大河ドラマ鎌倉殿の13人・(37)オンベレブンビンバ ~北条父子骨肉の争い 牧氏事件勃発~
高野山金剛峰寺や備後国太田荘からの訴えを聞き取る北条義時ら評定衆。後から来た時政は、自分抜きで評定が行われていることにいら立ちを見せますが、義時は執権宛ての訴えではないから呼ばなくていいと言ったのです。先日の恩賞の沙汰を尼御台が行ってからというもの、各地の御家人たちは「政の仕組みが変わった」と悟り、尼御台宛てに訴えを出すようになったのです。勝手にせい! と時政は怒って出ていきます。
時政は二階堂行政と会い、行政の孫娘・のえが身ごもったことを聞いて喜びます。そののえとの結婚を義時に強く勧めたのは自分だともったいぶり、その見返りに「今回の訴えは退ける、訴訟の裁きに尼御台は関わりない」と、時政の名で高野山への下知状を書くように迫ります。ええっ!? と驚く行政です。
実の父をないがしろにするとは! とりくは義時に激怒します。自分を厄介払いしたいらしいというのは、鈍感な時政でもさすがに分かるようです。北条政子を待ち伏せしていたりくは、鬼のような形相で近づいてきます。何もかも思い通りになると思ったら大間違いと怒りをぶつけるりくの背中に、政子は言い放ちます。「もう父上を振り回すのはおやめなさい」
──畠山粛清が招いた反発の嵐。権力を奪われた時政の反撃は。争いを勝ち抜いてきた北条が、二つに割れる──
高野山への下知状を送っていいのか行政が義時に確認したことで、時政の企てはすぐに露呈します。忠告と同時に引退勧告を突きつけられ、時政は睨みつけます。実父だから忠告しているものの、時政の今後の出方次第では生易しい対応は約束できません。父と子で争うのはよくないと北条時房は義時に言葉をかけますが、すべては時政の出方次第と義時は態度を変えません。
源 実朝のお付きが、北条泰時から実衣の子・阿野時元に変わりました。泰時は義時付きとなりますが、それは義時自身のたっての願いだそうです。不満そうな表情を浮かべる泰時に、義時は明るい顔でいろと注意しますが、元からこんな顔だと言って義時を笑わせます。何をすればいいかと戸惑う泰時に義時は、今はその目で父の仕事を見て学べとだけ言います。
未だに執権ではありますが、仕事を取り上げられて手持ち無沙汰な時政を時房が励まします。時政は時房がどっち側の人間かと聞いてみますが、時政も義時もない、北条はひとつ! と笑います。そんな時房を見つめた時政は「腹立つ顔だなぁ!」と言いますが、時房も紛れもない時政の子どもです。時房は、義時が父を守ろうとしているのだから分かってあげてほしいと時政を説得します。
政子の政が始まります。下知状一枚一枚に政子が筆を入れるのが続きます。そもそもは政子が言い出したことですが、大江広元が「今後は我ら文官が」と笑うと、負けず嫌いの血が騒ぐのか、私が書きます! と続きを持ってこさせます。政子は女子なのでひらがなでの筆入れになりますが、それはそれで尼御台の証になって御家人たちは喜ぶだろうと広元が言います。
しかしやっぱり音を上げてしまい、広元にニッコリほほ笑んで後をお願いする政子です。そんな姉を見て義時は笑いをこらえています。話題は時政のことへと移り、義時は時政が何やら企んでいるように見ていますが、広元がみたところ、御家人たちの気持ちを引き戻すのは難しそうです。「だとすれば──」との広元の言葉に、義時は広元を見据えます。
りくは、実朝に鎌倉殿の座を降りてもらい、後釜として娘婿の平賀朝雅に就かせると提案します。政子から実権を奪うと同時に、朝雅の後にはその子が継いでもらえば時政とりくはその鎌倉殿の祖父母となり、実権を握ることが出来るという筋書きです。まずは三浦を味方につけられれば自ずと和田も味方にできそうです。「政子と小四郎を討つことになるやもしれませぬ。その覚悟はおありですね」
時政はさっそく三浦義村を呼び、実朝の剥職と亡き源 頼家の子・善哉を後継にと打ち明けますが、わずか6歳の善哉はまだ幼すぎると義村は難色を示します。そのあたりを確認すると、善哉が成長するまで平賀朝雅に鎌倉殿になってもらい、成長の暁には善哉に継がせる計画です。なるほどと合点がいった義村は、「悪くない話です」といつも通りの返答ながら、ニヤリとします。
畠山家本領は重忠の妻で政子・義時の妹にあたるちえが預かっていました。政子は重忠の思いを大切にしたいと、畠山本領はすべてちえのものであるという書状を渡します。結構です、とちえは書状を突き返し、謀反人らしくご処断をと政子に迫ります。義時や政子の説得もむなしく、ちえは涙を浮かべて武蔵へ帰っていきました。ちえは後に畠山本領で再嫁し、生まれた子が畠山の名を継ぐことになります。
後鳥羽上皇は似絵(にせえ)が得意のようで、特徴を聞いて描くのが上手です。上皇は筆を走らせながら、罪をかぶせた畠山が滅ぼされたこと、力のある御家人が少なくなってきたことににんまりとしています。そして今は時政と政子が父娘でやりあっていると聞いて笑うのですが、その時に書いていたのは慈円の似絵です。これまた特徴をうまくとらえた絵で、ムッとした慈円はくしゃくしゃに丸めてしまいます。
その場にいた朝雅ですが、執権殿に就任してほしいという書状が時政から届いていました。朝雅としては、恐ろしすぎてこんな時に鎌倉殿になりたくないと吐露します。聞いていた中原親能(頼朝の娘・三幡の乳母父、三幡の死後に出家し京へ戻っていた)は乗らないほうがいいと頷きます。「一つ手を間違えると命取りぞ」 ひょうひょうとした朝雅の表情からは恐怖しかうかがえません。
利用されるだけの実朝は神経をすり減らし、疲れ果てています。実朝の気持ちが落ち着くのは和田義盛の館ですが、戸惑う時元に八田知家を警護につけると条件を出し、それでも心配と前もって実衣に報告し、やっとの思いで和田館です。義盛は頼朝との出会いの場面を誇張して実朝に話し、ちょっと違うと指摘した巴のほほをつねって巴に追いかけ回されます。そんなふたりを実朝は心の底から笑って見ています。
政子主催(?)の女子会に呼ばれているのえは初にも声をかけますが、初は遠慮しています。義時に京での高官に就いてもらい、悠々とした暮らしを望んでいるのえは、政子と御台所千世がいる女子会に加わります。のえは賀茂の祭りのことを千世に話し、戸惑う千世に気遣って実朝の話に切り替えますが、そこをのえが再び賀茂の祭りの話に戻してしまい、千代は氷のような微笑で会釈します。
時政は呼び出した義村・胤義兄弟に仔細を伝えます。「今宵、鎌倉殿の身柄をこの館へお移しする、この館で出家する旨の起請文を書いてもらう」 御所から連れ出すのは警護面で難しいため、和田館へ出かけたところを拉致する作戦です。和田館へ赴くという時元の発言を義村は不安視しますが、阿野全成の子として実朝とは共に育ったのに扱いに差があり、反発心を持つ時元の言うことは信じられそうです。
あとは実朝をこの館へ連れてくるだけ──。時政を軽んじた者たちの慌てふためく姿が目に浮かぶとルンルン気分のりくです。しかしそれに反比例して時政は浮かぬ顔です。望む者は何もないという時政はりくだけが宝物ですが、強欲な自分を喜ばせてほしいとりくはさらに迫ります。りくを抱きしめた後、夜までにやっておきたいことがある、と時政は出かけて行ってしまいます。
義村はやはり、時政の企てを義時に打ち明けていました。義時は父も愚かなことを考えたものだとあきれ果ててしまいます。正気の沙汰ではないし、どうせあの女(=りく)の手引きだと吐き捨てる義村に、よく裏切ってくれたと義時は礼を言います。その上でこの話は義時は知らなかったことにして、義村は時政の企て通りに動いてもらうように伝えます。
今すぐやめさせて! と政子は発狂しそうですが、政子や義時が信を失わないためには時政が謀反を起こしたと誰の目から見ても明らかなように振る舞ってもらわなければならないと義時は考えています。しばらく泳がせておきたいと言った時、時政がご機嫌で伊豆の酒を持って政子の居室にやって来ました。実衣も誘って家族で飲もうとのお誘いです。「どういうつもり?」 と政子と義時は顔を見合わせます。
盃を傾けながら、“オンベレブンビンバー”と口ずさむ時政を見て、実衣と政子は戸惑います。大姫が唱えたおまじないだそうですが、いや違うとみんなで否定し、みんなで何だったか思い出そうと必死です。結局は“ボンタラクーソワカー”で落ち着きますが、「正しくは“オンタラクソワカ”である」との訂正ナレが入りますw その後、政子手作りの畑を見てダメ出しした時政は、義時と時房を加えて作り直します。
実朝が和田館から帰るころ。義盛は実朝を親しみを込めて「武衛」と呼ばせてほしいとお願いしています。武衛とはそもそも、頼朝を呼び捨てにする上総介広常に義村が教えた呼び方でした。義盛は実朝との関係を頼朝と広常に置き換えていたのかもしれません。そこに義村と胤義が乱入し、時政がえらく心配していると無理やり連れ帰る義村に、どうも引っかかると不安顔の知家は義村たちを追います。
義村たちを追いかけた知家の報告によれば、御所へは戻らずに別の方角へ消えていったそうです。義時はそれが名越(時政の館)の方角だと察知し、驚く知家に出兵を促します。言われるがままその準備に入る知家が去り、泰盛はいったい何が起こっているのか疑問でしかありませんが、義時はただ黙ったまま座しています。
時政の策謀に、どういうことかと不安を隠し切れない実朝です。
実朝は時政に押し込められているとの三浦からも知らせが入り、無謀すぎることに時政はなぜ気づかないと政子は腹を立てます。義時は、昼間なぜ時政がみんなを集めたのか問いかけます。「父上は、この企てがうまくゆかないことを見越しておられる」 泰時を義時付きにしたのも、りくの言うとおりにすれば必ず行き詰まると分かっていて、その道を選んだ時政の覚悟を知ってもらうためなのです。
起請文を書くように迫る時政に、実朝は明らかに拒絶します。時政は必死に頭を下げ続けます。
義時は立ち上がり、「執権北条時政、謀反! これより討ち取る!」と宣言します。義時を引き止める泰時と政子ですが、それをすれば北条は身内に甘いと日本中からそしりを受けてしまいます。時政の振る舞いは決して許されるものではなく、泰時に付いてくるように命じます。政子の顔からみるみる血の気が引いていきます。
実朝と時政の攻防が続いていました。実朝の起請文がないとじい(=時政)が死ぬことになる──。そう悟った実朝は、筆をとります。「速やかに出家し、鎌倉殿の座を平賀朝雅殿に譲る」 そう書くように求められた実朝は、義時に相談したいし政子にも会いたいと言い出します。時政が断ると、ならば書けぬと筆を置いてしまいます。時政は刀を抜き、実朝の目の前に立ちます。
作:三谷 幸喜
音楽:エバン・コール
語り:長澤 まさみ
題字:佐藤 亜沙美
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小栗 旬 (北条義時)
小池 栄子 (政子)
坂口 健太郎 (北条泰時)
瀬戸 康史 (北条時房)
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尾上 松也 (後鳥羽上皇)
市原 隼人 (八田知家)
横田 栄司 (和田義盛)
山寺 宏一 (慈円)
宮澤 エマ (実衣)
小林 隆 (三善康信)
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山本 耕史 (三浦義村)
菊地 凛子 (のえ)
栗原 英雄 (大江広元)
坂東 彌十郎 (北条時政)
宮沢 りえ (りく)
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制作統括:清水 拓哉・尾崎 裕和
プロデューサー:大越 大士・橋本 万葉
演出:小林 直毅
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