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2022年10月18日 (火)

プレイバック北条時宗・(35)蒙古襲来② ~善戦! 水軍城~

文永11(1274)年10月14日、蒙古4万の大軍は対馬に続いて壱岐に攻め寄せ、守護代・平 景隆率いる100騎の兵は樋詰城に追い込まれて自害。援軍に駆けつけた水軍松浦党の佐志 留も若い命を落とします。

博多や長門など西国の情報が鎌倉の北条時宗の元に届くのは、早馬を使ったとしても数日かかってしまいます。戦が始まったという知らせを受けた時には現地では戦の形勢がほぼ決まっていて、時宗は指示が間に合わないことに悔しさをにじませます。戦場に立てないのはつらいとまるで他人事の北条義政は、鎧を着けない戦を精一杯努めようと時宗を励まします。

 

壱岐では、趙 良弼は、対馬で逗留している間に日本の和睦の申し入れがなかったから時宗は戦いたいのだと判断し、日本中で騒ぎを大きくさせるためにその見せしめとしてむごい戦を壱岐で行ったと主張します。そういう手法で無理やり日本の目を覚まさせても日本の民は蒙古には従わないと北条時輔は趙 良弼を睨みますが、「黙って待っていたら日本は目を覚ましますか」と言われて閉口してしまいます。

留の討ち死にの報は松浦党にも届いていました。無言でひたすら武具を研いでいる佐志 房を、桐子や直、勇が囲みます。留が出陣前、房に拾われた命を倍にして返すと言っていたことを伝え、自分たちも同じ気持ちだと励ましますが、房は「バカヤロー!」と涙を流します。桐子たちは、そんな房をそっとしておきます。

博多では、対馬・壱岐の陥落を聞いた九州の御家人が手勢を引き連れて集結していました。鎌倉から派遣された平 頼綱、北条宗政、安達盛宗の軍勢を合わせると3万の大軍です。少弐景資は宗政に蒙古軍の上陸の可能性がある博多の西の今津を守ってほしいと依頼します。しかし頼綱は、激戦が予想される博多の港を警護すると主張し、総大将に少弐資能とした決定に不満を表明したりとわがまま勝手のし放題です。

慌ただしく兵たちが行きかう博多の町では、謝 国明は屋敷にある荷物を必要最低限だけ持ち出して避難するように指示を出します。しかし見世の女・蓮華はどこに逃げても同じだからここに残ると言い出します。謝 国明は、逃げるのではなく町を作り直すために身を守るのだと微笑みかけ、命を粗末にせぬのが人の務めと優しく諭します。「そなたの国でも我が祖国でも、そしてこの日本でもそれは同じ」

 

対馬から逃げ出した民が拾った、蒙古軍が使う矢を謝 国明が鎌倉に送り、太郎経由で時宗に届けられます。矢には毒が塗ってあり、手や足を射られた兵も毒で命を落としたようです。「戦は人を非道にさせる。日本の兵も敵から見れば非道に見えよう。時宗どのの選んだ道じゃ」 博多の町では時宗が考える以上の恐怖にさらされていると訴えた太郎に、時宗は戦の終わらせ方を考えなければならないとつぶやきます。

京では亀山上皇が『敵国降伏』と宸筆(しんぴつ)して祈願します。宸筆するその間も一条実経や西園寺実氏らが「対馬や壱岐が島ごと沈んだ」「蒙古軍は人を食らう」などと噂し、そんな者たちを都に入れないために九州を蒙古に差し上げるなど極論も出ています。人々はまだ見ぬ異国の者を恐ろしい怪物のように想像していたのです。朝廷は全国の神社や寺に蒙古軍を撃退する祈祷を行わせます。

そしてその京から、六波羅探題北殿の北条義宗が鎌倉へ下ってきました。京では見たことのない蒙古軍に大混乱し、御家人の数も少なく鎌倉の指示も届かないことから、悪党たちがのさばっている現状を伝えます。戦の恐ろしさは状況が見えないことかもしれないと、時宗は朝廷に戦況について奏上することを約束し、京での警護を一層固めるように命じます。

軍議を開いた時宗は、博多が敵の手に落ちた時は戦を終わらせたいと言い出しますが、それは敗北を認めることと安達泰盛が反発します。しかし武士にとっては属国になれば命を奪われるのと一緒でも、民にとってはそうではないわけです。属国になっても命をつなぐことで勝つ……。博多が敗れるときは鎌倉武士の世が終わるときと、時宗はそうならないために蒙古軍を博多で食い止めなければならないと宣言します。

 

松浦党の中でも軍議が開かれていました。蒙古軍は博多のことをよく調べ上げていると見た房は、大船団は統制を乱されたら立て直すのが難しいと、博多への帆を上げた時を狙って蒙古の大船団を脇腹から襲うと指示を出します。我らの海を、松浦を守るためにも、敵を無傷で博多には行かせない! 房の言葉に男たちも同調します。

博多は警護が固いとの時輔の助言もあり、趙 良弼は日本での上陸拠点を作るために、まず松浦を攻めると時輔に伝えます。蒙古軍としても血みどろの戦で犠牲を出したくなく、急いで博多を攻撃する必要もないのです。時宗が和睦を申し入れない限り戦は続ける、その趙 良弼の言葉に、時輔の顔から血の気が引いていきます。

「執権どのの命に背き申した! 時輔どのを討ち果たしておりませぬ!」 時宗の元を訪ねてきていきなり土下座する義宗、そしてその内容の大きさに時宗は衝撃を受けます。時宗は義宗に口止めを図りますが、京で対面した北条実時の話では時輔は高麗に渡った可能性もあり、蒙古軍の一人となって仇を討ちに来たら、それは自分の責任だと義宗は平伏します。

夜、母国の方角を見つめる時輔に、日本が蒙古の手に落ちるのは悲しいかと趙 良弼は意地悪な質問を投げかけます。悲しむことはない、時宗はあなたの妻も殺した男なのだから──。その言葉を聞いた途端、時輔は いい加減なことを言うな! と趙 良弼の胸ぐらをつかんでと怒りを露わにしますが、時宗はあなたを抹殺した男です、と趙 良弼はつぶやきます。

祝子は八幡菩薩を参詣し、亡くなった時輔や祥子の冥福を祈り、九州に渡った宗政や頼綱、謝 国明、房、桐子ら時宗の大切な人たちの無事を祈願したそうです。一度の参詣にしては願い事が多いと笑う時宗ですが、脳裏には時輔の「なぜ祥子に手をかけた!?」という姿が思い浮かび、膝から崩れ落ちます。心労を心配する祝子にしばらく休むと伝え、その用意をしてもらいます。

 

海上に蒙古の船が多数現れました。房は軍を調え、鎧や武具の最終確認をしながら、先頭に並ぶ勇には館に残るように命じます。勇は一人でも多く蒙古兵を倒したいと必死に訴えますが、ひとりでも血気に逸る者がいれば他の者に影響が出ると、勇を残して出陣していってしまいます。残された勇は地面を殴りつけて悔しがりますが、桐子は勇が房の跡を継ぐものと認めた証だと励まします。

深い霧の中、蒙古の大船団を見つけた房は小さく合図を送り、松浦党の船が静かに進み始めます。やがて船に乗り込んだ房たちは、船内の蒙古兵を次々と倒していきます。あっけなく船を乗っ取った房でしたが、松浦党の城が燃えていることに気が付きます。裏をかかれた! と急いで城に戻っていきます。

燃え盛る城へ、蒙古兵がなだれ込んできます。勇は必死に桐子を守って応戦しますが、あまりに敵兵が多くじりじりと押されていきます。退きながらつまづいて転ぶ桐子を守ろうとした勇は、蒙古兵に背中を切りつけられて倒れます。たちまち敵兵に取り囲まれた桐子は観念して目を閉じますが、気づいたときには取り囲んでいた兵はみんな倒されてしまっていました。勇に駆け寄った桐子の肩を掴んだのは時輔でした。

時輔は桐子の手を引いて逃げますが、たちまち蒙古軍に囲まます。時輔が刀を抜いて覚悟を決めた時、房たちが戻ってきて城内は大混乱に陥ります。房が必死に切り倒す中、直は落命してしまいました。蒙古軍は松浦での上陸拠点を作ることはできませんでしたが、松浦党は壊滅に近い痛手を受けました。「勇、直、お前らは親不孝もんじゃ。恩を忘れたか? 起きろ! 起きろ!」 房の男泣きに桐子も涙を流します。

蒙古軍が博多に向けて帆を上げたのは、この直後のことでした。


脚本:井上 由美子
高橋 克彦「時宗」より
音楽:栗山 和樹
語り(覚山尼):十朱 幸代
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[出演]
和泉 元彌 (北条時宗)
渡部 篤郎 (北条時輔)
柳葉 敏郎 (安達泰盛)
木村 佳乃 (桐子)
西田 ひかる (祝子)
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渡辺 徹 (北条義政)
川野 太郎 (少弐景資)
うじき つよし (竹崎季長)
小西 博之 (菊池武房)
井上 順 (一条実経)
大木 実 (西園寺実氏)
修 宗迪 (趙 良弼)
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石橋 蓮司 (北条時広)
藤 竜也 (佐志 房)
北大路 欣也 (謝 国明)
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制作統括:阿部 康彦
演出:吉村 芳之

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