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2022年9月13日 (火)

プレイバック北条時宗・(25)最後通告

礫(つぶて)騒動で大路に出て沈静化していた北条時宗は、人垣の向こうで桐子を見つけます。時宗は桐子に連れられて、日蓮の庵を訪ねます。日蓮はやがて説法のために出て行き、時宗と桐子はふたりきりになります。桐子は蒙古への歩み寄りを時宗に求めますが、出兵をちらつかせての歩み寄りはあり得ません。戦になった時の悲惨さを説く桐子ですが、桐子とこれ以上議論したくないと話を切り上げます。

時宗の帰りを待つ祝子は、戻ってきた時宗を見て姿勢を正して懐妊の報告をします。時宗21歳、祝子20歳。蒙古の影が忍び寄る文永8(1271)年、時宗の周辺でめでたいことが続き、時宗側近の平 頼綱の妻・禎子もみごもっていました。自分の子と時宗の子の出産が近いとみた頼綱は、禎子に時宗の子の乳母を務めるように命じますが、公家出身の禎子はムッとして頼綱に平手打ちします。

おめでたは京にいる北条時輔も同じで、妻の祥子が懐妊します。この子が産まれて成長したころには、日本は海の向こうの大陸に向かって国を開いているかもしれないとほほ笑む時輔です。側室の子として父に疎(うと)んじられ、道を見失いかけた時の蒙古の話で目が覚めた時輔は、国を開くことが自分の使命だと考えるようになったのです。ともかく時輔にとっては霧が晴れるような話です。

 

蒙古からの4度目の使節が博多の港に現れたのは間もなくのことです。今回の使者となった趙 良弼はクビライの秘書官という側近中の側近で、日本を動かしてみせると志願しての来日です。趙 良弼は鎌倉に連れていくように求め、今度こそ返書をもらわなければどうなるかと言って少弐資能と景資を怒らせますが、通訳の謝 太郎は「少弐は外国の使者を大宰府で留め置くのが役目」と苦し紛れの説明をします。

趙 良弼はうなずき、鎌倉に連れて行けないのであればこの国書を書き写して鎌倉に送り、すぐに返書をもらってくるように要求します。期限は2ヶ月──。期限内によい返事がもらえない場合は、蒙古兵を乗せた大船で博多の港を埋め尽くすと圧力をかけてきます。景資は何かいいたげですが、博多の街を荒らされるのを許容もできず、趙 良弼の言うように国書を鎌倉に早馬で届けさせます。

時宗は、焦燥感から博多に渡ると言い出します。安達泰盛は、この混乱に乗じて時宗を失脚させて幕府転覆を図る者が数多いる中で、執権自ら鎌倉を不在にするのはいかがかと時宗を見据えます。時宗の考えが間違えているとは思っていない北条実時は、これまでともに第3の道を探ってきたものの、蒙古は変わらなかったと諦め顔です。「改めて、戦か属国か道を選ぶ時がまいったのでござる」

その夜時宗は、九州や瀬戸内などの西国に所領を持つ御家人に対し、領地に赴いて蒙古からの襲来に備えるよう下知します。この九州下向の下知は、日本にとっても蒙古にとっても大きな意味を持っていました。これまで戦を避ける道を探ってきた鎌倉幕府が、戦も辞さぬ覚悟で蒙古に立ち向かう意思を固めたことを広く伝える結果になったのです。

 

いよいよ蒙古と戦になると服部正左衛門は明るい表情ですが、時輔は戦にしてはならないと厳しい表情です。戦をするよりやらなければならないことがあると時宗を説得しに鎌倉に向かうことにします。祥子から、時輔が無理をしないように言い遣っている正左衛門は、時輔の鎌倉行きに同行するつもりですが、懐妊した祥子と篤子を守るように留守を守るよう言い渡されます。「無理をしておるのは時宗のほうじゃ」

九州下向は命がけだし金もかかると、北条時章が断りを入れに来ました。弟の教時は鎌倉で迎え討てばいいと主張しますが、蒙古が鎌倉にまで迫った時は日本が負ける時だと北条政村は鼻で笑います。何としても西国で食い止めるために幕府の人間が誰も行かなければ士気も上がらないと説明する時宗に、時章は時宗自ら行けばいいと吐き捨てるように言って出ていきます。

礫騒動が続く鎌倉大路で法華経を唱えよと叫ぶ日蓮は頼綱に捕らえられます。民を惑わせているのは時宗と言う日蓮に暴行を加える頼綱を、駆け付けた時宗は止めます。戦が始まればたくさんの民が苦しむわけで、その戦に向かおうとする時宗が間違いだと断罪する日蓮は、父の北条時頼も日蓮が唱える立正安国論を果たさなかったから、今ごろ地獄に行っていると言いたい放題です。

自身を批判するのはまだしも父を愚弄するのが許せなかった時宗。日蓮の処分を任された頼綱は夕刻、日蓮は極楽寺の切通を抜け竜の口刑場へ連行します。日蓮の斬首を止めさせようと涼子が宗政屋敷から駆け付けます。時宗が怒りを感じた、最明寺殿は地獄におられるという言葉こそ、時宗が考えまいとしていたことではないのかとズバリ指摘されます。「日蓮どのを斬れば父が地獄におると認めたことになる」

 

偽りに生きる人間に言い残すことなどない。「見えるだけじゃ。そなたの中に潜むよこしまな心が」 日蓮の言葉に、北条長時を暗殺した時の過去がフラッシュバックします。日蓮を睨みつけた頼綱が「斬れ」と命じると、暗黒の夜空に雷鳴が轟き、介錯人が吹き飛ばされます。代わりに頼綱が刀を振り上げたところで、宗政が馬で駆けつけます。祝子が懐妊中のため、殺生はならないとの時宗の命令です。

斬首を免れた日蓮は、この後佐渡島へ流罪となりました。これが後の世に語り継がれる「竜の口の法難」でした。

日本の国も時宗も、怒涛のような混沌の中にいよいよ突き進もうとしていました。そしてそこに時輔が京から到着しました。結局正左衛門を伴ってやってきたのですが、時輔は感慨深い思いにひたります。時宗にすべてをぶつけようと思っているのはあの時以来──。あの時とは時輔時宗兄弟がまだ若かりし頃、由比ヶ浜で小笠懸に挑んだ時のことです。時宗は立ち上がり、時輔の待つ対面所へ向かいます。

──蒙古襲来まであと1114日──


脚本:井上 由美子
高橋 克彦「時宗」より
音楽:栗山 和樹
語り(覚山尼):十朱 幸代
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[出演]
和泉 元彌 (北条時宗)
渡部 篤郎 (北条時輔)
浅野 温子 (涼子)
柳葉 敏郎 (安達泰盛)
木村 佳乃 (桐子)
西田 ひかる (祝子)
池畑 慎之介 (北条実時)
ともさか りえ (祥子)
寺島 しのぶ (禎子)
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川野 太郎 (少弐景資)
白 竜 (北条時章)
修 宗迪 (趙 良弼)
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奥田 瑛二 (日蓮)
室田 日出男 (服部正左衛門)
伊東 四朗 (北条政村)
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制作統括:阿部 康彦
演出:城谷 厚司

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