生まれてきた男です。どこかにかくまわれているのかもしれません」と笑顔を見せます。

 

形勢は、大庭景親軍は甲斐の武田信義と対しつつ自軍の動きを窺っています。頼朝軍が再起するにあたり、房総半島の豪族、千葉常胤と上総介広常に書状を送っているところです。和田義盛は、この先において一番の働きをするから大願成就の暁には侍大将にと頭を下げ、手柄を立てる前に褒美をねだるやつがあるか! とみなで大笑いです。「ここに約束する。源氏の世が来たらおぬしを侍の別当としよう」

戦はまだ始まったばかりじゃ! とみなを鼓舞する頼朝。ふと目線を上げると、後白河法皇がこちらを見て、にこにこ顔です。

 

「平家の犬どもめ、口ほどにもない」と戦いを終えた上総介広常は鼻で笑いますが、そこに頼朝からの書状が届けられます。広常はその書状を手にすると、中を確認することもなくくしゃくしゃに握りつぶして捨てます。この上総介広常こそ、頼朝の運命はこの男の肩にかかっていると言っても過言ではない人物です。


作:三谷 幸喜
音楽:エバン・コール
語り:長澤 まさみ
題字:佐藤 亜沙美
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小栗 旬 (北条義時)
新垣 結衣 (八重)
小池 栄子 (政子)
中川 大志 (畠山重忠)
片岡 愛之助 (北条宗時(回想))
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山本 耕史 (三浦義村)
横田 栄司 (和田義盛)
八嶋 智人 (武田信義)
堀内 敬子 (道)
阿南 健治 (土肥実平)
佐藤 B作 (三浦義澄)
中村 獅童 (梶原景時)
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佐藤 浩市 (上総広常)
國村 隼 (大庭景親)
佐藤 二朗 (比企能員)
草笛 光子 (比企尼)

浅野 和之 (伊東祐親)
坂東 彌十郎 (北条時政)
宮沢 りえ (りく)

大泉 洋 (源 頼朝)
西田 敏行 (後白河法皇)
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制作統括:清水 拓哉・尾崎 裕和
プロデューサー:大越 大士・橋本 万葉
演出:保坂 慶太

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