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2022年9月11日 (日)

大河ドラマ鎌倉殿の13人・(35)苦い盃(さかずき) ~私は潔白!怒る重忠 時政りく暗礁~

居室に置かれていた無数の和歌の写しから、源 実朝は
道すがら
 富士の煙も わかざりき
  晴るるまもなき 空のけしきに
という歌が好きだと政子に打ち明けます。政子は驚いた様子で、それは父の頼朝が詠んだ歌だと教えてくれます。狩りに出たものの天気が悪く、しかし帰るころになって富士がはっきり見えた……。政子は、実朝も不安があるかもしれないが、父上もそうだったと微笑みます。「励みにして。鎌倉殿も歌を詠んでみては」

──実朝の婚礼が近づく。その陰で、時政とりくは息子を失っていた。不可解な死の真相を巡り、駆け引きが始まる──

食事中、北条義時は実朝の御台所が今年中に鎌倉に来られると話をしています。のえは、早く跡継ぎが出来ればいいと言っていますが、跡継ぎと言えばりくが北条の跡継ぎにしようと必死だった北条時政との子・政範は16歳で亡くなりました。それを見ているだけに義時は子を持つ苦労を吐露するのですが、のえは、義時の跡継ぎは太郎泰時で満足! とニッコリします。

しかしのえの本音は、満足なわけがありません。必ず義時との間に男子を成し、北条の跡継ぎにしてみせると祖父の二階堂行政に訴えます。「そうでなければあんな辛気臭い男には嫁ぎません!」 のえの本性を知ってしまった泰時は、義時に伝えるべきか初に相談します。泰時の母になる人でもあるし、関わらないほうがいいと助言されていますが、それでもああだこうだひとり言をブツブツ言って行ってしまいます。

 

元久元()年12月10日、実朝と結婚するために後鳥羽上皇の従妹・千世が鎌倉入りを果たします。政子と実衣が対面しますが、りくは政範が亡くなった衝撃で千世と対面しようとしません。時政は割ってしまった皿を例えにりくを励ましますが、火に油を注ぐ結果になってしまいます。ただ、時政の気持ちもわかるだけに、もう大丈夫とりくは気丈に振る舞い、実朝と千世の婚儀に出席します。

京から戻った畠山重保(重忠嫡男)は、政範が亡くなる前の晩に平賀朝雅が政範に毒を盛る企てを耳にしたと義時に打ち明けます。政範の死後、朝雅を追及した重保ですが、のらりくらりとかわされたそうです。そのころ朝雅は、重保が政範に毒を盛ったとりくの耳に入れます。重忠が武蔵国について北条と対立していることを持ち出し、しかも重保は朝雅に罪をなすりつけようとしていると訴えるのです。

政範の仇を取ってくださいとりくは時政に伝えます。重忠の妻はちえで時政の娘ですが、りくの血縁ではありません。政範は北条家一門ではないという扱いに思えたりくは逆上し、全身全霊で時政を睨みつけます。「政範は殺されたのですよ? 畠山を討ってちょうだい!」 時政はあまりの評定に唖然としてしまいます。

朝雅に事情を聴いた義時は、政範の死後すぐに荼毘に伏した不審点を挙げ、夏ならともかく遺体を京から鎌倉へ移すこともできたはずと追及していきます。服毒すると骸の顔色が変わるのですぐに分かる……。無礼な! と吐き捨てて立ち去る朝雅を目で見送り、義時はじっくりと思案しています。

義時はこの件はすぐに答えを出すべきではないと言いますが、りくは今すぐに畠山を討てと息巻いています。時政としては重忠は立派な婿で事を構える相手にはしたくない相手であると同時に、政範は大事な息子だったわけです。畠山を討つという時政の決断に、誰が相手であれ、実朝の花押を添えた下し文がない限りは勝手に戦をすることはできないと父を諫めます。

父は戦うつもりでいる……と義時は三浦義村に愚痴をこぼします。義村は重忠を甘く見るなと忠告します。重忠は優男ながら必要なら立場を変える男でもあるのです。義時はいい機会にと縫物をしていたのえを呼び、義村に紹介します。のえを下がらせた後、惚れているのか? と尋ねる義村は、気になる点を指摘します。「指に飯粒がついていた。握り飯を食べながら裁縫するやつがいるか?」

 

筆を持つ実朝の手が止まったままです。あまり筆が進みませんね、と講釈をする三善康信は笑います。京での生活が長かった康信でさえ、京の都で千世のような気高い女性は見たことがなく、実朝の気もそぞろになるのは仕方のないことなのかもしれません。実朝は、控える泰時の顔を見ると、康信に休憩をしたいと言います。

義時は政子に、りくと話をしてもらいたいと相談します。政範を亡くして気が滅入っているところに、朝雅にあることないことを吹き込まれているわけです。政子が話を聞けば少しは落ち着くかもしれません。やってみます、と政子は協力してくれることになりました。その間に義時は、重忠と話をしてくることにします。戦にしてはなりませんよ、との政子の言葉に、頷く義時です。「なんとか食い止めましょう」

泰時とふたりきりになった実朝は、泰時の妻・初についてどんな女子かと尋ねます。なかなか気が強くしかられてばかりです と苦笑する泰時を見て、文句を言っているのに惚気にしか聞こえないと微笑みます。気晴らしに表に出たいと言ってスタスタ行ってしまう実時に、呆気にとられる泰時です。

早速政子はりくの居室を訪ねますが、3人の子どもを亡くした政子の前で、意外に気丈に振る舞っています。そこで政子は重忠の話を持ち出し、畠山を討つなどとんでもないと諭します。りくは何のことだか分からないといった表情で、畠山が政範暗殺に関わっているという噂にも動じません。「もう御家人同士が殺し合うのはたくさん」とつぶやきつつ、活けていた花を隠した怒りでチョキンチョキン切っています。

再度重保に事情を聴く義時に、朝雅と並んで詮議すればどちらがうそをついているか分かると重忠は主張します。しかし朝雅は京へ戻っていってしまいました。後鳥羽上皇の近臣でもある朝雅を討ち取れば朝廷と事を構えることになると言う義時に、重忠は珍しく感情を露わにして拳を床にたたきつけます。「我らが言われなき罪で責められてもよいのか!」 戦支度はさせてもらう、と武蔵へ帰っていきます。

 

実朝と泰時は、再び和田義盛の館を訪問していました。義盛とは気兼ねなく話せて心が落ち着くのです。堅苦しいところにいたら息が詰まるだろうと、義盛は実朝を占いをする歩き巫女のおばばのところへ案内します。実朝を占ったおばばは「雪の日は出歩くな! 災いが待っている」と告げますが、雪の日は滑るから出歩かないほうがいいと義盛にツッコまれています。

時政を呼び出した義時は、頼朝に拾われた重忠は忠義一徹の男であり、畠山に罪をなすりつけようとする奸臣の讒言と説明します。朝雅が時政の次の執権の座を狙っているとすれば、すべて説明がつくのです。真偽を確かめずに重忠を罰すれば必ず後悔すると時政にくぎを刺します。畠山討伐は待ってほしいとの義時の申し出に、力強く頷く時政です。

屋敷へ黙って引き下がってきた時政に「畠山は討たなければならないのです!」とりくの挑発は続きます。梶原景時に比企能員がどうなったかを考えれば、より多くの御家人たちを従えなければすぐに滅ぼされるのです。畠山や足立を退けて北条が武蔵全てを治める。無理のし過ぎだとりくをなだめますが、次は自分の番かもしれないと危惧するりくに、鎌倉殿の花押をもらうために御所に向かえと要求されます。

 

夜、御所に向かう時政ですが、立ちはだかったのは実衣でした。どうにかして通してもらおうと時政も負けてはいませんが、実衣に有無を言わさず追い返されてしまいます。とぼとぼと帰途につく時政は、御所内が大騒ぎになっていることに気が付きます。近くにいた北条時房が近習たちに事情を聴くと、実朝がいないというのです。

実朝は、まだおばばのところにいました。悩んでいるらしいことに気づいたおばばに実朝は、妻を娶るも自分の関わりないところですべてが決まったと打ち明けます。お前の悩みはどんなものであってもお前ひとりの悩みではない。昔から同じことで悩む者がいて、この先も同じことで悩む者がいる。「お前ひとりではないんだ。決して」 おばばの励ましに、つい涙ぐむ実朝です。

まだ実朝が見つかりません。康信は実朝にもしものことがあったらと嘆きますが、その様子を八田知家が見ていました。そのころ実衣や時房は政子のところに集まり、時政が実朝に会いたがっていたと報告します。これは時政が畠山討伐の許しを強引にでも得ようとしていると感づいた政子たちは、時政を館に帰るように促します。素直に帰るそぶりを見せる時政ですが、そんなはずはありません。

実朝たちは和田館に戻り、どんちゃん騒ぎをしています。そこに姿を現した知家が、御所で大騒ぎになっていると伝えたらしく、実朝は急いで戻ります。歓喜する康信の姿を陰から見て実朝が戻ったと確信した時政は実朝の居室に忍び込み、にっこり微笑んで書状を差し出し、花押を求めます。実朝は何のことか分からないまま筆をとります。

義時は武蔵の畠山屋敷まで来ていました。義時は重忠に、時政の気持ちが変わらない前に、実朝に対して潔白を誓う起請文を出すように助言します。重忠は戦となれば一切容赦はしないとつぶやき、時政と戦になったらどちらに味方するかと尋ねます。答えに窮する義時ですが、時政につくのは分かっています。「北条の邪魔になる者は必ず退けられる。本当に鎌倉のためを思うなら、あなたが戦う相手は……」


作:三谷 幸喜
音楽:エバン・コール
語り:長澤 まさみ
題字:佐藤 亜沙美
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小栗 旬 (北条義時)
小池 栄子 (政子)
坂口 健太郎 (北条泰時)
瀬戸 康史 (北条時房)
中川 大志 (畠山重忠)
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市原 隼人 (八田知家)
横田 栄司 (和田義盛)
宮澤 エマ (実衣)
小林 隆 (三善康信)
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大泉 洋 (源 頼朝(回想))
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山本 耕史 (三浦義村)
菊地 凛子 (のえ)

大竹 しのぶ (歩き巫女)

栗原 英雄 (大江広元)
坂東 彌十郎 (北条時政)
宮沢 りえ (りく)
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制作統括:清水 拓哉・尾崎 裕和
プロデューサー:大越 大士・川口 俊介
演出:保坂 慶太

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