大河ドラマ鎌倉殿の13人・(39)穏やかな一日 ~政の改革進める義時 源実朝の苦悩~
北条義時の出仕時。「今日は用事が詰まっているので帰りが遅くなる」という義時を、のえが生まれたばかりの子どもを抱いて見送りますが、姿が見えなくなると子どもを侍女に預け、イテテと腕を振ります。
そして義時は廊下で別の侍女とすれ違いますが、この侍女が振り返ると……? 「鎌倉に、穏やかな日々が訪れています。本日は承元2(1208)年から建暦元(1211)年までの4年間、この鎌倉で起こるさまざまな出来事を一日に凝縮してお送りいたします」 と、いきなりの語り手の長澤まさみさんご登場でした。
──大海の 磯もとどろに 寄する波 破(わ)れて砕けて 裂けて散るかも 源 実朝──
北条時政が鎌倉を追われた後、天然痘を患っていた源 実朝が政務に復帰します。あばたが残る顔が気になるのか、実朝は指で触って薬師に「触らない!」と注意されています。もしも実朝に何かがあれば善哉が後を継ぐ予定だったと義時から聞き、実朝は善哉には悪いことをしたと笑います。北条政子も、もしものために守護地頭の仕組みを猛勉強したようですが、その必死さが逆におもしろく感じている実朝です。
政務は義時が進め、実朝にはしばらく見守ってもらうことになるわけですが、政子もそれに賛成します。坂東武者の頂点に北条が立つことを望んでいた亡き兄・北条宗時のこともあり、そう考えればようやくここまでこれたのだと、感慨深いものがあります。「私がそれを果たします」と決意を固めます。
高野山から、大田荘からの年貢の取り立てを地頭が妨げていると訴えがあっています。大田荘はそもそも亡き後白河法皇の供養のための年貢を出していて、それを邪魔立てするのはいかがなものかと、大田荘地頭の三善康信に義時が苦言を呈します。康信が代官をかばいたい気持ちも分かると実朝は理解を示しますが、道理は高野山にあると、高野山の言い分を聞くと決定してしまいます。
実時は「私はいてもいなくても同じなのではないか」と思いを北条泰時に吐露します。これは今まで泰時自身も義時に対して感じてきたことですが、それを踏まえた上でそんなことはないと実朝を励まします。実朝は思い出したように泰時に歌を授け、返歌を心待ちにすると言って立ち去ります。歌……と聞いて唖然とする泰時です。
義時は政の仕組みを変えたいと模索します。まずは守護を代替わりから交代制へ。代々受け継ぐものだとわずかな者に力が偏ってしまいます。国司はそのまま、と言う義時に、「北条が目立ってしまいますが」とクギを刺す大江広元ですが、それでもかまわないと事を進めていく義時です。
のえは義時も泰時も辛気臭いと初に愚痴をこぼします。義時は執権を名乗らない方針らしく、欲を持ってはいけないのかとぶつぶつつぶやいています。泰時を探しにそこに現れた北条朝時(泰時の異母弟=母は比奈)は、のえと初がつまんでいた干し物をガサッと掴んで行ってしまいます。品がないひとは大っ嫌い! と苦々しい顔を浮かべます。「あの方の母上は上品な方でしたけどね」
返歌をしたためるべく紙に向かう泰時ですが、まったく歌が浮かばずため息ばかりです。
実朝の歌を源 仲章の仲立ちで藤原定家が手直ししてくれたと喜んでいる実衣は、実朝と千世の寝床が未だに別々で、男の子が産まれなかったら跡取りはどうするのと政子に迫ります。二人の仲はよさそうだけど、とつぶやく政子は、考えておいた方がいいと言う実衣に「よしましょう」と取り合いません。
書状の山に埋もれる義時の前に、後鳥羽上皇から政を指南するように指示されて鎌倉下向した仲章が現れます。仲章は時政の一件を持ち出し、「正しい道はいばらの道」と、悪く言う者がいるかもしれないが自分はあなたの味方だとニッコリほほ笑みます。義時はしらじらしく感じつつも笑顔を仲章に向けて、礼を言います。
康信に和歌の指南を受けている実朝ですが、最後を逆にしてみては? と助言します。実朝にとっては またかと思える助言で、プッと吹き出します。そこへ仲章が定家の手直しの書状を持ってやって来ました。「定家どのは、最後を逆にするようにと申されています」 康信の助言を聞き入れて逆にした部分であり、実朝の最初の歌のほうがおさまりがいいというのです。康信は冷や汗をかいて頭を下げます。
仲章に、鎌倉殿に余計な口出しをしないようにとの忠告を受けた康信は力を落としています。実朝にはもう教えることは何もないとしょんぼりする康信に、実朝は康信が歌を詠む楽しさを教えてくれたと感謝し、これからも助けてくれと康信を励まします。康信は、そんな実朝の優しさに触れて涙がこぼれそうになっています。
実朝が居室に戻ると、千世は貝合わせをしていました。疲れた体を休めたい実朝ですが、千世は座っているだけでできますよとニッコリ。1回だけだぞと貝合わせにしぶしぶ付き合います。パッと明るい表情を見せる千世でしたが、そこへ和田義盛が見舞いに現れます。実朝と義盛の会話の前に、邪魔された千世はどこか寂しそうな表情を浮かべます。
千世が無気力で居室から出ていき、義盛をも追い出した実衣は、実朝の雑事を取り仕切る女子を置くと言って、どんな女子が希望か聞き取ります。そんな女子はいらないと拒絶する実朝ですが、義盛は声の大きい女は情が深いんだ! と割り込んできます。聞いてません! と実衣は義盛を再び追い出し、改めて希望を聞き出します。「では……声の大きい人を」
泰時はまだ頭を悩ませていました。鶴丸は、なぜ和歌はできないと正直に言わないのかなと呆れています。
政子のために棚を作り上げた八田知家ですが、そのついでに、御家人たちは今の北条を苦々しく思っていると打ち明けます。義時は相模守、時房は武蔵守と、北条一門でなければ国司になれないのかという不満が募り始めていたのです。棚ができたと笑顔の政子は、知家からの実情を聞いてみるみる顔が青ざめていきます。
それでもやらねばならぬのです、と義時は政子に弁明します。二度と北条に歯向かう者を出さないための方策なわけです。政子は義時を呼び止め、時政とりくの命を助けた礼を言いますが、義時はゆっくりと振り返り、政子をチラリと睨みます。「むしろ殺していれば……御家人たちは恐れおののきひれ伏した。私の甘さです」 政子は言葉を失います。
実朝のもとに女房としてよもぎが遣わされます。側室にするつもりはないとはっきり断る実朝は、このまま帰れば立場に関わるだろうと、困っていることはないかと聞いてみます。女子は、妻にすると言った男がさんざん弄んだ挙句に別に女を作り捨てられたと訴えるのです。そんなひどい男がいるのか、と実朝にとっては衝撃です。
一方で朝時は、とんでもない女にひっかかってしまったと泰時に相談します。泰時の力で鎌倉から追い出してほしいというのですが、泰時は「人に頼るな」と断ります。そこに義時が現れ泰時の真横でゴロンと横になります。困惑する泰時に、義時は伊豆に行って時政に旨いものでも持って行ってやれと伝えます。義時は控える鶴丸に、泰時の命綱となれるように「平 盛綱」の名を与えることにします。
義時は義盛を呼び、義盛が直接実朝にお願いしていた「上総介」の役職の件は忘れるように申し渡します。更に義盛が好んでいた「羽林(うりん)」の呼び方も禁止します。有無を言わさぬ義時に、明らかな不満顔で義盛は出ていきます。絵に描いたような坂東武者の義盛は御家人たちの間でも評判が高く、しかも和田には三浦がついているので、慎重にかからなければならないと広元はつぶやきます。
三浦屋敷で暮らすつつじ(源 頼家の側室)と善哉が三浦義村とともに鎌倉御所へやって来ました。見せたいものがあると政子が2人を連れ出し、義時は義村に「守護を2年ごとに改める」と打ち明けます。義村も相模の守護ですが、義村がこの案に真っ先に賛成すれば他の御家人たちは何も言えなくなるというのを見越しての提案です。義時が政所へ戻っていったとき、義村は扇を床に叩きつけて怒りを露わにします。
政子が見せたいものとは、頼家の生きた証でした。そこに現れた実朝を見て「鎌倉殿……」と躊躇している善哉ですが、蹴鞠(しゅうきく)の心構えを教えていた時房が、一緒にやりましょうと善哉を誘っています。そんな実朝と善哉を見て、政子はつつじに善哉を頼家の分まで幸せにしてやりたいという思いを伝えます。「はい……善哉のためでしたら」
御家人たちの弓の腕を競う場で、知家や泰時が遠くの的を射抜く中、盛綱も見事に的を射抜きます。泰時は盛綱と抱き合って大喜びしています。義時も、見事な腕前を見せた盛綱を見て満足げです。しかし泰時と盛綱が抱き合って喜ぶ様子を見た実朝は、泰時へのジェラシーを感じたか、急に表情を曇らせます。
義時はさっそく盛綱を御家人にしたいと実朝に言いますが、分不相応な取り立ては災いを呼ぶと実朝は拒絶します。義盛の上総介推挙を止めたのも守護の任期を定めたのも義時です。義時は実朝の言を認め、自分は必要なくなったと伊豆へ去る宣言をします。実朝は慌てて謝罪し御家人への取り立てを認めます。義時は将軍が決めたことを翻しては根本が揺らぐと言い、自分のやることに口を挟むなと忠告します。
実朝は義時の言われるままに、時政事件を未然に防いだと義時に褒美を与え、義時は盛綱にその褒美を受け継がせることにします。力を落とす実朝が目にしたのは、頼家のことを思い出す時房の姿でした。頼家の胸中は誰も察することが出来ず、側で仕えていた時房でさえ何も支えにもなれなかったと悔やむのです。時房は実時に、心を開ける人はいますかと尋ねます。
夜、和歌に目を通す実朝に、自分たちに子どもができないと心配する声があることを伝える千世は、側室をと実朝に勧めます。私の何が気に入らないのかと涙ぐむ千世に、実朝はずっと営みをする気持ちにはなれないと打ち明けます。ずっと悩んでいた実朝を愛しく思う千世は実朝に寄り添って抱きしめます。その声に応えることが出来ないと言いつつ、実朝も千世を抱きしめています。
月夜ですが、実朝から贈られた和歌の解釈を泰時は仲章に頼みます。「春霞 たつたの山の 桜花 おぼつかなきを 知る人のなさ」 これは恋する気持ちを詠んだものと教えてもらった泰時は、間違えて渡したのでは? と実朝に歌を返します。フッとほほ笑んだ実朝は文箱の中から取り出した紙を見つめます。
大海の
磯もとどろに 寄する波
破れて砕けて 裂けて散るかも──
改めて歌を贈られた泰時は、お礼を言って受け取ります。自室に持ち帰った泰時は、その歌を前に酒をぐいっと飲んでいます。
そのころ朝時は義時に呼びつけられていました。御所に仕える女房に手を出した朝時を義時は叱責しますが、飄々と実朝にとりなしを頼む朝時に、軽々に頼りおってと義時はフッと笑います。義時は朝時に父を超えようという気概はないのか尋ねます。「あるわけないです、そんな大それたこと」
義時が時政を追い出した途端にやりたい放題であることに、義盛は不満を募らせています。確かにと頷く義村に、古参の御家人を蔑ろにしたら痛い目に遭うというのを思い知らせたい義盛ですが、そんな義盛を見つめて義村は黙りこんでいます。
建暦元(1211)年9月22日、出家して公暁(こうぎょう)と名を変えた善哉が、園城寺の公胤僧正のもとで修業をするため京へ上がります。義時から、鎌倉へ戻ってきた際には鶴岡八幡宮の別当に就任してもらうという話が出ました。しかし、この公暁が戻ってきたとき、鎌倉最大の悲劇が幕を開けることになります。この時から6年後のことです。
作:三谷 幸喜
音楽:エバン・コール
語り:長澤 まさみ
題字:佐藤 亜沙美
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小栗 旬 (北条義時)
小池 栄子 (政子)
坂口 健太郎 (北条泰時)
瀬戸 康史 (北条時房)
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市原 隼人 (八田知家)
横田 栄司 (和田義盛)
宮澤 エマ (実衣)
秋元 才加 (巴御前)
小林 隆 (三善康信)
生田 斗真 (源 仲章)
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菊地 凛子 (のえ)
栗原 英雄 (大江広元)
山本 耕史 (三浦義村)
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制作統括:清水 拓哉・尾崎 裕和
プロデューサー:大越 大士・吉岡 和彦
演出:保坂 慶太
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