大河ドラマ鎌倉殿の13人・(26)悲しむ前に ~頼朝の後継争い勃発 鎌倉分裂危機~
意識を失って落馬した源 頼朝は、鎌倉御所で薬師の手当てを受けます。うっすら汗をかいているのが生きようとしている証としつつも、神仏の力をもってしてもあと数日の命との宣告を受け、言葉を失う北条一門。北条義時は、速やかに次の政の形を作るために頼朝の危篤を伏せ、畠山重忠や梶原景時には落馬を目撃したすべての人間を捕らえるように頼みます。数々の苦難を潜り抜けてきた頼朝が、と景時は険しい表情です。
──武家の棟梁の落馬。頼朝の命と共に、鎌倉殿の権威が消え去ろうとしている。主人を振り捨て、鎌倉が暴れ始める──
昏々と眠り続ける頼朝。その横で安達盛長は声を上げて泣きじゃくりますが、北条政子は厳しい表情でたしなめます。源 頼家の声を聞けば頼朝も元気を取り戻してくれるかもしれないと考えますが、頼家の到着はまだです。枕元でじっと見守っていた北条時政は、「よし! 決めた」と北条時連を伴って何ごとか外へ繰り出していきました。政子としては、余計なことはしてもらいたくありません。
比企館を訪れた義時は、内密にと断ったうえで頼朝が落馬で頭を強く打ったようだと比企能員に打ち明けます。義時が帰った後、能員は道とせつにそれを話し、心しておくように伝えます。いよいよ頼家の時代と考える能員ですが、まだ戻らない頼家の帰着予定をはっきり把握していなかったせつを叱りつけます。
時政は三浦義澄と時連を誘い、水垢離(みずごり)をして頼朝の病気平癒を祈願しますが、この真冬に冷水を浴びて途中で切り上げてしまいます。義澄にいたっては「わわわたしはやかかかか」などと何を話しているか分からないほど震える有り様です。りくは時政に、時政がいたから頼朝は挙兵でき、鎌倉を作ったのだから、それをみすみす人に奪い取られてはならないと叱咤します。
翌朝、時政は阿野全成を呼び、頼朝の跡を継ぐように勧めますが、全成は頼朝の身内は頼家がいるからと固辞します。しかし頼家はまだまだ若輩で鎌倉を任せられないわけです。北条のために還俗して継げと迫る時政に、全成は頭が真っ白になります。そして御台所になることになる実衣も驚きで口をポカンと開けたままです。
義時は、頼家が跡を継ぐための手順を大江広元に尋ねます。まずは朝廷から授かった日本国総守護の役職を頼家にすることを認めてもらうと答える広元ですが、朝廷のしきたりで喪中は昇進することはできません。義時は逝去前に駆け込みで願い出ることを即決し、広元も三善康信もすぐに動くことにします。
「親父から聞いたよ」と三浦義村が義時のところにやって来ました。義時は、頼家とつつじの間に子が産まれたら源氏の跡継ぎとなるため、その乳母父(めのと)を三浦から出してほしいと言い出します。義時が考えるに、これから北条と比企の争いが激化するため、三浦に間に立ってもらいたいわけです。義村は、乳母父の件は頼朝が言ったことにするのが条件と答えます。「ようやく三浦にも出番が回ってきたか」
二人きりになって話をしている全成と実衣。実衣は辺りを注意深く見まわしながら、もし全成が鎌倉殿を継いだら命を狙われないかと心配していますが、そうならないために力を持つんだと全成は心穏やかに諭します。そして実衣に、御台所になる覚悟があるのかを尋ねるのです。実衣は、政子にできたのだから自分も、と答えつつ、顔をこわばらせています。
政子は甲斐甲斐しく頼朝の世話をしています。寝ずに続けているせいか、その表情には疲れが見え、目の下にはくまも出ています。政子まで倒れたらいけないと、義時と比奈は世話役を代わります。そこに現れた八田知家は、高貴な人が亡くなった際の火葬の内容について義時と詳細な打ち合わせをしています。どうやら義時が知家に依頼していたようです。
時政に呼ばれた義時は、次の鎌倉殿は全成で行くと言われます。御台所は北条から出してるんだという自負がある時政ですが、喜ぶと思っていた義時の予想外の反応に、「りくの考えはわしの考えじゃッ」と声を荒げてしまいます。次の鎌倉殿になるための決意を固め、還俗に向けて髪を伸ばし始めた全成は、時政と義時のバチバチに圧倒されています。
全成が上に立てば、それこそ鎌倉は真っ二つに割れる──。そう考える義時に、北条と比企は競い合ってばかりと漏らす比奈。義時としては、その競い合いに比奈が板挟みになってしまうことだけは避けたいところですが、比奈は義時の横に来てニッコリとほほ笑みます。「ご心配なく。私は北条のおなごですから」
義時の指示を受け、知家ら数人は火葬場づくりに着手します。現場周囲には白布で目隠しをし、携わる人間もほんのわずかですが、頼朝の危篤を伏している以上、致し方ありません。知家は図面をもとに作業を開始します。
頼家がようやく戻って来ました。眠り続ける頼朝に政子は「頼家が戻って来ましたよ」と声をかけますが、反応はありません。頼家は、父の様子を見てもはや助からないと判断します。頼朝の危篤は一部の者だけの秘匿事項だったはずが、ウワサで広まりつつあることを知った頼家は、逆手を取って公にして自分が跡を継ぐ決定事項を御家人たちに知らしめるように義時に命じます。
すぐに御家人たちが集められ、頼朝が危篤するに至った経緯について説明会が開かれます。相模川での橋供養に参列、干しあわびを食べ、厠に立ち……と説明が続きますが、和田義盛や土肥実平らは「いったい何の話をしてるんだッ」といら立ちを隠せません。御家人たちが知りたいのはそれに至った経緯ではなく現在の頼朝の容態なのです。みんなが立ち上がって大騒ぎになり、収拾がつかなくなります。
知家たちによる「死んだときの」準備が夜通しで進む一方、頼朝の枕元では、背中を拭き手を握り口元を湿らすなど、政子の「生きるための」献身的な看護が続いています。広元と康信は、高貴な都人の場合、死が訪れたときに極楽浄土に行けるように臨終出家を提案します。義時はいよいよか、と頭を垂れます。
縁起でもないわ、と政子は即座に拒絶しますが、回復の見込みがないことは政子は分かっています。菩薩像の手と頼朝を糸でつなぎ、読経の中、烏帽子を取った康信が髷を切り落とします。「これが出て参りました」と、髷とともに比企尼が贈った小さな菩薩像を政子に渡します。あの観音菩薩像は捨てたと言っていた頼朝でしたが、そんなわけはなかったのです。政子はあまりの悲しみに涙を流します。
出家の儀式が終わったころ、火葬場も完成しました。実衣は、時政とりくの総意で全成が次の鎌倉殿になる決意を固めたと政子に伝えます。まだ早いと言う政子に、自分も御台所となって鎌倉殿を支えていくと表明しますが、「あなたに御台所が務まるものですか! あなたには無理です」 振り向いた政子にジッと睨まれ、実衣は何も反論できません。
頼朝と出会ったころに出したグミの実を、政子は枕元に置いてみます。疲れが極度にたまっていた政子は、そのままウトウトするのですが、ふと気づくと頼朝がいません。見回すと、頼朝は縁側で実を差し出し、「これは何ですか」と政子に聞いてきました。政子は歓喜で人を呼びます。しかし振り返ると頼朝は縁側で事切れていました。「佐どの……佐どの……」と頼朝を呼ぶ政子の声だけが響いていました。
完成したばかりの火葬場で頼朝は荼毘に付されます。お骨は御所の裏にある持仏堂に安置するため、義時は骨壺を運ぶ役目を盛長に依頼します。盛長はもっと適任者がいると固辞しますが、康信曰く最もつながりが深かった御仁が担う役目と聞き、「鎌倉殿も安達殿をお望みかと」と言われて引き受けることにします。
火葬場の解体作業を見守る義盛は、頼朝を恨んで死んでいった者たちが多くろくな死に方はしないと思っていた頼朝が、あっけない最期を迎えたことに「情けない」と口にします。重忠は、心から嘆き悲しむのは身内以外ではごく一握りであることに嘆かわしい気持ちになります。ともかく鎌倉は坂東武者の手に戻った、とつぶやく義盛には、もはや言うことはありません。
御所では頼朝の後継者をめぐって時政と能員が言い争いをしていました。能員は頼朝の遺志として頼家を挙げ、時政は全成を推します。広元はしばらく全成に任せ、経験を積んだ後に頼家に譲ってもらうと折衷案を提示しますが、「我らの誰にも決めることはできませぬ!」と義時は珍しく声を荒げ、政子に意見を求めることにします。時政は急にニッコリほほ笑んで賛同、一方能員は悔しそうな表情です。
義時に意見を求められた政子は、生前頼朝から政には口を出さないように言われてきたからと困惑しきりですが、好むと好まざるとにかかわらず、これからは御台所であった政子の沙汰で事態が左右することになります。「そういうお立場になったということです」と義時に諭されても、政子は戸惑いを隠せません。
政子は、鎌倉殿を継ぐ自信がないという頼家を呼び、かつて鎌倉に初めて来たときに夫婦で見下ろした町並みを見ながら、自分の跡を継ぐ立派な男子を産めと言われたという話をします。鎌倉を混乱から守れるのはあなただけ──。見つめる母に、姿勢を正して答えます。「かしこまりました、母上」 実は一度は固辞するように入れ知恵したのは景時で、あとは好きなように進めなさいと背中を押します。
2代鎌倉殿、源 頼家の誕生です。大きな柱を失い、このままでは再び戦乱の嵐が吹き荒れかねないと言う頼家は、頼朝の死を乗り越えて前に進めと号令します。御家人たちはこぞって頭を下げ、頼家への忠節を誓います。よし! と内心ガッツポーズの能員に、唇をかむ時政です。
「裏切りやがったな!」と、政子と義時に時政とりくの激しい罵詈雑言が浴びせられます。もういい! と気分を損ねた時政に、北条を思う気持ちは時政と同じ義時の、大きな壁が立ちふさがります。鎌倉あっての北条、鎌倉が栄えてこそ北条も栄える……。政子は全成に、頼家を助けてやってほしいと頭を下げますが、実衣の言葉が政子の胸を貫きます。「騙されちゃダメよ。力を持つと人は変わってしまうのね」
政子は改めて義時をねぎらい、義時は政子に礼を言います。伊豆に帰ると表明する義時は、頼朝に尽くしてきた自分は亡き後はもはや無用と言うのです。それぞれが私欲に走らず頼家を支えていけば鎌倉は安泰です。「これからの鎌倉に、私は要らぬ男です」 政子は去る義時を呼び止め、頼朝を支えたようにこれからは自分を支えてほしいと、頼朝が身に着けていた小さな観音像を義時に握らせます。
作:三谷 幸喜
音楽:エバン・コール
語り:長澤 まさみ
題字:佐藤 亜沙美
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小栗 旬 (北条義時)
小池 栄子 (政子)
坂口 健太郎 (北条頼時)
瀬戸 康史 (北条時連)
堀田 真由 (比奈)
中川 大志 (畠山重忠)
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山本 耕史 (三浦義村)
市原 隼人 (八田知家)
横田 栄司 (和田義盛)
堀内 敬子 (道)
新納 慎也 (阿野全成)
宮澤 エマ (実衣)
阿南 健治 (土肥実平)
小林 隆 (三善康信)
中村 獅童 (梶原景時)
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佐藤 二朗 (比企能員)
佐藤 B作 (三浦義澄)
栗原 英雄 (大江広元)
坂東 彌十郎 (北条時政)
宮沢 りえ (りく)
大泉 洋 (源 頼朝)
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制作統括:清水 拓哉・尾崎 裕和
プロデューサー:大越 大士・吉岡 和彦
演出:保坂 慶太
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