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2023年1月20日 (金)

プレイバック徳川家康・(06)試練の時

駿府に来てから4年目、この秋 竹千代12歳である。竹千代は随風に剣の稽古を受けています。元気が足りぬ! と随風にけしかけられて随風に果敢に挑む竹千代ですが、誘いに乗って飛び掛かるのは雑兵だと説教されます。しゅんとする竹千代は随風に不意打ちされ、領地は無理だと笑われてしまいます。しかし竹千代は、逆に大笑いする随風の不意を打って盛り返すだけの元気さはまだあります。

その様子を華陽院は於大に文で知らせます。ふらりと臨済寺に姿を現す旅の修行僧・随風が言うには、竹千代の性格には不思議なものがあり、落ち着いて動じないが、一変して牙をむいたような豹(ひょう)にもなる。短気かと思えばのんびりと構えて動かず、鍛えれば鍛えるほどさまざまな光を放ち将来が楽しみである、と。その文を受け取った於大は平松弥九郎との間に生まれた三郎太郎、源三郎にも見せてやります。

川での稽古を終えて昼食をとる随風と竹千代ですが、そこに小夜が子どもを連れて智源院への道を尋ねてきました。智源院とは竹千代が暮らす小寺ですが、その竹千代も見覚えがないらしく、随風は竹千代に長旅で疲れ切った子どもを背負わせて、智源院に向かうことにします。小夜は亡き本多平八郎の妻だと知り、竹千代は思わず顔を見上げます。「良い子をおぶったのう。音に聞こえた勇士の子、お主もあやかれよ」

竹千代は小夜のことを華陽院から聞かされていました。舅も夫も壮烈な戦死を遂げ、その後家すらも貧しさで流民となったのかと竹千代は衝撃を受けます。岡崎から使者が来たと小姓の鳥居元忠が呼びに来ますが、竹千代は会わせる顔がないと拒絶します。元忠は国元での家臣たちの苦労を思い、その声に応えるためにも会うように諭します。元忠は去年の秋に側小姓に上がった鳥居忠吉の一子です。

使者として平伏する小夜は、於大からの激励の言葉を伝え、贈り物の着物を差し出します。顔を上げると、目の前にいるのが先ほどの若者だと気づき、驚きのあまり華陽院の顔を見つめます。竹千代は着物は子どもに着せてやれと言い、子どもを抱っこしてあやしています。「この子もまた竹千代の片腕、親子三代で働く子じゃ」 小夜は感激のあまり、床に突っ伏して泣いています。

 

駿府城では今川義元の嫡子・氏真の前で蹴鞠が催されていました。蹴鞠、茶の湯、女たちに囲まれて楽しむのが氏真の最近のマイブームです。一緒に蹴鞠を楽しむ竹千代ですが、その視線はどちらかというと蹴鞠よりも真横に座る亀姫(椿)に視線が注がれていました。亀姫が竹千代の視線に気づきニッコリほほ笑むと、竹千代の心も晴れやかになります。瀬名(鶴姫)は、そんな竹千代をからかいます。

いいことを教えてあげると瀬名から文が来て、夜に老松のあたりに赴く亀姫を待っていたのは竹千代でした。竹千代が瀬名に頼んで書いてもらったのです。竹千代は亀姫への思いを伝えて求婚しますが、亀姫は竹千代が岡崎からの大事な客人だと断ります。なおも迫る竹千代ですが、聞き分けのないと亀姫を怒らせてしまいます。しゅんとする竹千代を諭す亀姫を、竹千代は押し倒します。

屋敷に戻った竹千代を出迎える瀬名は、亀姫が海道いちの弓取りになるまで待つと約束してくれたと知り、子どもだましだと反論します。年齢の違いすぎる亀姫を諦めさせるために、大好きな竹千代の思いを叶えさせてやるために瀬名は協力したのです。竹千代の気持ちが亀姫に向くのが悔しい瀬名は、竹千代に抱きつきます。その姿を偶然見てしまった瀬名の父・関口親永は、ふたりが好き合っていると勘違いします。

竹千代と所領を返してほしいという岡崎の訴えにうんざりした義元は、たまには岡崎にも吉報をと、関口親永の申し出により瀬名を竹千代に嫁がせます。ただ、後に元服はさせますが、一人前の武将となるまでは駿府で預かるつもりです。そして亀姫も別の人に嫁がせることにします。人質の竹千代は「ありがたき幸せ」と返事をするしかありませんが、初恋の女性を奪い取られて胸中ザワつかせます。

手習いに身の入らない竹千代に雪斎は喝を入れます。多くの流民や国元の困苦に胸を痛めつつ、己の思いにそれを忘れ去った自分をあさましく感じているのです。雪斎は身を慎み徳を重ねよと諭します。息を調え心を静めた時、天下の乱れを鎮める者が出てこなければならないという仏の悲願も分かるようになる。そのために今は身も心も鍛えなければならない。竹千代は素直にその教えを受け入れます。

 

竹之内波太郎の熊屋敷に随風が来ていました。天下統一を成す英雄について、今川、武田、北条、上杉、どこも器が小さいと随風は嘆きます。波太郎は、家臣たちの反感も高い織田信長が国内を一つにまとめた器量を買っています。鉄砲集めに苦心する斎藤道三が、会見に現れた信長に鉄砲100丁を見せつけられ、あまりの圧倒さに、せがれも信長の轡(くつわ)を取るだろうと言わしめたほどです。

そういえば、と随風は針売りの風来坊・木下藤吉郎の話をし出します。とんでもない働き者で、調子に乗れば妙法まで編み出して伝授してくる藤吉郎に波太郎は興味を示します。藤吉郎は屋敷の小者に代わって波太郎の前に出て来ました。諸国を練り歩き、最も仕えたいのは尾張と笑います。信長への仕官の仲介しようと言う波太郎に、信長が自分を欲しがるような風を起こしてほしいと言って去っていきます。

竹千代の縁談話に、受け入れる話ではないと大久保新八郎ら岡崎衆は反発します。腰抜けだと言われた酒井雅楽助は刀を抜こうとします。聞いていた小夜はこの上ない不忠者と一喝します。女たちは今川の兵たちに凌辱され、銭を奪われて来たにもかかわらず、弱音や辛さを一切吐いていません。冷静になった男たちは小夜に謝罪します。鳥居忠吉は、元服の際に父の墓参で帰参が叶うか探ってみようと提案します。

華陽院の病状が重く、竹千代は必死に看病します。この先義元が上洛する際に竹千代に供を命じてくるはずと言う華陽院は、刈谷でも阿古居(あぐい)でも激しい戦闘となるが、そこに母がいることを忘れてはならないと諭します。織田と今川の戦に身動きできない義理を作らず、生き残る道を探れと伝え、眠るように亡くなります。竹千代にとって母代わりの華陽院ですが、悲しみに打ちひしがれている暇はありません。

雪斎も病気で倒れたとの臨済寺からの知らせです。義元よりも先に内々に知らされた竹千代は臨済寺へ急ぎます。雪斎は、瀬名との婚儀は今川への義理という重荷が竹千代にかかってしまうため、避けたかったと打ち明けます。瀬名との間に子どもが生まれれば、今川の血縁になるのです。始めは反対した雪斎ですが、苦労は背負わせた方がいいと考えを改め、賛成に回ったのでした。

さらに雪斎は、今川勢上洛について第一陣は必ず竹千代に命じてくると言い、妻や子どもを駿府に残したまま出陣しなければならなくなります。竹千代は妻子のことを忘れて大局を見ると答え、妻子もいないのにどうして知らないことを簡単に口にするのかと雪斎に叱責されます。妻子が簡単に忘れられる存在であれば、この世に苦悩など存在しないわけです。

そういった存在でないからこそ、於大が竹千代のために他国へ行ってまで竹千代の無事を祈り、心を通わせて暗躍していることからも分かるはずです。これが母の思いなのです。仏の悲願を叶える……。誤った考え方は雪斎を成仏させず、竹千代の身も滅び、戦乱も鎮まりません。竹千代は泣いて雪斎に詫びます。

それは、断腸の思いの別れであった。義元は雪斎の病の篤きに驚き6人の侍医に投薬をさせたが、ついに雪斎はこの世を辞した。祖母は母との争いを避けよと言い、雪斎は我が志を継げよと言う。両者の遺言は、次の悲劇の焦点が義元の上洛にあることを指摘した点では同じであった。「わしの背後には流民の民がいる。答えねばならぬ、その心に」


弘治元(1555)年 閏10月10日、太原崇孚雪斎が駿府長慶寺で亡くなる。享年60。

慶長8(1603)年2月12日、徳川家康が後陽成天皇から征夷大将軍に任命されるまで、

あと47年4ヶ月──。

 

原作:山岡 荘八
脚本:小山内 美江子
音楽:冨田 勲
語り:館野 直光 アナウンサー
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[出演]
松田 洋治 (松平竹千代)
大竹 しのぶ (於大)
竹下 景子 (亀姫)
成田 三樹夫 (今川義元)
竜 雷太 (随風)
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八千草 薫 (華陽院)
池上 季実子 (瀬名)
林 与一 (今川氏真)
宮口 精二 (鳥居忠吉)
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小林 桂樹 (雪斎禅師)
武田 鉄矢 (木下藤吉郎)
石坂 浩二 (竹之内波太郎)
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制作:澁谷 康生
演出:松本 守正

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『徳川家康』
第7回「初陣」

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