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2022年9月27日 (火)

プレイバック北条時宗・(29)さらば兄上

北条時宗の下知により、北条義宗の軍勢が北条時輔の館を襲撃します。祝子は命だけでも助けてやってほしいと時宗に懇願しますが、謀反を企む敵の大将の首は兄であれ討ち取るつもりです。兄と弟の絆は、あまりに悲しい結末を迎えようとしていました。時輔は勝つしかないと、髻(もとどり)を斬り、服部正左衛門に祥子と子たちを頼むと言って館から脱出させます。

館の裏からの脱出を試みる祥子と正左衛門ですが、明寿丸が泣き出してしまい、それを聞きつけた兵たちに囲まれてしまいます。義宗は祥子には手出ししないと約束し、祥子と正左衛門らを捕らえます。祥子は、時輔が謀反には関わっていないと強く訴えるのですが、その圧に耐えかねたか、義宗は目をそらして連れて行くように兵に命じます。

応戦する時輔と郎党の夢丸ですが、長い斬り合いで手を滑らせて刀を離してしまった夢丸は、背中に一太刀浴びて倒れてしまいます。時輔はヘトヘトになりながらも、兵から槍を奪い、なおも戦い続けるのです。そこに駆け付けた義宗は、時輔に言葉をかけます。「謀反人として成敗いたす。鎌倉武士らしく観念せよ」

時輔が夢丸を抱えて館に戻ると、義宗は時輔に矢を放ちます。「そなたは何も分かっておらぬ」 そうつぶやく時輔を残し、義宗は兵に火矢を射かけさせるのです。炎に包まれていく時輔です。時宗にとっての初めての合戦「二月騒動」は、あまりに大きな犠牲を払って幕を下ろします。時に文永9(1272)年2月、蒙古の足音が迫る春のことでした。

 

博多では、朝廷の返書を待つ趙 良弼のところに、時輔が時宗に討たれたと知らせが舞い込みます。良弼は怒りを隠せませんが、クビライも弟を討って皇帝になったと謝 国明が指摘すると、良弼は黙り込んでしまいます。国によって考えが異なると分からない限り日本とはよしみを結べないと訴える謝 国明に、大元は万物の源であると知らなければならないのは日本のほうだと趙 良弼は席を立ちます。

鎌倉に戻った義宗は、時輔の遺髪を時宗に差し出します。複雑な心境で受け取った時宗は義宗をねぎらいます。謀反を企てた宗尊親王は出家してもらうことにし、祥子と子らには下野の実家に帰すとした時宗の方針に、徹底的に滅ぼすべきと北条政村は異を唱えます。祥子は北条実時の姪にあたり謀反にならないよう実時に導いてもらえばいいと時宗は方針を曲げません。「情けみせてこそ御家人は従う」

表情が曇りがちの義宗を伴って最明寺亭を訪れた時宗は、最もつらい役目を押し付けたことを詫びます。時宗は、時輔を殺すことは父の遺言であり、それに反発して鎌倉を追放し和解に力を尽くしたものの、結局は父の遺言通りになってしまったと義宗に打ち明けます。時輔の最期を聞かせてほしいと義宗に伝えます。「鎌倉武士として全うされた。立派なご最期であった」 その言葉に、時宗は改めて礼を言います。

 

「なんで麿が謀反人なんや!」 と宗尊親王は激怒します。一条実経は出家すれば命は助かると宗尊親王をなだめますが、そもそも政を朝廷から奪ったのは鎌倉のほうだと納得できません。こういう役回りにウンザリしたようで、宗尊親王は半ば頭が狂いそうになっています。北条得宗家転覆を謀り続けた宗尊親王は、これよりしばらくして失意のうちに亡くなります。

再び六波羅探題北殿の役目のため京へ赴いた義宗は、身柄を預かっていた祥子と子らの処分を申し渡します。格別な温情に正左衛門は頭を下げますが、時宗に対して恨みを抱かぬようにという誓いを求めたのに対し、祥子は猛反発します。オロオロする正左衛門は、処分を撤回しないように義宗に平謝りしますが、都に桜が咲き始めるころに祥子は下野へ戻っていきました。

同じころ、鎌倉では桔梗が謀反の咎による流罪で佐渡に向けて旅立とうとしていました。時輔を討った苦しみを味わいぬけと桔梗はニヤリとします。無礼な物言いに薙刀が目の前で交差しますが、殺すなら殺せと開き直ります。桔梗は人生をめちゃくちゃにされた得宗家を恨み、得宗家を率いる時宗を恨みましたが、時宗は日本を思う気持ちは桔梗の恨みには負けないと言って去っていきます。

 

祝子は、時宗が特別な温情をもって祥子と子らの命を助け、実家に帰したことを感謝します。そして時輔を弔い、兄を討った時宗の痛みを分けてほしいと涙を浮かべますが、時宗は兄の弔いは一生をかけて自分自身で行うため、その気持ちだけで十分と答えます。そこに涼子が現れ、時宗と向き合います。

時宗は、蒙古の脅威が迫る今、国内の謀反の火種を消して安泰を守るために戦をしたと弁明します。「何かを守るためには何かを犠牲にせねばならぬときもある」 命の重さだけを教えた時宗が兄を殺め、それをまるで正しいことのように言う時宗を、涼子は分からなくなっています。涼子は時宗に代わって罪を償うと言って髪をバサバサと切り出します。

謝 国明は時宗に会うべく鎌倉行きを決意します。使節の趙 良弼と会った時輔が裏切り者として討たれたわけですが、時輔は時宗に対して裏切りの心は持っていなかったこと、そして時輔が考えていた開国は日本を他国に売り渡すためではなく守るためであったことを伝えるためです。「時宗どのには苦しんでいただく。国を率いるとは苦しいこと、この苦境を乗り越えねば国を守ることなどできまい」

下野から正左衛門がやってきて、祥子と子らを無事に送り届けた報告に上がります。さらに読んでいただきたいと一通の書状を時宗に手渡します。それは時輔が時宗に対して潔白の証を立てた書状です。目を通した時宗は顔面蒼白となり、書状を持つ手が震え出します。謀反人の兄を討った苦しみから、謀反人の濡れ衣を着せられた兄を誤って討ってしまった苦しみへと変わった瞬間でした。

──蒙古襲来まであと927日──


脚本:井上 由美子
高橋 克彦「時宗」より
音楽:栗山 和樹
語り(覚山尼):十朱 幸代
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[出演]
和泉 元彌 (北条時宗)
渡部 篤郎 (北条時輔)
浅野 温子 (涼子)
柳葉 敏郎 (安達泰盛)
西田 ひかる (祝子)
池畑 慎之介 (北条実時)
ともさか りえ (祥子)
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原田 美枝子 (桔梗)
吹越 満 (宗尊親王)
井上 順 (一条実経)
大木 実 (西園寺実氏)
修 宗迪 (趙 良弼)
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伊東 四朗 (北条政村)
室田 日出男 (服部正左衛門)
清川 虹子 (如月)
藤 竜也 (佐志 房)
北大路 欣也 (謝 国明)
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制作統括:阿部 康彦
演出:吉村 芳之

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