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2022年5月 3日 (火)

プレイバック草 燃える・(03)二人義経

治承元(1177)年10月、京都警護の大番役を済ませた北条時政は、3年ぶりに故郷伊豆への道を急いでいました。行列の中ほどには娶ったばかりの牧の方が馬に揺られて付いてきています。あともう少し進めば時政の所領にたどり着くのですが、牧の方の疲れを気遣う時政は富士山がよく見える丘の途中で小休止を取ります。そこに北条宗時と義時が迎えにやってきます。

初めて見る牧の方に宗時も義時もニコニコ顔で、時政は「まぁ……なんじゃよ」と年甲斐もなく照れていますが、京で求めた大量の絹とともに、政子には縁談話を土産に持って帰ってきたと言っています。とんでもない良縁と言って時政と牧の方が笑うのですが、えっ……ととまどっている宗時です。


北条保子以下妹たちは京からの土産の衣を取り合いしてはしゃいでいます。時政のためにお湯を沸かして蒸気浴の用意に忙しくしていた政子がようやく部屋に戻ってくるのですが、時政は 政子にはもっともっといい土産があると言って笑っています。その土産が何なのか、政子はもちろん保子たちも気になりますが、時政はもったいぶって内容を話してくれません。

頼朝と政子の関係ですが、すでに一線を越えた今となっては政子は頼朝に会うたびにうっとりとして帰ってくるし、頼朝も女性を口説くのはお手の物と宗時は笑います。源氏の嫡流が北条と結ばれたことは、坂東武者にはとても大きな影響があると宗時は考えています。しかし時政が持ち帰った、政子の縁談話の相手が山木兼隆というのは、たとえ頼朝と結ばれていなくても認めることではできません。

横になって疲れを癒す牧の方を一目見ようと、保子たちは蔀部分から頭を少し出して中の様子を窺っていますが、几帳が邪魔をしていて見えません。こんな様子では後々ご苦労なさるかも との侍女・つづらの言葉に、不安を感じる牧の方です。ひそひそ話が中にまで聞こえてくるので、牧の方は廊下に出て、「政子姫、妹たちをきちんとしつけるのがあなたとお役目」と母親らしくピシャリと言うのですが、その相手が保子でいきなりの肩透かしを食らってしまい、プイッと部屋の中へ戻っていってしまいます。

政子と頼朝のことを宗時と義時は知っていたと政子に白状するのですが、うまくいっている政子には今となっては笑い話です。時政が京から戻ったら正式に話をしようと考えていた政子ですが、時政を説得できる見込みはとても薄いわけです。頼朝が源氏の御曹司であるからこそ、宗時は相当な覚悟を政子に求めます。政子は宗時と義時という大きな味方を得て、とても嬉しいのです。

 

宗時から安達盛長経由で頼朝に、政子に兼隆との縁談話があることを伝えてきました。頼朝は、平家の目代と源氏の嫡流がひとりの女性を競い合う構図を「おもしろい趣向じゃないか」と言い出します。政子がどちらを見限ってどちらを選ぶのか見たいと言っているわけです。盛長は、政子に選んでもらうためにも、会う頻度を多くしてもう一押しをと勧めます。

 

時政は政子に朝からオカンムリで、家人たちに政子を探せと口やかましく命じています。宗時は兼隆の話をする時がいよいよ来たかと覚悟を決め、重い腰を上げます。一方、義時のところには伊東祐之がやってきており、いつも通り友だちとして接する義時ですが、祐之は義時に激怒しています。政子は頼朝と恋仲という噂を聞きつけて、俺をよくもだましてくれたなと文句を言いに来たのです。

政子が頼朝といい仲と時政の耳にはすでに届いていまして、政子をバカモノ呼ばわりすると同時に、宗時も責められています。宗時は自分の非を認めた上で、こんなふしだらな女だとは! と開き直るのですが、政子は裏切られた思いで宗時をキッと睨みつけます。宗時は手で まぁまぁ俺に任せろと合図します。「こうなったら仕方ありますまい。できてしまったことでありますからなぁ」

時政は、過去のことをくどくど言っても仕方ないからと、早く忘れろと言います。時政としては流人の頼朝よりも目代の兼隆との縁の方が実があると考えているわけです。自分に縁談話があったことに驚く政子は、どんな苦労も厭わないので頼朝と添い遂げさせてほしいと頭を下げます。宗時のとりなしも蹴り、時政は頼朝の女たらしな部分を非難し、伊東祐親の娘とのことも話してやると言って聞きません。

祐之は自分の気持ちを政子に伝えたくて義時を頼ったわけですが、実際に伝えたところ色よい返事がもらえませんでした。もういい! と祐之は直接政子に交際の申し込みをしに行くと言い出しますが、いま政子の前に出るのは余計に事をややこしくするだけだと、義時は必死に止めます。祐之は、ますます頼朝憎しで固まっていきます。

時政の話では、頼朝と結ばれ、娘・八重姫が産んだ子どもは殺されました。子を殺せと祐親が命じたのは、それはすべて相手が頼朝であったからです。祐親が頼朝との結婚を認めたら平家に弓引いたことにつながるのです。武家は縁談ですら一歩間違えれば家を危うくすると時政は諭し、兼隆との結婚を強引に推し進めようとします。

もし仮に政子が頼朝の子を産んだとしたら、お父さまやっぱり殺しておしまいになります?──政子は時政をまっすぐに見て、もし子どもを殺すなら自分も殺してほしいと駄々っ子のように言い出します。初めこそ困惑する時政ですが、政子があまりに聞かないので平手打ちします。断じて許さぬ! と泣きじゃくる政子を置いて出て行ってしまいます。

時政と政子の話し合いが終わるのを庭で待っていた祐之に、「私もちょうどあなたに聞きたいことが」と言われれば気分は最高潮ですが、八重姫と頼朝のことについてと言われると「あっ……その話」と急にしぼみます。しかし八重姫の子を殺した張本人が祐之であることを宗時に教えられ、頼朝の悪口を言い出す祐之ですが、それが自分の首を絞めていきます。二度と会いたくありません、と引導を渡されてしまいます。

 

またも酒に飲んだくれる祐之は、政子の気持ちが分からないと言って馬に揺られています。のどが渇いたと付近の川で水をバシャバシャ浴びていると武士が数名やってきて、祐之の様子を見守ってただ立っていただけの義時を気絶させさらっていきます。酒に酔った祐之は目の焦点が定まらず、馬の背に乗せられて連れていかれる義時を見送るしかできませんでした。

 

しばらくたって目覚めた義時は男たちに牢から連れていかれますが、その先には いつか出会った笛の女性が立っていました。女性の下僕・六平を殺した下手人として義時を捕らえたようですが、六平を斬ったのは泥酔した祐之です。ただ都合の悪いことに、弔いのために笛を吹いていた女性の前に義時が姿を見せているので、男たちは疑う余地なく義時を連れ出します。義時は初めて、女性が茜という名前だと知ります。

義時はこの館の主・大庭景親の前に引き出されますが、名乗ると景親はギョッと目を丸くします。実は娘の茜は中宮徳子の侍女を務めていて、坂東に帰ってくるにあたり六波羅が警護のために平家の郎党を付けたのです。六平が大庭の家人なら内々で済まされるところ、平家の郎党だったために大事になっているのです。義時は、もし自分が斬ったとしたらどうするかと景親に尋ねます。景親はうーんと悩んだ挙句、義時を館に上がれと言います。「この者は北条の冠者だ。粗略にするなよ」

景親は義時に寛大に接し、飯まで食わせてくれます。そしていつもの好青年ぶりが戻った義時にいろいろと教えてくれるわけです。代々源氏に仕えていた大庭家では保元の乱でも源氏として戦いますが、敗れて捕らえられてしまったそうで、そこを平 清盛に命を助けられ、それがゆえに平家と親しい間柄になったというわけです。茜を中宮徳子の侍女として京に向かわせたのもその一環です。

茜が入ってきました。景親によもぎを持ってきたのですが、「今日でお会いするのは二度目ですね」と話しかけた義時をキッと睨みつけます。景親は、茜が平六殺しの下手人を義時だと思っていると伝え、それでいいのだな、と念押しします。答えに窮しているうちに、茜はサッと座を蹴って部屋を出て行ってしまいます。

 

京の都では盗賊の横行に手を焼いていました。昼間の都大路は華やかですが、夜になると様相は一変するわけです。夜に荷車を引けば、どこからともなく姿を現す盗賊たちです。その中でも特に「ヨシツネ」と名乗る残酷な盗賊たちが恐れられていましたが、検非違使別当・平 時忠は、その「ヨシツネ」を捕らえようと血眼になって彼らの行方を追っていました。

衣をかぶる人物に目をつけた盗賊の苔丸は、夜もその後をつけていました。ある屋敷の前で壁を上ろうとしていた人物に声をかけた苔丸でしたが、ふらりと身をかわして走って逃げていきます。しかし屋敷の中に降り立つと、不気味な笑みを浮かべる苔丸一味に囲まれてしまいます。

苔丸が衣をはぎ取ると、白装束の男です。苔丸は自分が都で評判高い「ヨシツネ」と名乗ると、男も義経だと名乗ります。えっ……と一瞬狼狽えた一味に、『清和帝第六の皇子、貞純親王の皇子の六孫王より七代目、その後胤(こういん)八幡太郎義家より長家の御守りたる……』とつらつら名乗りを上げます。苔丸たちはあっけにとられて何も言葉を発しません。

 

政子はその夜も頼朝のもとへ通っていました。頼朝と添い遂げるつもりで、子どもを殺すなら自分もと言ってやったと言う政子ですが、本当に辛いのは頼朝自身であるのに、みんなで寄ってたかって傷つけることに納得いかなかったのです。頼朝は政子を愛しいと感じ、政子と運命を共にすると口にします。周囲の波風によらず、二人はますます愛し合っていきます。


原作:永井 路子
脚本:中島 丈博
音楽:湯浅 譲二
語り:森本 毅郎
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[出演]
石坂 浩二 (源 頼朝)
松平 健 (北条義時)
中山 仁 (北条宗時)
滝田 栄 (伊東祐之)
加藤 武 (大庭景親)
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金田 龍之介 (北条時政)
大谷 直子 (牧の方)
武田 鉄矢 (安達盛長)
黒沢 年男 (苔丸)
藤岡 弘 (三浦義村)
伊吹 吾郎 (和田義盛)
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松坂 慶子 (茜)
真野 響子 (北条保子)
国広 富之 (源 義経)
岩下 志麻 (北条政子)
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制作:斎藤 暁
演出:伊予田 静弘

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