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2022年6月14日 (火)

プレイバック草 燃える・(15)愛のかたみ

名越・北条館──。心配した頼朝に遣わされて、安達盛長が北条館に来てみますが、門番をはじめだれ一人としておりません。伊豆に帰ると宣言した北条時政の言う通り、引き払ってしまったのかと盛長は焦りながら館の中に声をかけ続けますが、「え? 何か?」と北条義時が出て来ました。ホッとした盛長は頼朝を安心させるために義時を御所に連れていきます。

義時の顔を見た頼朝は、よほど安心したのか思ったとおりだと大笑いです。頼朝は義時が鎌倉に残ってくれた嬉しさで、自分の名馬「池月」を褒美にとらせると言い出しますが、義時にとってはたかが父と下向しなかっただけで褒美をもらえるというのは違うと断ります。しかし頼朝は嬉しくてどうしても褒美をあげたいのです。それでも義時は、褒美はいらないと固辞します。

この話を盛長から聞いて、上総介広常は自分がへそを曲げて上総に引き上げたら真っ青になると言いますが、北条の者たちが伊豆へ引き上げたとなると、頼朝の身内のいわば自分の手勢がいなくなるのと同じなので、頼朝も相当堪(こた)えたのでしょう。和田義盛は、時政もやりおると笑います。そんな会話を梶原景時はただ黙って聞いています。

御所と北条に深い溝を残すと取り返しのつかない事態になるわけで、義時が鎌倉に居残ったことは北条政子からもとても感謝されます。義時は政子に言動には気をつけるように注意しますが、亀の前と別れる気配のない頼朝に政子は表情を一変させ、やはり分かっていないと義時は呆れます。ともかく今回の件で、頼朝が自邸に来てくれることになりました。実に名誉なことで、時政の雪解けにもつながるかもしれません。

家に帰った義時は、頼朝を北条家に迎えるにあたって茜にも手伝うように伝えます。北条の下女たちもあらかた伊豆に戻ってしまって女手が足らず、政子や妹たちが手伝いに来てくれますし、親戚の景時も来るので茜の話し相手になりそうです。父の仇である頼朝の覗き込むような眼がとてもイヤで、茜は表には出ないと義時に言いますが、それでは困ると義時は笑います。

 

数日後、頼朝を囲んでの酒宴が催されます。頼朝のみならず主要な御家人たちも集まり、これだけ揃えば時政も面目が立つだろうと頼朝は満足げです。不在の時政に「今さら後悔しても遅い」と広常は笑い、頼朝や景時はギロリと睨んでいます。北条保子に酒を持って来させている間、盛長に舞を所望して場を取りなします。

人手が足りないからと、保子は茜に酒を持たせます。イヤイヤながら表に出てきた茜は、やはり御家人たちの話題のタネになります。頼朝は、大庭景親のことで自分を恨んでいる茜をとても気づかい、水に流してくれた証に酌をしてほしいといいます。景時や義時が無理に勧め、しかたなく頼朝に酌をすると、今度は頼朝は茜に頼まれ事を聞いてほしいと言い出します。

「イヤです、そんなところへは絶対……」と茜は今にも泣きそうな表情です。どうやら頼朝は、亀の前の話し相手になってやってほしいと言ったようで、義時も承服したのですが、茜は首を縦には振りません。頼朝の浮気相手になぐさめに行かせるとは、頼朝に魂胆があるとしか思えない茜ですが、義時は口が過ぎると平手打ちします。義時は伊豆へ時政を迎えに行っている間、亀の前のところへ行くように念押しします。

そして鎌倉にはもう一人、悶々とした気持ちを抱える義経です。全成と飲み直しながら、義弟である義時にはあんなに馴れ馴れしく打ち解けていると言うのに、実の弟には打ち解けずに隔たりさえも感じます。頼朝を慕って奥州平泉から駆け付けたというのに、活躍の場を与えてくれたら一生懸命に仕事をしてみせるのに、頼朝への気持ちが揺らいで苦しむ義経です。

 

茜は気が進みませんが、小波(さざなみ)を伴って亀の前が暮らす屋敷へ向かいます。無表情の亀の前に庭の景色や季節の話などいろいろと話しかける茜ですが、「春も秋も、一年中怖いですわ」と言って泣きわめきます。あの一件以来政子がとても恐ろしく、離れようと思っても頼朝が許してくれず、板挟みになっているのです。外に向かって駆けだす亀の前を、茜は見送ることしかできません。

夜遅く、亀の前の様子が心配で頼朝が駆けつけます。部屋に通される頼朝ですが、その部屋で眠っていたのは茜でした。茜が目を覚ますと目の前には頼朝がいて、頼朝が覆いかぶさってきます。声を上げるとみんなが起きると脅されて、茜は身をよじって抵抗するしかありませんが、頼朝に押さえつけられてどうにもできず、されるがままです。

3日後、時政が鎌倉に戻って来ました。すぐ戻ってきたと思われるのが癪なのか、寺の修理だなんだと理由をつけての帰還になりますが、ともかく頼朝とは挨拶を済ませ、どうにか時政の面目は保たれました。そして亀の前には暇を出したとのことで政子は楽しげに笑っていますが、そんな話を聞いていなかった義時は、どういう経緯なのかを疑問に思いながら家に帰ります。

義時を出迎えたのは泣きじゃくる小波だけでした。亀の前の家に行ったその日から茜がいなくなったらしいのです。茜の行き先は小波にすら分からず、義時には打つ手がありません。茜が残した書き置きがあり、「今はとて 相模の海の 形見かは 君がことの葉 泡と浮きぬる」とだけあります。義時は、亀の前の家で何があったのか確認しようと各方面へ確認して回り、いよいよ御所の頼朝の元へ向かいます。

政務室にいた頼朝に茜が行方不明となったことを伝えると、頼朝は目を見開いて驚いてみせます。無言のまま睨みつける義時に、盛長や全成らは気を利かせて政務室から出ていきます。義時が考えるに茜は恐らく京に向かったようですが、じき戻ってくると楽観視する頼朝に、もう戻ってこないと訴えます。「このことは2人だけの秘密に。政子には何も言うなよ」 頼朝を、信じられない目で見据える義時です。

 

寿永2(1183)年3月、頼朝は木曽義仲を討つため大軍を信濃へ差し向けます。それから間もなく、頼朝の出兵に驚いた義仲は息子の志水冠者義高を和睦の証として鎌倉へ送ります。弓の名手・海野小太郎幸氏がそのともにつけられます。大姫の許嫁(いいなずけ)というのは表向きであり、体のいい人質です。

馬の脚が早くて予定よりも1日早く鎌倉に到着したこともあり、頼朝への挨拶は明日と義盛が伝えに来ました。こちらは早く取り次いでほしいのに杓子定規の対応に不満気味ですが、義高はあきらめ顔です。そこに鞠が転がってきました。大姫が鞠を取りに来て、取ってくれた貴公子が義高であると気づくと、大姫を追ってきたさつきに「わたしの婿さまよ」と伝えて興奮気味です。

2ヶ月後、義仲は越中と加賀の国境の砺波山に平 維盛・通盛を大将とする兵10万余騎を相手に夜襲をかけ、攻め落とします。平家軍は予想もつかない大敗北で大方は京へ逃げ帰ります。

 

7月、義仲軍が京に攻め上るという噂が立ち、都の人々は引っ越しでてんやわんやの大騒ぎです。建物の陰に隠れて様子を伺っている苔丸たちですが、伊東祐之の目は先の牛車から降りるひとりの女人に注がれていました。茜だと確信した祐之は、苔丸が呼びかけるのも無視して茜の元に駆けていきます。「茜どの……俺だ、俺だよ!」

中宮徳子に用意してもらった屋敷で暮らす茜は子どもを身ごもっていて、身重の体ながらすぐに都落ちをする予定です。茜は平家軍への斡旋を買って出ますが、祐之は盗賊になってこの手は穢れたと卑下するばかりです。ただ落ちぶれても頼朝や義時への恨みは忘れぬと言う祐之に、茜は「そう……あなたも」と涙をこぼします。鎌倉で茜の身に何があったのか、誰の子どもかと問い詰めますが、茜は何も答えません。


原作:永井 路子
脚本:中島 丈博
音楽:湯浅 譲二
語り:森本 毅郎
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[出演]
石坂 浩二 (源 頼朝)
松平 健 (北条義時)
真野 響子 (北条保子)
滝田 栄 (伊東祐之)
武田 鉄矢 (安達盛長)
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金田 龍之介 (北条時政)
藤岡 弘 (三浦義村)
黒沢 年男 (苔丸)
伊吹 吾郎 (和田義盛)
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松坂 慶子 (茜)
江原 真二郎 (梶原景時)
伊藤 孝雄 (阿野全成)
国広 富之 (源 義経)
岩下 志麻 (北条政子)
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制作:斎藤 暁
演出:江口 浩之

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