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2022年9月 4日 (日)

大河ドラマ鎌倉殿の13人・(34)理想の結婚 ~権力握る執権・時政 実朝の嫁とり~

夏の日、北条義時は、源 頼朝が亡くなった時に北条政子から形見としてもらった小観音像を、息子北条泰時に譲ります。頼朝の子(頼家)と孫(一幡)を手にかけたこともあり、持つに値しないと判断してのことです。泰時は、いただくわけにはいかないと固辞しますが、背後から鶴丸が「もらっておけ!」と小声で背中を押します。泰時は恐る恐る義時を顔色を窺います。

泰時は義時の真意を測りかねています。形見の小観音像を持っていると心が痛むので、息子に押し付けたのだとどちらかというと被害妄想です。妻の初には「そんなふうに思わなくても」とたしなめられますが、それだけのことをやってしまったのだから、小観音像を持つことでその罪に苦しまなければならないと考えています。泰時は義時を嫌いなんだと感じた初は、義時に後妻はこないのかと別の心配をしだします。

──謀反の疑惑とともに頼家は世を去った。実朝が鎌倉殿として政治の表舞台に立つ。しかし実権を握っていたのは、執権 北条時政──

成長した三代将軍・源 実朝は、今日から訴訟の裁きに立ち会うことになりました。といっても始めのうちは見学のみで、いずれは沙汰を出してもらうことになります。見学の後は八田知家による薙刀、和田義盛による弓、大江広元による政講釈、三浦義村による処世術……。多すぎませんか!? と実衣は思わず声に出しますが、じっくりと学んでいけばいいと北条時政はにっこり。「鎌倉の面倒は、万事このじいが見ますゆえ」

源 仲章による和歌の講義は、仲章が京に戻っているためにお休み中です。蔵の中には頼朝が取り寄せた和歌集がたくさん眠っており、持ち出せないと広元にくぎを刺された政子は、それを一部書き写しておきました。直接渡すのも、実朝を追い詰める形になるために、それを実朝の目につくところにさりげなく置いてほしいと三善康信に依頼します。

 

甲斐の山から届いた鷹の羽と鷲の羽、利根川で採れたばかりの鮎、これらは訴訟の当人たちによる時政の取り計らいを期待して献上したものです。こういうふうにして献上品が時政の館にたくさん集まり、りくも笑いが止まりません。平賀朝雅に頼んでおいた、実朝の御台所探しもつつがなく進んでいるようで、上手く縁付けば北条は帝の縁者になるとニヤリとします。

夜遅く、時政は畠山重忠を呼び出します。武蔵国を支配していた比企能員はすでに亡く、空き地に時政が入ることになったわけですが、時政は重忠を武蔵守に推挙することにします。身に余る光栄といいつつ困惑する重忠です。畠山家で代々受け継ぐ「総検校職(そうけんぎょうしき)」という役目があるのです。時政は有無を言わさず総検校職を返上させると決め、お開きとなりました。

重忠は義時に相談します。将軍の名で朝廷へ申請すれば通らぬこともないのですが、そもそも時政の一存で官位を決められるものではありません。重忠は、時政が武蔵国を奪い取り、それにかかわる者たちから官位をはく奪しようとしているのではないかと疑います。「武蔵を脅かすようなことがあれば、畠山は命がけで抗(あらが)う覚悟」

お裁きの場でも、内容によってはスルーしたりお裁きをやめて鮎を食べようと言い出したりと、時政の勝手な振る舞いは目に余り、義時はさすがに父の行動をたしなめますが、時政は付け届けを受け取って便宜を図ることへの悪事の自覚がありません。続けて義時は、武蔵をどうするつもりなのかと問い詰めます。畠山と一戦交えるつもりかと言われ、そんなことは言っとらん! と声を荒げて出ていきます。

 

実朝の御台所候補の父・坊門信清は後鳥羽上皇の母と姉弟の関係で、近年力を伸ばしつつある公家です。あまりの血筋に驚く実衣は俄然乗り気です。頼家を亡くしたばかりの政子は、実朝の先のことなどまだ考えられないわけですが、さっさと決めてしまいましょうとの実衣の言葉に押されます。御家人の娘を嫁に取れば争いの種になりかねないので、政子はしぶしぶ承諾します。

実朝の結婚が決まり、元久元(1204)年10月14日、前権大納言・信清の娘を迎えに北条政範が京へ出発します。甲斐甲斐しく実朝の世話をする泰時は、近ごろの実朝の顔色がすぐれないと義時に打ち明けます。実朝は頼家とは違い自分の気持ちを語る性格ではないようで、周りの者が察する必要があると報告します。泰時の去り際、義時は伝えてくれた礼を言います。

義時は結婚のことで広元らに呼び出しを受けます。てっきり実朝の話だと思っていたら自分の後添えの話で、評定衆・二階堂行政の孫娘「のえ」という女性です。義時は慌てて固辞しますが、孫娘では気に入らないかと行政はがっかりします。ひとまず一度会ってみてはと広元に言われ、何も言い返せない義時です。

義時は知家を酒に誘います。時政の独断が目立ちすぎ、文官たちは義時を味方に引き込みたいのだろうと分析する義時は、むげに断れず、行政がのえを連れてきたときに人となりを見定めてほしいと知家に頼むのです。本来であれば義村に依頼するところ、イマイチ信用できないということで、酒を勧めながら義時は知家に頭を下げます。

 

京では朝雅が政範たちを出迎える準備で大忙しです。政範はいずれ執権別当となる人物と自慢げに話しますが、仲章は朝雅に執権別当になる気はないかとそそのかします。北条嫌いの上皇は、源氏の血筋の朝雅と実朝が鎌倉を治めてほしいわけです。政範が亡くなり朝雅が千世を連れて鎌倉に凱旋すれば、時政は必ず朝雅を選ぶはずだと。「政範どのは鎌倉を離れている。この意味がお分かりになりますか」

朝雅に助言をするというのはもちろん上皇の差し金です。乳母の藤原兼子は上皇のまたの企みに驚きもしませんが、実朝を支えるのは京に近い血筋の者でなければならないという上皇の考えです。特に朝雅は上皇に気に入られようと必死で、仮にその朝雅が執権になれば、朝廷から鎌倉を動かしやすくなるわけです。ともかく仲章は、朝雅になにかを渡したようです。

上皇の側近・慈円の実兄は九条兼実です。後白河法皇亡き後、しばらく朝廷を牛耳っていましたが、今は政から離れています。鎌倉はこの先どうなるとの兼実の質問に、世の理に反すれば必ず鎌倉は潰れると答える慈円です。大事なことは朝廷の繁栄であり、源氏も北条もこの先ないと感じた兼実は、そのために上手く働いてくれるよう慈円に頼みます。

義時はのえと会話を交わします。肩に落ちた枯葉をそっと取るなど十分すぎるほどです。ふたりの様子を眺めていた知家は、非の打ち所がないとのえを絶賛します。裏には別の顔があるという部分を心配している義時ですが、薙刀をふるいながら「裏表なし! あれはそういう女子だ」と言われ、義時の心は決まったようです。

11月3日、政範たちが京に入ります。人懐っこい表情を浮かべて迎え入れる朝雅です。しかし京に到着してから2日後、政範が突然この世を去ります。享年16。急な病であったと言われていますが、真偽のほどは不明です。知らせを受けた時政はあまりの衝撃に言葉を失い、後日遺髪が届けられてりくは狼狽えます。

 

のえが義時館にやって来ました。北条時房に一礼するのえは、女子にはきのことの情報が頭から離れない義時からきのこの山盛りを贈られて「きのこ大好きなんです!」と大喜びします。庭に入ってきた比奈との子、にも明るく話しかけ、継母を受け入れられない子どもたちと追いかけっこを興ずるなど、その様子を見ていた時房は「いい! とてもいい!」と大笑いです。

のえは、義時は苦しい決断をこれまでいくつもしてきたと行政からいろいろ聞いていて、辛い立場を慮ります。人の一生はひとりで生きていくには重すぎるわけで、支えてくれる人がいた方がいいとのえは考えています。迷惑でなければまた来たいと表明したのえに、義時はにっこり微笑んで「子どもたちも喜びます」と答えます。義時には一時訪れた平和でした。

しかしただ一人反対者が現れます。泰時です。もう新しい女かと立腹し、行政の勧めだったと釈明するも聞く耳を持ちません。泰時は 自業自得だ! と吐き捨て、比奈が出て行ったのも元は義時の非道な真似がそうさせたと主張しますが、それを遮るように初は泰時を平手打ちします。逃げるように出ていく泰時を見つつ、初は義時に頭を下げます。「分かっていると思うんです。分かってはいるんです」

 

庭では実朝が相撲の稽古中です。精がつくものを食べたほうがいいと和田館で鹿汁(ししじる)をいただくことになり、実朝と知家、そして義時で訪問します。肉の入れすぎ! などと義盛と巴が言い合いする様子を見て、実朝はフッと笑います。実際に鹿の肉を前にすると引いている実朝ですが、思い切ってかぶりつきます。そんな様子の実朝に、みんな喜んでいます。

そのころ時政は義村と酒を酌み交わしていました。衣笠城で義村の祖父を討ち取ったのは畠山である話を持ち出します。昔の話だと流す義村に、北条が畠山と一戦交えることになったらどちらに加勢するかを尋ねてみます。義村としては、実際にそうなるのかどうかのほうが興味がある話なのですが、酒をくいっとあおり、「決まってるでしょう」とだけ返事します。

御所に戻った実朝は、婚姻はどうなったかを義時に尋ねます。義時は照れ笑いしながら「決めてしまおうかと…」と言って、自分のことではないことにハッと気づき、慌てて訂正します。実朝としては婚姻にあまり乗り気ではなく、義時が念押しすると「いや……いい」と撤回しましたが、取りやめにできるのであればそうしたいようです。

それを知った政子は、かつての大姫のようにはしたくないと、婚姻の話はなかったことにできないかと義時に持ちかけますが、静かに首を横に振ります。実朝はしっかりしているし、心配ないという言葉を政子は信じるしかなさそうです。義時は、それはそれとして、今回嫁をとることになったと政子に打ち明けます。目を見開いて驚く政子です。

馬の稽古が始まると泰時が伝えに来て、立ち上がる実朝は、文机の下に和歌の写しがあることに気が付きます。馬の稽古の用意そっちのけで、写しを読み漁る実朝です。

一方、実朝のところから下がってきた泰時は、「あたし、きのこ嫌いだから」と女たちが会話しているのを偶然耳にします。声のする方をのぞいてみると、御所の女房として働いているのえたちが会話していました。「小四郎どのに嫁ぐってことは鎌倉殿とも縁者ってこと」 下品に大笑いしているのえの本性を見てしまった泰時は、絶句します。


作:三谷 幸喜
音楽:エバン・コール
語り:長澤 まさみ
題字:佐藤 亜沙美
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小栗 旬 (北条義時)
小池 栄子 (政子)
坂口 健太郎 (北条泰時)
瀬戸 康史 (北条時房)
中川 大志 (畠山重忠)
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尾上 松也 (後鳥羽上皇)
市原 隼人 (八田知家)
横田 栄司 (和田義盛)
田中 直樹 (九条兼実)
山寺 宏一 (慈円)
宮澤 エマ (実衣)
小林 隆 (三善康信)

生田 斗真 (源 仲章)
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山本 耕史 (三浦義村)
菊地 凛子 (のえ)
栗原 英雄 (大江広元)
坂東 彌十郎 (北条時政)
宮沢 りえ (りく)
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制作統括:清水 拓哉・尾崎 裕和
プロデューサー:川口 俊介・おおず さわこ
演出:中泉 慧

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