大河ドラマ鎌倉殿の13人・(25)天が望んだ男 ~頼朝の死期迫る予感~
源 頼朝は真夜中にふと目覚め、誘われるように念仏の声のする方へ向かってみると、ひとりの亡骸が横たわっていました。傍らには阿野全成が念仏を唱え、北条政子や時政、実衣、そして北条義時が傍らに座し、その死を悼んでいました。顔当ての布を頼朝が取ると、横たわっていたのは自分自身……。頼朝はアッと息をのみ、思わず腰を抜かしてしまいます。
──朝廷に食い込もうとする頼朝の野望は、大姫の死で頓挫した。すべてを思いのままにしてきた彼は、今、不安の中にいる──
建久9(1198)年12月27日、頼朝に死が迫っている──。
頼朝は昨晩も同じような夢を見て、ぐったりしています。頼朝に助言を求められた全成は、平家の赤など相性の悪い色を遠ざけ、久々の者には会わないようにと答えます。しかし頼朝は妖怪のように全成にしがみつき、さらにしたほうがいいこと、しないほうがいいことの助言を求め続けるのです。
といいつつ、全成がアドバイスしたのは口から出まかせです。何か言わなければ頼朝も引き下がらないと思っての対応でしたが、実衣が赤系の着物を身にまとっているのを見咎め「赤はまずい……着替えてくれ」と顔をこわばらせます。
相模川で北条一門の供養が執り行われるのですが、頼朝は出席を渋ります。しかしふと、全成の「仏事神事は欠かさぬこと」という助言が頭をよぎり、参加しようと思いつつ、北条は信じていいのか? 範頼を焚きつけた比企は? と疑心暗鬼に陥っています。そして久しぶりに千葉常胤と土肥実平がやって来ると、ここでも全成の助言がよぎり「追い返せ!」と声を上げてしまいます。
比企能員は、頼朝の後継者として頼家、そして頼家の子の一幡(いちまん)が継ぐと早々に決めたほうがいいと主張しますが、三善康信は、その都度吟味を重ねて決めるべきと諭します。そこへやってきた頼朝は、自分の後継者の話題に「早くあの世へ行けと申すか!」と怒鳴り、今この時期に決めることではないと能員が手のひらを返したため、康信は立場をなくしてしまいます。
時政は御所に呼ばれていないからと、暇つぶしに朝から双六をしています。役に立たないから呼ばれていないとぼやく時政に、比企は頼家の乳母でその子まで成し、そのうち鎌倉を乗っ取られてしまうと危惧するりくですが、案ずるなとさほどは気にしていない様子の時政です。念頭に、頼朝は北条の婿だというのがあるのかもしれません。
訴訟を聞き届けたお礼を言いたい常胤と実平を避け、伊豆から届いた赤いほおずきを政子の指示で頼朝の居室に飾る北条時連に怒鳴り、頼家が連れてきた一幡をぜひ抱いてほしいと懇願する能員と道に遠回しに拒否する頼朝は困惑しきりで、もはや全成の呪術のしがらみに絡まって身動きが取れなくなってしまっています。
時政がりくに追い出され、御所に現れました。能員がうまく立ち回っていると敵ながらあっぱれと感じる時政ですが、頼朝は能員を警戒し、能員が勧めるせつを頼家の妻と認めたくないのです。すべては範頼をたきつけた噂がそうさせているのですが、その噂を流したのは誰あろう時政でした。これにはさすがに呆れ返る義時です。
せつと夫婦になりたくないのは頼家も同じで、実は妻に迎えたいつつじという女性がいるのです。三河武士の賀茂重長の娘で、共に戦った仲で三浦義澄が預かって育ててきたのです。さらにつつじの母は頼朝の叔父・鎮西八郎為朝の娘でもあります。つまり源氏一門の出身です。
困惑しながら一幡を抱く頼朝は、その場に比企尼が座しているのを見かけ、先日の非礼を詫びます。しかし無表情で見つめる比企尼に、お怒りのようだと戸惑う頼朝は、仕事を理由に立ち上がって行ってしまいます。能員が比企尼に声をかけると「あ……眠っておりました」 特に怒りはなく、頼朝といろいろ話したかったとつぶやき、能員たちは安堵します。
義時が頼家の申し出を頼朝に伝えると、まずはつつじが為朝の孫かどうかを調べさせます。もしそれが本当であれば源氏としては好都合です。安達盛長は能員が黙っていないと難色を示しますが、源氏の血筋のほうが上だと頼朝も譲りません。「女好きは嫡男の証、頼もしいぞ」と頼家の肩を叩く頼朝です。
時政四女・あきが病で亡くなって3年、夫の稲毛重成が妻の供養に相模川に橋を架けたのですが、北条一門の供養というのはそれのことです。比奈はりくに“義母上”と言い、比企出身の比奈に言われることではないと険悪な雰囲気になります。さらに時政は比奈を八重と呼び、義時は隠れて手を合わせ「すまぬ」と詫びています。
相模川に向かうにあたり、頼朝は梶原景時を呼び出して、御所を見張るように命じます。特に何かの動きを察知したわけではなく、あくまで予防線に過ぎないわけですが、何かあった時には頼家を頼むと言い残して出発する頼朝です。せめて方違え(かたたがえ)として一度北へ向かい、和田義盛の館へ立ち寄った後に相模川へ向かうことにします。
慌てて出迎えた義盛は、巴に頼朝の前に出るように頭を下げますが、頑として受けません。頼朝は巴に会わぬまま一旦は館を出ますが、途中で道が普請のために通れず、いったん和田館へ戻ることにします。そこで巴と会い、源 義仲のことについて頭を下げます。しかしここでも「昔を振り返るな」という全成の忠告が頭をよぎり、あわてて館を出発します。
相模川に到着した頼朝ですが、一門の者たちが丸もちを作る中、あまり気分がすぐれないと出ていきます。そこに、丸もちづくりで手を汚したくないりくが現れます。鎌倉を京に負けない都にしたいと言う頼朝に、日本一の軍勢を持つのだから朝廷も意のままとはっぱをかけます。頼朝は、時政が鎌倉を手に入れたいといった野望について探りを入れますが、りくは笑ってオブラートに包みます。
丸もちが出来上がったと、時政が酒と一緒に持ってきました。時政を心から信じられない頼朝は、不満を言うように伝えます。しかし時政は不満など感じたことはありません。むしろ政子と縁づいてくれたことを感謝しています。そんな時政の笑顔が驚愕します。頼朝が餅をのどに詰まらせたのです。駆けつけた義時が背中を強くたたくと、餅が口から飛び出ました。
死ぬ思いをしたわけですが、時政がいなければ今ごろはどうなっていたか……。「持つべきものは北条だな」とつぶやきます。頼朝は義時と政子に、頼家のことで言っておきたいと改まります。帝を守り武家の棟梁としてこの先続いていかなければならない。義時には常に側で頼家を支えよと、政子も頼家の母として見守ってほしいと言うのです。そして自身は大御所へ。
「人の命は定められたもの、甘んじて受け入れようではないか」 神仏にすがって怯えて過ごすのは時の無駄と笑う頼朝です。それがようございます、と肯定する義時は、頼朝が昔から自分にだけ大事なことを打ち明けてくれると伝えると、頼朝は振り返り仏のような表情で微笑みます。
そして頼朝は、盛長に馬を引かせて先に鎌倉へ戻ることにします。まだ蛭が小島の流人のころ、よく盛長が馬を引いて出歩いていました。そなたといるといつも心が落ち着くとつぶやく頼朝の言葉に感激し、頭を下げる盛長。「初めて北条の館に来た時……」
そう言いかけた頼朝ですが、右手が極度に震え出し、身体をこわばらせます。林のざわめき、鳥の鳴き声、そして鈴の音が響き渡ると、頼朝は気を失って落馬してしまいます。
その鈴の音を、法要の場に戻っていた政子も聞いていました。その場に居合わせた重忠も、鎌倉御所の頼家も、巴と並んで座る義盛も、草むらを単騎歩く義村も、書類に囲まれた大江広元も、鎌倉御所を警護する景時も、自邸でゴロゴロしている能員も、りくも、確かに聞いていました。しかし手を合わせる義時には、その鈴の音は聞こえてきませんでした。
「佐どのーっ!」 盛長の叫び声が響きます。
作:三谷 幸喜
音楽:エバン・コール
語り:長澤 まさみ
題字:佐藤 亜沙美
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小栗 旬 (北条義時)
小池 栄子 (政子)
坂口 健太郎 (北条頼時)
瀬戸 康史 (北条時連)
堀田 真由 (比奈)
中川 大志 (畠山重忠)
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山本 耕史 (三浦義村)
市原 隼人 (八田知家)
横田 栄司 (和田義盛)
堀内 敬子 (道)
新納 慎也 (阿野全成)
宮澤 エマ (実衣)
阿南 健治 (土肥実平)
小林 隆 (三善康信)
中村 獅童 (梶原景時)
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佐藤 二朗 (比企能員)
岡本 信人 (千葉常胤)
草笛 光子 (比企尼)
栗原 英雄 (大江広元)
坂東 彌十郎 (北条時政)
宮沢 りえ (りく)
大泉 洋 (源 頼朝)
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制作統括:清水 拓哉・尾崎 裕和
プロデューサー:大越 大士・橋本 万葉
演出:吉田 照幸
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