大河ドラマ鎌倉殿の13人・(11)許されざる嘘 ~頼朝遂に鎌倉殿へ! 宿敵清盛死す~
「私は許しません」という北条政子に、源 頼朝は政子をなだめています。八重を北条義時の妻にしようとしていることへの政子の返答です。八重は 伊東家はもはや力を失っているし、だから今は鎌倉御所の厨侍女であるので不釣り合いだと言うのです。しかるべき相手を目合わせると言って拒絶します。実衣は、義時が前から八重を好きだったことには感づいていて、それだけ態度の端々に出ていたのかもしれません。
頼朝の思惑は、知らぬ男に再嫁させるより義時の方が安心だということですが、言ってみれば「そばに置いておけますからねぇ(政子)」なのです。何のために頼朝とつながりようのない厨に働き場所を置いたのか分からなくなっています。こういう議題の前に、本人の意向はどうなのかと実衣は言い出しますが、「心配ない。私のことをとても頼りにしている」と義時は胸を張ります。
北条時政の前妻と八重はどちらも伊東祐親の娘なので、義時の叔母にあたります。とはいえ中世では、こうした縁者同士の結婚はさほど珍しいものではありません。厨から頼朝のところに連れ出された八重は、なかなか強い口調で「お断りいたします」と返答。ええっ!? という心の声が聞こえてきそうなほどハッキリと政子と実衣は義時を見つめます。義時の目は……泳いでいます。
──挙兵の年の暮れ。頼朝は力を蓄えている。打倒平家の旗の下、鎌倉に集う新たな面々。真に頼れるのは誰だ──
目から涙を、鼻から鼻水を垂れ流して大泣きする義時の前に現れた三浦義村、義時は義村と八重との関係を探りますが、八重は三浦館で身柄を預かっているわけで「無論通じ合ってるさ」と少々嫌味な言い方です。義時は、義村が言った“振られてからが勝負だ”と自分に言い聞かせますが、お前の場合 勝負はついてる、と義村はニヤリとします。
頼朝の居室に戻った失意の義時は、これからは政が大掛かりとなるので自分の手には負えず、有能な人材集めをと頼朝に進言します。頼朝は、京の三善康信に推挙させるとしますが、平家との大戦が控えている今はとにかく急がなければなりません。頼朝は気になる人物として、梶原景時の名前を挙げます。
さっそく景時の館に赴いた義時ですが、景時は人の間違いをいちいち指摘して正さなければ気が済まないような、頑固で融通が利かない性格なので、かえって足並みを乱すことになれば申し訳ないと消極的です。それでも景時の大庭方での活躍はこちらにも伝わっているので、頼朝はぜひ欲しいと言ったのです。うーん、と考え込む景時です。
治承4(1180)年12月12日、頼朝の鎌倉御所がついに完成します。
頼朝から依頼されていた、挙兵以降の武功をまとめたものが義時から提出されます。頼朝は和田義盛を呼んでくるように安達盛長に命じますが、その武功のまとめを見て感涙に震えています。盛長の名前とともに“軍功特に大なり”と補足されているのがよほど嬉しかったのでしょう。嬉しさを表現するのがこれだけでは足らず、さらに言葉を続けようとする盛長に、無情にも「早く呼んでまいれ」と急かす頼朝です。
頼朝はその武功をもとに、恩賞分けを義時に命じます。「これはさすがに佐どのが」と固辞する義時ですが、頼朝はまずは義時の意見を聞きたいようです。それにしてもこの武功のまとめには義時の名前がありません。頼朝が自分を頼りにしてくれているというのが分かっただけで充分だと笑う義時ですが、それでは示しがつかないと、北条館の川を隔てた向こう側の江間の地を義時に与えることにします。
連れてこられた義盛に、侍所別当に任じるという発令です。あれは頼朝が緒戦に敗れて房総半島まで落ち延びたころ、再起の旗を掲げた時に自分を侍大将にしてくれ! と言った義盛に「源氏の世が来たらおぬしを侍の別当としよう」と頼朝が約束していました。話の流れからああいう発言になっただけで と遠慮する義盛は、侍所別当とは何をするのですか? と聞くぐらいなので、ホントに流れで言ってしまったのでしょう。
言ってみれば、頼朝の命をみんなに伝えて戦になれば軍勢を集める……いわば家人の取りまとめ役といったところです。それを聞いて姿勢を正した義盛は、命にかえて……命にかえて……と受ける表明をしたいのですが、頭の中が真っ白になったのか、言葉の後が続きません。「もうよい、だいたい分かった」と頼朝に言われてしまいます。
鎌倉御所に入ったこの日、頼朝は家人一同を集めて所領を与え、主従の契りを交わします。関東に独自政権が芽生えた瞬間です。これまでの戦功に対して感謝を述べた頼朝は、「帝をお救いして力を尽くし、いずれは平家を滅ぼして新しい世を築く」と宣言します。これから頼朝は『鎌倉殿』となり、家人は『御家人』となります。
同じ日、平 清盛はかつて以仁王を匿った園城寺を焼き討ちします。更には平家に盾突いた奈良の寺々を平 重衡が攻撃し、南都の地が火に包まれたのです。京の下級役人・三善康信の書簡によれば、東大寺大仏殿が焼け落ちるさまは見ていられなかったほどだそうです。
鎌倉御所の頼朝を景時が訪れます。石橋山の合戦では ほら穴に息をひそめて隠れていた頼朝を発見しておきながら、みすみす見逃してくれた文字通り命の恩人なのです。その恩に報いようと、景時は義盛の下で侍所所司に命じます。「新参のそれがしにはもったいないお役目」と、詳しい鎌倉の地の見回りから始めることにします。
生まれたばかりの我が子を変顔であやす時政ですが、どんどんかすんでいく時政が悔しくて仕方のないりくです。上総広常は御家人筆頭のような顔をしているし、ないがしろにされているといってもいいぐらいです。時政は、その分義時が重宝されているのだからと気にも留めませんが、りくはあくまでも時政が活躍しなければと尻を叩くのです。
実衣のところには阿野全成がやってきていて、何か占いをやっているようです。実衣の幸運は目の前にあり、癸酉(みずのと の とり)の年 卯月生まれの男……「私は癸酉 卯月生まれ!」と勢いで言ってしまい、実衣の方を振り返ってニヤリとします。見つめられた実衣は驚き、どう反応していいか戸惑っています。
最近現れた頼朝の異母兄弟のひとり義円(全成の弟で義経の兄)は、弓矢も申し分なく学にも優れ、頼朝は大いに頼りにします。その横でイライラが募る義経は、どうして平家討伐に行かないのかと頼朝に詰め寄ります。義時が、御家人たちが離れたがらないという実情を説明するのですが、だったら義時が何とかしろと迫る義経を頼朝はたしなめます。
治承5(1181)年閏2月4日、病床に伏していた清盛が亡くなります。享年64。清盛は嫡男の平 宗盛に、頼朝を殺して墓前に首を供えよとの言葉を残します。英雄・清盛の死は、歴史を大きく動かします。
清盛の死はたちまち頼朝の知るところとなります。手を合わせ冥福を祈りますが、内からふつふつと笑いが沸き起こります。立ち上がり、御家人たちの方を振り返った頼朝の目は、少しうるんでいました。「平家のとどめはわしが刺す」 我々の力で滅ぼしてみせようぞ! と宣言し、御家人たちは頼朝に従う意思表示をします。
優雅にも白拍子の舞を楽しんでいる後白河法皇。その場に丹後局や康信の姿もあります。清盛の死を「天罰が下ったわ」と笑う法皇のところに突然宗盛が現れて、平家による政権を返上します。ただし、戦を止めるつもりはさらさらなく、改めて頼朝追討の院宣を賜りたいと言い出したのです。『頼朝を殺せ』という遺言が、この後の平家の運命を狂わせていきます。
鎌倉殿となり、清盛が亡くなり、父義朝にいい報告ができますねと政子は頭を下げます。ただ政子の心残りなのは、未だに男の子が生まれないことです。このまま男の子が生まれなければ、頼朝は義経に跡を継がせるつもりです。義経は未熟ですが武人の才があり、源氏の棟梁としては欠かせないものです。そうなりたくない政子は、男の子を産みたい……と頼朝は甘えてみせます。
このままいけばラブシーン一直線……のところ、そこに場もわきまえずに足を踏み入れた盛長は、行家が来訪したことを伝えます。清盛が死んで京に攻め入るのは今しかないとわめいているらしいのですが、行家に関わるとろくなことがないと言う頼朝は「鎌倉殿は多忙である!」と、追い返すように命じます。
いくぶんか酒が入った行家は、今は飢饉のために兵を挙げる余裕がないと実情を打ち明ける義時を早々に諦め、頼朝の弟たちの説得に当たります。「兄の許しを得ずに鎌倉を離れるわけには」と全成が難色を示し、京ではいろいろと世話になったはずの義円でさえ「お力になりたいのはやまやまですが」と断りを入れます。源 範頼は行家を鎌倉殿の御家人に引き入れようとしますが、行家はそれだけはイヤなようです。
行家に申し訳ないことをしたと後悔する義円に、行家とともに西に行けば? と義経はけしかけます。頼朝は義円をそれほど買ってないと断言して居心地を悪くさせ、行くしかないと追い込む戦法です。思いをつづった文なら渡しておいてやると、買って出た義経を信じて出発の時に文を託しますが、義円を見送った後にビリビリに破り捨ててしまいます。しかし、その様子を景時が一部始終見ていました。
頼朝は義経を呼び出し義円について問いただしますが、言伝てについては預かっていないとすっとぼける義経です。その義経の前に、復元された義円の文が出されると、義経の顔色がサッと変わります。兄弟が力を合わせねばならないときに! と頼朝は義経に謹慎を言い渡します。跡を継いでもらいたいとさえ思っているのだから「心を磨いてくれ、九郎」と、頼朝は義経の肩をポンポンと叩きます。
その場で義円を呼び戻しに向かわせますが、義円は鎌倉には戻って来ませんでした。行家の軍勢が墨俣川で平家軍とぶつかり大敗、功を焦った義円が平 盛綱に討ち取られるのは、この1ヶ月後のことだったのです。
飢饉で戦が止んだその年の冬、政子が2度目の懐妊です。豆を食べるといいだの、険しい顔をしていると男の子が産まれるだの、それぞれが言いたい放題ですが、親の徳が子に影響を与えると聞いた頼朝は、今までの戦で捕らえた者たちを許す恩赦をしようと考えます。更には全成が「胎内の子を男にする祈祷」を行います。頼朝の跡を継ぐ気持ちでいる義経は、跡継ぎ誕生の祈祷を冷ややかに見ています。
というわけで、三浦館に預かりの身となっていた伊東祐親と祐清の親子も、3日後の鎌倉御所での頼朝との対面で謝罪してから放免されることになりました。以前なら頼朝の目の前で舌をかみ切ってやろうなどと考えたかもしれませんが、清盛の死で何やら力が抜けたと祐親はほほ笑んでいます。確かに「お顔つきが柔らかくなられました」と義時は思っています。
父と兄の恩赦に感謝する八重ですが、父を許せない姿勢を崩さない八重は三浦館に残ると言い出します。許さなくても一緒にいるべきと説得する義時は、とにかく江間の館に戻るように伝えます。江間は誰かの所領になったのでは? と尋ねる八重に、私です、と白状する義時ですが、「決してそういう意味ではないので!」 ご安心を、と慌てて一礼します。
畠山重忠が、館に盗みに入った善児を捕らえますが、彼の顔に見覚えがあり、祐親の雑色だったような気がすると景時に相談します。その男の懐からは北条宗時が持っていた巾着袋が発見されます。恐らく宗時を仕留めたのはこの男である可能性が高いです。その上で、主人(祐親)が恩赦ならば手下(善児)も許される仕組みの中で、この男も解放していいものかどうかを、相談を受けた景時は頼朝に伝えることにします。
頼朝は全成から恩赦のことで呼び出されます。生まれてくる子が功徳によって男の子として生まれてくるためには、まず千鶴丸が成仏されなければなりませんが、千鶴丸を殺めた祐親が生きている限り、千鶴丸の成仏は難しいと言われてしまうのです。ふむ……と考え込む頼朝の視線の先には、景時が控えております。
八重は祐親の頼みでうなじをカミソリで剃っています。未だに鎌倉御所で働いていることに「いけませぬか」と反発する八重ですが、祐親は優しい表情で思うように生きなさいと諭します。そのまま去っていく八重に「お前……後姿が母親に似てきたぞ」と言って、初めて父親らしい顔を見せる祐親です。
恩赦の日、直垂姿に帯刀している祐親と祐清親子のところに、久々に善児が現れます。おぉ! と祐親の表情がパッと明るくなった瞬間──。祐親親子が捕らわれていた小屋から無表情のまま出てくる善児と、それを外で待っていた景時です。
急報を聞いて慌てて駆けつけた義時ですが、迎えに来た時には親子とも自害されたと言う景時の言葉を、にわかには信じられません。この一件は速やかに収めるようにとの頼朝の強い指図があり、骸(むくろ)はすでに片付けて伊東方に引き取らせました。
鎌倉殿が命じたことではないのかと義時は頼朝に詰め寄ります。あくまでも 知らん と嘘を貫き通す姿勢に、頼朝は一度口にしたら必ず守る「恐ろしい方」だとつぶやきます。人を許す心が徳となるから望みの子が授かるのでは? と訴える義時ですが、頼朝は非情にも「生まれてみれば分かることだ」と意に介しません。しかし今さらなんだかんだ言ったところで、祐親はもう帰ってきません。
祈祷を続ける全成ですが、恐ろしいことが発覚します。胎内の子は産まれたとしても寿命が短いと出ているのです。しかも千鶴丸は未だに成仏できていません。千鶴丸を殺めた者が生きている限り、成仏することはないのです。
その、千鶴丸を直接殺めた善児は──景時が「わしに仕えよ」と誘います。
作:三谷 幸喜
音楽:エバン・コール
語り:長澤 まさみ
題字:佐藤 亜沙美
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小栗 旬 (北条義時)
新垣 結衣 (八重)
菅田 将暉 (源 義経)
小池 栄子 (政子)
江口 のりこ (亀)
中川 大志 (畠山重忠)
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山本 耕史 (三浦義村)
梶原 善 (善児)
横田 栄司 (和田義盛)
岡本 信人 (千葉常胤)
阿南 健治 (土肥実平)
佐藤 B作 (三浦義澄)
小林 隆 (三善康信)
小泉 孝太郎 (平 宗盛)
中村 獅童 (梶原景時)
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松平 健 (平 清盛)
佐藤 浩市 (上総広常)
杉本 哲太 (源 行家)
鈴木 京香 (丹後局)
浅野 和之 (伊東祐親)
坂東 彌十郎 (北条時政)
宮沢 りえ (りく)
大泉 洋 (源 頼朝)
西田 敏行 (後白河法皇)
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制作統括:清水 拓哉・尾崎 裕和
プロデューサー:長谷 知記・川口 俊介
演出:吉田 照幸
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