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2022年8月12日 (金)

プレイバック北条時宗・(16)将軍すげ替え

文永3(1266)年正月。北条時宗が連署に就任し、北条時輔が六波羅探題南殿に移って2度目の新年。いつも通り出仕する時宗ですが、時宗に続く家臣たちの列に、平 盛綱の後ろには召し抱えられた八郎の姿もありました。そして文永3年は日本にとって忘れることのできない、長い長い戦の幕開けでした。時輔は降る雪を眺め、浮かない表情です。

蒙古のクビライ・カアンは日本国王に書簡「大蒙古国皇帝奉書」をしたため、正使の黒的(ヒズル)と副使の殷弘に高麗経由で日本に向かうように命じます。高麗と日本は国交がないし、日本が拒む可能性もありますが、クビライは日本とよしみを通じたいのだから拒むわけがないと強気です。

博多の街では、謝 国明が終始不安そうな表情を浮かべます。宋から博多に渡って40年、故国を捨てた裏切り者と罵られ、銭の亡者と蔑まれもしてきました。そして今、故国を滅ぼそうとする蒙古に木材を届け、都を作り上げるというのは複雑な気持ちなのです。その言い尽くせない気持ちを吐露されて、佐志 房は笑って肩を叩きます。

美岬は桐子の艶やかな髪を梳きながら、博多に戻ってきたのに再び旅に出ることにため息です。今度こそ“蒼き狼”クビライと会話してみせると意気込む桐子は、母・ふきが死ぬ間際に「鱗を食らう龍の血が流れている」とつぶやいた話を美岬にします。一人でも強く生きていけるように励ましてくれたと言う桐子に、ふきは「ふぅーん」というだけです。

 

さて──その“鱗”の紋が入った盃を6代将軍宗尊親王に差し出して姫君誕生を祝う時宗と北条政村ですが、宰子が北条宗政の不手際で病にかかったと北条教時に言われて顔を見合わせます。宰子が出産の際に宗政の館を産所として使ったのです。示しを付けよと迫る北条時章に、知らぬ顔の宗尊親王。時宗は厳しい判断を求められます。

館に戻った時宗は宗政に事実確認を行いますが、宗政は誠心誠意尽くしてきたと弁明します。心外だ! と怒り狂う宗政に、しばらくは謹慎をと勧める政村ですが、その言い渡しが火に油を注ぐ結果となってしまいます。時宗は心当たりがないか再度確認しますが、怒りの矛先は、実兄と実母を追い出し見捨てた時宗に向かいます。「今度はわしを追い出そうとしておるのであろう? うまくいくとよろしいの!」

とはいえ、北条の非を絶対に認めるわけにはいきません。少々手荒なことが必要だと政村は吐き捨てます。ちょうどそこへ、宗政の館に移した涼子が喜々と久々に館に戻って来ました。声をかける時宗ですが、涼子は反応せずそのまま行ってしまいました。内にも外にも敵がいる……そんな八方ふさがりの時宗は、お先真っ暗です。

 

京の大番役として足利泰氏が赴任し、時輔と久々に再会します。泰氏は、隠居させられた身でも再び要職に就くこともあると時輔を励まします。「その言葉は聞き飽きました」と笑う時輔に、泰氏は今度こそ鎌倉が動くと打ち明けます。泰氏は名越北条と手を組む決意を固めます。時頼が亡くなり時宗が立派に成長する、今この時こそ好機と言うのです。

時章は宗尊親王に提案します。詫びを入れなければ無礼極まりないとふっかけ、詫びを入れれば詫び方が悪いとふっかける。そして執権政村と連署時宗の交代を要求し、思うままに操れる時輔を執権にして得宗家をなくしてしまう。その話を聞いた宗尊親王は、飼い殺しにされるぐらいなら何でもやるつもりではいますが、宰子については思うところはあるようです。

僧正・良基が祈祷にやって来ました。宰子は待ちかねていたように良基に近づきますが、それを遮るように桔梗が入ってきました。すでに宰子の浮気を知っている宗尊親王から、祈祷は止めさせよと言い遣ってきたのです。宗政の不手際で病気になる筋書きに、北条を崩すためと察知する宰子ですが、桔梗は不気味な笑みを浮かべます。「女子として……どうせ祈祷を頼まれるなら、もっと立派な方に」

 

思案にふける時宗。そこに弓の弦を手入れしていた八郎が入ってきました。時宗はいずれ時輔を鎌倉に呼び戻すつもりでいますが、人々に冷酷だと非難を浴びてばかりで自信がありません。出自の知れない自分を召し抱えてくれたことで感謝しかない八郎は、時宗ならできると励まします。そこに京から時輔が送った早馬が到着します。将軍御謀反の動きあり──。

宰子の密通と、名越が将軍をそそのかして仕組んだ悪事を掴んだ時輔は、北条時茂にも伝えます。京にいる時輔がどうしてそういう情報を知り得たのか不思議がる時茂ですが、北条得宗家の転覆を図る者にとって格好の道具だと自認する時輔は、いろいろと耳に入ることもあるわけです。自分を担ぎ北条を操ろうとするだけだと言う時輔は、ハッキリ言います。「用が済めばわしは消されましょう」

政村は、いよいよ将軍のすげ替え時だとつぶやきます。将軍を更迭して京に戻し、嫡男の惟康王(これやすおう・3歳)を7代将軍に据えるのです。いくら自分の命を奪うように命じたとは言え、更迭はやりすぎと時宗は納得できませんが、最終的にはしぶしぶ承諾します。ただし、将軍への更迭言い渡しは自らが行うことが条件です。追放はこれ以上したくなく、納得させたうえで更迭したいのです。

時宗は時輔に返書をしたためます。図らずも鎌倉の時宗と京の時輔は、将軍宗尊親王の更迭をともに推し進めることになります。無表情の時輔ですが、フッと笑みを浮かべます。

時輔と時茂は関白・近衛基平のもとを訪れます。北条はむごいと漏らす一条実経と西園寺実氏ですが、更迭を朝廷が認めるかどうかです。宗尊親王は後嵯峨上皇の皇子で、利用されたと上皇の逆鱗に触れれば戦が起こりかねません。それだけは避けたいと上皇を説得すべきですが、さすがの近衛関白も自分だけの力では説得できません。時輔は、鎌倉の名代として自分も行って頭を下げると答えます。

 

昼。時宗は単身鎌倉御所を訪れます。宰子の病気について詫びを入れるもんだと思っている宗尊親王ですが、時宗の様子がいつもと違います。宗尊親王と話をするために引付衆の時章と教時に席を外すように促す時宗に、逆上する教時ですが、時宗は返す刀で引付衆は解散すると宣言します。「連署として言い渡す! 下がられよ」と一歩も引きません。

そのころ宰子の居室には実時が来ていました。宰子の身柄を得宗家で預かるという実時に、どうして行かねばならないと不満顔の宰子ですが、実時は宰子の病気の内容を知っていると明かし、時頼の養女として将軍に嫁いだ経緯を持ち出して有無を言わせません。悪いようにはしないという実時に、宰子は衝撃を受けて目に涙を浮かべています。

宗尊親王と2人きりになった時宗は、嫡男の惟康王を次の将軍に据えることを伝えます。それが自分に将軍職を退かせる通告と悟った宗尊親王は、扇子を投げつけて激怒しますが、時宗は謀(はかりごと)の多い御仁とはこれ以上ともに働けないと、将軍の役目を果たした宗尊親王に感謝を述べて口を封じます。そんな勝手は朝廷が許さないと時宗を睨みつける宗尊親王ですが、時宗は動じません。

近衛関白は時輔がなぜ鎌倉を追放されたかようやく納得します。時輔は相当のキレ者で近くに置くには恐ろしい存在なのです。しかし近衛関白は恐れず、逆にそれぐらいの者を欲していたと打ち明けます。そして後嵯峨上皇が来ると、時輔の顔を見て「よき知らせではないようじゃな」とつぶやきます。

 

夕方。宗尊親王は、更迭したいなら我が子惟康を亡き者にし、北条のやり方を世に問うと不気味に笑いますが、時宗は逆に、宰子の病気のことを世に問う必要があると迫ります。宰子の密通も宗尊親王の企みも得宗家は情報を掴んでいると明かし、脅したくないから二人きりで話をしていると説得します。宗尊親王の戦意は完全に喪失し、考える時間必要じゃと座り込んで、無言になります。

そのころ宰子は、実時の先導のもと、生まれたばかりの姫君・掄子(りんし)を連れて得宗家の館に移ります。一足遅れて惟康王も時宗の館に到着しました。御息所(みやすんどころ=宰子)と若君、姫君が得宗家に身を寄せ、多くの者たちが鎌倉御所から逃げ出したことで、鎌倉の町はただならぬ空気に包まれていました。

時宗の思惑に気が付いた桔梗は、将軍を名越側に置かねば更迭されてしまうと、そうなる前に時宗から宗尊親王を奪い取れと教時に命じます。しかし時章は「もう遅い、戦になる」と教時を止めます。戦は望むところと言う桔梗に、得宗家とまともに戦っても勝てないからこそ、将軍にすり寄り足利にしっぽを振ってきたのです。桔梗は「意気地がない!」と言いながら、何も反論できません。

宗尊親王を蔑ろにすることは自分を蔑ろにすることと、後嵯峨上皇は良い気分ではありませんが、時輔は上皇を蔑ろにしていないと反論します。北条の後ろ盾があったからこそ後嵯峨天皇として即位できたわけで、今の上皇の立場があるのです。上皇は、惟康王に対して同じようなことがあれば承知しないとクギを刺し、今回のことはしぶしぶ承諾することにします。

 

日も沈みあたりは真っ暗です。宗尊親王が首を縦に振るまでは一歩も動く気のない時宗ですが、宗尊親王の手の者が時宗を襲撃しに来ると脅します。しかし親王の家臣たちはみな御所から離れ、周囲はとても静かです。ハッと我に返った宗尊親王は郎党を呼びますが、現れたのは時宗の郎党で、親王の郎党は誰も来る気配がありません。血の気が引いた宗尊親王は顔を覆って泣き崩れます。

文永3(1266)年、6代将軍宗尊親王はわずか3歳の嫡男惟康王に将軍職を譲ります。時宗にとってはとても辛い役目でした。

──蒙古襲来まであと2995日──


脚本:井上 由美子
高橋 克彦「時宗」より
音楽:栗山 和樹
語り(覚山尼):十朱 幸代
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[出演]
和泉 元彌 (北条時宗)
渡部 篤郎 (北条時輔)
浅野 温子 (涼子)
柳葉 敏郎 (安達泰盛)
木村 佳乃 (桐子)
西田 ひかる (祝子)
池畑 慎之介 (北条実時)
西岡 徳馬 (足利泰氏)
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原田 美枝子 (桔梗)
江原 真二郎 (高 師氏)
吹越 満 (宗尊親王)
白 竜 (北条時章)
井上 順 (一条実経)
大城 実 (西園寺実氏)
藤 あや子 (美岬)
バーサンジャブ (クビライ・カアン)
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伊東 四朗 (北条政村)
藤 竜也 (佐志 房)
清川 虹子 (如月)
北大路 欣也 (謝 国明)
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制作統括:阿部 康彦
演出:渡邊 良雄

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