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2022年6月10日 (金)

プレイバック草 燃える・(14)政子狂乱

寿永元(1182)年11月。源 頼朝の嫡男・万寿は、元気いっぱいにお乳を飲んで健やかに育っています。万寿の乳付けの乳母には河越重頼の妻・純子が、乳母筆頭には比企能員の妻・重子が選ばれます。いずれも頼朝の乳母であった比企尼の娘たちです。ふたりは「んーぱっ」とあやして、万寿が屈託のない笑顔を見せます。そして乳母には他にも平賀義信の妻、梶原景時の妻などが選ばれていました。

北条政子は、朝冷え込んだからと万寿の様子を見に来ます。厚着をさせてもひ弱な子に育つし、数日前から出ていた赤い斑点も気になります。あれこれ心配する政子に、重子は「あたくし8人も子どもを育てておりますの」とやり込めます。政子も負けずに、生みの親もたまには万寿を抱きたいと訴えますが、小ばかにしたように笑って、眠った万寿を横にさせるために奥に引っ込んでしまいます。

自分の居室に戻った政子は、ないがしろにされてイライラを募らせます。大姫はすごろくで遊んでいるというし、少しでも心を落ち着かせようと近くにあった書物を手に取って読んでみますが、身が入らずポンと投げてしまいます。侍女のさつきによれば、いつも来る北条保子もまだ姿を見せていません。

その保子は大路で亀の前を見つけ後を追っていました。帰宅後、どうして頼朝があんな女を寵愛するのか分からないと阿野全成に話して首を傾げます。頼朝が亀の前と浮気をしていることはうわさで知っていたようですが、全成は鬼のような形相で「ゆめ口を滑らせるでないぞ」と、政子に話さないように保子に強く口止めします。カチンときた保子は、言っていいことと悪いことの区別ぐらいつくと言い返します。

翌朝、御所の政子のところへ出向いた保子は、万寿を抱かせてくれない政子の愚痴の相手をしています。乳母が世継ぎのお世話をするのはならわしで、頼朝もそれを望んでいるから政子も従うしかないのですが、自分の気持ちを伝えようにも頼朝は多忙でゆっくり話をすることすらままなりません。今日は流鏑馬で鐙摺(あぶずり)で宿泊する予定ですが、「おかわいそう」と連呼する保子に政子はどこか怪訝な面持ちです。

 

昼間は流鏑馬に興じ、夕暮れには頼朝は伏見広綱の館に到着します。護衛でついてきた北条義時と安達盛長はそのまま御所へ戻るつもりでしたが、頼朝が2人も館に上げて一緒に酒を楽しみます。広綱の娘・亀の前は、義時が政子の弟であることにとても驚きますが、妻以外の女と接してはならない決まりはない、と頼朝は悪びれた様子もありません。義時も盛長も困惑しながら盃を受けます。

すっかり飲まされてほろ酔い気分の義時と盛長は、三浦海岸で酔いを醒ましに出て来ました。やはり2人とも恐れているのは、頼朝の浮気が政子にバレてしまうことなのですが、2人子どもを産んだからといって性格が丸くなるような人ではありません。ただ、政子に面と向かって浮気の話をする人間もいないのではないかと考える義時に、そうあってほしいと盛長は心の底から思っています。

しかし、うわさ話というのはやはり立ち上るわけで、お前は口が軽いからくれぐれも話すなと厳重注意をうけたばかりの保子は牧の方の耳に入れてしまうのです。普段は距離を保っている保子と牧の方も、こういったネタにはこそこそと盛り上がっていきます。

眠る頼朝の横には亀の前が並んで寝ていますが、今夜は何か恐ろしさを感じて安らかな気分にはなれません。頼朝が眠ったのを見計らって床を抜け出す亀の前ですが、頼朝は眠っておらず、衣をしっかりとつかんで離しません。亀の前を抱きしめ、震える彼女にいとおしさを感じながら夜は更けていきます。

 

話を聞いた牧の方はさっそく御所に上がり政子に会います。久しぶりの対面でお互いにうわべの挨拶を交わすのですが、北条時政がまだまだ子作りするという話から、男の浮気話に飛び火。浮気は許せないという牧の方は、知っていながら受け流す政子を偉いと評します。もちろん政子は初めて耳にする話で、そこで亀の前という囲い女の存在を知りとても大きな衝撃を受けます。

政子はさつきを連れて、亀の前とはどんな女なのか岩陰に隠れて見ています。亀の前を追っている間、牧の方がけしかけてきた言葉が脳裏をぐるぐると回って、こうなれば執念です。鐙摺の広綱の館まで突き止めてしまいます。被衣(かつぎ)を持つ手がわなわなと震えているのが分かります。

「今日は姉と弟として話をしましょう」 政子に呼び出された義時は、頼朝の浮気を知っていたこと、浮気相手と知って送迎したり館に出入りしたりしていたことを追及します。義時はいろいろと言い訳を連ねますが、その態度こそが火に油を注ぎます。自分だけが知らず笑いものになっていたと政子の怒りは頂点に達し、後妻打ちという風習を使って、亀の前に目にもの見せてくれると飛び出して行きます。

誰かおらんのか! と大声を出されて政子の前に現れた牧 宗親は、亀の前の家を打ち壊してこいと命じられます。困惑する宗親ですが、今の政子を止められる人は誰もいません。手加減せず二度と住めないようにめちゃめちゃに壊してこいと言われ、しぶしぶ受け入れた宗親は、夜、広綱の館に一軍で押し入ります。館をさんざんに叩き壊し、火をつけて全焼させます。

頼朝がムッとしたまま御所に戻って来ました。政子と対面して何か言おうとしますが、政子にギロッと睨まれて、言いたいことを飲み込んでしまいます。何も知らない大姫が頼朝に双六をせがみ、政子の顔色をうかがいながら「おぉおぉやろう、そなたから」とぎこちなく双六を始める頼朝に、政子はニンマリです。

時政は、頼朝も頼朝だが政子も政子と、みっともない2人に呆れています。牧の方は、自分だったら絶対に許さないとあれだけ政子をけしかけておきながら、「はしたないったらありゃしない」と笑っています。そして実際に館を打ち壊した宗親は、苦々しい表情で酒を飲みながら、やはり北条がないがしろにされている証だと時政に伝えます。ともかく、この件の咎は誰が受けるのかだけが気がかりです。

 

源 義経が、新宮十郎行家に会ってやってほしいと頼朝の政務所に来ています。木曽義仲とともに上洛して平家を討つべきと訴えるのですが、義仲の動きは行家に聞かなくても分かっているし、頼朝は会いたくありません。そして呼び出した義時には、今日の流鏑馬には宗親を必ず連れてくるようにと念押ししています。義時は何か恐ろしいものを感じています。

流鏑馬に向かうふりをして、たどり着いたのは広綱の焼け落ちた館の前です。このような場所から一刻も早く離れることを盛長は進言しますが、頼朝は火災の原因を知りたいと、宗親の方を振り返ります。「ひょっとしてそちは知っておるのではないか?」 頼朝に睨まれて、宗親に緊張が走ります。

一方、頼朝から会わないと言われた行家には、以仁王の令旨を全国の源氏に配り回ったのは自分だと言うプライドが許さないのか、義経の説得もむなしく怒って木曽へ向かって行ってしまいます。全成は、行家を追いかけようとする義経の直垂を引っ張って、追うなと耳打ちします。頼朝には、義仲と手を組もうと言う考えは一切ないのです。

宗親は頼朝の前でひれ伏していました。宗親は政子の命令を聞いて館を襲撃したのですが、「今の今まで我が家人と思ってきたが、どうやら違うようだな」と、ひれ伏す宗親の烏帽子を叩き落とし、髷を切ってしまいます。烏帽子なく髷を切られた姿は武士の最大の恥といわれる姿で、恥をかかされた宗親は悲鳴を上げながら、散切り頭をなびかせて時政の館へ逃げ帰っていきます。

この仕打ちに牧の方は激怒、我慢に我慢を重ねてきた時政も今度ばかりは許せないと、伊豆へ引き上げると宣言します。それを聞いた政子は大事になってしまったと頭を抱えますが、そもそもは牧の方が頼朝の浮気を話したことが発端なのです。保子も、まさか牧の方がそのまま政子に話すとは考えていなかったようで、政子は、牧の方の耳に入れたのは保子だったのかと気づき、軽口の妹にため息をついています。


原作:永井 路子
脚本:中島 丈博
音楽:湯浅 譲二
語り:森本 毅郎
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[出演]
石坂 浩二 (源 頼朝)
松平 健 (北条義時)
真野 響子 (北条保子)
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大谷 直子 (牧の方)
武田 鉄矢 (安達盛長)
伊藤 孝雄 (阿野全成)
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国広 富之 (源 義経)
金田 龍之介 (北条時政)

岩下 志麻 (北条政子)
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制作:斎藤 暁
演出:大原 誠

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