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2022年8月30日 (火)

プレイバック北条時宗・(21)初陣

執権就任への決意を固めた北条時宗は、執権になってほしくない祝子と衝突します。いつも最も聞きたくない言葉を言う祝子を時宗はうるさがりますが、12歳で嫁いで時宗だけを見つめてきた祝子は、18歳で執権職は重荷だと案じているのです。様子を見に来た安達泰盛が妹をそっとたしなめると、主張を引っ込め静かに手をついて時宗を送り出します。

文永5(1268)年3月5日、時宗にとっては初陣に出るような気概を持って評定に臨みます。涼子の「上に立つ者が己を生きて初めて鎌倉に安泰が訪れる」、亡き時頼の「名でも位でもなく強きを咎め外敵に立ち向かえる者こそがこの国を治められる」との言葉を繰り返し噛みしめ、執権職として初めての評定の場に入っていきます。

そのころ京の時輔は、娘 篤子の「ちちうへ」という書き初めに顔をほころばせます。このまま親子3人で暮らしたいという望みを打ち明ける祥子に、時輔は“変わらない”ことが世で最も難しい望みだとつぶやきます。時が動き天下も動く今、今まで経験してきたように流されたくないからこそ、これからはなんでもするつもりである──。そしてそれが、時宗を執権に推挙した理由と説明します。

挨拶を済ませた時宗に北条時章は、蒙古が迫るこの時にどう鎌倉をまとめるのかを尋ねます。開かれた評定を目指しみなの考えを余さず聞くという方針を表明すると、連署に戻った北条政村は、気持ちではなくどう動くのかと迫ります。時宗は、西国の御家人たちに警護強化の下知を出し、蒙古には見合うだけの対等な国書を再び送らせることにします。「兵を用いる」という文言がある限りよしみは結べないのです。

 

博多の少弐資能の屋敷に呼ばれた潘阜は、ふたたびの国書を求められて戸惑います。それを求めればそれこそクビライの怒りに触れると危惧するのですが、無礼な国書は受け取れないと少弐景資は強気です。「戦? 受けて立とうではないか!」と殺気立つ景資に、それまで通訳をしていた謝 太郎も黙ってしまいますが、潘阜は訳されなくても雰囲気からおおよその言っていることを理解します。

日本は蒙古の恐ろしさを知らない──。少弐屋敷を辞す潘阜は、太郎に嘆きます。「このままでは我が高麗も危ない」とこぼす潘阜に、太郎は同情のまなざしを向けます。蒙古と日本の間に立たされた潘阜は、失意のまま高麗へ戻っていきました。そして鎌倉では蒙古の使者が追い返されたといううわさが広がり、蒙古がすぐに攻めてくるのではないかと不安や恐怖を訴える人々が日増しに増えていきます。

時宗は民衆に説明をしようとしますが、意味が分からなくてただ混乱するだけだと北条実時は難色を示します。泰盛は、それよりもまず時輔に官位を受けさせないようにせねば朝廷と結びついて強敵になると急かします。時宗は懐から書状を差し出し、時輔に送るように求めます。幕府から京に働きかけて官位を奪うと角が立つので、時輔から官位を“辞退”するように働きかけてほしいという内容です。

「時輔さんの任官、お上にお認め頂きました」と関白・近衛基平が伝えると、時輔は恭しく頭を下げます。時宗が執権を継いだ鎌倉をどこから切り崩すべきか。時輔は、北条時章、足利泰氏、将軍惟康親王の名前を挙げます。蒙古に対する時宗のどんな対応にも「それではいかん」と反対する人々の気持ちに付け込んで、少なからず不満がある今を狙うと力説するのです。基平は感心しきりです。

時輔に宛てた時宗の書状を持って上洛する泰盛に、上洛する以上は最後の決断をする覚悟でと松下禅尼は忠告します。「もはや時宗の文で時輔は動かぬ」と書状を奪い取って破り、幕府に盾突くような真似はするなと泰盛の言葉で時輔を説得するように求めます。もし不同意であれば、その時がまさに最後の決断をする時です。泰盛は破られた文を懐に入れ、時宗の気持ちだけでも伝えたいと出発します。

 

謝 国明は鎌倉の屋敷を閉め、みんなで博多に戻ることにします。鎌倉の海を眺める謝 国明は、亡くなった美岬の弔いが終わるまでは博多から動かないつもりです。佐志 房は勇がやったことと謝り、どんな形でもつぐないをさせてほしいと言いますが、友に謝られるほどつらいものはないと謝 国明はつぶやきます。「ならば金輪際わしに謝るな。それがお主のつぐないじゃ」

礼を言いたいと時宗は謝 国明の屋敷で帰りを待ちます。ふたたびの国書をクビライが出すかどうか意見を求められた桐子は、蒙古と日本の間に大きな海や広い大地があり、時宗の思いはいつの間にか脅威を感じる言葉に変わることもあるから「難しいのでは」と答えます。ただ信じるしかないのかもしれません。時宗は桐子に鎌倉に残ってほしいと思いを告白しますが、急な呼び出しで戻らなければならなくなりました。

得宗家の屋敷前では、民衆たちが暴徒と化していました。乱暴狼藉を働く者に耳を貸す者はいないと日蓮は彼らを制止し、この鎌倉を守るためには己を改めなければならないと説いています。そこに差し掛かった時宗主従ですが、平 頼綱は日蓮を蹴飛ばし、掴みかかり殴りつけます。「八郎!」と時宗は肩を掴みます。そこでようやく八郎は、フッと我に返ります。

 

手当てのために屋敷に入れた日蓮に、時宗は頼綱が無礼を働いたことへの謝罪をします。日蓮は蒙古が攻めてきて、大きな戦で民も失い国も滅びると時宗に訴えますが、日蓮が言うように教えに帰依すれば国が救われるということには反発します。国に住まう民を突き動かすのは心であり、その心を改めない限りは国が救われることはないと説得するのです。

時宗の弓を修繕していた頼綱に事情を聴くと、念仏に帰依する頼綱はそれを攻撃する日蓮だけはどうしても許せなかったようです。どんな考えも無下に蹴散らしてはならないと、頼綱に手荒な真似はするなと命じます。そして「もう一度戻ってくる」と桐子に約束した話ですが、日没前に船出したとかで、間に合いませんでした。「……これでよかったのやもしれぬ」

夜、満月を屋敷から眺める時宗と祝子。時宗がそっと祝子の方に手を回すと、祝子はフッと顔を赤らめます。このごろ祝子につらく当たってきた時宗は、今夜はやけに優しいです。祝子もわがままを申しましたと、これからは良い妻になれるように努めると約束します。この時の祝子はまだまだ子どもで、これから何が起ころうとしているかなど考えもしていませんでした。

 

泰盛がようやく六波羅探題南殿にたどり着きました。祥子と服部正左衛門が出迎え火鉢を用意し、土砂降りで冷え切った身体を温める泰盛は饒舌になりますが、時輔が現れた途端に黙ってしまいます。時輔は祥子と正左衛門を外させ、式部太夫の職を辞退するように勧めます。聞き入れなければ刀を持ち出す泰盛に、「任官を辞退させ聞かぬなら命を奪え」という時宗の考えかと時輔は問い詰めます。

泰盛が時宗のためにと言いかけると、時輔は辞退はしないと断ります。時宗が手を汚す覚悟で辞退を求めたのなら聞いてもいいが、果たして涼しげの時宗に泥をかぶる覚悟があるのかと挑むような笑みを浮かべます。泰盛は剣を置き懐に手を当てながら、天下のために事態を求めたと答えると、時輔は任官を辞退することにします。「時宗にお伝えくだされ。何も持たざる者がどこまでやれるか、よう見ておれ」

鎌倉幕府執権としての道を踏み出した時宗。その目前に広がる海のかなたでは、クビライとの大きな戦になる風が湧き起ころうとしていました。そして兄時輔との哀しい戦いを呼ぶもうひとつの風が、すでに時宗の目の前で吹き始めていたのです。

──蒙古襲来まであと2340日──


脚本:井上 由美子
高橋 克彦「時宗」より
音楽:栗山 和樹
語り(覚山尼):十朱 幸代
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[出演]
和泉 元彌 (北条時宗)
渡部 篤郎 (北条時輔)
渡辺 謙 (北条時頼(回想))
浅野 温子 (涼子)
柳葉 敏郎 (安達泰盛)
木村 佳乃 (桐子)
西田 ひかる (祝子)
池畑 慎之介 (北条実時)
ともさか りえ (祥子)
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川野 太郎 (少弐景資)
錦野 旦 (潘阜)
白 竜 (北条時章)
室田 日出男 (服部正左衛門)
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伊東 四朗 (北条政村)
奥田 瑛二 (日蓮)
藤 竜也 (佐志 房)
富司 純子 (松下禅尼)
北大路 欣也 (謝 国明)
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制作統括:阿部 康彦
演出:吉川 邦夫

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