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2022年3月 6日 (日)

大河ドラマ鎌倉殿の13人・(09)決戦前夜 ~頼朝義経が涙の再会 富士川の戦い~

源 頼朝から憎き伊東祐親を討ち取れとの命が下り、和田義盛と畠山重忠が伊東館に向かっています。

鯉名から舟で逃亡を図ったところを捕縛した伊東祐清は、祐親なら八重の命も奪うはずと見当をつけて、八重も伊東館にいるから父親ともども助け出してほしいと北条義時に求めます。義時は三浦義村とともに伊東館に向かいますが、途中、和田・畠山軍を追越すために山の中を迂回して進みます。

伊東館で写経に勤しむ八重ですが、背後に座る夫の江間次郎は祐親からの密命を受けていて、そっと刀を抜きます。

──大軍となって鎌倉に入った頼朝。反乱鎮圧に失敗した伊東、大庭はなす術(すべ)もなかった。都からは追討軍が迫って来ている──

伊東館で援軍を待つ祐親のところに、軍勢を追越して先回りした義時と義村。駆け付けたのが孫のふたりであって、祐親も少しホッとした表情を見せますが、大庭勢は散り散りになり祐清も捕まって援軍は来ないことを伝えられると、祐親は「はなから当てにしておらん」と強がります。そこに和田・畠山軍がたどり着き、館の周りを囲み始めます。

大軍が攻めてきたとあって次郎はおろおろしていますが、意を決して刀を抜き八重の居室に踏み込みます。しかしギッと睨まれ、またも躊躇して刀をその場に落としてしまいます。俺にはあなたを殺せない、と泣き出す次郎は八重を裏から逃がそうとするのですが、善児は刀を拾い、無表情のままその刀で次郎を突き刺します。「旦那さまから固く言いつけられとるもんで、悪う思わんでください」と、さらに八重に向かいます。館の中を必死で逃げる八重、声もなく幽霊のように追ってくる善児。そこに偶然義村が現れて斬り合いになりますが、手傷を負わせた程度で惜しくも逃げられてしまいます。

頼朝の元で生き恥をさらすわけにはいかない、と義時に向かう祐親ですが、難を逃れた八重が祐親の前に駆け付けます。生きて千鶴の菩提を弔っていただく……親子の縁を切った“元”娘からの必死の願いにも耳を傾けず、義時に対峙する祐親です。

首を取りに来た和田・畠山軍を少しでも防いで説得の時間を確保させようと祐親の部屋から出てきた義村。そこをどけ! と臨戦態勢の和田義盛を無視して扉を閉めた義村は、「あんなじいさんでも、俺の身内なんでね」とニヤリとします。

説得どころか斬り合いに発展してしまった祐親と義時ですが、義時が払った刀が祐親の手に当たり負傷してしまいます。やっぱりじいさまは恐ろしいと身に染みていたのか義時は慌てて謝罪するのですが、祐親はその場にへなへなと座り込み、殺せ! とわめき散らします。八重を頼朝には近づけないことを約束し、八重も戻る気はないとハッキリ断言したので、祐親の反抗心は薄らいでいきます。

 

生かしておくわけにはいかぬと厳命する頼朝に、慈悲を求め頭を下げ続ける義時です。北条政子は自分たちが子どものころの祐親の思い出話を楽しげに頼朝に語って聞かせます。それは義時も同じで、姉弟でフフッと笑い合うのですが、ひとり取り残された頼朝は不満そうです。「だから……何の話をしておるのだ」

鎌倉御所の庭先で捕縛されている祐親、その前に現れた頼朝は、良き孫たちに恵まれたと皮肉を言います。命は取らない代わりに、身柄は三浦に預けると沙汰します。八重も祐親と一緒に三浦に行くことになりますが、あらかじめ政子の許可は得ていて、抜かりはありません。しかし八重は、侍女として御所に置いていただきたいと言い出します。下働きの立場として頼朝を支え、大願成就を見届けたいのだそうです。

やめておきませんか、と義時はやんわり申し出を断りますが、厚かましいにもほどがあるわ! と政子が激怒するあたり、人のいい義時は結局は断り切れなくなって政子に話を通したんだと思われます。なんとかして八重の気持ちをかなえてやりたい義時と、絶対にイヤな政子。そこに実衣が混じってきました。「近くに置いておいたほうがむしろ安心でしょ?」

結局、頼朝に会うことはないものとして、八重には厨(くりや=厨房)の仕事を頼むことにしました。

 

治承4(1180)年10月13日、平 維盛を総大将とする平家の頼朝追討軍が東海道を進んでいきます。鎌倉御所の頼朝の元には、義時による追討軍の報告がなされます。駿河国入りし、総勢5万とも7万ともいわれると聞いて、甲斐武田の未着を心配しています。この戦は、甲斐武田の援軍がなければ勝てないと頼朝は踏んでいるのです。

そして夕方、武田信義を連れ出して北条時政が御所に戻ってきました。ところが信義は鎌倉御所には来ずそのまま駿河へ向かい、黄瀬川のあたりに陣を敷くとのことです。そこで頼朝を待つそうですが、源氏の棟梁である頼朝に出向けと言うのはあべこべすぎて、頼朝は声を荒げます。「舅でなければな、とっくに放り出しておるわ! 政子をありがたいと思え!」

義時が見るに、時政は戦場では腕を振るうのですが談判が苦手ときております。頼朝は自分と坂東武者たちのかすがいになれるのは時政しかいないと期待している分、しっかりしてもらいたいのです。いささかきつく言いすぎたと反省はするものの、決して間違ったことを言ったつもりはありません。

北条館に戻った時政を、りくや政子、実衣が出迎え、義時とともに宗時の菩提を弔います。これでみんなが揃ったので、またゆっくり過ごせるとりくは微笑みますが、平家の本軍が迫っているので明日には黄瀬川に出陣する予定です。いよいよ正念場ですと言う義時に、それぞれが激励の言葉を送ります。

 

10月16日、頼朝は武田の軍勢と合流するために黄瀬川へ出陣します。

鎌倉御所では政子と実衣が観音菩薩に手を合わせて祈っていますが、そこに九郎が到着したと仁田忠常が伝えに来ます。話を聞いた全成は、義経は奥州にいるのだから恐らくニセモノ、と追い返すように言います。「いいから兄上に会わせてくれ!」と聞かぬ義経に、忠常は頼朝が黄瀬川に向かったことを伝えると、ニンマリして黄瀬川へ向けて駆けだします。弁慶たちも慌てて後を追いかけ……。

 

10月20日、平 維盛率いる追討軍は富士川の西岸に到着。一方、そこから少し離れた黄瀬川で源氏の両雄──頼朝と信義──が対面します。

「兵衛佐どのが我が武田に参陣くださったぞ!」と頼朝を出迎える信義に、頼朝は棟梁たる体面を保とうと「富士川に向かうついでに立ち寄ったまで」とさらに大声で返します。両雄の対面は、どちらが主導権を握るかのつばぜり合いのような印象です。一方、維盛は戦のことは何も知らないから勝機は見えたと語り出す上総広常は、総大将は「俺がやってやるよ」と義時に根回しする広常です。

戦闘開始は明後日と決まり、頼朝が信義と酒を飲み交わしていると、その話は坂東武者たちの間に瞬く間に広がります。戦うのは自分たちだというのに頼朝は酒を飲み交わしもしてくれない、陣立てについて一切相談もない、と和田義盛は不満顔です。戦とはそういうものと畠山重忠はあっさりしたもので、義盛の反感を買いますが、その重忠でさえ「ないがしろにされるのはいただけませんね」と笑います。

時政は、三浦義澄にせっつかれて調整役として場に向かわされます。ところが時政がおそるおそる二人の間に割って入ると、頼朝にも信義にも酒を勧められてしこたま飲まされます。時政は、二人に取り込まれてどうするんだ! と義澄はじめ坂東武者たちの批判の的にたちまちなってしまっています。頼朝も時政も、安達盛長や義時に支えられながらようやく自軍に戻っていく有様です。

 

その日の深夜、富士川の平家の陣近くに小舟を浮かべる兵士たちの姿がありました。信義軍が頼朝を出し抜いて富士川へ出陣してしまったのです。功を焦る信義と行動を共にすれば混乱するだけだと、頼朝は夜が明けるまで待つことにします。

信義はこれから夜討ちをかけて武田の手で追討軍を追い払うつもりです。夜討ちで勝てる相手ではないと義時は中止を求めますが、頼朝軍が到着したことで維盛軍はしおしおになっていて、しかも彼らが当てにしていた駿河の目代も討ち取っているので、勝ちしか見えていないのです。「都でわしの名が轟くであろうなあ」と高笑いする信義をキッと睨みつける義時です。

 

武田の陣中から平家軍の様子をうかがう義時ですが、どこからか小声が聞こえてきました。見れば義澄と時政が偵察に来ていました。頼朝と坂東武者が力を合わせなければ戦には勝てないとつぶやく義澄に、時政は義澄との幼いころを思い出していました。「もう少しちゃんとしてくれ、己が何をすべきか考えろ」と幼馴染に説教される情けない時政です。

義時は、敵に見つかる前に戻りましょうと義澄と時政に促しますが、時政は動こうとしません。「オレの頬をぶん殴ってくれ」と言い出し困惑するふたりですが、恨みっこなしで義澄は時政を平手打ち。すると時政は思わず義澄を押し倒してしまい、「バカヤロー!」の叫び声とともに川にバシャンと落ちてしまいます。

その音で、辺りの水辺で羽を休めていた無数の水鳥たちが一斉に羽ばたき、数万羽の羽音が夜空に響き渡ります。見えない敵に怯えだした維盛軍は大混乱に陥り(もちろん夜討ちを進めていた武田軍も混乱しているのですが)、多数の兵士たちが陣を離れ落ち延びていきます。維盛は、その混乱状況を成すすべなく見ているしかありませんでした。

 

翌朝、頼朝軍も何が起こったのかと現状把握に懸命です。武田が追い打ちの準備に入っていることを知ると、頼朝は義時に下知します。「よし! 我らもすぐに打って出る。今こそ攻め時、武田に先を越されるな!」

 

ところが、坂東武者たちの足並みがそろいません。頼朝は追い打ちをかけた後、そのまま京まで攻め込むつもりですが、追い返したら終わりと考えていた坂東武者たちは撤兵を主張するのです。一番の要因は兵糧で、あと10日で尽きるとか融通してもらっているなど事情はバラバラですが、飢饉の後の出兵が影響しています。一致しているのは、彼らは自分の所領が守ることが第一、平家を倒すのは二の次であるわけです。

戦というものは難しい、時の勢いというものがあるはずだ、などと義時は義村に愚痴を言うのですが、幼馴染の義村はそう優しくはありません。「だったら何か考えろよ、みんなにいい顔して安請け合いしているだけじゃねぇか」

義時が考えたのは、今残っている兵糧をかき集めて何日持つか算段し、その日数のうちに京にのぼる。その総大将は、希望していた広常にお願いする……。しかし、広常は総大将を辞退すると言ってきました。広常が戦に参加している間、折り合いが悪かった常陸の佐竹が兵を出して上総を窺っているようなのです。「追討軍は逃げ出したんだからそれでよしとしようや」と広常までも言い出します。

 

東を平定したのちに兵糧を十分に貯めてからと義時は頼朝に進言しますが、一日も早く清盛の首を刎ねたい頼朝は聞き入れません。すると、これまで頼りにならなかった時政がキッと頼朝を見据えて訴えます。“一番大事なのは所領と一族” “それを守るためなら死に物狂いで戦う” “清盛が憎いからではない”……。「戦で命を張るのは、わしらなんだ!」

 

頼朝は追い打ちを諦め、鎌倉に帰ることにします。義時に、自分の味方か坂東武者の味方かを尋ねますが、答えあぐねている義時をみて「とどのつまりは、わしは一人ということじゃ」と寂しげな表情を浮かべます。そこに盛長がやってきて、頼朝に会いたがっている若武者が来ていると伝えに来ます。「九郎?」

そういう気分ではないから今日はやめておこう、とつぶやいたとき、坂道を駆け下りてくる直垂姿の若者がきました。兄上がいる……兄上だぁ……と天を仰ぎ泣きじゃくる義経に困惑する頼朝たちですが、兄弟である証明として義経から差し出された藤原秀衡からの文に目を通すと、片膝つく義経を、これまで清盛に抱いてきた積年の思いが相まって、抱きしめる万感の頼朝です。「必ずや父上の仇を討ちとうございます! 兄上のためにこの命、捧げます!」


作:三谷 幸喜
音楽:エバン・コール
語り:長澤 まさみ
題字:佐藤 亜沙美
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小栗 旬 (北条義時)
新垣 結衣 (八重)
菅田 将暉 (源 義経)
小池 栄子 (政子)
中川 大志 (畠山重忠)
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山本 耕史 (三浦義村)
梶原 善 (善児)
横田 栄司 (和田義盛)
八嶋 智人 (武田信義)
岡本 信人 (千葉常胤)
阿南 健治 (土肥実平)
佐藤 B作 (三浦義澄)
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佐藤 浩市 (上総広常)
浅野 和之 (伊東祐親)
坂東 彌十郎 (北条時政)
宮沢 りえ (りく)
大泉 洋 (源 頼朝)
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制作統括:清水 拓哉・尾崎 裕和
プロデューサー:大越 大士・吉岡 和彦
演出:保坂 慶太

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