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2022年11月18日 (金)

プレイバック北条時宗・(44)妻のなみだ

的に向かって一心に矢を射る北条時宗ですが、時宗が意地になればなるほど矢は的の中心から逸れ、次の一矢は大きく外してしまいます。その様子を見ていた祝子と若菜ですが、さらに時宗は射続け、弓の弦が切れてしまいます。祝子は時宗の手当てをしながら、根を詰めすぎだと心配しますが、時宗は自分の心の揺れが収まるまでと射続けたと答えます。

建治3(1277)年 冬、何かに急かされるように嫡男幸寿丸を元服させて「貞時」と改名させましたが、この元服の儀式では、安達泰盛と平 頼綱との間に決定的な亀裂を生じさせる結果となり、北条義宗は自害、北条義政は引退・出家という悲劇的な結末を迎えることになってしまったのです。

北条顕時は、幕府がこうなることを父(北条実時)は予想だにしなかっただろうとつぶやきます。泰盛は幕府の均衡が崩れかけていることを危惧し、得宗家と御家人の間に絆を固めねば蒙古に立ち向かうことはできないと、泰盛の娘・滝子を嫁にと顕時にもちかけます。得宗家の家来が大きな顔をしていると批判しますが、それは暗に頼綱のことを言っていると顕時も理解します。「御家人の誇りを守るため、安達と縁を」

その縁談話はすぐに禎子に伝わり、泰盛は頼綱を引きずりおろそうとしていると叱咤しますが、頼綱はニヤリとするだけです。そもそも飛鳥井家出身の禎子が頼綱に嫁いだのは、公家の名門ながら御家人たちから牛耳られるありさまで、もし縁組するならたとえ賤しい身分でも御家人を倒す気概を持った男がいいと思っていたからです。頼綱は、いい妻を娶ったと笑います。

 

泰盛は滝子に縁組が決まったと報告します。松下禅尼もいい縁談だと喜んでいますが、自分の力を保つために今度は娘まで利用するのかと反発します。実家との絆を強め幕府が盤石になれば滝子にとってもいいことだと松下禅尼は諭しますが、梨子は幕府のために娘を犠牲にすることが耐えられないのです。「滝子はやりません。義宗と兄上を巻き込むだけでは足りぬのですか!」

安達家を飛び出した梨子と滝子は、気が付けば最明寺亭にいました。涼泉尼は寝泊まりの部屋を用意して歓迎します。実際のところ嫁ぐことに関して実感がない滝子ですが、涼泉尼はそうであろうなと理解を示しつつ、いずれ思いを定めなければならない日が来るわけで、それは女子の必ず通る道とニッコリほほ笑みます。

祝子は泰盛と梨子を仲直りさせようと、梨子が最明寺亭にいることを泰盛に伝えて迎えに行くように仕向けますが、武家の妻が自分の足で出て行ったのだから、同じ足を使って戻ってくるのが筋だと祝子の言を聞き入れません。そういえば祝子も時宗との口げんかが原因で、結婚翌日に実家に戻ってきたのですが、時宗は迎えに来ませんでした。

時宗は梨子母子が最明寺亭にいることを知り、特に梨子は長兄長時を亡くし、次兄時政とは離れ離れになり、甥の義宗も亡くしたこともあり、しばらく羽を休めさせてやってほしいと涼泉尼に頭を下げますが、出家以来一言も話さないことにしている涼泉尼は、時宗の言葉には一切反応せず、時宗を見ることもしません。

夜、梨子を訪ねた頼綱は、縁談話が流れるまでここに留まってほしいと伝えます。御家人が力をつければ新たな謀反や争いを招くと言う頼綱に、争いごとを好むのは泰盛も頼綱も同じと梨子は笑います。頼綱は長時に手を下して殺したのが誰か教えてやろうと近づきますが、梨子は頼綱を平手打ちし、押さえつけられた梨子は「やれ!」と不気味な笑みを浮かべます。

見回りに来た喜々(涼泉尼の侍女)ですが、梨子たちの部屋から頼綱が出てきて紙燭を放り出して腰を抜かします。頼綱の後から出てきた梨子は「私は頼綱どのと通じました」と密通を告白します。驚きの表情で梨子を見上げる頼綱を横目に、泰盛に成敗される覚悟はできていると言葉を続ける梨子です。

 

騒動を詫びる泰盛は、今すぐにでも頼綱を斬るつもりですが、時宗は事件の詳細が分からないうちから裁断を下すのは良くないし、泰盛も頼綱も幕府には大事な人物だからと、自分に預けてほしいと頭を下げますが、泰盛の怒りは収まりません。しかし泰盛は冷静になり、最終的には時宗の提案を聞き入れることにします。

一方、濡れ衣を着せられた形の頼綱は潔白を主張しますが、時宗はあの夜に二人で何をしていたのか問いただします。滝子の縁談を考え直してもらいたいとお願いしていたと弁明した頼綱は、それが密通の疑いを招いたことは不徳の致すところと謝罪します。時宗に求められてまっすぐ顔を向ける頼綱は、動じた様子もなく堂々としていました。

禎子の怒りは最高潮に達しており、でたらめ出まかせ嘘八百! と梨子を問い詰め蔑みます。夫の無実を信じる禎子は梨子をめいっぱい脅しますが、涼泉尼が間に入ります。禎子が立ち去ると、涼泉尼は「そなたは戦を始めたようじゃな」とつぶやきます。泰盛と頼綱もろとも討ち死にするつもりで密通を言い出す梨子の覚悟と、そこまでしてさえ滝子を守りたい梨子の気持ちを涼泉尼は察します。

祝子は梨子が密通をしたとは思えないわけですが、成敗されると分かった上でなぜうそをつくのか、時宗には理解できません。かつて、いったい何人犠牲になればいいのかと梨子が嘆いていたと祝子から聞かされ、時宗は祝子を追い詰めたのは自分かもしれないと思い始めます。「梨子どのが密通したと言い続ける限り、わしは泰盛どのと頼綱を失う」 時宗は祝子に梨子の言い分を聞いてほしいと頼みます。

執権の妻としてではなく、ひとりの女子として梨子と対面した祝子は、すべてをあの世へ持っていくと曲げない梨子に、一番傷つくのは父が母を殺めるのを知る滝子自身だと諭します。梨子は思い直し、ただ滝子を政争の具から守りたかったと、密通していないことを白状します。そして梨子は、祝子が結婚翌日に安達に戻った時のことを思い出します。「もうあのころには戻れぬ……あのころの私に」

 

祝子に誘(いざな)われて泰盛の前に現れた梨子は、手をつき詫びを入れます。泰盛は何もかも許すつもりでいましたが、梨子は騒動を起こした責を負わなければならないと、今さら安達には戻れないと離縁を申し出ます。泰盛は一人で背負い込む必要はないと言いつつ、自分の妻であることを忘れるなと送り出すことに決めました。

結局梨子は涼泉尼が預かることになり、松下禅尼は礼を言います。ただ松下禅尼は滝子が不憫だとは思わず、家と家とをつなぐ務めを果たすものという考えは変えていません。その務めに潰される女もいると涼泉尼がチクリと言えば、その務めと生涯戦い抜く女もいると松下禅尼は指摘します。ただ松下禅尼は生涯かけて、梨子の戦、涼泉尼の戦をずっと見守っていくと宣言します。

滝子と顕時の華燭の典が盛大に執り行われます。時宗はじめ一門のみんなが歓迎していますが、泰盛を冷めた目で見る頼綱の表情が対照的です。泰盛は黙って盃を傾けます。その様子を心配の面持ちで見つめている時宗です。こうして梨子の戦が幕を閉じました。

時宗は涼泉尼に梨子のことで世話をかけると頭を下げます。喜々によれば梨子のところから出てきた頼綱は烏帽子をかぶっていなかったそうで、どうしてそんな恰好でいたのか疑問に感じています。そこへ梨子が来て今回の騒動の詫びを入れ、祝子に悲しい思いをさせないでほしいと約束を求めます。「約束はできませぬ」 

降伏した宋の幼い皇帝と母、太后はクビライの前に引き出されます。クビライ皇后のチャブイは、彼らを南へ帰しましょうと提案しますが、南へ帰せば誰かが担ぎ出すと聞き入れません。クビライ次男のチンキムは日本などに出兵せず大元の安定に力を注ぐべきと進言しますが、父と子の間で言い争いになります。その様子を見ていたチャブイはとても心配そうです。

そのころ蒙古へ渡った桐子は、佐志 房の手掛かりを得ようと街行く人に尋ねて回りますが、手掛かりは全く得られません。実は謝 国明に迷惑をかけずに息子たちの仇を取るために身を潜めていたわけです。そして北条時輔は高麗から西に向かって大元にたどり着きました。大元にはいろいろな国から人が集まっていました。桐子は大元の市場で世界中を旅したベネチアの商人マルコポーロとの出会いを果たします。

蒙古から遣わされた最後の使節が日本に向かっていました。蒙古と日本、2つの国の衝突は新たな悲しみを紡ぎ出そうとしていました。


脚本:井上 由美子
高橋 克彦「時宗」より
音楽:栗山 和樹
語り(覚山尼):十朱 幸代
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[出演]
和泉 元彌 (北条時宗)
渡部 篤郎 (北条時輔)
浅野 温子 (涼泉尼(涼子))
柳葉 敏郎 (安達泰盛)
木村 佳乃 (桐子)
西田 ひかる (祝子)
牧瀬 里穂 (梨子)
寺島 しのぶ (禎子)
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江原 真二郎 (高 師氏)
バーサンジャブ (クビライ・カアン)
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石橋 蓮司 (北条時広)
藤 竜也 (佐志 房)
富司 純子 (松下禅尼)
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制作統括:阿部 康彦
演出:勝田 夏子

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