プレイバック草 燃える・(08)石橋山の合戦
治承4(1180)年8月19日、源 頼朝と大庭景親の決戦の日。出陣前に北条義時は 伊豆山へ避難する北条政子を倉庫へ連れて行き、茜へ宛てた文を渡して伊豆山で誰かに届けさせてほしいと託します。茜にもう一度会いたいという義時の気持ちは姉にはよく分かります。しかし、自分は戦向きの人間ではないだの、家を継ぐ宗時もいるだの、自分のことだけ考えるようにするだのとつぶやく義時に、政子はその真意が分からず尋ねますが、義時はそれには答えず出陣してしまいます。
戦準備の指揮に忙しい宗時は、通りかかった政子に「佐どのとたっぷり別れを惜しんだ方がいいぞ」などと冗談を言って笑っていますが、政子は少し胸騒ぎがして顔が引きつっています。本当のところこの戦は大丈夫なのか、不安が募っていると言うべきでしょうか。宗時は何も言わず、心配を払拭させるようにニッコリほほ笑んで頷きます。
頼朝は初陣ではないものの、総大将としては初めての戦なので少し緊張しています。頼みとしていた三浦は波が荒れて来られず、陸路を進んで大庭を挟み撃ちにする手はずですが、北条館に人手を割くわけにはいかなくなり、伊豆山への避難となったのです。何かと安心するだろうと、頼朝はこの20年来、朝な夕な手を合わせてきた観世音菩薩を持っていけと政子に預けます。宗時からは亡き母の形見の数珠を渡されます。
牧の方は時政との子を宿しており、大きなお腹で伊豆山へ向かうことになるわけですが、伊豆山で産気づいたらどうしようなどと不安が先に立ち、誰も私のことを考えてくれるひとはいないと愚痴ばかりです。時政はそんな牧の方をなだめ、政子には牧の方のことをよくよく頼んで伊豆山へ出発させます。
8月23日、土肥実平の館に集結した頼朝軍は石橋山へ向かいます。兵力300、以仁王はすでに亡くなっていましたが、その令旨を奉じての戦いであることを示すため、旗竿にくくりつけての出陣です。これを迎え撃つ景親の軍は3,000。これとは別に伊東祐親を大将とする300は、頼朝の本陣を方々から襲う体制を取っていました。正午過ぎに景親の大軍は石橋山の山麓に到着し、陣を敷きます。
自軍3,000に敵は300だからそう慌てることもないと景親は余裕です。ただ、三浦軍が到着してしまうと挟み撃ちに遭うので、その前に出陣しなければという声もあります。その声に賛同するのは、なぜか景親の軍にいる伊東祐之で、頼朝の首を取るから邪魔するなとイライラしています。実はそのころ、三浦の軍勢はまだ酒匂川(さかわがわ)をも越えてはおらず、予定よりも遅れていました。
政子が伊豆山から送った遣わした童・須弥王が大庭館へ着きました。政子から、茜へ直々に渡すように固く言い遣ったのでしょう、侍女の小波(さざなみ)が対応するもらちが明かず、茜が出てきてようやく文を手渡します。義時からの文と知って茜は熱心に読み進めます。「戦が終わったら私は家を捨てる覚悟、一緒に京へ行こう」とあり、パッと明るい表情になって心底喜びます。
三浦の延着で、今度は逆に伊東軍から挟み撃ちに遭う可能性が出てきた頼朝は、決断を迫られて出陣を命じます。弓矢に弓矢で応戦し、景親と時政が前に出て相手を罵るのですが、始めはおとなしく聞いていた頼朝も「軍勢を前に肝が縮んだ」「犬にも劣る恩知らず」と馬鹿にされて冷静さを欠きつつあります。
いよいよ戦闘開始となります。戦いは1時間余にも及びますが、300対3,000という兵力の差はいかんともし難く、頼朝軍はジリジリと窮地に追い込まれていきます。時政の進言もあり、いったん退却することになりました。
伊豆山権現で手を合わせ、夫の無事を祈り続ける政子。牧の方はきっとさんざんな目に遭っていると不安がり、心配したって仕方ないと煎り豆をポリポリ食べる保子に呆れています。とんだ婿を持ったばかりにと言いたい放題の牧の方を末弟の五郎は突き飛ばすのですが、お知らせを待つのです、と五郎を諭します。
そこに戦況を伝える左源太が、敗北の報を届けに来ました。時政も宗時も義時も無事が確認できたのですが、頼朝の姿が見えなくなっていました。頼朝行方知れずと聞いて、政子は呆然としながら持仏堂を出ていきます。「行方知れずということは……死んだことではないわ……そう、死んだことでは」
大庭軍による落ち武者狩りが始まっています。鎧の一部が落ちているのを見つけた祐之は、頼朝たちはそう遠くへは行っていないはずだと探索を続けます。そんな中、梶原景時は洞穴の中に実平を見つけ、その隣に頼朝が座っているのを発見します。「頼朝がいたのかよ?」と近づいてくる祐之に、この辺りにはいないことを告げて景時は離れていきます。
夜を明かした時政たちですが、大庭軍が山を離れたと聞いて宗時は三浦へ向かいます。途中で鉢合わせた伊東の兵たちを射て馬を奪い、三浦の陣へ急ぎますが、宗時が気づくと大庭軍に取り囲まれていました。頼朝の居場所を教えれば命は助けるという祐之の言葉を遮り、宗時は兵たちに矢傷を負わされ、最期は祐之に命を奪われてしまいます。
お味方大勝利に沸く大庭の兵が館に戻り、景親からの伝言を茜に伝えるのですが、北条は全滅と聞いた茜はあまりのショックで膝から崩れ落ちます。伊豆山権現へ行けば確かなことが分かるかもしれないと、茜は小波と一緒に伊豆山へ向かうことにします。
そのころ、酒匂川の氾濫で行く手を阻まれていた三浦軍は、引き返す途中に鎌倉由比ヶ浜で畠山重忠軍と遭遇します。一時は和解が成っていた両者ですが、行き違いがあって全軍あげての戦いに発展してしまいます。戦いは夜明けまで続き、双方に多くの死傷者を出しますが、決着がつかないまま三浦軍は館へ引き上げていきます。
急ぎ足で伊豆山に入った茜は、須弥王の案内で政子が祈り続ける持仏堂に入ります。茜は政子の顔を見ると、大粒の涙を流して突っ伏してしまいます。その茜の狼狽(うろた)えように、政子は「まさか……」と急に不安になっています。
原作:永井 路子
脚本:中島 丈博
音楽:湯浅 譲二
語り:森本 毅郎
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[出演]
石坂 浩二 (源 頼朝)
松平 健 (北条義時)
中山 仁 (北条宗時)
滝田 栄 (伊東祐之)
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大谷 直子 (牧の方)
武田 鉄矢 (安達盛長)
藤岡 弘 (三浦義村)
伊吹 吾郎 (和田義盛)
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松坂 慶子 (茜)
江原 真二郎 (梶原景時)
真野 響子 (北条保子)
金田 龍之介 (北条時政)
岩下 志麻 (北条政子)
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制作:斎藤 暁
演出:大原 誠
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