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2022年3月29日 (火)

プレイバック武蔵坊弁慶・(25)地に潜(ひそ)む

鎌倉の兵に追われ吉野山中に迷い込んだ義経一行は、飢えと寒さで朽ち果てようとしていました。義経危うし、弁慶は玉虫と小玉虫と別れ、吉野に向かってひた走ります。やがて一行と合流した弁慶は先頭に立ち、峠から転落しないように縄を一行に結び、その縄を引いて先導します。

弁慶の働きにより間一髪 難を逃れた義経一行は、山麓の荒れ寺にたどり着きます。焚火を焚き、ケガをした義経の足に布を巻き付けて手当てしているとき、義経が弁慶に「すまぬ」と頭を下げます。

どこへ行くのか? 何をするのか? 義経主従が進む道について喧々諤々議論が交わされます。ある程度出尽くした後で、弁慶は現在の情勢についていろいろとつかみやすい都に戻る案を提案します。奥州平泉に帰るという手もありますが、現在の平泉の状況が分かりませんし、都に戻れば都を去らなくてもいい案が出てくるかもしれません。それはつまり、義経追討の院宣をひっくり返すほどのことであります。

そんなことができるのか? と伊勢三郎は心配しますが、弁慶が言うには反鎌倉派の機運は都ではいまだに根強く、朝廷や比叡山に働きかけて鎌倉方を都の中で孤立させれば、頼朝は義経に和議を申し入れてくるでしょう。そうせざるを得ない様相を作り上げることが大事だというわけです。義経は、望みが薄いながらもこの策に賭けてみたいと大きく頷きます。

詮議は厳しく、少人数とはいえこれだけの男たちがウロウロしていては目立ちます。伊勢三郎と鷲尾三郎は物見として一足先に都に入り、行方六郎は物見と伝令役、喜三太と亀井六郎は義経のおそば近くでの護衛役、常陸坊海尊は片岡兄弟を連れて比叡山と鞍馬を回り、弁慶は播磨の傀儡の太平と徳を探し出して助力を請うように動きます。

 

静はお付きの者とはぐれてしまい、吹雪の中をひとりさまよっていました。そうしているうちに兵たちに囲まれてしまいます。逃亡を諦めてへなへなと座り込んでしまう静に、迫ってくる兵たちです。

 

追手がやって来たとの報を聞き、弁慶は鬼の形相になります。「我らはこれより地に潜み闇に溶ける。この後は決して争いごとや諍いを起こしてはならぬ!」 都での再会を約し、バラバラに行動します。

 

吉野山中で捕らえられた静は手輿に乗せられ、六波羅・鎌倉屋敷へ連行されます。偶然にその姿を目撃した玉虫と小玉虫ですが、静が捕らえられたということは弁慶はまだ義経に会えていないのだろうという推測です。

 

徳とほくろと再会した弁慶は、「先に静御前を助けようや」と息巻く徳を落ち着かせます。あくまでも様子を探るだけにし、助ける者がいたら止めてほしいというのです。「もどかしいなぁ……」とため息交じりの徳ですが、今のこの状況では騒ぎを起こして義経が京に戻ったことを悟られてはなりません。鎌倉が和解せざるを得なくなる状況を作って打開したいわけです。

「よし、分かった」とどこから現れたのか、太平が頷きます。

 

六波羅・鎌倉屋敷には静が身柄を移されて、連日厳しい詮議を受けていました。北条時政は静の口の堅さに苦笑しながら、義経が鎌倉追討の院宣を得るにあたって静が頭を下げて回った公卿や武家の名前を聞き出そうとしますが、静は何も言いません。言ってくれればすぐにでも解放するし、言わねば罪人として鎌倉へ送られると脅してみせても、「鎌倉に送られるこそ本望」という始末です。

そもそも今回の企ては義経の本意てはなく、頼朝に仕向けられてやむを得ず事を構えたわけで、血のつながった兄に対して弓を引こうとする義経の無念さはいかほどであったか……。それを静は燃えたぎる心で鎌倉で訴えるつもりだとメラメラです。

 

義経正室の若の前は堀河館に幽閉されていました。義経と離縁することを承服しなかったからです。

都に入った伊勢・鷲尾の三郎コンビですが、伊勢は心ここにあらずという感じでぼんやりしたままあらぬ方角へふらふらと歩いて行ってしまいがちで、それを同行する鷲尾に止められていますが、京に戻ったら必ず迎えに来てくれと言っていた若の前との約束が、頭から離れていなかったのかもしれません。

いま都で騒ぎを起こせば鎌倉との和解求める義経の望みが消えてしまい、それゆえに弁慶もみすみす静を助けないわけですが、ここで伊勢が若の前を救出するわけにはいかないのです。鷲尾は伊勢にくぎを刺しておきます。

 

伊勢と鷲尾の目的地は羅生門です。羅生門楼門の2階部分に上がってみる伊勢は、昔と変わらない光景に懐かしさを感じています。誰もやってこないここで鎌倉兵からの目を欺いて義経に隠れ住んでもらうつもりなのですが、そこにはすでに先住のまずしい民たちがいて、たちまち囲まれてしまいます。慌てて羅生門を飛び出していく伊勢・鷲尾コンビです。

 

京都西山にある弁慶の家にも鎌倉兵がきて、玉虫と小玉虫を監視しています。しかしのどが渇いたらしく、敵だと知りつつ玉虫は小玉虫に白湯をもっていかせます。そんな中、土肥実平がやってきます。実平は軟禁、監視という不便な暮らしを玉虫に詫びますが、女暮らしでは格好の魔除けです、と大笑いする玉虫です。

実平は玉虫に、静が明日鎌倉へ送られることになったと伝えます。義経の心情を頼朝に訴えたい静が自ら志願した鎌倉行きです。鎌倉に行って裁きを受ければいつ京に戻ってこられるかは分かりません。そこで、少しでも心の雪解けを図るべく別れを惜しむ人の姿があってもいいと、時政の許しを得て実平はそれを玉虫に依頼してきたのです。

頼みごとを引き受けた玉虫に、実平は帰り際にこっそり教えます。「弁慶どのは九郎どのに巡り合うたらしい、御免」

 

その夜、玉虫は鎌倉屋敷につながれている静を訪れます。義経と別れた静、弁慶と別れた玉虫、おんなの気持ちとしては共通する何かを感じたのかもしれません。静が奏でる笛の音は、嫋々と夜の鎌倉屋敷に流れます。愛する弁慶と別れた玉虫も、それを悲しく聴いていました。その音色には、静の義経への激しい思いが焚き込められています。

 

それから数日後、義経も都に入ろうとしていました。羅生門は隠れ家には不向きとのことで、四条大橋の下に向かうことにします。笠を深くかぶったところ、近づいてくる女人を見て義経はとても驚きます。母・常磐御前だったのです。常磐も義経を見てギョッとしますが、すぐ後ろに鎌倉の兵がいるのを察知します。

常磐は気を利かせて義経の従者らしき男に声をかけ、旅の守り神である右京八幡宮に行くことを勧めます。義経は他人のフリをしながら先を急ぐ旨を伝えますが、それは残念 と常磐はうつむきます。常磐には、近しい者が旅に出ているため毎日願掛けを欠かさないそうで、それを知った義経は、その近しい者もさぞ喜んでいるでしょうと笑顔を見せます。「旅の御方……御身をお厭いなさりませ。そなたの母者も、きっとそなたの無事を神仏に祈っておりましょう」 義経は常磐に深々と頭を下げ、四条大橋に向かいます。

 

八条女院の館には弁慶が訪れていました。高倉卿、三条卿などは鎌倉方の軍門に下り、反鎌倉の旗を下ろしてしまっていました。朝廷は鎌倉一色に染まったようで、八条女院とも隠れて会わなければなりません。女院は、一度は意見の対立から暇を出されながらも、いつまでも義経に尽くす弁慶に感心しています。

弁慶には夢があり、誰もが安穏に過ごせる里、仏法の花咲く理想郷の里をこの世に作りたいと考えているのです。戦のない世──戦のために若者は儚く命を散らし、女こどもは悲しみという刃に切り裂かれるわけで、この傷は癒そうにも癒すことができません。その悲しみから解放される里を作りたい、その夢を託せるのは義経以外にはいないというわけです。

 

義経一行は草に覆われた八条橋の下に身を隠しますが、地に潜むはずの伊勢三郎が弁慶の命令に背いて堀河館に向かいます。その動きを察知した太平は、鬼若(=弁慶)の命令だと 徳とほくろとともに三郎を止めますが、言うことを聞きません。若の前との約束を果たしたいという気持ちが強すぎる三郎に、仮に助け出したとしてもどこに移せるのかと正攻法で詰めても聞ける相手ではありません。

義経の正室に横恋慕する三郎と言えば彼の立場はなくなるわけで、でもその気持ちを果たさせてあげたいと考えた徳は三郎の力になると決断します。「仕方ねえ……あの様子じゃ止めたところで、やる」と、太平もしぶしぶ認めざるを得ませんでした。

堀河館に忍び込んだ三郎は床下を伝って若の前の居室に現れ、幽閉された館からの脱出を成し遂げます。若の前を荷車に隠して通りかかった関所には、すでに若の前が逃亡したと知らせが届いているようで、荷を改めさせてもらうと兵がむしろを剥ごうとしますが、太平は徳と「そう言やそこで女子を見かけたな」「ああー見た見た」とやり取りし、被衣をかぶって女が走っていく遠くの林を指さします。

その女を追いかけ警備が手薄になったスキに、関所を通過していく三郎と太平たちです。

 

義経は八条橋からニョキッと姿を現し、伊勢三郎がいないことを心配しています。鷲尾三郎は「伊勢に限って間違いはございますまい」と困惑しながら義経に言いますが、鷲尾は伊勢の計画をおおよそ感づいています。

しかし、義経がそこに潜んでいるということを、頑入に知られてしまいます。

 

太平と伊勢三郎たちが山の頂上まで来た時に「ここまで来りゃ大丈夫だ」と、俵で覆い隠した若の前を出すことにします。力がフッと抜けたか、荷車を傾けてしまいあたりに無数の俵が転がってしまいます。慌てて若の前を探す三郎ですが、太平と徳は周囲を鎌倉の兵に囲まれていることに気づき、三郎にそれとなく教えるのですが、三郎はそれどころではなく必死に若の前を探しています。

太平は致し方なく徳を引っ張って逃げ、その場に残された三郎と若の前は捕らえられてしまいました。

 

後藤新兵衛の陣に連れ出された伊勢三郎ですが、義経の居場所についてせっかんしてもなかなか口を割りません。新兵衛は三郎を鎌倉屋敷に運ばせ捕らえておき、仲間が連れ戻しに来たところを捕まえることにします。同時に捕らえられた若の前も、痛めつけられる三郎を見てかわいそうだと悲しい気持ちになっています。

 

徳は弁慶の元を訪れ、経緯を全て話し土下座して詫びます。「すまねえでは済まんぞ! これですべて水の泡じゃ」と海尊は珍しく激怒し、弁慶もかなりイライラが高まっています。たまらず徳は三郎と若の前を連れ戻すと言い出しますが、それこそ義経が京に戻ってきたと触れ回るようなことにもなり、だからこそ最初に騒ぎを起こすなとあれだけ弁慶は念押ししたのです。

「仲間の誓いを破った罰だ。見捨てるのが筋だ」 その決断に徳は落胆します。策は敗れ、この騒ぎで鎌倉方は自分たちの動きに感づきました。三郎は義経が都に戻ったのを悟られまいと必死になって何も言わずに殺される。犬死にです。「常陸坊……犬死にはいかんなぁ」策が敗れても人が死ねば本末転倒、弁慶は海尊と徳とともに三郎救出に向かいます。

 

鎌倉屋敷に護送される若の前と伊勢三郎の行列ですが、その列の最後尾の兵士を襲う徳に、その行列を火矢で襲撃する太平と(弁慶のような僧兵の格好をした)ほくろが現れます。ほくろはそのまま後方へおとりとして走っていくのですが、その姿を目撃した行列の兵士から「弁慶だ!」との声が上がり、血が上った新兵衛は弁慶を捕らえようとします。それを味方の兵に扮した徳が、弁慶を相手にしては「あぶのうございます」と形ばかり引き止めます。

しかし新兵衛は 弁慶が一度に十人の兵を相手にできるというのは風聞と、構わず弁慶を追いかけていきます。徳は若の前の周囲の兵に要警戒を命じ、三郎にはしゃがむように怒鳴りつけます。そして警護兵が見ていないところで石ころを放り投げ、コトンと音をしたほうに兵たちが気を取られているうち、後ろに隠れていた弁慶が警護兵をまとめて仕留めるわけです。

弁慶に投げ飛ばされた男たちが叫ぶ声を聴いて、「しまった……!!」と新兵衛は慌てて引き返しますが、戻ってきたとき、その場には散らばっている警護兵が数人、肝心の若の前と三郎はいなくなっていました。

 

伊勢三郎の道ならぬ恋は地に潜む策を敗りますが、弁慶の脳裏には次の作戦が芽生え始めていました。


原作:富田 常雄
脚本:杉山 義法・下川 博
テーマ音楽:芥川 也寸志
音楽:毛利 蔵人
タイトル文字:山田 恵諦
語り:山川 静夫 アナウンサー
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[出演]
中村 吉右衛門 (武蔵坊弁慶)

川野 太郎 (源 義経)
荻野目 慶子 (玉虫)
加藤 茶 (徳)
麻生 祐未 (静)
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ジョニー 大倉 (伊勢三郎)
山咲 千里 (若の前)
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高品 格 (太平)
光本 幸子 (八条女院)

藤村 志保 (常磐御前)
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制作:村上 慧
演出:松岡 孝治

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