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2022年6月24日 (金)

プレイバック北条時宗・(02)ふたりの母

誕生した赤子を囲んで北条館は笑顔が絶えません。ただひとり、母の涼子(あきらこ)を除いては──。涼子輿入れを手助けした北条重時は北条時頼夫婦の不和に責任を感じ、我が子誕生を祝う北条の者たちはみな親の仇だからと、出産後に気持ちが乱れる涼子の気持ちを松下禅尼は代弁します。こうなることも覚悟の上で意地を通したことを松下禅尼に言われると、じゃあどうすればいいのだと頭を抱えます。

北条家の重臣たち、そして鎌倉の御家人たちが集まる出産祝いの酒の席にて、子どもの名前が発表されます。『正寿』です。これは“正当な後継者”という意味も含まれておりまして、3年前に、同じく時頼の子の宝寿丸を産んだ讃岐局はその名を聞いて顔を歪め、宝寿丸の手を引いて出ていってしまいます。

讃岐局が向かったのは、涼子の居室。自身が産んだ宝寿丸のこともあって、お世継ぎをと望まれて側室に入り子を産んだのだと先手を打っておこうという魂胆ですが、涼子には正寿丸に家督を継がせるつもりはないし、宝寿丸を世継ぎにしてくれるよう時頼に頼めばいいとの涼子の言葉に、讃岐局は拍子抜けします。

 

出産祝いの席に、当主足利泰氏の代理として出席した高 師氏は、涼子と讃岐局の対立について見たままを泰氏に報告します。この対立がそのまま北条得宗家の家督争いになると予測する師氏、この機に乗じて北条を滅ぼそうと画策する桔梗(泰氏の元妻)、師氏と桔梗のいがみ合いも有名ですが、こういうところでは妙に気が合うと泰氏は笑い、2人は顔を見合わせます。

正寿丸に家督を継がせないという涼子の意向はすぐに時頼の知るところとなります。宝寿丸と正寿丸のどちらが家督を継ぐに相応しいか? 家臣の間でもいろいろと話が持ち上がります。血筋では正室の子の正寿丸だし、長幼の序では長男の宝寿丸です。時頼は正寿丸が正式な後継者であると宣言。鎌倉御所にふたりの母がいては争いの種になると、讃岐局を北条屋敷から安達屋敷に移します。

都合のいいように北条に扱われ、時頼憎しで固まっている前将軍の九条頼経は、同じく毛利季光と三浦家を失い時頼を仇と呪う藤泉尼(藤子)に同心すると桔梗に言ってきました。頼経と藤泉尼と桔梗、それぞれ理由は異なりながら、北条の世の転覆を図るという目的では完全に位置します。藤泉尼には最強の刺客である娘の涼子がいますが、寝首を掻くどころか子まで成している有様で、諦めるしかなさそうです。

 

執権という権力者ともなれば、昼間に息抜きなどできるはずもなく、時頼は安達泰盛を連れて真夜中に遠駆けです。そこに突然、博多に暮らす宋の商人・謝 国明が時頼に会いたがっていると、そのせがれ謝 太郎が現れました。時頼への土産話もあるそうです。ここ数日、将軍・九条頼嗣の周囲を足利の者たちが動き回っているようで、涼子の母・藤泉尼も足利と結びついている、と──。

その話を時頼から聞いた涼子は、さっそく藤泉尼のところに出向いて戦を止めるように説得します。涼子は、子を産むことでそれが三浦の仇討ちにつながると考えを変えたのです。藤泉尼や足利の動きを細部まで把握する今の北条と相対しても勝てないと説得を試みますが、時頼の首を取るために嫁ぐと言った涼子の言葉を盾に時頼を殺せと迫ります。言葉を返せない涼子とは縁を切るつもりの藤泉尼です。

さらに時頼は、足利家当主・足利泰氏の元に北条実時を派遣し、北条との戦を避けるために泰氏に出家を勧めます。ただ、このことは逆に足利家の野望を後々まで引き継ぐことにつながります。謀反のきっかけとなった将軍頼嗣には隠居してもらい京に戻します。その後継には、朝廷から新たな将軍──後嵯峨上皇の長男・宗尊親王を新将軍として迎えることになりました。

そして藤泉尼は修善寺に追放することにします。生かそうと考えたのは、涼子の父・毛利季光の命を奪ってなおも母の命まで奪いたくなかったのかもしれません。しかし、時頼直々の申し出を拒絶した藤泉尼は自害して果ててしまいます。父のみならず母までも失った涼子の心の溝は更に深まり、正寿丸を立派に育てることで自分の心を示したいと考える時頼と決裂します。

 

翌、建長4(1252)年。時頼と安達泰盛は、鎌倉にも出店している謝 国明の屋敷を訪問します。謝 国明は、博多から高麗(宋)、さらに奥に進んだ蒙古という国の話をします。そしてその皇帝の弟クビライの話に及んだとき、時頼が考えさせられる言葉を謝 国明から聞きます。「もしあの男が日本に攻めて来たら、これまでの戦のやり方では勝てませぬぞ」

カラコルムにあるモンケ・カアン幕営地。蒙古皇帝のモンケ・カアンは、弟のクビライを東方総督として宋を落とせと命じます。クビライは、西の大理国(現在の雲南省)・吐蕃(とばん=現在のチベット)・南の大越国(現在のベトナム)・東の高麗(現在の朝鮮半島)などの周辺国から宋を囲んで落としてしまおうという壮大な計画を打ち出し、兄を喜ばせます。

時頼の側近・安達義景に末娘が誕生しました。祝子(のりこ)と命名されたその娘こそ、後に北条時宗の正室となります。両親や兄の泰盛、泰盛の妻梨子らからとても可愛がられますが、両親は間もなくはやり病で亡くなり幼いころの記憶は全くありません。そして同じ年、足利領の山奥深くにある村で、時宗と深いかかわりを持つ女の子・桐子(とうこ)も生まれます。母親はふきという身分の低い女です。

 

3年後、建長7(1255)年──。時頼と涼子との間には、2人目の子ども(時頼にとっては3人目)となる福寿丸が産まれていました。そんな時、家臣の諏訪盛重が宝寿丸に母の讃岐局の病気のことを伝えてしまったものだから、宝寿丸は正寿丸を連れて讃岐局の元に見舞いに行ってしまい、鎌倉御所は大騒ぎになっています。

その道中 市場を通ったふたりは、裸で物乞いをする乞食たちに囲まれてしまって見舞いを諦めますが、帰り道、法華経を信じよ! と熱心に辻説法を行う坊主を見かけます。町の者たちは、この怪しげな坊主に石を投げつけるのですが、その批判を受けつつも坊主は無心に法華経を唱え続けます。正寿丸は思わず坊主の前に躍り出て、民衆の攻撃から坊主を守ります。「やめろ!」


脚本:井上 由美子
高橋 克彦「時宗」より
音楽:栗山 和樹
語り(覚山尼):十朱 幸代
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[出演]
渡辺 謙 (北条時頼)
浅野 温子 (涼子)
柳葉 敏郎 (安達泰盛)
池畑 慎之介 (北条実時)
篠原 涼子 (讃岐局)
牧瀬 里穂 (梨子)
西岡 徳馬 (足利泰氏)
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原田 美枝子 (桔梗)
江原 真二郎 (高 師氏)
大谷 直子 (藤子)
デルゲル (モンケ・カアン)
バーサンジャブ (クビライ)

和泉 元彌 ((プレタイトル)北条時宗)
渡部 篤郎 ((プレタイトル)北条時輔)
木村 佳乃 (ふき)
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伊東 四朗 (北条政村)
平 幹二朗 (北条重時)
奥田 瑛二 (日蓮)
富司 純子 (松下禅尼)
北大路 欣也 (謝 国明)
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制作統括:阿部 康彦
演出:吉村 芳之

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