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2022年11月25日 (金)

プレイバック北条時宗・(46)クビライを討て!

謝 国明の指揮の元、御家人たちが結束して作り上げた石垣がようやく完成しました。武士の力だけでは石垣を作ることはできず、それは商人や職人の力だけでも作れないのと同じで、身分を超えて作り上げた心の石垣だと謝 国明は表現します。竹崎季長は実際に石垣を上ってみて、やすやすと越えられないことを確認します。「次はいかに博多を守るか。知恵を集めねばなりませぬな」

弘安4(1281)年。平 頼綱が日蓮の信徒を殺め、北条時宗は身延山を訪問します。頼綱を重用する理由を尋ねる日蓮に、頼綱が影を引き受けているお陰で自分は揺るがずに政を行えると説明します。政を極めれば極めるほど時宗は傷つくと危惧する日蓮は、立正安国論で警告したように蒙古は再度襲来すると断言しますが、時宗もそう見越してすでに準備に入っているのです。

「博多が騒然となるのは、春から夏」 鎌倉・建長寺に入った時宗に、無学祖元はそう予言します。時宗にとっては勝てるかどうかですが、風が起これば海に浮かぶものが全て姿を消すと言われます。さまざまなものを押し流す風……。日蓮とは違い、無学祖元の言葉は時宗の胸の中にストンと入ってきます。

使節を2度も斬首に処した時宗は、戦になる覚悟を固めていますが、どれだけ博多で蒙古軍を食い止められるかと心配です。北条宗政は、砦の上に立つ者がしっかりと兵を率いれば守り切れると兄に勇気を送ります。再び博多へ遣わしてほしいと訴える宗政ですが、文永の役で左目を失った宗政を派遣する気は時宗にはありません。しかし一度戦ったからこそ、閉じた目を再び開いてみたいと宗政は主張するのです。

 

大元・大都でクビライの動きをすぐそばで着目していた北条時輔は、そのクビライが作らせた、この世にあるものを網羅してまとめた『事林廣記』という書物に目を通します。桐子は字が読めないので、その本の分厚さにただ驚いていますが、それだけこの蒙古という国が大きいということだと、時輔は読み進めます。

慶元と泉州では1,000艘の、高麗では600艘の軍船が整いますが、クビライはまだまだ足りないとさらに造船を命じます。次男・チンキムは日本への攻撃を止め、国の安定を訴えますが、クビライは政を分かっていないとチンキムを諭します。このままでは不満を抱く者が増えるだけと食い下がりますが、クビライは聞き入れず「下がれ!」とチンキムに命じます。

チンキムにとって父・クビライは大きすぎる存在です。後継者を外される……と、その気持ちを時輔に吐露するチンキムは、間もなく宋兵10万が日本を攻めると伝えます。10万という数字に時輔は愕然とします。大元に敗れた国の兵士が、大元のために日本を攻撃する。「それが父のやり方だ。それがこの国の真実だ」

 

マルコポーロは、クビライが言った“民を生かす道”の意味を分かっているようで、宋兵を日本開拓団として送り込み、新たに生きる力を与えると説明します。マルコポーロの説明にクビライは大いに頷き、慶元が海の時代の玄関口となると続けます。つまりクビライは、行き場を失った宋の兵士に日本という目標を与え、不満を持つ兵たちを外へ追いやると同時に日本を手に入れようとしていたのです。

10万の兵が押し寄せたら博多はどうなる? と桐子は心配になります。一緒に酒を呑んでいたマルコポーロは、博多は数刻で落ちてしまうと分析します。文永の役はクビライにとって物見に過ぎず、どこに港があり、力がどれくらいなのか、日本のことを知る必要があったわけです。しかしその物見で殺されてしまった佐志 勇たちが浮かばれないと、桐子はマルコポーロに反発します。

国を失った兵が異国で戦わされるとしたら、土着の民は10万の宋兵に追いやられてどうなるのか。怒りを覚える時輔にマルコポーロは、クビライは異国の民を大切にする人で、異国の民も一緒に暮らすきっかけになるという考えを代弁します。大きなことを成す時は多少の痛みも伴うというマルコポーロの言葉に、時輔は反論します。「その痛みを受けるのはいつも、都から遠く離れた地に住まう人なのじゃ」

星空がきれいに瞬いています。日本から見る星空が好きだと言う桐子は、今度日本に帰った時には国がなくなっているかもしれないとつぶやきます。時宗や謝 国明もみんな死んで、誰もいないかもしれない。帰りたいとも思いますが、佐志 房を日本へ連れ戻すために海を渡ってきた使命を思い出し、帰れないと気丈に振る舞うのです。

 

大都に潜む房が目にしたのは、クビライの誕生日「聖壽節」に宮殿に民を招くというお触れでした。その帰り、日本からの品を商う店に立ち寄った房は、1本の扇を手に取り、背中を向けている桐子に「いくらじゃ?」と声をかけます。振り向いた桐子は、目の前に立ってほほ笑む房に目を輝かせ、再会を喜びます。

クビライに会うという目的を達成させるために、異国の民を登用しているらしいクビライの目に留まらないかと考えている時輔を、無謀だと桐子は笑います。しかし房は桐子をたしなめます。「わしは笑わぬ。男にはな、命を懸けてもやらなきゃいかん仕事があるんじゃ」 久々に房に叱られてしょんぼりする桐子です。房は酒がなくなったとその買い出しに出ていきますが、それっきり帰ってこなくなりました。

やがて「聖壽節」が近づいてきました。房は来たる時の準備に余念がありません。そして当日、集まった民の中には房を案じた桐子や時輔の姿もありました。房は老人に化け、足元おぼつかなく群衆の前列に進み出ます。そしてクビライの演説中、用意した数々の部品を組み立てて武器に仕上げていきます。

クビライは、蒙古には多くの宗教が共存し、民の生活も豊かになっている。その民のおかげで平和が成り立っているとした上で、その平和を拒む日本のことを非難する演説を始めます。「かの国を開かせるため、改めて兵を送る」 民衆の歓声の中、石段を下りて民衆に近づいたクビライは、その声に満足げに頷き、宮殿へ戻っていこうと背中を見せます。

 

「クビライ!」 そう叫び、民衆から躍り出た房はクビライめがけて槍を投げます。槍はクビライをかすめ、近くで護衛する兵に刺さります。房は捕らえられますが、殺すなと警護兵を遠ざけます。日本の松浦でクビライに息子たちを殺されたからだと言う房に、クビライは正しい理由だと納得します。しかしクビライに掴みかかった瞬間、房は斬り倒されてしまいます。

殺すなと言ったろう! と警護兵を平手打ちしたクビライは、横たわる房に言葉をかけます。「勇気ある真の男だ。手厚く葬ろう」 マルコポーロの通訳で、房が海に戻してくれと言っていると伝えると、ついに落命します。桐子は房に駆け寄り、大粒の涙を流します。そしてじっと見つめる時輔に「勇者を返そう。海に葬ってやってくれ」と言葉をかけます。クビライは房の遺体に、腰の飾り物を授けます。

房を荼毘に付し、桐子は房の遺骨を持って日本に帰ることにします。時輔は、ここまで来た以上は何かを成したいと、大都に残ることにします。桐子は時輔に抱きしめられて、一気に悲しみがこみ上げたのか顔をゆがめます。結ばれることはないものの、時輔との不思議な縁を感じているのです。桐子は、謝 国明の船に乗って日本への帰途につきます。海上で、房の遺言通り、遺灰を海に撒きます。「さらばじゃ!」

蒙古の皇后チャブイは、チンキムの話も聞いてやってほしいと涙ながらに訴えます。「海を越えた国が完成した時、皇帝の座をチンキムに譲り、ふたりで船旅をしよう」とクビライはチャブイの枕元で約束しますが、国の行く末に大きな不安を抱えたまま、チャブイは亡くなります。そして4月、ついに日本遠征の命が下ります。総勢14万、その多くはクビライの思惑通り、新天地を求めた移民団でした。

 

北条執権館では、宗政の出陣の儀式が執り行われていました。宗政を送り出すのは2度目ですが、時宗は名代として全軍を率いて蒙古軍を撃退すること、そして生きて戻るように命じます。戦が近づいていることは、誰の目から見ても明らかでした。小さい子どもたちに見送られ、宗政はニッコリほほ笑んで出発していきます。

宗政を出陣させたことは、涼泉尼の怒りを買うことは時宗は分かっていました。しかし時宗は執権として幕府を守り抜かなければなりません。時宗は涼泉尼に詫びを入れますが、どんな事情であれ許すことはできません。何としても宗政を死なせてはならない。戦だからと約束できないでいると、涼泉尼は時宗の頬に手を当てます。「子は親より先に死んではならぬ。時宗、そなたも死んではならぬのじゃ。よいな」

夕刻、泰盛と足利家時ら御家人たちが執権館に集まります。どうして泰盛の言葉に耳を貸さないのか。どうして御家人を蔑ろにするのか。執権としての考えを聞きたいと集まったのです。御家人たちのおかげで鎌倉幕府が成り立った過去を思い出し、初めからやり直そうと泰盛は諭しますが、時宗の答えは意外なものでした。「もはや今の幕府を守ろうとは思わぬ」

反発する御家人たちをよそに、蒙古では生まれも身分も言葉も異なる者たちがみんなで政に当たっています。その蒙古に打ち勝つには、こちらの仕組みも改めなければならないと考えているのです。幕府の柱が腐っているなら取り換えなければならない。そう主張する時宗を、泰盛は封じます。「それ以上申されるな。幕府の柱を折る者あらばこの安達泰盛が許さぬ。たとえそれが時宗どのであっても」


脚本:井上 由美子
高橋 克彦「時宗」より
音楽:栗山 和樹
語り(覚山尼):十朱 幸代
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[出演]
和泉 元彌 (北条時宗)
渡部 篤郎 (北条時輔)
浅野 温子 (涼泉尼(涼子))
柳葉 敏郎 (安達泰盛)
木村 佳乃 (桐子)
西田 ひかる (祝子)
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江原 真二郎 (高 師氏)
うじき つよし (竹崎季長)
小西 博之 (菊池武房)
筒井 康隆 (無学祖元)
バーサンジャブ (クビライ・カアン)
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奥田 瑛二 (日蓮)
藤 竜也 (佐志 房)
北大路 欣也 (謝 国明)
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制作統括:阿部 康彦
演出:吉村 芳之

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