大河ドラマ鎌倉殿の13人・(12)亀の前事件 ~政子怒りの後妻打ち~
北条義時は、伊東祐親・祐清父子の最期について八重に説明します。そんなのおかしい とつぶやく八重は、真相はどうだったのか義時に尋ねますが、これ以上の詮索はやめましょうと話を切ります。話を変え、ここ三浦の館から江間に移ってほしいと言う義時に、沈んだ表情のまま声を絞り出す八重です。「……おまかせします」
──頼朝の嫡男誕生に期待が高まる。政子の懐妊が引き起こした、小さな波紋。それはやがて、大波となって押し寄せる──
実衣と全成の婚儀が決定しました。今度は義時の番だと言う政子にそっけない義時ですが、八重と一緒になってほしかったと言う時政に、フラれた心の傷が癒えようとしているのにこの話はかわいそう、と政子は義時をかばいます。八重と言えば「じいさまはなぜあんなことに」と爆弾を投げ込む実衣に、頼朝も時政も祐親の人格のすばらしさを語るだけで、質問に誰も答えたがりません。
その白々しさを勝ち割ったのは義時でして、八重を江間館に引き取ると宣言。江間はもともと伊東の領地だし鎌倉にはいたくないだろう、と時政も賛同します。江間は義時が領主となり『江間小四郎義時』になりますが、実衣は「北条の家は誰が継ぐんですか」と指摘します。りくは自分が男子を産めば跡継ぎにするつもりですが、政子は不満です。頼朝は、北条の家督について軽々に話すことではないと待ったをかけます。
比企能員の義理の母・比企尼は頼朝の乳母です。能員に手を引かれ、比企尼が鎌倉御所に到着しました。頼朝とは久々の再会で、長らく仕送りをいただいたお礼を伝えます。比企尼は、立派に成長した頼朝の姿に大喜びです。
頼朝は御家人を集め、政子の出産に際しての手はずを次々と指示していきます。そして誰もが欲しがる乳母役は二代続けての比企家です。鶴岡八幡宮に奉納する馬の馬引き役に源 義経と畠山重忠を指名しますが、「こんなことをするために私はここにいるのではない」と不満を噴出させ、頼朝は義経には頼まぬ! と義時を再指名して怒って出て行ってしまいます。
頼朝は、三善康信が推挙して鎌倉によこした文官・大江広元を呼び出し、御家人たちを束ねる難しさを吐露します。しばらく鎌倉にいて、何が足りないのかを見極めてほしいと依頼します。
平家と戦うためにここにいると考えている義経は、平家と戦えない自分は役立たずと卑下します。義時と政子は、頼朝は義経の武人の才を高く評価しているし、血を分けた兄弟がいちばん心強いと義経を激励します。義経は政子のおなかに手を当て、「いい子が産まれますように」と穏やかにつぶやきます。こういう心根が優しいところが人を引き付ける魅力なのかもしれません。
出産が近づいた政子は比企館へ移ります。自分の時とは大違いとふてくされるりくを時政はなだめます。御家人の妻という立場と、源氏の棟梁という立場とでは自ずと違ってくるのかもしれません。並行して、八重は義時の指示通り伊豆の江間館に移ります。八重にとっては一時期を過ごした屋敷ですが、2日に1回、譲歩して10日に3度は顔を出すと言う義時を、呆れながら「おまかせします」と言うのみです。
寿永元(1182)年8月12日、比企館では上総広常が安産祈願で引目役を務める中、政子は男子を出産します。「万寿」と名付けられたこの子が後の二代将軍・源 頼家であります。愛らしい表情を見せる万寿に、政子はもちろん頼朝までも顔がほころび、誕生を祝っています。
義時は安達盛長に案内されるままに屋敷を訪れますが、奥の部屋に頼朝がいるのが見えて察知します。ここは亀の家でいわゆる隠れ家なのです。政子は比企館に行ったままだしそっちのけにされる男としては寂しいと、頼朝はこの館に通っているわけです。亀は八重が江間に移されたことは知っていて、自分が親身に真心つくしてお世話しているからと伝えるように義時に言います。
八重に亀との出来事を尋ねる義時ですが、八重はあの屈辱的な場面を思い出したくないようです。鎌倉に戻って頼朝のそばにいたいと訴える八重に、祐親を殺すよう命じたのは頼朝で恐ろしい人だと言う義時。「それを私に伝えてどうしたいのですか」 頼朝は千鶴丸の仇を取っただけで喜ばしいことと反論します。絶句する義時に、もう放っておいてと心の叫びで二度目の拒絶です。
比企館では、万寿が気を失うなど病がちでほとほと手を焼いています。全成は「親の不徳が子に禍をもたらす」と、頼朝には政子以外に思い人がいることを示唆します。それが亀であることを知った実衣は、ひどい話と義時に訴えますが取り合ってもらえず、当然政子に言いたくても言えるわけがない実衣は、言いたい気持ちを源 範頼にぶつけ、時政とりくを経由してついに政子の耳に入ってしまいます。
政子に比企館に呼び出された義時は、みんな知っていながら自分に黙っていたことと、頼朝が自分を裏切っていたふたつの怒りをぶつけられます。相手は誰だと詰め寄る政子に、結局、相手は亀という侍女だと白状してしまい、復讐の炎がメラメラと燃え上がります。義時は微動だにせずただただ黙って首を垂れるだけです。
亀の居場所も聞き出したこともあり、りくは政子に「後妻(うわなり)打ち」で仕返しを提案します。前妻は後妻の家を打ち壊してもいいという風習です。前妻と呼ばれることに少し抵抗がある政子ですが、頼朝に肝を冷やさせるために話に乗ることにします。りくは兄・牧 宗親に攻め手を頼み、義時は義経に「あなたがいればきっと何も起こらない」と、屋敷の警護を依頼します。
義経が言われた通りに警護をしていると、宗親が従者をひとりつれてやってきました。宗親は、ここが頼朝の側女の屋敷で政子の依頼で来たと言うと、義経は驚きながらもだまって道を開けます。すれ違いざまに宗親は手伝ってほしいと義経に言うと、義経は武蔵坊弁慶に「派手にいけ」と命じてしまいます。「いや……ちょっ……やりすぎや~!」と言ったところですでに遅く、館はみるみる破壊されていきます。
翌朝 頼朝が屋敷を訪れると、さんざんに壊された挙句に火もかけられ、見るも無残な姿でした。梶原景時は、ことの一部始終を見ていた者を見つけ出し、付け火であると確認します。脳裏に政子の顔が浮かび、まさか…と頼朝は義時を見ますが、義時は目をそらしつつ頷きます。みるみる青ざめていく頼朝。「恐ろしすぎる……ここまでするか!?」
義時は比企館に赴き、亀の屋敷が襲われたことを政子に報告します。やったのは宗親と教える政子は、亀の存在をわざと教えたりくともども、頼朝に叱られるといいと考えています。しかし館は焼け落ちているので、叱られる程度で済みそうもないのです。そこまでやれとは誰も言ってないと釈明に回る政子ですが、宗親のことは頼朝には黙っておいた方がいいと義時に口止めされます。
「御台所政子は後妻打ちをした説」が有力ですが、伊豆で生まれ育った政子が後妻打ちを知っているとは思えません。しかし政子の周囲にはりくという京の人間もいますし、りくには兄がいたはずです。頼朝は宗親に出頭を命じます。そして付け火をしたのは義経と聞いて、義経も詮議の席に呼ぶことにします。あの場に義経を配置したのは義時なので、激昂する頼朝にもはや顔すら上げられません。
宗親が弁明するには、御台所に命じられれば断れないし、ちょっとだけと言ったのに義経が派手に壊したからこうなったと言いたげです。義経は政子のことを思ってやったのかもしれませんが、他の御家人に示しがつかないので、頼朝は謹慎を命じます。その上で宗親には、可愛い弟を罰することになった責任も加えて、髻(もとどり)を切るように景時に命じます。あたりに響く宗親の悲鳴です。
宗親と入れ替わりで御所に入ったりくは、そもそも頼朝の女癖の悪さが事の発端であり、側女の一人や二人という頼朝の物言いには、懸命に御台所であろうと励む政子がかわいそうだと訴えます。そこに合流した政子もりくの言葉に感謝しつつ、肝心なのは夫の裏切り! 咎めるべきは夫のふしだら! と政子とりくは頼朝に迫り、なぜか無関係な時政さえも「源 頼朝がなんだってんだーっ!!」と訴えるありさまです。
ハッと我に返った時政は、鎌倉は窮屈で性に合わぬ、と後のことは義時に任せて伊豆に戻ることにします。困惑する義時ですが、何とかせよ! と頼朝に言われて、慌てて父の後を追いかけます。
広常の館に赴きました。幼いころから戦に明け暮れてきた人生だったので、文筆を学ばなかった広常は誰もいない時間帯を見計らってひとり練習していたのです。「言ったら殺す」と義時に口止めしておくのも忘れません。そこにひょっこり顔を出す亀です。広常は義時にいつまで預かっていればいいのかと、半ば“早く引き取れ”と言わんばかりに言いますが、それも広常は、亀のような女が苦手なのです。
大江広元は調査結果として、義時は手放さないほうがいいと頼朝に進言します。もちろん若いなりのしくじりもあるわけですが、頼朝への忠義心は確実です。鎌倉は安泰、との言葉に大きく頷く頼朝です。が、「ひとつ気になったのが──」
作:三谷 幸喜
音楽:エバン・コール
語り:長澤 まさみ
題字:佐藤 亜沙美
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小栗 旬 (北条義時)
新垣 結衣 (八重)
菅田 将暉 (源 義経)
小池 栄子 (政子)
江口 のりこ (亀)
中川 大志 (畠山重忠)
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山本 耕史 (三浦義村)
横田 栄司 (和田義盛)
山崎 一 (牧 宗親)
堀内 敬子 (道)
岡本 信人 (千葉常胤)
栗原 英雄 (大江広元)
中村 獅童 (梶原景時)
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佐藤 浩市 (上総広常)
佐藤 二朗 (比企能員)
草笛 光子 (比企尼)
坂東 彌十郎 (北条時政)
宮沢 りえ (りく)
大泉 洋 (源 頼朝)
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制作統括:清水 拓哉・尾崎 裕和
プロデューサー:長谷 知記・橋本 万葉
演出:末永 創
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