大河ドラマ鎌倉殿の13人・(40)罠と罠 ~実朝は戦を防げるか 義時vs義盛~
後鳥羽上皇は火災で焼損した閑院内裏を立て直すための図面を眺めていました。乳母の藤原兼子は、この内裏の修復を鎌倉にさせようと提案します。源 実朝は喜んで引き受けると思われますが、兼子の目的は、坂東武者に大きな負担を課すことでした。北条義時の専横は上皇の耳にも達しており、灸を据えてやろうとニヤリとします。
──義時は事実上の指導者として、将軍実朝さえ圧倒する。その決意の固さは、怯(おび)えの裏返しなのか、義時。──
閑院内裏の修復の命が下り、負担させられる御家人たちの怒りは和田義盛に向けられます。上皇から鎌倉殿に命じられたのだから仕方ないと説明を続ける義盛はほとほと困り果てます。御家人たちは同席する八田知家にも助けを求めますが、言われた仕事はこなすというのが知家のモットーです。ただ、それは坂東に限る話で、そうだそうだと御家人たちから声が上がります。
北条時房からの報告に、義時は「言いたいものには言わせておけばいい」と取り合いませんが、最近、義盛が御家人たちの不満の旗頭になってしまっているようです。義時は静かに酒を呑みながら、大きなため息をつきます。
そんな時、ひとつの事件……「泉親衡の乱」が発生します。泉 親衡は信濃小県の源氏で、仲間を集めて義時を殺そうと企んでいたとのことです。義時は全て捕らえて厳罰に処すよう三善康信に命じますが、関わったものたちの中に義盛の子2人と甥1人の名前があると、大江広元は言いにくそうに義時に報告します。
義盛は3人から事情を聞き、たまたま出会い、いかに北条が汚い手を使って上り詰めたかを延々聞かされ、無理やり仲間にさせられていたと弁明します。話を聞いてもあまりよく分かっていない義盛ですが、自分が頭を下げれば大抵のことはなんとかなる! とこの話を自分が預かることにします。
親衡を捜索していますが、どれだけ手を尽くしても何も出てこず姿をくらましてしまいました。広元は“西からの雅な”匂いがすると疑います。幕府を北条が動かしていることが気に入らない上皇が、鎌倉を揺るがすために仕組んで送り込んだのではないかと分析します。上皇が嫌うのは自分だと知り、義時は苦笑します。
義盛は義時の前に現れ頭を下げます。相撲か戦で勝負と提示したかと思えば、眉毛を剃ることを提案する義盛に、真面目に話しているのがばかばかしくなった義時は、息子2人は罪を問わないこととしますが、親衡の動きに応じて御家人たちに声をかけて回った甥の和田胤長だけは責任を取ってもらわなければ示しがつきません。食い下がる義盛ですが、義時はそれには答えず出て行ってしまいます。
煩わしい、と義時はつぶやきます。広元は上総介広常のことを思い出していました。偶然にも義時も同じことを考えていたわけですが、あの時に得た経験としては、最も頼りになる者が最も恐ろしいということです。「……消えてもらうか」
義盛とその一族98人が、胤長赦免の嘆願に御所に現れます。あれだけの人数が暴れ出したら手に負えないと慌てふためく時房ですが、胤長は陸奥へ流罪と決しているだけに、決定を変えてしまっては力に屈したことになってしまいます。息子2人を放免したというのになぜ! と二階堂行政は腹を立てる中、義時は考えがあると冷静です。時房は義盛たちに今日のところは引き上げるように伝えます。
そのころ実朝は、北条政子、実衣、そして千世と大根の葉をちぎっています。実朝が千世にちぎり方を教えている仲睦まじい姿を見ていると、実衣は「そろそろ孫の顔も」と政子に言ってニンマリするのですが、実朝の表情がたちまち曇ります。千世は「わたしのせいで」と実朝をかばい立てします。養福寺に千世と花を見に行く提案をする実朝に、政子は賛同します。
席を外した実朝と千世に代わり、今度はのえが混じって葉をちぎり続ける政子ですが、実朝の跡継ぎについてやいやい言い続ける実衣に、養子をとればいいと冷静な回答です。のえは、鎌倉殿には義時がなるべきだと主張しますが、政子はそれをたしなめます。それでも「北条がなるべきです!」と言うあたり、政子と実衣はりくを見ているような気がしています。
義時のことで愚痴をこぼす義盛に、義村は力になってもいいと唆(そそのか)します。俺が鎌倉殿でお前が執権か!? とガハハと笑う義盛ですが、義村はけっこう本気です。「俺たちの鎌倉を作るってのはどうだ? 北条ばかりが得をするこんな世の中を、俺たちが変えるんだ」 そんな時、病がちだった胤長の娘は父に再会出来ないまま息を引き取ります。小さな悲劇が義盛の背中を押したのです。
北条泰時は、義盛を追い詰める義時の行動が理解できませんが、はなから滅ぼすつもりだったと読んで反発します。義盛をこのまま生かせば、いずれ泰時の代になったときに和田一門が立ちはだかると諭しますが、それでも批判を止めない泰時に謹慎を申し付けます。そこに和田館から戻った義村が報告に来ます。「もう一押しだ。間違いなく挙兵するぞ」
三浦胤義は、義村が義時の味方をするとみせかけ、あわよくば和田に味方しようとしているその姿勢を批判します。しかし義村はこれまでもそうやって生き抜いてきました。上総介広常、梶原景時、比企能員、畠山重忠と滅んだものは数知れず。しかし三浦は生き残っています。つまりは、それこそが生きる術といえるのかもしれません。
泰時は義時が義盛を討とうとしていることを政子に訴えます。しかしその場に義時が現れ、謹慎と命じたはずだと叱責されてすごすご引き下がります。政子は義盛に野心はないとかばい立てしますが、義盛に野心はなくても一族や御家人たちが担ぎ上げるのです。もう関わらないでほしいと言う義時に、政に携われと言ったのはあなただと政子の反発を食らいます。政子の願いはもう誰も死なせたくないことなのです。
政子は義村を呼び、今の義時の暴走を止められるのは誰もいないと、政子は義村を義盛から切り離すことで孤立させ、挙兵させないように仕向けます。見返りに義村を宿老に取り立てる約束をしますが、義時の承諾を得ていない口約束です。「私は尼御台ですよ」という政子の声に応え、北条と和田が戦になった時、三浦は北条に味方すると誓います。
謹慎になったと泰時が自邸に戻って来ます。そこに北条朝時がやって来ました。最近鎌倉がきな臭く感じた初の計らいです。ひとりは鎌倉を追い出され、ひとりは謹慎……と泰時は自嘲気味につぶやきますが、北条と和田の間に戦が起こるかどうなのかは、泰時でも分かりません。泰時は酒をぐいっとあおります。
養福寺の花見の帰り、実朝は千世を歩き巫女のおばばのところへ案内します。実朝が鎌倉殿であると歩き巫女にバレてしまったわけですが、実朝と千世を見てお互い敬っているわりに寂しいと占います。幸せ3、寂しさ7ですが、寂しさ10よりはましです。「肘があごにつくかね?」と言われて、試してみる千世(笑)。やらなくていいから、と実朝に言われてしまいます。
「夢を見たぞい」と、おばばはじき大戦がはじまると実朝に告げます。驚く実朝に、この鎌倉が火の海になりたくさんの血が流れ、みんな死ぬと占います。そして由比ヶ浜にひげ面の首が並ぶ。まさか……という表情を浮かべる実朝のところに、平 盛綱が急ぎ御所に戻るように伝えに来ました。
本来であれば罪人の住処は同族の者に引き渡されるのが通例ですが、義時は胤長の館を没収します。それでは義盛が立腹すると御所に戻った実朝は義盛をかばいますが、和田との戦の大義名分を必要とする義時の狙いはそこにあり、義盛が挙兵すれば幕府として鎮圧の兵を出すことが出来るわけです。反対する実朝に、義時は今後外を出歩かないようにくぎを刺されます。
実朝は政子の元を訪れ、状況を訴えます。義村がこちらに味方するということで戦にはならないと平然としている政子ですが、義盛と仲良くしてきた実朝は、義盛は追い詰められれば一人になっても戦う男だと分かっています。挑発に乗らないように話をしたいと義盛を呼びだそうとする実朝ですが、呼び出せば捕らえられてしまいます。政子は北条秘策の案(?)を思いつきます。
女子のなりをして御所に現れた義盛と実朝が対面します。ここまでコケにされては武士の名折れと戦う決意を固める義盛ですが、死なせたくない実朝は義盛の手を取り、必死に説得を続けます。二度と行き過ぎた真似をしないように実朝自身目を光らせると約束し、義盛は感動の涙を流します。「またうまい鹿汁を食わせてくれ。和田義盛は鎌倉一の忠臣だ」
実朝は政子同席の上で、義時と義盛が手を取り合ってこその鎌倉であると両者とも矛を収めるよう提案します。義盛は歴戦の強者と、戦をせずに済むならそれに越したことはないと義時は実朝の提案を受け入れます。久々に双六をしようと実朝が誘い、義盛も明るい笑顔で出ていきますが、義時はその場に残るように政子に求められます。
政子には、口では和解したように見せかけて実はいまだに和田を滅ぼしてしまいたいと、義時の胸中は分かっています。「戦をせずに鎌倉を栄えさせてみよ!」 そう叱りつける政子ですが、その考えは義時に言わせれば甘すぎるわけです。義時であればこんなやり方でなくてもみんなをまとめていけると言われ、政子の元から下がってきます。
通路で待っていた義盛に、実朝は賢いし度胸もあり、何より心が温かいと示されます。「ようやく俺たちは、望みの鎌倉殿を手に入れたのかもしれねえぞ」 義盛は古参の長老ながら、政は義時に一任しつつ、力がいるときは惜しみなく協力すると義時に誓います。鎌倉の敵は俺が討ち取る! と言って去っていく義盛の背中を目で送りながら、義時は大きなため息をつきます。
しかし、御所へ出向いた義盛の帰りが遅いと、和田一門が暴発寸前になっていました。広元の館を襲撃して囮とし、御所へ突入して義盛を救い出すという策です。義村は少数で参戦していますが、出発しようとする間際、巴御前は義村たちに“決して和田を裏切らぬ”という起請文を求めます。信じないなら手を引くと言う義村ですが、多勢に無勢、起請文を書くことにします。
義時は、和田を滅ぼすいい口実だったのにと悔しそうです。ともかく戦にならずに済んでよかったと安堵する時房は、義時も義盛のことが好きなくせにと冗談を言って、笑顔で御所警護を解いてくると出ていきます。ともかく今は静観したほうがよさそうだと、義時は、義村に和田館から引き上げるようにトウに伝えに向かわせます。義村には顔が割れているトウは、一瞬間をおいて「はい」と答えます。
起請文を燃やし、水を入れて飲んだ三浦勢。北条へ寝返る手はなくなったわけです。そして和田一門が出発していきます。「小四郎……すまん」 義村はここにはいない義時に詫びます。建暦3(1213)年5月2日、鎌倉最大の激戦である和田合戦が勃発します。義時は、双六代を前にひとりで双六をしています。
作:三谷 幸喜
音楽:エバン・コール
語り:長澤 まさみ
題字:佐藤 亜沙美
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小栗 旬 (北条義時)
小池 栄子 (政子)
坂口 健太郎 (北条泰時)
瀬戸 康史 (北条時房)
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尾上 松也 (後鳥羽上皇)
市原 隼人 (八田知家)
山寺 宏一 (慈円)
宮澤 エマ (実衣)
秋元 才加 (巴御前)
小林 隆 (三善康信)
生田 斗真 (源 仲章)
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菊地 凛子 (のえ)
横田 栄司 (和田義盛)
大竹 しのぶ (歩き巫女)
栗原 英雄 (大江広元)
山本 耕史 (三浦義村)
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制作統括:清水 拓哉・尾崎 裕和
プロデューサー:長谷 知記・川口 俊介
演出:中泉 慧
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