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2022年7月31日 (日)

大河ドラマ鎌倉殿の13人・(29)ままならぬ玉 ~源頼家の暴走と孤独 北条vs比企~

阿野全成の読経の中、源 頼家と宿老たちの前に並べられた多数の首桶……その中央には「梶原平蔵景時」の札がかかっています。景時がいなくなり、これからは否応にも北条と比企の争いが激化することは誰が見ても明らかでした。比奈はいつぞやの起請文を北条義時に差し出し、「私を比企に帰すなんてくれぐれも言わないように」と念押しします。義時としても比奈に辛い思いはさせたくないのです。

善児を呼び出した義時は、生前、景時が渡すよう頼まれていた布袋を善児に渡します。中身を確認し「梶原どのもお人が悪い。試されたのですよ、わしの天運を」と言う善児ですが、ともに連れてきた“2代目”のトウという女忍者がその腕前を披露している間に、布袋から中身を取り出します。中身は、かつて北条宗時を刺し殺したときに奪った青色の巾着袋でした。

──鎌倉を支えてきた宿老の一角が崩れた。バランスを失い、大きく揺れる権力の振り子。それを止める者は、誰だ──

景時の死から3日後。鎌倉幕府では評議が行われようとしていましたが、三浦義澄は死の床にあり、評議を欠席。「あいつは大丈夫だ!」と言っていた北条時政は、評議が終わると急いで駆けつけます。「待っておったぞ四郎……」とつぶやいた義澄は、一緒に行こう! と時政に掴みかかり、時政が払いのけた拍子に息を引き取ります。そしてもう一人、源 頼朝に誰よりも長く仕えた男・安達盛長も亡くなります。

 

宿老たち13人のうち、景時と義澄、そして盛長が去り、十三人の合議制はもはや形を失いつつありました。頼家は「これからは好きにさせてもらう」と比企能員に伝えます。比企のサポートの上でお好きにどうぞという姿勢の能員ですが、援助はいらないと申し出を蹴る頼家。「鎌倉どののために! 申しておるのです」と一歩も引かない比企に、頼家はため息交じりです。

時政は「従五位下、遠江守」に就任します。源氏以外の御家人が国主になるのは初めてのことであり、時政自身もとても驚いています。りくは時政が御家人筆頭になったことで比企に一矢報いることができたと喜びます。義時は、国主への取り立てを願い出たのは、御家人に範を示し鎌倉を守ってもらいたいからです。北条政子も、比企がどうのということは忘れてもらいたいとたしなめます。

評議の場で畠山重忠が持ち込んだのは、支配下で起こった所領をめぐる僧たちの争いでした。その場に入り込んだ頼家は、所領の広い狭いは所詮「運」であり僧たちが欲深いのは片腹痛いと、示された地図を筆で真っ二つに分割します。神仏に仕える者の訴えをぞんざいに扱うと天の怒りを買いかねないと重忠が忠告しますが、頼家は聞き入れません。「好きにさせてもらったぞ」と能員に言い置いて出ていきます。

 

この年、頼家の正室・つつじが男子を出生します。善哉(ぜんざい)と名付けられた赤子の乳母父を務めたのは、約束通り三浦義村です。

能員は、嫡男はあくまで一幡だと義時をけん制します。しかし生前の頼朝の意向は、頼家とつつじの子が男子であった場合、その子を跡継ぎにという内容を示す義時ですが、残念ながら文書に残っておらず、能員は全く納得しません。義時に相当の剣幕で迫り、受け入れられないとくぎを刺します。

一方りくは、比企から力を奪うために善哉が後継となっても北条のうまみはないと、政子が産み全成と実衣が乳母父を務めた千幡を推すことにします。「こうなったら少々乱暴な手を使ってでも──」とつぶやくりくの言葉に、時政は「???」ですが、察してくださいと言われて感じ取った時政はたちまち慌てます。

全成を呼び出した時政からの願いでに、手で祈祷の形を示し「どなたを」と尋ねます。比企能員! と声を出す時政を遮って、りくが言い出したのは、まさかの頼家でした。命までは取らなくてもしばらく病に臥せってもらえればそれでいいのです。「跡を継ぐのは、千幡じゃ。悪くはなかろう?」と時政に迫られて、全成は戸惑いながらも祈祷の準備に入ります。

 

坂東は台風に見舞われ、多くの被害が出ます。蹴鞠(しゅうきく)の練習をする頼家に頼時は苦言を呈しますが、頼家は聞く耳を持ちません。義時は、食べるものなく借りた米も返せず、土地を捨てて逃げ出す農民たちを治めるよう頼時に伊豆行きを命じます。頼家の側にいないほうがいいと考える時連は、頼時を見送りながら「(鎌倉殿を)諫めるだけではなく分かって差し上げるのも大事」と笑います。

荷造りを始める頼時ですが、義村の娘・初は頼時の真面目さに息が詰まると言い、頼時は思わず苦笑します。頼時の従者となった鶴丸も、いつも肩に力が入っていると評し、何がいけない!? と口をとがらせる頼時に「おもしろくない」と即答する初です。そんな頼時と初を見ていて、義村はそろそろふたりを夫婦にさせてやるかとニヤリとします。初を無理やりに八重に預けた縁を、義時はしみじみ感じます。

父を見習って真面目にがんばってきたのに、初に「つまらない」と言われて傷心の頼時は、義時に相談します。女というものをわかってないなぁ と言う義時ですが、義時自身も若いころに分かっていたかというと、それはそれで疑問符です(笑)。ともかく、女は寂しがるものだから大量の土産を持ちかえれば機嫌を直してくれるとアドバイスする義時です。「女子というものはな、だいたいきのこが大好きなんだ」

 

頼家を奪い取られた格好の側室・せつは、愚痴を比奈に話します。ずいぶん他人行儀に話を聞く比奈にイラッとするせつですが、比企だの北条だの、みんな家のことしか頭にないというのも寂しいものです。本音は鎌倉殿の跡を継ぐのは誰でもよく、自分を向いてほしいせつに、比奈はせつを政子の居室に連れて行き、助言をもらうことにします。

「いっそ思っていることをぶつけてみては?」と答える政子に、信じていない人にですかと眉間にしわを寄せるせつですが、政子から見て頼家は、信じないけれど信じたいと思っているように見えるわけです。あなたにしかできないこと、と背中を押され、せつは少し力をもらったような気持ちになります。

伊豆で訴えを一通り聞いた頼時は、約束は守らなければならないと説明しつつ、返す米がないと懇願する農民たちの目を見て証文を破り捨ててしまいます。借りた米をなかったことにし、鎌倉からその分の米を届けさせる。そして農民たちにも一人につき米一斗を支給することにしたのです。この判断により頼家は伊豆の農民たちからの評判が格段に上がります。

しかし逆に言えば、頼時の裁断で諸国の百姓たちが証文をないがしろにするきっかけを作ってしまいました。それを良く思わない頼家は、“褒美として”頼時に改名を命じます。間もなく征夷大将軍に任じられる頼家と同じ字を使っては心苦しかろうと、天下泰平の「泰」の字を与えたのです。頼家のもとで力を尽くすと決意する泰時に、頼家はその申し出を断ります。「それはもういい。お前はうるさい」

頼時の「頼」は頼朝の「頼」でもあるから、泰時としては納得できないのですが、義時にはもう忘れるように諭されます。そして目の前には大量のきのこが。初にあげたら全部突き返されたそうです。これまで心穏やかにしていた義時ですが、この時ばかりは「えっ!?」ととても驚いています。やはり女子というものを今の義時も分かっていなかったようです。ともかく泰時には踏んだり蹴ったりです。

 

粗削りされた頼家の人形が何体も並ぶ中で、「怨敵退散かんまんぼろん……」と何度も唱える全成。そこに実衣が入ってこようとしますが、全成は人形を隠して入ってくるなと慌てます。戸惑いながら実衣は出ていくのですが、人形らしきものを目撃してしまいます。ただ、それが頼家への呪詛とは思いもしません。

全成が呪詛をしているらしいと義時が時政を問い詰め、「ばかを言え! 鎌倉殿はわしの孫だぞ!」と時政は声を荒げます。しらをきる時政とりくに、余計なことはもうやめていただきたい! と義時は珍しく時政とりくに怒鳴りつけ、睨みつけたあげくに手を床にたたきつけて出ていってしまいます。あまりの剣幕に言葉を失うふたりです。

あるとき、念仏を唱えていれば何をしてもいいと民を惑わす僧たちが捕らえられ、頼家の前に連れてこられました。頼家は首を刎ねるように命じますが、時連は“鎌倉殿のためを思って”災いが起こると考え直しを求めます。頼家は、結局考えているのは自分の家のことだけだと腹を立てますが、我が子が災いするのは困ると、鎌倉から追放すると命じ直します。時連は深々と頭を下げます。

そんな頼家に立ちはだかったのは、政子からの助言を得て自分の気持ちを伝えに来たせつでした。頼家は、せつのバックにいる比企が煩わしいと聞く耳を持ちませんが、せつにとっては嫡男が誰とかはどうでもよく、頼家と話をしたいだけなのです。一幡のそばにいてほしいのです。そういう声さえ拒絶すれば、頼家はいよいよ一人になってしまう。せつにはそれがたまらず、力になりたいと心から願っています。

 

建仁2(1202)年7月、頼家は征夷大将軍に任官します。なかなか病気にならない頼家に、りくの怒りは全成に向けられます。この役立たず! と言われて、頼家の髪の毛があれば……と遠慮がちに言う全成は、夜、いつものようにひとりで蹴鞠を練習する頼家に近づきます。足音が聞こえ、頼家が振り返ったその先には、義時が立っていました。

鞠を蹴っている間は心が落ち着く──。頼家は、頼朝が心から笑っている姿を見たことがありませんが、今ならその孤独さが分かる気もします。義時は、頼朝が人を信じなかったことから、頼家が父を超えたいのであれば人を信じるところから始めてみては? と勧めます。「小四郎、決めたぞ。わしは一幡を跡継ぎにする」 そう決断させたのは、せつの言葉でした。せつとなら鎌倉をまとめていけそうな気がします。

頼家はもう蹴鞠に逃げることはしないと、指南役の平 知康にお役御免を言い渡し鞠を放り投げるのですが、受け取ろうとしてバランスを失い、井戸の中に転落してしまいます。頼家と義時とで縄を探し、知康を引き上げようと格闘するも、今度は頼家も落ち……。身を潜めていた全成が慌てながら加勢します。

なんとか二人を引き上げ、頼家は全成に礼を言います。改めてみると全成は頼朝に似ているようで「父と話しているようだ」と頼家は言います。全成も、こうしてみるとかわいい甥っ子だと笑います。頼家は鎌倉殿としての役目を負い日々戦っていると、頼家を慮ります。これは時連に言われたことが頭にあったからかもしれません。

 

全成は、呪詛に用いた人形を実衣の前に並べます。時政から依頼があってこの人形を御所の床下に並べ、頼家を呪詛していたと正直に打ち明けます。千幡が跡継ぎになって実衣に少しはいい思いをさせてやれるという気持ちもあったのですが、何の効き目もなかったと笑います。全成の気持ちが分かった実衣も心から笑顔を浮かべています。「全部集めてきたんでしょうね?」「大丈夫!」


作:三谷 幸喜
音楽:エバン・コール
語り:長澤 まさみ
題字:佐藤 亜沙美
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小栗 旬 (北条義時)
小池 栄子 (政子)
坂口 健太郎 (北条頼時)
瀬戸 康史 (北条時連)
堀田 真由 (比奈)
中川 大志 (畠山重忠)
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山本 耕史 (三浦義村)
市原 隼人 (八田知家)
横田 栄司 (和田義盛)
新納 慎也 (阿野全成)
宮澤 エマ (実衣)
小林 隆 (三善康信)
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片岡 愛之助 (北条宗時(回想))
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佐藤 二朗 (比企能員)
梶原 善 (善児)
佐藤 B作 (三浦義澄)
栗原 英雄 (大江広元)
坂東 彌十郎 (北条時政)
宮沢 りえ (りく)
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制作統括:清水 拓哉・尾崎 裕和
プロデューサー:大越 大士・川口 俊介
演出:中泉 慧

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