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2022年2月11日 (金)

プレイバック武蔵坊弁慶・(12)黄瀬川の対面

──平家追討の令旨を受けた頼朝は、手始めに伊豆にある平家の目代・山木兼隆を襲撃した──

「けっ! 頼朝めに先を越されたわ」と床に大の字になる木曽義仲。巴御前が酒を持ってきながら、先を越されたといっても頼朝は合戦で散々な目に遭って命からがら小舟で逃げたという話をして義仲を励ましています。新宮十郎行家も、令旨を頼朝に届けたときにはのらりくらりと煮え切らない様子だったのに、今回のような大博打を打つとは予想だにできませんでした。義仲なら、まず北陸道を制圧して甲斐・信濃・越後の大軍を引き連れて都に攻め上ることを考えるそうです。頼朝ごときに何ができる、と酒をあおりながらバカにする義仲ですが、十郎が伊勢や摂津の隠れ源氏をかき集めると聞くと、十郎を見据えます。「急ごうぜ…頼朝が息を吹き返さぬうちにの」

義仲が頼朝に強烈なライバル意識を持つのには理由がありました。
──義仲の父・義賢は 頼朝や義経の父・義朝の弟ですが、25年前の源氏の内紛で義賢は、頼朝の兄の悪源太義平によって殺害されたのです。頼朝は義仲の父の仇の弟であり、どちらが源氏の棟梁になってもおかしくはない関係だったのです──。

そして今、奥州平泉から関東へまっしぐら、まだ見ぬ兄・頼朝を訪ねて馬を飛ばす義経主従の姿がありました。

 

弁慶の故郷、熊野・太平の小屋では、ケガを負ったほくろが横になっています。太平や徳の看病の甲斐もあり、少しずつ快方に向かっているようです。ほくろは徳のことをずっと邪険に扱ってきたのに、徳は恨み言ひとつ言わずずっとほくろに尽くしてくれて、徳は優しいな、とつぶやきます。「徳、俺たち夫婦になろうか。徳がそれでいいのなら俺を女房にしてくれ」

 

京・清盛の館──。平家方が平 維盛を総大将とする源氏追討軍を駿河へ派遣したのは、その年の10月。軍勢の一員として駿河へ向かう予定の平 資盛は、右京太夫への恋歌を詠もうとあれこれ考えてはいますが、なかなかできません。右京太夫は「御油断なきよう」と言葉を送りますが、資盛にせがまれて出陣のはなむけの歌を詠みます。
 吹く風も 枝にのどけき 御代なれば 散らぬもみぢの 色をこそ見れ
年若い資盛の凛々しさをもみじに例えて、いまだ平家の御代を信じて疑わないふたりでした。

 

弁慶のためにほくろが高倉宮以仁王の身代わりを務め、ケガを負ったことは玉虫の耳にも届いていて、玉虫は申し訳なくてほくろに頭が上がりません。ほくろは弁慶が止めたにもかかわらず自分が身代わりをやりたいと言い出したこと、もしあの場に玉虫がいたならば玉虫が身代わりを務めていただろうから、自分は身代わりの身代わりをやったに過ぎないことを伝え、弁慶を許してやってくれと玉虫に言います。女なら誰だって惚れた男の役に立ちたいと思うものだと聞いて、玉虫は一瞬だけ表情が真顔になりますが、俺もこれからは徳に命を懸ける、と打ち明けたほくろに、玉虫はこれまでほくろに嫉妬していたと謝ります。

 

義経一行は下河辺荘(現在の茨城あたり)まで来ていました。常陸坊海尊はこの日のために、このあたりを支配する下河辺行平から船乗りの兄弟(片岡太郎経春と八郎為春)をもらいうけていまして、今回連れてきました。船のかじ取りや水練など海に関すること、そして船乗りなので天気予測も得意というこの兄弟を、義経は供として連れていくことにします。

 

──源平の合戦は、富士川の対陣をもって初戦とするが、この時はほとんど戦らしい戦は行われていない。互いに急流を押し渡って戦いを仕掛けるのは不利と見て、両陣営のにらみ合いはすでに六夜に及ぼうとしていた──。
頼朝軍に参陣していた北条時政や梶原景時は、そろそろこちらから仕掛けましょうと頼朝に進言しますが、まだじゃ、と言うばかりです。敵への内通者が出る前に動かなければ、と焦っているようにも見えますが、頼朝は相手が腰を上げるまでは動けないと考えているのです。

 

維盛の陣では宴会が行われ、頼朝は我々に恐れをなして戦う気配を見せぬなどとあざ笑っていますが、向こうも川を渡っての戦の不利を十分承知しているからだ、と斎藤実盛は忠告します。資盛も、深酒する維盛をとがめますが、戦の中にも風流を愛でるゆとりを失わぬのが平氏の武士のたしなみと言い出し、さらなる酒と女たちを所望します。そんな維盛に、資盛や実盛は呆れて何も言わずに下がってきました。

暗闇の中、弁慶は経春と為春と船に乗って富士川を渡り、平家方の物見に出ます。

風流を愛でると言いながら、このような田舎暮らしは維盛には飽きておりまして、イライラもかなり募っております。家臣たちは、維盛のイライラを少しでも収めようと白拍子を捕まえた話を持ち出し、その白拍子はさっそく維盛に呼びだされます。連れてこられた静は、指一本でも触れたら自害すると脅すのですが、もし死んだら病の床にいる武蔵国の父親には会えなくなると逆に迫られてしまいます。

そこに資盛が駆け込み、甲斐源氏の武田信義が挙兵したとの知らせを伝えるのですが、維盛は、その知らせは敵のかく乱だと信じようとしません。それ以前に、神聖な陣中でありながら白拍子を襲っている維盛にもはや怒り心頭です。

 

維盛の陣から白拍子とその母が逃げ出してきましたが、陣の外で見張りの兵に囲まれてしまいます。母が「静…静!」と叫んでいるのを聞き、義経と懇意の静御前だと思い出した弁慶は、見張りの兵を瞬く間に倒し、「一条大蔵卿のお屋敷でお会いした武蔵坊弁慶でござるよ! ささこちらへ…」とふたりを安全な場所まで誘導します。

弁慶は義経がこちらに向かっていることを伝えると静は義経と会いたがりますが、実は父親が明日をも知れぬ命とかで、とにかく急いで戻らなければなりません。義経はこれから頼朝がいる鎌倉に行き その周辺に住むことになると思うと伝え、今日は無理でもまたいつでも会えるからと静に安堵させ、まずは急いで静母子を送る弁慶です。

川を渡ろうと移動して船に乗ろうとしていると、付近の水鳥がざわざわと音を立てて一斉に飛び立ちます。弁慶たちもビクッと驚きますが、過剰に反応したのは維盛軍の見張り兵たちです。「敵兵だ! 甲斐の武田が攻めてくるぞ!」とみんなが騒ぎ出し、眠っていた維盛もムクッと起き上がります。落ち着け! と資盛は兵たちに声を掛けていきますが、すでに冷静さをなくした自軍の兵はみんな逃亡して資盛はなすすべもありません。

 

対岸の頼朝は、川を渡ってくるでもなく逃亡を始めた敵兵を、ただ唖然と眺めています。弁慶は、平家が仕掛けたであろう鳴子をガチャガチャと大げさに鳴らし続け、もはやもぬけの殻となった平家の陣に向かってたいまつを投げ込み、火をかけます。──歴史は時として信じがたいエピソードを後世に残す。治承4(1180)年10月20日、平家の軍勢が水鳥の羽音に怯えて敗走するという、歴史上の大珍事がこれであった──

頼朝の居場所に近づくにつれて、義経の不安はとても大きなものになりつつあります。兄は自分のことを知ってくれているのだろうか? 会いに来た弟をよく来たと喜んでくれるだろうか? 自分を弟と呼んでくれるだろうか? 「これほどまでに慕うておられる者を、なんで喜ばぬ兄がござろうや」と弁慶は柔和な表情で義経に言い、頼朝の陣地まで急ぐことにします。

 

平家の軍勢としてのもろさがこれほどであるなら、もっと早く兵を挙げればよかったという声もありますが、頼朝は今のうちに坂東の地盤を固めるために、関東武者の本領を安堵していくことに力を注ぎたいところです。そんなことを話しながら、二十歳前後の年若き大将が来たと報告を受け、頼朝は即座に「九郎であろう」と会うことにします。

頼朝は義経を近くに呼び寄せます。「九郎…義経にござります」「兄の頼朝じゃ」 そのひとことで、散り散りになった一族がこうして再結集できる喜びを義経はひしひしと感じていました。頼朝が旗揚げしたという知らせを聞き、居てもたってもいられず藤原秀衡の許しを得て駆けつけてきたのです。力を貸してほしいと言う頼朝に、もとよりそのつもり、と答えます。「兄の仰せとあらばなんでこの身を厭いましょうや」

 

大喜びで頼朝の本陣を離れた義経は、前回の戦(石橋山の合戦)で頼朝を裏切り今回捕らえた大庭景親の処刑の現場に遭遇します。このような合戦が終わらない限りはああいう処刑は続くでしょう、と弁慶は言い、手を合わせます。


原作:富田 常雄
脚本:杉山 義法
テーマ音楽:芥川 也寸志
音楽:毛利 蔵人
タイトル文字:山田 恵諦
語り:山川 静夫 アナウンサー
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[出演]
中村 吉右衛門 (武蔵坊弁慶)

川野 太郎 (源 義経)
荻野目 慶子 (玉虫)
加藤 茶 (徳)
麻生 祐未 (静)
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真野 あずさ (右京太夫)
堤 大二郎 (平 資盛)
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ジョニー 大倉 (伊勢三郎)
新 克利 (新宮十郎)
高品 格 (太平)
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佐藤 浩市 (木曽義仲)
大地 真央 (巴 御前)
菅原 文太 (源 頼朝)
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制作:村上 慧
演出:外園 悠治

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