大河ドラマ鎌倉殿の13人・(17)助命と宿命 ~幼い大姫 命がけの恋 義高を救え!~
京に戻ってきた源 義経は、後白河法皇から一の谷の合戦の活躍を褒められます。ただ“鵯越(ひよどりごえ)“を“馬で駆け下りた”という点で間違って伝わっていると、同席した梶原景時は指摘しますが、義経には気にする様子はありません。「鵯越の方が響きがいい。馬に乗って駆け下りたほうが絵になる。歴史はそうやって作られていくんだ」
──義経の連勝に鎌倉は沸いた。しかし、頼朝とその家族には、義仲討伐の代償が待っていた。鎌倉に再び、暗雲が立ちこめる──
鎌倉に戻ってきた北条義時は、自邸で寝かされている2人の赤子のうち三浦義村の娘である初に向かって「親父どのに似ている」と話しかけてしまい、八重に間違いを指摘されます。自分の子どもを間違えてとても気まずそうな義時です。そこに工藤祐経が久々にやってきます。伊東祐親に横領された伊東庄を取り返したと胸を張る祐経は、相談に乗ってほしいと義時を訪ねたのでした。
しばらく京で暮らし、活躍できる場はもっとあるはずなのに、頼朝が一向に御所での大事な仕事を回してくれないということで、仕事の斡旋を頼みに来たのです。「八重と私とは縁も深い」という言葉に怒りを露わにする八重ですが、後ろから石を投げつけた子ども2人を追いかけて出て行ってしまいます。頭の中は「???」の義時は、八重に何があったのか尋ねますが、八重は深いため息をつきます。
「それより」と八重は身を乗り出します。2人の赤子を世話していて八重がよく考えるのは、捨て子や孤児(みなしご)など戦であぶれた子どもたちを目にする機会が多くなり、子どもたちを助けてやりたいという思いが強くなったようです。初めこそ驚いていた義時ですが、むごい戦が続くのならせめて子どもたちを救いたいと八重の訴えに、うんうんと頷きます。
頼朝は、木曽義仲討伐によって片付けておかなければならない問題として、「武田信義」「木曽義高」の2人の名前を挙げます。源氏の棟梁ぶる信義には頼朝が上であることを示し、そして義高は父の仇・頼朝への反逆の芽を摘み取っておかなければなりません。頼朝は義高の扱いを義時に一任します。人の上に立つには鬼にならなければならないと義時に分かってもらう、それが頼朝の思惑です。
大姫と無邪気に遊ぶ義高を、義時は牢に閉じ込めます。頼朝に逆らっては鎌倉では生きていけないと北条時政は同情し、義高の扱いを聞いた北条政子は頼朝に直談判しますが、頼朝自身、父を殺された平家への恨みは20年経っても全く消えていないわけで、それぐらい深いものなのです。「あやつの恨みは必ず万寿に降りかかる!」 そう突っぱねられて、政子は何も言えなくなってしまいます。
政子は義高の牢に押しかけ、彼を伊豆山権現に匿うと言い出し、その役目を義時に託すのですが、義時が実行するわけにはいきません。鋭い目つきの義高は、父の仇として軍勢を率いて頼朝の首を取ると宣言。義仲の思いを分かっていると思っていた義時に裏切られた格好の義高は、義時の首も取るつもりです。「一刻も早く首を取ることをお勧めいたします」
義経は法皇から「検非違使」の役目を命じられます。義経の功績を形にしたかった法皇ですが、今回の任官について頼朝からの推挙は出ていません。恩賞のために戦っているのではないと自ら頼朝に断った義経の、けなげさをいじらしく感じた法皇と丹後局は、頼朝のことは忘れていいと伝えます。法皇がよこした白拍子による歌舞を、武蔵坊弁慶たちとともに楽しむ義経は、美しい白拍子に目を奪われます。
その時鎌倉では、義経と比企能員の姪・さととの縁談話で盛り上がっていました。そしていつも通り頼朝を囲んだ会議が始まるのですが、義時は、義仲討伐の際に和田義盛が捕まえた巴が義時に会いたがっていると呼ばれます。鎌倉御所の外で再会した巴は、俺の家人になってくれよォと馴れ馴れしい義盛をシカトし、義仲からの義高への文を義時に預けます。
義時は巴と政子が同席する中、文を義高に渡します。頼朝を仇と思うなと諭すとともに、平家を討伐できるのは頼朝しかいない、義高は生きて 源氏悲願の平家討伐を見届けよとあります。その思いをくみ取った義高は、自分が間違っていたと政子に謝罪し、政子は改めて逃げる手配を義時に依頼しますが、義時は義高に拒絶されてしまい、政子の言葉にだけ反応する義高を見つめて義時は涙目です。
御所からは女人の格好をして抜け出させ、見張りは工藤祐経に。八重と子どもたちが遊ぶ庭に潜り込ませ、東に進んだ観音堂で夜を明かし、明朝に三浦の船で伊豆山権現へ送り届けるという手はずです。そこに、義高の扱いを聞いていた義高の従者・海野幸氏が仲間に加えてほしいと現れます。頼朝に与えられた猶予は3日、景時がいればすぐに頼朝の知るところとなりそうですが、都合よく景時は京に行っています。
鎌倉御所に信義と嫡男・一条忠頼が訪問しました。信義は、頼朝の家人ばかり法皇から恩賞が与えられ、忠頼に恩賞がないことに頼朝を責め立てますが、法皇の一存だとはぐらかします。腹に据えかねる信義ですが、忠頼は、義高が御所のどこかに幽閉されていると話を持ち出し、信義は義高をダシにすることにします。
義高の牢に入る信義と忠頼は頼朝を倒そうと義高にささやきますが、義高には 武田の軍勢も義仲と戦ったと痛いところを突かれてしまいます。武田の軍勢が立ち上がれば必ず勝てると食い下がる2人の申し出を断る義高ですが、義高が信義たちと会っていたことはすぐに頼朝の耳に入ります。頼朝は見張り役の祐経をすぐに変えさせます。義時は源 範頼に引き止められ、身動きが取れません。
大姫と遊んでいた鞠を手に、じっと見つめる義高。幸氏の報告では見張りが代わり人数も増えてしまいました。ここは全成の出番だと、烏帽子に狩衣姿に変装した全成が扇で口元を隠しながら牢の前まで進み、「義高とふたりで話がしたい」と見張りを遠ざけて牢の中に入っていきます。政子が用意した衣に着替えるように義高に指示しますが、義高は「えっ……」と戸惑います。
頼朝は義仲のことについて、美男子であったとか怪力であったとか噂をもとに話をし、実際はどうかを安達盛長に義高に聞きに行かせます。聞きに行っている間、能員が出てきて次の戦で参陣したいこと、その際には義経に嫁ぐ姪のさとも同行させていいかと頼朝にうかがいをたてていますが、じきに牢から戻ってきた盛長は義仲の逸話は本当だったと回答します。
見張りがいないのを見計らって忠頼が義高に餅の差し入れをすべく牢を再訪問すると、そこにいたのは義高の格好をした幸氏でした。その時義高はすでに下女に変装して仁田忠常と御所の門へ行き、八重とともに観音堂へ向かおうとしていました。会議が終わり、気になった義時が盛長に尋ねると、義高には生き延びてほしい、これ以上頼朝から離れていってほしくないと心の内を明かしてくれます。
義高が逃げたと忠頼から報告があったそうで、大江広元が頼朝に知らせます。「冠者どのが!?」と驚いてみせる義時も仕掛け人なのですが(笑)、頼朝は義高を捕らえよと御家人たちに触れを出し、見つけたものには褒美を与えると約束します。そして義高は、見つけ次第首を刎ねよと義時に命じます。
義高追討に気が乗らない御家人たちですが、義盛と畠山重忠を呼んだ義時は義高が東の観音堂にいると明かし、義高が見つからないように時間稼ぎをしてほしいと依頼します。2人は兵を集め、義高は故郷の信濃へ向かったから御所から西をくまなく探すと命じます。褒美が出ると知って兵たちはオレが私がと血眼になって義高を探し始めます。
義高逃亡の件で御所が蜂の巣をつついたような騒ぎとなっていて、三浦義澄も他の御家人と同じように義高討伐を命じられるのですが、三浦館に戻った義澄が、昼間に政子や義時と会っていた義村を疑います。義澄は目の前で上総介広常を誅殺されたことが念頭にあり、頼朝に盾突けば鎌倉では生きていけないと義村に怒鳴りつけ、他の者に見つかる前に三浦の手で義高を捕らえると言い出します。
観音堂から義高が己の判断で逃亡します。義高にしてみれば、自分を政子から伊豆山に遠ざけて殺そうと企んでいるように思えてならないらしく、その思い違いに義時は愕然とします。しかも鎌倉は恐ろしい場所だと、義高は故郷の信濃へ向かってしまいました。「まずい、西は追っ手でひしめいている」
兵たちが必死に探す合間を縫って逃げ続ける義高ですが、ついに藤内光澄に見つかってしまいます。義高は刀を抜こうとしますが、鍔(つば)に鞠の糸がからまっていて刀を抜けません。光澄が刀を振りかぶります。
頼朝に呼ばれた義時は、追っ手を増やせといら立ちを隠せません。そこに政子が大姫とともに現れます。義高の助命嘆願をする大姫ですが、それはできないと頼朝は声を絞り出します。懐剣を自らののど元に突き付け脅す大姫に頼朝は絶句。御家人同士で疑い合っている今、信じる心を示してほしいとの政子の必死の訴えに、頼朝は「わしの負けじゃ」とつぶやき、義高を捕らえても連れ戻すように命じなおします。
しかし──時すでに遅く、義時が追っ手に命じている最中に義高の首が入った首桶を抱えて意気揚々と歩いてくる光澄がいました。義時はすべてを察します。
何度も裏切られているからと一筆書くように政子に言われ、しぶしぶ筆を入れる頼朝。その様子を見ていた大姫は実衣とともに部屋から出ていこうとします。そこに険しい表情の義時と盛長が歩いてきます。実衣に大姫を連れていくように促し、怪訝そうに見つめる2人。義時には珍しく「早く!」と怒鳴りつけ、2人は逃げるように立ち去ります。
光澄は首桶をドンと床に置き、義高を討ち取ったことを報告します。ヒィッと短い悲鳴を上げた政子は、「決して許しませぬ」と悲しみと怒りの感情が混濁したまま部屋を飛び出していきます。頼朝は、たった今筆を入れたばかりの証文をくしゃくしゃにします。
夜、時政を介して頼朝から義時に書状が届きます。明日までに光澄を誅せよとの命を頑なに拒みます。しかし鎌倉で生きていくために覚悟を決めるように時政に迫られ、義時は父を見据えます。翌日 頼朝の前に現れた忠頼は、義高をそそのかし頼朝への謀反を企んだ罪でその場で誅殺されます。その場にいた祐経は震えが止まらず役目を果たせません。
家に戻った義時は黙って我が子・金剛を眺めていますが、決して安らぎにはなっていません。来たる暗雲を感じて、素直に笑顔が出せません。
翌日、林の中で光澄は一刀のもとに切り伏せられます。それを遠くから見届けた祐経は、改めて鎌倉は怖いところで自分が生きていけるようなところではないとガタガタ震えています。祐経に鎌倉から出ていくように勧めた義時は「私にはここしかない」と吐き捨てるようにつぶやき、その場を去っていきます。
信義からの起請文を預かった義時ですが、頼朝に弓引くつもりはみじんもなく、光澄は死ぬことはなかったと弁明する信義の言葉に一息つき、二度と頼朝と争おうと思わないようにと警告します。謀反とは家人が主人に対して行うものであり、信義は「わしは一度も頼朝を主人と思ったことはないわ!」と捨て台詞を吐きますが、義時はそれに構わず行ってしまいます。
政子に、光澄を誅殺したことを報告します。政子は殺せと言った覚えはないと言いますが、決して許さぬとの言葉を頼朝も重く受け止めた結果なのです。考えてみれば政子は、言葉は発しても後のことは義時に任せっぱなしにしてきました。常に自分は“直接の”責任を負わない安全な場所にいるわけで、義時はそんな姉に警告します。「あなたの“許さぬ”とはそういうこと、言葉の重さを知ってください」
義時は家で金剛の顔を眺めていますが、自然と涙があふれてきました。「父を……許してくれ」 金剛を抱き上げ、つぶやきます。八重は義時のそばに寄り添い、背中をさすることしかできません。
作:三谷 幸喜
音楽:エバン・コール
語り:長澤 まさみ
題字:佐藤 亜沙美
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小栗 旬 (北条義時)
新垣 結衣 (八重)
菅田 将暉 (源 義経)
小池 栄子 (政子)
中川 大志 (畠山重忠)
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山本 耕史 (三浦義村)
横田 栄司 (和田義盛)
八嶋 智人 (武田信義)
栗原 英雄 (大江広元)
佐藤 B作 (三浦義澄)
中村 獅童 (梶原景時)
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佐藤 二朗 (比企能員)
鈴木 京香 (丹後局)
坂東 彌十郎 (北条時政)
宮沢 りえ (りく)
大泉 洋 (源 頼朝)
西田 敏行 (後白河法皇)
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制作統括:清水 拓哉・尾崎 裕和
プロデューサー:大越 大士・川口 俊介
演出:吉田 照幸
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