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2022年12月30日 (金)

放送80周年ドラマ・ハルとナツ Haru e Natsu ~届かなかった手紙~ (05)ブラジルへ [終]

5夜連続放送~放送80周年ドラマ・平成17年度文化庁芸術祭参加

昭和27(1952)年6月、ブラジル・サンパウロ州奥地。実の位牌に拓也(31)は、ハーモニカで『渡伯同胞送別の歌』を奏でます。ハル(27)たちと別れて山下家と3年過ごした実は、海野中佐に見込まれて日本に帰ることになり、はなむけに拓也がハーモニカを贈ったのでした。ファゼンダ(農園)を逃げ出しお別れしてから17年、サンパウロで農機具を作ったり修理したりする工場で働いています。

忠次はハルに酒の支度をさせ、再会を祝して飲み明かそうと提案します。ブラジル人と結婚して父の平造を手伝う兄とは違い、機械は苦手だとこぼす拓也は、畑に囲まれて暮らすハルたちを羨ましがります。幼いハルが畑で野菜を育てて感化された拓也は、大学でも野菜や花の品種改良を勉強するほどだったのです。忠次はしばらくここでゆっくりしてはと勧めて、それを横で聞いていたハルはちょっとだけニンマリ(笑)。

拓也は綿畑を手伝いながら、いずれは土地がやせるから別の作物を作ったほうがいいとハルに提案します。でなければいつまでも日本に帰れないという拓也ですが、それよりも、ハルが未婚であることの方が驚きです。そう言う拓也も未婚で、相手いないからとお互い笑い合います。ハルのことが忘れられなかったからかもしれないとつぶやく拓也に、ハルは照れます。「冗談言わないの! 本気にしちゃうっしょ」

 

平成17(2005)年4月、箱根の温泉旅館。ハル(80)は、当時は結婚もあきらめていたとナツ(78)に打ち明けます。日本に帰りたくてもいつ帰れるか分からないし、一生両親と暮らして畑を作っていくしかないと考えていたのです。自分のことはそっちのけで人のことを考えるハルの性格はナツも十分分かっています。「私とは正反対!」と笑うナツは、自分のことしか考えてこなかったのです。

ただ、ジョージに捨てられて、照彦を父親のない子にしてしまったことだけが不憫でした。山辺という男が照彦の父親になってくれると言うので、ナツは2度目の結婚を決意しました。

 

昭和24(1949)年9月、札幌の北王製菓工場。「ホッカイドークッキー」と印刷された箱にクッキーを詰めるナツ(22)たちのところに、商品を引き取りに山辺康夫が尋ねてきます。まだ商品は揃っておらず、待たされることに康夫は愚痴を言いますが、不満なら買わなくていいとナツに強気に出られてしぶしぶ待つことにします。待っている間、照彦の面倒を見ている康夫です。

作業に追われるナツたちに代わって電話に出る康夫ですが、クッキーを買ってくれていた森川という会社からの受注取り消しの連絡でした。バターやチーズで大きくなってきた白樺乳業という会社がクッキーなどのお菓子作りを始めたらしく、大量生産できる分安価で入荷できるという現状から考えれば、そこへ鞍替えした可能性もあります。小口の顧客相手だったこともあり、ナツはあまり気にしていませんでした。

ナツとしては大量生産ではないホームメイドクッキーが売りでもあるし、律子とアイ子含め3人が生活していければいいと考えていますが、のん気なこと言っていられないと康夫ははっぱをかけます。競合が増えた今のうちに大量生産の方法を考え、儲けから機械を導入するなど方針転換しなければ、たちどころにつぶされてしまうと言うのです。

客が買いに来るのを待つのではなく、こちらから客を探して注文を取って配達する。律子やアイ子は売り込みなんかできないと困惑しますが、セールスの仕事を康夫が買って出ます。北王製菓には何の義理もありませんが、ここの商品を扱えなくなるのが康夫としては寂しいのです。「この坊やのためにも、この業界で成功してもらいたいじゃないの」

夜、夕ご飯を食べながら会議です。自分たちが資金持っているのを分かって言っていると律子は康夫を信用できませんが、ナツは野心家である康夫を買っています。会社を大きくして後々乗っ取ろうということかもしれないと、律子はなおも康夫を疑いますが、ナツは康夫と結婚してもいいと考えていると2人に打ち明け、2人に手紙を差し出します。

「これ……ラブレターでないの?」「“照坊の父親になりたい”って、プロポーズしてるでない!?」と2人は驚きます。ナツは、康夫が会社目当てあっても、会社が大きくなれればそれでいいと考えています。康夫が好きなのかナツの気持ちを確認したいアイ子ですが、照彦の父親になってくれて、おまけに会社も大きくなれれば一石二鳥と、ナツは前向きに捉えています。

 

ナツは正式に結婚して山辺家の籍に入りました。康夫が従業員として営業から経理まで会社を取り仕切って、精力的に商品を売りまくって業績を上げていったのです。康夫を見る目に間違いはなかったと胸を張るナツですが、野心家の康夫には浮気でずいぶん悩まされました。康夫がいなくなったら会社も困るので、康夫との間に2番目の子ども(公彦)も作りました。

ナツの話を聞けば聞くほど、ハルの表情が曇っていきます。そんな割り切った結婚はできない……。7歳でひとり日本に置き去りにされた子が、人間を変えてしまうほどに大変なことだったんだとハルは同情します。3年経ったらって約束も守れず、国交が回復しても来られなかったことを詫びます。ナツは、ブラジルで必死に働き続けなければ今日まで生きられなかったのだからと、ハルをかばいます。

 

ブラジル・サンパウロ州奥地。しばらく髙倉家で作物栽培の手伝いをしながら土壌を見てきた拓也は、この農園でいろいろなものを作って自分の夢を賭けたいそうです。「お願いがあります。ハルさんを頂戴したいんです。ご両親のお許しが出たら、ハルさんに申し込むつもりでいるんです」 ハルは気まずくなって家の中に駆け込み、忠次はハルを追い、拓也の話を喜んでお受けするように勧めます。

親の都合でブラジルにまで連れてこられ、嫁ぎ先もなく朽ちさせていくのかと眠れない日もあったわけですが、ハルの幸せを見届けられたら安心して茂や実のところへ逝けるというのです。「できたら拓也くんに、髙倉の家を継いでもらえたら」との忠次の申し出に、拓也は承諾します。ハルをよろしくと忠次は拓也に土下座します。初めて見る父親らしい姿に、シズとハルは忠次に寄り添って涙を流します。

拓也は、幼いころからハルに好意を持っていました。本当は直接申し込みたいと思いつつ、断られるのが怖くて忠次にお願いすることになってしまいました。ハルは自分のために拓也をここにつなぎ留めておくのは良くないと考えながら、ここで拓也が夢を育てたいのなら自分も手伝えるかもしれないと、拓也のプロポーズを受けます。「一生、拓也さんに付いていかせてください」

4人の生活が始まってすぐ、中山トキが突然の訪問です。中山家とは犬猿の仲である忠次はトキのほうを一切見ようともしませんが、トキはハルが結婚すると聞いて、日本から持ってきていた花嫁衣裳を譲り渡すと持ってきたのです。ハルはもったいないと固辞しますが、どうしても花嫁姿を見たいとトキが食い下がり、忠次はしぶしぶ頷くしかありませんでした。

──これがきっかけで、村の人たちも披露宴に出てくれることになった。サンパウロからお父さんとお母さんも来てくれたの──

9月、高倉家ではトキに譲り受けた着物を着たハルの花嫁姿に参列者から感嘆の声が上がり、隆太夫妻もお祝いに駆け付けてくれました。そこにサンパウロから平造とミツがたどり着きます。忠次も平造も白髪になり、時の流れを感じさせます。忠次は平造と、シズはミツと、抱きしめ合って再会を喜びます。

日本人会館ではたくさんの人たちが集まり、高砂席には拓也とハルも着席します。声を上げて泣き出した忠次は、シズとともに中山耕太郎とトキの前に進み出て、握手を求めます。愛娘に日本の着物を着せて結婚式を挙げるのが夢だった忠次は、思い残すことはないと耕太郎に頭を下げて礼を言います。仲直りの証に、全員で『渡伯同胞送別の歌』を歌います。

行け行け同胞海越えて、遠き南米ブラジルに、御国の光輝かす、今日の船出の勇ましさ、万歳万歳万々歳。
──私たちの結婚を境に、勝ち組負け組でいがみ合ってた村の人たちも、少しずつ付き合うようになって。本当に幸せな毎日が始まった。間もなく長男の達夫が生まれて、3年後には次男の邦男にも恵まれて──

昭和34(1959)年4月、髙倉家の畑で菊の花がたくさん咲いています。忠次は邦男を抱きながら、まさかブラジルで菊の花を見られるとはと懐かしんでいます。これが成功したら本格的に栽培して菊の花を出荷したいという拓也の夢で、ハル(34)は達夫に「パパってえらいでしょ!?」と笑いますが、達夫はブラジルの花のほうが好きらしく、子どもは正直だと忠次も笑います。

──ブラジルの奥地で開かれる日本のシネマの上映会は、何よりも楽しみだったの。最初ニュースが始まってスクリーンいっぱいに映し出されたのが、当時の皇太子さまと美智子さまの華やかなご成婚の行進だったの──

その日は上映会の日ということもあり、食事を早めに済ませて家族で会場に向かいます。会場には所狭しと椅子が並べられ、多くの日本人たちがスクリーンに注目しています。映画と言ってもニュース映画であり、ご成婚の行進の映像にハルは目を輝かせ、忠次は目に涙を浮かべて立ち上がって拍手をします。

その後 中山家で食事をとる忠次は、やはり大東亜戦争で日本は勝ったとまだこだわっています。耕太郎はあえて否定もせず、終戦から14年が経ち日本が底力で立ち直ったことを称賛。日本はすばらしい民族だという部分で意気投合した両者は、改めて乾杯をし酒を呑みます。ようやく耕太郎にも理解してもらえたと、忠次にとってはうまい酒です。

泥酔状態のところを隆太に送ってもらった忠次は、実たちが日本を守ってくれたと酒を仏壇に供えます。「お前は俺の誇りだぞ」 フラフラと床に倒れてしまった忠次は、そのまま息を引き取ります。建てられたお墓に手を合わせる耕太郎は、忠次は日本を信じなければ生きてこられなかったのだろうと気持ちを思いやり、がっくりと肩を落とします。

 

忠次にとっては辛いことばかりの一生でした。まだ63歳という若さでした。辛いことはお酒で紛らせていた忠次は、肝臓も心臓も悪くしていていたのでしょう。ナツも会いたかっただろうとハルがつぶやくと、生き別れた父の最期にナツも涙を浮かべます。

 

──私はそのころ、事業を大きくすることに精いっぱいで、ブラジルのこともお父ちゃんのことも忘れて、ずっと走り回ってた──

昭和38(1963)年。東京では「日本菓子製造協会」の交流会が開催され、万歳三唱の後 歓談が行われますが、ナツ(36)はその会場で中内金太と川村 勉と再会します。金太は白樺乳業の東京支社長で、勉は製菓部長です。ナツは、もし金太と勉が北王製菓にいたら新し物好きのナツの方針と衝突していたと、別れて正解だったと笑います。ナツは康夫を2人に紹介します。

──なんてったって日本は東京オリンピックを控えて、新幹線だ高速道路だって高度成長の真っただ中で、大きくなるのはいいことだって信じて突っ走ってた。何も怖いものはなかった──

 

昭和38年・ブラジル・サンパウロ州奥地。本格的に事業を広げたいという拓也は、農園を手放して帰国する日本人の一家があって、そこに移りたいとシズとハル(38)に相談します。ハルは拓也だけで行ってもらうしかないと険しい顔ですが、シズは家族みんなで移り住み新しい生活をしようと返答します。シズの考えが気になっていたハルと拓也は「ありがとう母ちゃん!」とたちまち笑顔になります。

そこは、サンパウロの市内からは100km離れていますが、カミニョン(トラック)で走れば2時間ぐらいで行け、市場に花も野菜も届けられる場所です。達夫も邦男も農場を継ぐつもりになってくれて、大学にも行かずに拓也の手伝いをしてくれます。父親と子ども2人が一緒に働いている姿に、ハルはこれが家族の姿なんだと感慨深げです。ブラジルに来て初めてよかったと思えた瞬間でした。

ハルの息子たちはいい子に育ってよかったと、話を聞いたナツは笑顔になります。それは、父親と母親が農場で汗水流して働いている姿を見てきたからだとナツは羨ましがります。ただ、順風満帆のように聞こえて「いいことばかりではなかった」とハルは振り返ります。

 

昭和52(1977)年・サンパウロ市郊外 高倉農園。達夫が好きになったブラジル人の娘・マリアを家に連れて来ます。てっきり日本人だと思っていたハル(52)は困惑し、厳しい表情でブラジル人と結婚させるつもりはないとマリアを帰してしまいます。マリアは肩を落としてとぼとぼと帰っていきます。

達夫は激しく反発します。マリアも父も知っていて、とてもいい人たちだと理解している拓也ですが、ハルが反対している以上は受け入れられないと残念そうな顔です。邦男は、日本人がブラジルで暮らすためには、家族がバラバラになるようなことはしてはいけないと兄を諭しますが、「どうしても結婚したいならこの家を出ていくのね」というハルの言葉に従って、達夫は家を出ていきます。

──達夫はそのまま家を出て、マリアと結婚して2人で暮らし始めたの。それでも達夫とマリアは夫婦で農場に働きに来てた。けど、私はマリアとは口も聞かなかった。夫と邦男のほうは、結婚相手を私に任せるって言ってくれた。それで知り合いにお願いして、日本からお見合い写真を送ってもらったの。申し分ない日本のお嬢さんと思って、邦男もとっても喜んでね。ところが日本から来た嫁にはちょっと呆れた。日本の娘としてのしつけを受けてなかったのよね──

──戦後生まれの娘たちってそんなものよ──

──その翌年、不況で菊の値段が大暴落して、市場に出したって損になるだけだから、みんな捨てることになったの。その時、マリアを見たら、彼女泣きながら菊を抜いてるのね。私……胸が熱くなって──

昭和55(1980)年。丹精込めて育ててきた菊の花ですが、捨てるしかなく、道に並べてトラックで踏みつぶしていきます。農場では菊の花を抜く作業が行われ、マリアは涙を流しています。その姿を見たハルはもらい泣きし、言葉を交わすことなくマリアを抱きしめます。その様子を見守る家族です。

──達夫とマリア夫婦が私たちと暮らすようになって、一番喜んだのはお母ちゃんだった。すぐ男の子が産まれて、ひ孫の顔が見られたって。そりゃ喜んで。その日もお母ちゃんが赤ん坊の面倒を見てくれてたの。夕方、私が帰ったら赤ん坊のそばで添い寝でもしてるように、そのまんま、笑ってるような顔だった。ひとつの時代が終わったって感じだった──

 

見つめるハルとナツです。そこに「まだおしゃべりしてたのか」と大和が半ば呆れながら入ってきます。ハルとナツは70年ぶりに再会できたわけで、どんな生き様だったかお互いに言いたいし聞きたくて、時間がいくらあっても足りないと笑います。ハルは康夫とのその後を聞きますが、康夫はバブルの絶頂期に亡くなり、今年が17回忌でした。それを聞いたハルは目を伏せます。拓也も去年亡くなったのです。

ナツは社長だからハルも安心してブラジルに帰れますが、帰る前にナツの息子たちに会っておきたいと言うと、見下してハルを嫌な気持ちにさせるだけと「会わないほうがいいと思う」とキッパリ。ブラジル移民は日本で暮らす人から見れば、出稼ぎに行ったみじめな人たちだという印象しかないのかもしれないとつぶやきます。「私たちがどんなにブラジルで頑張ってきたか、知ってる人いないんだから」

ともかく、どうして70年もの間、自分を探しに帰国できなかったかを理解したナツは、ハルに笑顔を見せて頷きます。ハルはナツと手を握り合います。「私、またお姉ちゃんに会えて、お姉ちゃんに愛されてたって分かって、本当に救われたの。ありがとうお姉ちゃん」

翌朝、東京のホテルに戻ってきた3人は、フロントが預かっていたブラジルからの手紙をもらいます。明後日がハルの誕生日で、そのお祝いの手紙なのです。同封されていた家族の写真を見て羨ましがるナツに、自分の時間が持てたらブラジルに遊びにおいでと提案します。姉妹は抱きしめ合い、別れの時を迎えます。

東京国際空港に見送りに来た大和は、日本人形をお土産としてハルに渡します。日本人として日本で余生を送りたかったハルですが、やはりブラジルで家族みんなに囲まれて暮らしたいと思うようになっていました。大和にも、大学生活を終えたらブラジルに戻って来るように諭し、日本を離れていきます。

機内でハルが客室乗務員から受け取った新聞には、北王製菓が白樺乳業と吸収合併することが一面に載っていました。金太は白樺乳業相談役に、勉は相談役になっていて、北王製菓の180億円もの負債も、北王製菓の販売網を考えれば十分メリットがあると踏んで合併話を呑んでくれたのです。そんな状況だったのかと勉は驚いていますが、もとはと言えば自分の親バカが原因だとナツは反省も込めて回顧します。

父親の違う兄弟が張り合うようになり、次男公彦は達夫と組んでゴルフ場建設に手を広げ、照彦は負けじとリゾートホテル建設に躍起になり出したのです。本当だったら完全な倒産のところ、吸収合併話にナツは何度も頭を下げます。金太と勉はナツの今後を心配していますが、自分のことは心配しないでと自分に言い聞かせるようにつぶやきます。「小さいころからずっと一人で生きてきた。また一人に帰るだけ」

山辺邸を引き払い、トラックで全て運び出します。不意に後ろから声をかけられ、ナツが振り返ると、大和が立っていました。また裸一貫に戻れたとすがすがしい表情のナツは、心配させるからハルには言わないでと口止めします。ナツにもプライドがあり、北王製菓社長のままで別れたかったのです。

今後を心配する大和ですが、家族と暮らすというブラジルとは違うと寂しそうに笑います。そもそも大和がここに来たのには理由があり、ブラジルからの封筒にナツへの手紙が同封してあり、渡しに来たのです。北王製菓のことは機内で新聞を読んでハルは知っていて、大和がそれを説明するとナツはなるほどとうなずきます。

──ナツ、やっとナツがブラジルへ来られる時が来たんじゃないですか。70年前、ナツを一人置き去りにしてから今日まで、ナツと暮らせる日を夢に見て私も必死に生きてきました。お願いです。私に70年間あなたを放っておいた償いをさせてください。ナツが、私たちの家族としてブラジルで一緒に暮らしてくれるのを楽しみにしています。一日も早く来てください。待っています。みんなで待っています──

北海道へ向かったナツは、タクシーを飛ばして家族で暮らしていた場所へたどり着きます。家はすでになくなり草むらに覆われてはいましたが、地神の石碑が残っていました。まだ9歳と7歳の姉妹が手を合わせた石碑です。家で待っていたナツのところに、別れたころのような忠次一家が帰ってくる姿を見ているようでした。

ブラジルの髙倉家では部屋中に飾り付けがなされ、女たちが食事の用意に大忙しです。そのころサンパウロ国際空港に、ひとり降り立つナツの姿がありました。空港には達夫夫婦が迎えに来てくれていました。日本に負けないぐらい高層ビルに囲まれた大都会・サンパウロ市のパウリスタ通りの風景を見つめるナツ。

──お姉ちゃん。とうとう来た。70年前果たせなかったブラジル移民をやっと果たせる。お姉ちゃんとブラジルで暮らす、それが私の夢だったんだもの。日本には何の未練もない。70年前の私に戻って出直す。いま、私は7つ。7つから暮らすはずだったブラジルでの時間を、これから取り戻す。お姉ちゃんと一緒に──

家の中には「おかえりナツ」の幕も付けられ、準備は万端です。そしてナツが乗った車が高倉農園に到着しました。庭の木々につけられた飾りの中を車が進み、合図のクラクションを鳴らします。「ばあちゃん……来たよ!」との邦男の声にハルはハッとして、出迎えのために立ち上がります。

──完──


原作・脚本:橋田 壽賀子

音楽:渡辺 俊幸

テーマ音楽演奏:NHK交響楽団
テーマ音楽指揮:岩城 宏之
テーマ音楽ソプラノ:増田 いずみ
演奏:コンセール・レニエ

 

[出演] 現代編

森 光子 (髙倉ハル)

 

今井 翼 (髙倉大和)

久保内 亜紀 (ミドリ)
竹内 彩恵 (ホテルフロント)
井上 朋子 (客室乗務員)

 

梅野 泰靖 (川村 勉)

 

北村 和夫 (中内金太)

 

野際 陽子 (山辺ナツ)

 

時代考証:天野 隆子
    :田辺 安一
    :ブラジル日本移民史料館 (サンパウロ市)
    :サンパウロ州立博物館
美術考証:ユリカ・ヤマザキ
ポルトガル語翻訳監修:二宮 正人

北海道ことば指導:曽川 留三子
広島ことば指導:大原 穣子
ポルトガル語指導:長島 幸子
        :上田 郁香 マリア
チーズ指導:秋田 定夫
菓子指導:針谷 順子

撮影協力:北海道別海町
    :   新得町
(ブラジル):「ハルとナツ」撮影支援委員会
     :東山農場
     :カーザブランカ
コーディネーター:塚本 恭子

 

[出演] 昭和編

米倉 涼子 (髙倉ハル)

 

村田 雄浩 (髙倉忠次)

 

姿 晴香 (髙倉シズ)

マリアナ・メルガッソ (マリア)

岡田 義徳 (中山隆太)

北村 一輝 (山辺康夫)

小橋 賢児 (中内金太)

原 千晶 (律子)
遊井 亮子 (アイ子)

松本 実 (川村 勉)
鈴木 ユウジ (髙倉達夫)
尾崎 英二郎 (髙倉邦男)

斉藤 奈々 (髙倉ハル(少女)
志田 未来 (髙倉ナツ(少女))

吉見 一豊 (髙倉洋三)
水町 レイコ (髙倉キヨ)

小林 宏至 (髙倉 茂)
椿 直 (髙倉 実)

マヤ・ハセガワ
ユキコ・コレヤス
ソランジ・メンデス

エンゼルプロ
テアトルアカデミー
古賀プロダクション
ラザリス

 

高嶋 政宏 (山下拓也)

 

斎藤 洋介 (山下平造)

 

由紀 さおり (中山トキ)

 

柄本 明 (中山耕太郎)

 

仲間 由紀恵 (髙倉(山辺)ナツ)

 

制作統括:阿部 康彦
    :金澤 宏次

美術:深井 保夫
技術:高橋 太
音響効果:林 幸夫

美術:清水 博巳
照明:水野 富裕
音声:松本 恒雄
   深田 晃
映像技術:石丸 亮
CG合成:赤星 明
美術進行:大野 輝雄
編集:佐藤 秀城

共同制作:NHKエンタープライズ
技術協力:NHKテクニカルサービス
美術協力:NHKアート

演出:佐藤 峰世

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