放送80周年ドラマ・ハルとナツ Haru e Natsu ~届かなかった手紙~ (02)北と南の大地に別れて
5夜連続放送~放送80周年ドラマ・平成17年度文化庁芸術祭参加
昭和9(1934)年、ともにブラジルに渡るはずだったハルとナツの姉妹。しかし妹ナツがトラホームと診断され、神戸の港で運命の別れを余儀なくされました。家族とともにブラジルに渡った姉・ハルは、過酷な労働の日日に追われ各地を流転。望郷の念を胸に、遠く異国の大地ブラジルで生きていきます。
──日本から捨てられたんです。
日本で待っていたいの──。
日本に残された妹ナツは、家族を待ちわびながら戦中戦後の混乱をひとりたくましく這い上がっていきます。
70年ぶりに帰国した姉ハルは、妹ナツと再会を果たします。しかし互いに出し続けていた手紙は一通も届いておらず、二人の間には大きな溝が横たわっていました。そして真実を知ったナツは、届かなかったハルからの手紙を発見。ブラジルでもナツからの手紙が見つかったという知らせが。
──待ってるから!
原作・脚本:橋田 壽賀子
音楽:渡辺 俊幸
テーマ音楽演奏:NHK交響楽団
テーマ音楽指揮:岩城 宏之
テーマ音楽ソプラノ:増田 いずみ
演奏:コンセール・レニエ
[出演] 現代編
森 光子 (髙倉ハル)
今井 翼 (髙倉大和)
曽川 留三子 (家政婦・幸子)
竹内 彩恵 (ホテルフロント)
野際 陽子 (山辺ナツ)
時代考証:天野 隆子
:田辺 安一
:ブラジル日本移民史料館 (サンパウロ市)
:サンパウロ州立博物館
美術考証:ユリカ・ヤマザキ
ポルトガル語翻訳監修:二宮 正人
北海道ことば指導:曽川 留三子
大阪ことば指導:大原 穣子
ポルトガル語指導:長島 幸子
:上田 郁香 マリア
撮影協力:北海道新得町
: 別海町
: 沼田町
(ブラジル):「ハルとナツ」撮影支援委員会
:東山農場
:カーザブランカ
コーディネーター:塚本 恭子
[出演] 昭和編
米倉 涼子 (髙倉ハル)
村田 雄浩 (髙倉忠次)
姿 晴香 (髙倉シズ)
根岸 季衣 (髙倉カネ)
田山 涼成 (髙倉与作)
斉藤 奈々 (髙倉ハル(少女))
志田 未来 (髙倉ナツ(少女))
吉見 一豊 (髙倉洋三)
水町 レイコ (髙倉キヨ)
徳井 優 (栗田彦次)
ジョアン・ボルドネ (医師)
小林 宏至 (髙倉 茂)
椿 直 (髙倉 実)
桑原 匠吾 (山下拓也)
タモト 清嵐
石川 眞吾
池澤 ひとみ
𡈽橋 恵
ユキコ・コレヤス
熊本 小次郎
竹内 靖司
松本 正晴
カルロス・ハアル
エンゼルプロ
劇団ひまわり
劇団東俳
セントラル子供劇団
ラザリス
井川 比佐志 (徳治)
斎藤 洋介 (山下平造)
渡辺 美佐子 (髙倉ノブ)
仲間 由紀恵 (髙倉(山辺)ナツ)
制作統括:阿部 康彦
:金澤 宏次
美術:深井 保夫
技術:高橋 太
音響効果:林 幸夫
編集:佐藤 秀城
CG制作:中沢 一郎
撮影:清水 博巳
照明:水野 富裕
音声:山本 哲伸
映像技術:市川 尚志
美術進行:大野 輝雄
共同制作:NHKエンタープライズ
技術協力:NHKテクニカルサービス
美術協力:NHKアート
演出:佐藤 峰世
平成17(2005)年4月・東京──。一人暮らしをするためのマンションに移った髙倉大和は、日本は物価が高く楽じゃないとこぼします。ブラジルで3年働けば贅沢に稼げると信じて海を渡ったハル(80)から見れば、日本で働けば収入がいいからとブラジルから二世や三世が出稼ぎに来ている現状に「時代は変わったんだね」と笑います。
ハルが宿泊するホテルから、ブラジルからの荷物が届いたとの連絡があり、ハルと大和はホテルへ急ぎます。フロントから受け取って封を開けると、ナツからの手紙が入っていました。封筒を裏返すと、7歳のナツの名前が記されています。「あっ……ナツの字だ!」 神戸の移住教養所で教えてもらった住所を、一生懸命真似して書き写したと思うと、ハルは心を揺さぶられるような思いになります。
──姉ちゃん、もうブラジルに着いたよね。ブラジルはいいところなんだろうなぁ。私はトラホームだったから行けなくなって悲しいです。でも3年したら帰って来るんだから、我慢して待っています。神戸で置いていかれた時のことを、今でも夢に見て泣いて目が覚めます。姉ちゃんたちの船が出ていって、船が見えなくなるまで波止場で見送っていました──
昭和9(1934)年4月・神戸。ひとりぽつんと残されたナツ(7)は、満開の花を咲かせる桜の木を寂しそうに見上げています。
──気がついたらもう誰もいなくなっていて、一人で泣きながら収容所へ帰りました。さっきまで移民の人たちでにぎやかだったのに、収容所はもう誰もいなくて、私だけ置いていかれたことがはっきり分かって、ひとりぼっちで泣きました。3日、ばあちゃんが迎えに来てくれるのを待ちました。その間、一人でさびしくて泣いてばかりいました。収容所のご飯も食べられませんでした。だから、ばあちゃんが来てくれた時は、本当にうれしかったです──
「なっちゃん。迎えに来はったで」 移民教養所の職員の声に顔を上げたナツは、祖母のノブの姿を見つけてたまらず駆け寄ります。ノブは周りを見渡し、こんなところでひとり待っていたナツを労わります。北海道に帰っても父母はいませんが、ノブは自分が守ると言ってくれます。そしてナツはノブに連れられて北海道へ戻っていきます。
──伯父さんとこへ帰りたくなかったけど、他に行くところがありません。仕方ないのでばあちゃんと北海道へ帰りました──
とんだ災難だったなと伯父の与作はナツをなぐさめます。ナツの分だけ食料が減るとカネはつらく当たりますが、弟の子なんだから本家を継いだ自分が面倒見る責任があると与作はたしなめます。ただ耐えているナツをかばうように真横に座ったノブは、自分が働いて稼いだ分でナツを食わせてやってほしいとつぶやきます。カネは子の久作たちに、トラホームがうつるからとナツに近づかないように忠告します。
学校に行くナツに与作の子・久作と健太が立ちふさがり、「この石潰(ごくつぶ)しが!」とナツの弁当を取り上げてしまいます。ナツが弁当を持っていけばその分食料が減るわけで、学校に行きたければナツは弁当を持っていくなと言うのです。与作と健太に隠れているイネは与作の腕を引っ張りますが、お前は黙ってろと一喝されてしまいます。
手紙を読み進め、ハルはやはりナツが辛い思いをしていたんだと同情します。ハルが読んだ手紙を受け取って大和が目を通し、ハルは次の手紙を読み始めます。
──毎日姉ちゃんの手紙を待っています。ブラジルに行ってもう3ヶ月になるのに、今日も来ませんでした──
7月、ナツが畑でカネの作業を手伝っていると、馬に乗った郵便配達員が封書を届けに来ました。食事の支度で早めに家に戻っていたカネがそれを受け取るのですが、カネがナツに断りもなく勝手に封を開けると、中に入っていた紙幣が足元に落ちます。それを見つけると、「食い扶持も寄越さんで、ナツに内緒の小遣いにされたら困る」と、手紙もろとも懐に入れてなかったことにしてしまいます。
畑仕事が終わり、ブラジルから手紙が届かなかったかナツは尋ねますが、来ないよ! とカネはしらを切ります。夜なべするノブは、ハルたちはナツのことを忘れるわけないし、ブラジルの暮らしが忙しすぎて手紙を書く暇がないだけで、今に来るとナツを励まします。カネは明かりの油代がもったいないと良い顔はしません。ナツの勧めで寝ようかとノブが立ち上がった時、心臓を押さえて倒れ込みます。
──ばあちゃんが急に死にました。心臓まひという病気だそうです。ブラジルへ行ったみんなの分まで畑をしたから心臓が悪くなった。私のために夜遅くまで頼まれものの針仕事をしたから病気になったと、伯母さんは私のせいみたいに言います。とうとうこの家で、私は本当に一人ぼっちになってしまいました──
野辺送りも終わり、食事の時間になっても位牌の前から動こうとしないナツ。「なっちゃんも死んじゃうよ」とイネはとても心配します。死んだノブの分までナツに働いてもらうと厳しい言葉を浴びせるカネに、遊んでいる久作と健太も手伝わせろと与作と口ゲンカになりますが、カネは子どもたちの分まで働いてはいるが、他所の子どものために働いているつもりはないとハッキリ言われてしまいます。
北洋製菓社長室で、ナツ(78)は幼いころの辛い日日を思い返していました。
ナツが手紙をしたためたころには、ハルからの最初の手紙が届いているはずですが、ナツは一通も手紙をもらっていないと言っていました。大和は家に届けられた手紙をナツに渡さなかったのではないかと推し量ります。ハルは、カネ伯母さんが握りつぶしていたと考えます。
──姉ちゃんたちがブラジルへ行ってから、もう4ヶ月たちました。毎日ブラジルからの手紙を待っているけど、今日も来ませんでした。伯母さんはすぐ、ナツのことなんか忘れてしまったんだよと言います。私はそんなことは思いません。きっと忙しくて、書いている暇がないのかもしれないと思っています。辛くてもさびしくても、3年たったら姉ちゃんたちが帰ってくるのだから、辛抱します。手紙をください。待っています──
8月、畑仕事をしながら、つい手を休めてハルのことを考えたりもしますが、すぐにカネに見つかってこっぴどく叱られます。たしなめる与作ですが、カネの暴走暴言はあまりにひどく、圧倒された与作は何も言葉を返せないほどです。夜になると手紙を書くナツですが、近くに寄ってきた白い犬をかわいながら、何も食わせてやるものがないんだと謝ります。
──姉ちゃんたちがブラジルから帰ったら、犬を飼いたいです。それを楽しみに待っています──
家に戻るとナツはハルからの手紙を読み進めます。
──農園と契約して働く人をコロノと言います。コロノになって半年近くなりましたが、何から何まで日本で聞いていたこととは大違いです。それでもみんな休まないで、ただ働いています。農園の主人と約束しているのですから、働かなくてはいけません。みんな、ナツは日本に残ってよかったと話しています。早く日本に帰ってナツに会いたいです──
9月・ブラジル サンパウロ。畑仕事も終わり、野菜を育てる自家農園で水やりを怠らないハル(9)です。ブラジルはキリスト教で、日曜日が労働がお休みということもあり、その時間を活用して野菜をたくさん作り、お金をためてナツに送ってあげたいのです。
10月・北海道。ブラジルに出す手紙の切手代をくださいと頼むナツですが、カネはナツを食わせるだけで精いっぱいでそんな金はないと突き放します。「返事も来ないところに手紙出したって無駄だべさ! 銭ドブに捨てるようなもんだ」 カネからの酷い言葉に、ナツは言い返すこともできず目に涙をいっぱい溜めます。
ナツは意を決して、タンスの中にあったカネの財布から金を抜き、郵便局へ手紙を出した後、最寄の駅まで走ります。ちょうど来た汽車に乗って故郷を離れ、どこだか分からない途中の駅で降り、草むらを分けつつ進んでいきます。途中の川でのどを潤し、枯れ木を枕に横になっていました。
牛飼いの徳治に起こされました。しばらく眠っていたようです。「うちなんてない! 放っといてや」というナツに一瞬ムッとする徳治ですが、とはいえやはり子どもを放っておけません。牧草を積んだ荷台にナツを乗せて連れ帰ります。
徳治の家に着きました。あらかた事情を聞いた徳治は、金盗んだんなら帰りたくても帰れんべや と笑います。徳治の優しさに心が解けていくのを感じたナツは、牛小屋の様子を見に行く徳治に黙ってついていきます。牛の乳を絞って組合に出し、その余りでチーズを作りお得意先に届けるというのが徳治の生業です。生き物全般好きなナツは、ここで働かせてほしいと頭を下げます。
──おじさんは奥さんも子どもも死んでしまって、ひとりで牛と一緒に暮らしています。私にもできる仕事があるというので、ここに置いてもらうことにしました。乳をしぼったりチーズの作り方も教えてもらいます。ここで姉ちゃんたちが帰って来るのを待ちます。住所は変わりましたから、これからはここに手紙をください──
「こんな手紙が来ているなんてこと知らなかった……」とハルは愕然とします。その10月は、ブラジルではファゼンダ(農園)ではカフェの収穫が終わって草取りしていたころです。
洋三はいつまでこんな暮らしが続くのかと嫌気が差していますが、借金できず飯すら食えない日本の暮らしを思えば、豆や米も食べられて借金もできる今の方がよほどマシだと忠次は諭します。昼休みの合図の鐘が鳴り、昼飯のフェジョン豆の塩煮にガッカリした次男の実は、もううんざりだと飛び出して行きます。ハルも、野菜の手入れをしないといけないと昼飯には手を付けず家に戻ります。
母のシズは意を決して売店へ行き、大切そうに持ち帰ります。米を炊いて豚肉を買い、食欲が落ちている実のためにたまには贅沢させてやるつもりです。そして畑からとうきび(トウモロコシ)を数本獲ってきました。今日のうちに野菜を売りに行って、その収益をもとに次の野菜を育てていくと宣言するハルに、叔母のキヨは舌を巻きます。そこに、給料額が出たと栗田彦次がやって来ました。
3年で帰るつもりだと笑う忠次ですが、「おいそれとは無理でんなぁ」という栗田の言葉に困惑します。カフェが出来すぎて1俵あたり50ミルにまで値が下がり、おまけに忠次一家の割り当て農園からの収穫量も他より少ないため、それに合わせて給料額も減ったと申し訳なさそうに言うのです。「今期は賃金より売店で買うたものの支払いの方が多うなって……賃金と相殺しても借金が残る……」
家族会議が終わり、夜になって洗濯をするハルですが、山下平造の子・拓也も同じ時間に出て来ました。山下家でも話にならない額だったらしいのです。しかしハルは、日本で頑張っているナツのために弱音を吐いていられないというのが正直なところです。どこからか軽やかな音楽が聞こえてきました。拓也は「フェスタ(お祭り)だ!」と教えてくれます。
イタリア系移民の結婚披露宴が盛大に開かれていました。楽し気にダンスする移民たち、その中央で花婿とともに踊る花嫁。初めて聞く音楽、そして初めて見る民族。ハルは目を輝かせています。
「フェスタのことも書いて手紙出したのに……やっぱりナツには届いていなかったんだね」 ハルの言葉に大和は言葉を失います。
──住所が変わったことを知らせたけど、やっぱり姉ちゃんから返事がきません。本当にナツのことを忘れてしまったのですか。それとも、忙しくて手紙を書くひまがないんだよね。私のことは元気だから心配しないでください。徳じいに拾われてから、もう徳じいん家の子どもみたいです。徳じいのところへは、ここらへんの牛飼いの人がよく相談に来ます。立派な牛飼いだとよその人が言っていました──
昭和10(1935)年1月、雪深い大地を歩いていくナツ(8)と徳治。乳しぼりにもかなり慣れた様子です。徳治は、自分の境遇をポツリポツリと話し始めます。8歳の娘が悪い風邪にかかって死に、母親は1年もしないうちに家を出て行ってしまいました。後に青函連絡船から海に飛び込んだと知らせが届いたそうで、今ごろ母は娘のところへ行き楽しくやってんだべさと寂しそうに笑っています。
ナツは運の強い子だったとハルがつぶやくと、ナツがブラジルに行けなかったことも運がよかったのかもしれないと大和も頷きます。一方でハルは運が悪く、寝る間も惜しんで働き育てた野菜も一家で消費するだけでなく、外国のコロノの家に売りに行って家計の足しにしていました。しかしそんな時に、辛い出来事が重ねて起きてしまったのです。
──ナツ、ごめんね。半年近くも手紙を出さなくて。きっとナツはさびしかったでしょう。あんまり悲しいことや辛いことが続いて、ナツに手紙を出せませんでした。本当に運の悪いことばかり続くのです。茂兄ちゃんが病気になったのです──
2月、家族も農園から戻ってきますが、茂は高熱が出て呼びかけにも反応しません。病床の兄のために畑からトマトをもぎ取り、ハル(10)は家路を急ぎます。栗田や平造も心配で駆けつけてくれますが、「どう見てもマラリアでんな……」と栗田は遠慮がちに伝えます。栗田の話では医者はパライソ駅の近くに一軒あるそうですが、今の状態では高額な診察費を出して医者を呼んでも助かる見込みはないそうなのです。
シズやハルは今すぐ呼んでほしいと忠次に訴え、無駄なお金は使えないと言いたげな父に実は反発します。忠次としてもたとえ無駄になっても医者を呼んであげたいのはやまやまですが、借金を背負って苦労するのは残された人だと苦しい心境を吐露します。いたたまれず、ハルは家を飛び出して医者を呼びに走ります。夜道だから危ないと拓也がついてきて、医者を連れて家に戻ってきました。
帰って来る直前に茂は息を引き取っていました。遺体を改めた医者も「マラリアだ」と首を横に振ります。余計なことして医者に払う金がどこにある!? と忠次はハルを責めますが、薬をもらえばよくなるかもしれないという可能性に懸けたのです。間に合わなかったことに、ハルは茂の亡骸に泣いて謝ります。キヨは日本に帰りたいと言い出します。「もういや! ここにどんな希望があるっていうの!」
平造は忠次を連れ出し、ここでの暮らしには見切りをつけていると伝えます。日本に帰っても行く当てがないし、借金を抱えた身で抜け出せるはずもないと洋三は言うのですが、私が何とかする! と平造は忠次を見据えます。しかし忠次は脱走して見つかったらどうなるか分からないし、次の場所でも安全に暮らせる保証がないと平造の意見には賛同しません。
これまで以上に農園での作業に精を出す忠次とシズです。ハルはナツからの手紙が来ないと、日本で教えた住所の最寄り駅へ取りに行くと主張しますが、届いているかどうか分からないからやめておきなさいと叱られます。しょんぼりするハルに、キヨは声をかけます。「ハルちゃん……私がついてってあげる」
行け行け同胞海越えて、遠き南米ブラジルに、御国の光輝かす、今日の船出の勇ましさ、万歳万歳万々歳。
ハルとシズは、汽車の来ない線路を延々歩きながら、しかし歌って気分を上げながら力強く歩いていきます。夜になると二人肩を並べて眠り、ようやくSOCORRO(ソコーホ)駅にたどり着きました。「日本から手紙来てませんか? 髙倉ナツから手紙来てませんか?」
ブラジルなのでポルトガル語を話さなければ駅員に通じるはずもなく、一切相手にしてくれないのでハルの訴えは全く聞いてもらえません。駅の窓口で泣き崩れるハルを、キヨは抱きしめて慰めます。
今日はシューバ(雨)が来ると拓也が教えてくれました。雨が降れば畑に水を与える手間が省けて、ハルにとってはとても助かります。平造は我慢の限界で逃げ出すつもりです。いろいろ支えてくれた拓也ともお別れだと分かると、ハルは寂しそうな表情を浮かべます。手伝えることは何でもするつもりですが、巻き込みたくないというのが拓也の正直な気持ちです。ハルと拓也は、もいだトマトを茂の墓前に供えます。
手を合わせていると、突然ヒョウが降ってきました。拓也と避難するハルですが、この天気でハルが一生懸命に育ててきた野菜が被害を受けます。それは農園でも同じで、多くのカフェがやられてしまいました。精魂込めて育て、草刈りも頑張った末のこの被害に、シズは力を落とします。畑から農園に戻ったハルも「父ちゃん……もうだめだ……辛抱してたっていいこと何もない」と膝から崩れ落ちます。
ナツは、ハルがブラジルで苦労していたことを思い、家族写真を見つめます。「みんなと一緒に暮らして、私のことも忘れて恨んでた……」 今初めて明かされる姉の過去に、ナツは涙を浮かべます。
大和もハルがそんな辛い思いをしてきたことに衝撃を受けますが、その先について大和はハルに尋ねます。「それで逃げたの? 最初のファゼンダから。本当に逃げたの?」
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