プレイバック北条時宗・(28)あの兄を討て!
鎌倉に戦は起こすまいと誓ってきた北条時宗でしたが、売られた喧嘩を買う形で初めての合戦を迎えていました。側近平 頼綱は、自身の到着が遅れたために幸寿丸を危険にさらせてしまったと、手負いではありますが合戦に加わって敵を滅ぼす気概を見せますが、安達泰盛はこれを許しません。頼綱の必死のお願いに泰盛はフッとため息をつき、無駄死にすることだけは許さないと渋々承諾します。
文永9(1272)年2月11日、「二月騒動」の始まりです。
名越家では、北条時章は時宗に詫びを入れ、下手人を差し出すことで許しを請おうとします。教時はなぜと疑問に思いますが、桔梗は時章が怖気づいたとけなします。得宗家を倒すことだけを考えても、蒙古を前にどう国を治めどう蒙古に対するかを見定めなければ民衆は従わないし戦は繰り返すばかり。それに気づいた時章は教時を説得しますが、時宗勢が迫って来ていることを知ります。
時宗はこれまで戦を起こさせまいと力を尽くしてきました。しかし表面上の安泰は御家人から活躍の場を奪い、憎み合いを増やしていたかもしれないと考えると、これまでのやり方は間違えていたのかと考え込みます。北条実時は、陰謀の芽を探る役目を背負いつつも、息子の北条顕時の無事を祈っています。政とは、矛盾を抱えながら行うものと諭します。「決して執権殿は間違うてはおられませぬ」
名越館に押し入った軍勢は、応戦する兵たちを斬り倒しながら奥へ奥へと進んでいきます。時章や教時がなかなか見つからず、逃げたかもしれないと北条宗政の頭をよぎりますが、ちょうどそこに教時が姿を現します。ふたりは斬り合いとなり、教時に刀を突きつけて抑え込みますが、戦って死ぬのが本望とその刀で自ら首を斬ります。
頼綱がお堂に駆け込むと、時章が鎧もつけずに座っていました。そもそも武士はそれぞれの志を立てて生きるものであり、蒙古に対して鎌倉を1つにまとめるのであれば、志の異なる者たちを束ねるのも執権の役目である。その覚悟を求めた時宗への伝言として頼綱に伝えた時章は、そのまま腹を斬って自害します。桔梗が刀を持って頼綱に襲い掛かりますが、泰盛勢の救援もあってたちまち捕らえられます。
時宗軍は大勝利を収め、目の前に時章と教時の首桶が並べられます。戦勝は喜ばしいことではありますが、時宗も家臣も付き従った兵たちも誰ひとりとして笑顔の者はおらず、時宗と実時が片膝ついて黙って手を合わせます。戦という形で謀反を食い止め、新たな気持ちで蒙古に立ち向かおうと決意します。しかしこのことは、まだ京には届いていませんでした。
六波羅探題南殿に入っている北条義宗に、2ヶ月の間 博多に行っていたとあっさり告白した北条時輔は、国を開くために行ったことを時宗に伝えてほしいと頼みます。そして自らも鎌倉に向かうわけですが、その前に趙 良弼との約束を果たすべく、蒙古との交渉をはじめ国を開く用意を整えなければならないわけです。
宗尊親王の前に上がった時輔は帝の親書を求め、国を開くために時宗を説得すると伝えますが、宗尊親王から時宗を討つ計画が進んでいることを伝えます。いま謀反を起こせばそれこそ日本は散り散りになると訴える時輔ですが、宗尊親王と時輔とで幕府を支えればいいことだと流されてしまいます。宗尊親王は衝撃を隠し切れない時輔に、こちらに味方するか時宗とともに葬られるかを迫ります。
時宗の前に連行された桔梗は「殺せ! 殺せ!」とわめいています。首謀者は時輔だと言い出した桔梗を一笑に付した時宗ですが、子が生まれれば人は変わると桔梗は主張します。現に戦はしないという時宗は、幸寿丸を襲われて兵を挙げました。朝廷の使いとして博多に赴いた時輔に確かめよと言われ、時宗は激しく動揺します。「すべてを奪われたことのないそなたに、決してわからぬことじゃ!」
はじめは桔梗の言い分を信用していなかった時宗ですが、桔梗や、名越館に潜んでいた宗尊親王の側近・中御門実隆からも時輔の名が挙がり、さらに義宗からの書状がダメ押しとなり、時輔が博多へ向かったことは確実と思われました。時宗は、朝廷の使いとして動いたのであれば、執権としてこれを許すことはできないと言い、評定の席を立ちます。
時宗に取って変わるつもりはないと、時輔は自らの考えをはっきり宗尊親王に表明して誘いを断ります。謀反では世の中は何も変わらないと宗尊親王に進言しますが、そこに名越の2人が討ち取られ桔梗も捕らわれたとの報告がもたらされます。謀反に加担したものはみな首を刎ねられると慌てふためく宗尊親王たちを置いてけぼりにして、黙って屋敷を後にします。
時輔は家族と家臣を集め、今回の謀反に自分は一切かかわっていないと伝えます。当たり前です、と祥子は笑みをこぼしますが、時宗も自分を信じるでしょうが、鎌倉にいる者は疑いを持つ者もいると打ち明けます。時宗に書状を送り潔白を表明するつもりですが、家族や家臣たちは動揺しないようにと伝えるのです。
時輔に対しての時宗の決断について、判断が甘ければ執権を退いてもらうことも考えなければと言う北条政村と、執権は時宗をおいて他にはないと主張する泰盛の間で言い争いになります。実時はため息をつきながら、兄弟の絆が深いからこそ対立しなければならないのであろうと時宗を慮ります。それを聞いて政村と泰盛は黙り込んでしまいます。
泣きじゃくる幸寿丸をあやす祝子ですが、そこに時宗がぬっと現れ、幸寿丸を抱っこします。祝子は幸寿丸が襲われるようなことが二度とないようにと時宗にお願いをします。もし幸寿丸に何かあれば鬼にも夜叉にもなると言う祝子に、時宗は祝子に鬼や夜叉にはさせないと約束してくれます。「もし夜叉になるなら……わしがなる」
「兄上の処分を決め申した」 評定の席に最後についた時宗は神妙な面持ちで話し始めます。謀反の芽を絶つため、蒙古に相対するため、兄を討ち取る──。義宗にそのことを伝えるように頼綱に命じます。
時宗への書状を書き上げ、時輔はそれを服部正左衛門に託します。そこに六波羅探題北殿の義宗が兵を集めているという報告があり、男たちの雄叫びの声が近づいたと思うと屋敷が襲撃され始めます。飛んでくる矢を叩き落としながら、時輔は祥子を守ります。屋敷の外では兵たちに号令をしながら、義宗が矢をつがいます。
鎌倉では時宗も矢を放ち、矢は的のど真ん中を射抜きます。それを見て力が抜けへなへなと座り込む時宗です。
──蒙古襲来まであと968日──
脚本:井上 由美子
高橋 克彦「時宗」より
音楽:栗山 和樹
語り(覚山尼):十朱 幸代
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[出演]
和泉 元彌 (北条時宗)
渡部 篤郎 (北条時輔)
柳葉 敏郎 (安達泰盛)
西田 ひかる (祝子)
池畑 慎之介 (北条実時)
ともさか りえ (祥子)
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原田 美枝子 (桔梗)
吹越 満 (宗尊親王)
白 竜 (北条時章)
井上 順 (一条実経)
大木 実 (西園寺実氏)
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室田 日出男 (服部正左衛門)
伊東 四朗 (北条政村)
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制作統括:阿部 康彦
演出:吉村 芳之
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