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2023年1月15日 (日)

大河ドラマどうする家康・(02)兎(うさぎ)と狼(おおかみ)

「桶狭間の戦い」から遡ること17年、天文12(1543)年・三河岡崎城──。於大が出産に際し必死に力み、無事に男子を出産。夫である松平広忠は赤子を見て顔をほころばせます。この子はきっと強い武者になると於大は確信します。寅の年、寅の日、寅の刻に生まれた“虎の化身”なのです。しかし広忠は、ん? ととまどいます。生まれた子の竹千代は家臣たちに披露され、家臣たちは跡継ぎ誕生に大喜びです。

我らが神の君が比類なき猛将であられることは、君がお生まれになった瞬間から定められていたことでございまして。ただ、生を受けて 父母から、家臣から期待を一身に浴びた竹千代の成長した姿が、今は一歩一歩近づく織田信長に終始震える武将・松平元康です。家臣たちに「お指図を!」「どうする!?」と迫られても、震えが止まらず答えが出せません。

今川義元公、討たれる──。桶狭間合戦の最前線に取り残されし神の君に迫るは、この男。「待ってろよ竹千代……。俺の白うさぎ」と、信長は馬で駆けながらニヤリと不気味な笑みを浮かべます。いま松平軍に残された道は2つ、城に残って織田と戦うか、城を捨てて逃げるか。石川数正が混乱する元康に丁寧に説明します。

本多忠勝が戦うのが武士だと主張すれば、酒井忠次がまともに戦えないと反論するし、数正が急かせば鳥居忠吉はよく聞き取れない言葉でやんややんやと言っていて、元康は頭が混乱してしまいます。しかし、決断する必要もなくなりました。織田勢がすでに城を取り囲んでしまったのです。包囲軍の中心にいる信長は、城の元康に向かって叫びます。「竹千代! 逃げぬとはあっぱれじゃ」

場内で籠城となった松平軍と、包囲した織田軍のにらみ合いが続いています。もう日が暮れて夜になってしまうため、数正は忠次と兵糧の確認をしています。織田軍の様子を確認して櫓から降りてきた元康に、信長のなにをそんなに恐れる? と忠勝は言葉をかけますが、12年前の恐ろしい記憶が元康の脳裏によみがえってきます。

西の織田、東の今川、その双方に攻め込まれていた三河では、広忠が5歳の竹千代を信頼する戸田宗光に預けて安全な場所に避難させていました。宗光の勧めるままに竹千代が目をつぶっていると、その一瞬のすきに松平党は皆殺しにされてしまいます。宗光の裏切りでした。竹千代は見知らぬ土地で見知らぬ仲間に囲まれていました。その親玉の若武者に睨まれて、竹千代は恐ろしい思いに震えが止まりません。

その親玉が、今はこの信長という男です。大高城を見上げてしばらく鞭を振り回していた信長は、ザクッと地面に鞭を突き刺します。すると織田軍は一斉に撤退を始めます。

竹千代を人質に取った織田信秀(信長の父)は広忠に書状を送りつけ、今川から織田に寝返るように勧告します。勝手にしろと広忠が返答したため、信秀は竹千代を庭に引きずり出し首を落とすよう命じます。そこに信長たちが一斉に乱入します。「勝手なことをされては困りますな。生かしておけば使い道もありましょうぞ」 身柄を預かった信長は、突き飛ばし、ぶん投げ、竹千代を厳しく育てます。

「地獄じゃ……」 そうつぶやいた竹千代のころを思い出した元康ですが、その信長率いる織田軍が撤退していくのです。松平に恐れをなした……というわけではなさそうです。敵も桶狭間で戦い抜いた後だけに、余力がなかったと思われますが、戦う気がないのに城を取り囲んだのは松平を脅すためかもしれません。

元康は、夜半に城を出て駿府を目指すことにします。そこに岡崎から、城代の山田新右衛門が討ち死にし、家来たちが兵糧などを抱えて駿府へ逃げたと知らせが入ります。忠吉は、城代がいない今こそ岡崎に帰るよう勧めます。しかし一度駿府に戻って指示を仰ぎたい元康と意見が対立してしまいます。岡崎に妻子を残す家臣たちを考慮し、元康は三河領に入ったら全員暇を出すから好きなところへ行けと命じます。

元康たちは夜遅くに三河領の矢作川に到着します。その時、松平昌久軍が大勢で現れ、迎えに来たと言ってきました。彼らには何度も裏切られて信じられないという意見が大勢を占める中、元康は昌久の呼びかけに応じることにします。おお! とひれ伏す昌久たちですが、荷駄隊に紛れ込ませていた鉄砲隊が元康たちに銃を向けます。忠勝が元康にとびかかり、寸でのところで救出します。

 

元康軍は、岡崎城の北3kmのところにある松平菩提寺の大樹寺に入ります。忠吉は昌久軍の鉄砲玉を受け瀕死状態、ほか家来たちも数多くがケガを負って手当てを受けます。元康は判断を誤ったと後悔しきりですが、しつこい昌久軍はそこにも押しかけてきました。住職の登譽(とうよ)上人はネズミ一匹はい出る隙間もないと笑いますが、昌久が自らの首を所望だと知った元康は、一人考えたいと先祖の墓前に向かいます。

墓前に正座した元康は、短刀を取り出します。駿府には戻れないことを瀬名に詫び、切っ先を腹に突き立てますが、物音に気付いて振り返ると忠勝が立っていました。介錯をしてやると進み出た忠勝の肩越しに、元康は「厭離穢土 欣求浄土(おんりえど ごんぐじょうど)」の文字を見つけます。穢れた世を離れて極楽浄土へ行けという教えに従い、自ら無能な大将と認める元康は、忠勝に介錯を依頼します。

忠勝の父は広忠を、忠勝の祖父は家康の祖父を守って死んでいきました。家臣たちを守るために死んでいくと訴える元康に、ふざけるな! と涙を流します。「命を捨てるだけの値打ちがあるお方を主君と仰ぎたい。わしの望みは、お主を主君と仰ぎお主を守って死ぬことであったわ」 厭離穢土 欣求浄土とつぶやきながら、元康の脳裏には竹千代の時代に信長に預けられていたころのことが走馬灯のように駆け巡ります。

この世は地獄、周りは全て敵、地獄を生き抜くために強くなれ──。何度信長に挑んでもびくともしませんが、立て白うさぎ! と信長に言われてしまいます。しかし「違う! 竹千代は寅なんじゃ!」と信長に食って掛かり、ついに信長を組み伏せます。信長はひらりと身を翻して竹千代にのしかかりますが、その目じゃ、と信長は笑っています。

その目だけは忘れるな、と言葉をかけられたことを思い出した元康は、短刀を置きます。そばで成り行きを見守っていた数正と忠次が近づいたとき、こっそり様子を窺っていた榊原小平太は、厭離穢土欣求浄土の意味を訂正します。「穢れたこの世をこそ浄土にすることを目指せ、と登譽上人に教えてもらいました」

大樹寺の門が開き身構える昌久軍ですが、出てきた元康は本領の岡崎へ入ると叫びます。岡崎で帰りを待つ兵たちが怒りの業火となって昌久の所領に攻め入ると昌久に覚悟を突きつけます。新当主氏真の元で今川家は立ち直り、今川と自分たちを一度に相手してみろという元康に圧倒された昌久は尻もちをついて怯えます。「三河は必ずやこの元康がいま一度平定し、いかなる敵からも守ってみせる!」

昌久軍に向かって一歩一歩進んでいき、兵たちが十戒のように道を開けていきます。昌久が狼狽(うろた)えるのにも目もくれず、元康は堂々と歩いていきます。歩いていく元康の後姿を見る登譽上人の横で、小平太は尊敬のまなざしを元康に注ぎます。

 

幼いころに元康と遊んだ竹林の中で、元康の無事を必死に祈る瀬名がいました。そこに母の巴が駆けつけます。元康が無事に岡崎城に入ったとの知らせに、ふっと気が緩んだのか立ち上がった拍子によろめき、巴がしっかりと抱きとめます。そして氏真のところにも、瀬名の父・関口氏純によって元康無事の知らせが届けられます。数多くの悲報の中の吉報に、三河へ使者を送る氏真です。

岡崎のところを見つめていた武田信玄は、重臣飯富昌景に元康について調べておけと命じます。

岡崎城に集まった家来たちに、元康は自ら寅の化身と名乗り、「今川さまは必ず蘇る! 織田信長など蹴散らしてくれようぞ!」と叫んで、家臣たちは歓喜に沸き立ちます。そんな家来たちを見渡し、元康は手を上げてその声に応えています。

元康が生まれたばかりのころ、寅の年、寅の日、寅の刻に生まれた“虎の化身”と於大は言っていました。それに対して広忠は、ん? ととまどったのは、年が明けて兎年であったからというのですが、数日早く生まれたことにすればいいと於大は広忠に口止めします。「兎などいけませぬ! 狼に狩られてしまいます」

そして大高城から撤退した信長は、元康が生きて岡崎へ帰城したと知り、生き延びおったか! と大笑いです。しかし次の瞬間、恐ろしい表情を見せます。「いよいよ食らいにいくか……白うさぎを」

家来たちの歓喜に手を振っていた元康でしたが、どうしよう……と障子を閉めた途端に膝から崩れ落ちます。


永禄3(1560)年5月20日に松平元康が菩提寺大樹寺に入り、23日に岡崎城へ入る。

慶長8(1603)年2月12日、徳川家康が後陽成天皇から征夷大将軍に任命されるまで、

あと42年8ヶ月──。

 

作:古沢 良太
音楽:稲本 響
語り:寺島 しのぶ
題字:GOO CHOKI PAR
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松本 潤 (松平元康)

有村 架純 (瀬名)

松嶋 菜々子 (於大の方)

岡田 准一 (織田信長)

大森 南朋 (酒井忠次(左衛門尉))
山田 裕貴 (本多忠勝(平八郎))
杉野 遥亮 (榊原小平太)
音尾 琢真 (鳥居元忠(彦右衛門))
甲本 雅裕 (夏目広次)
イッセー 尾形 (鳥居忠吉)
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溝端 淳平 (今川氏真)
橋本 さとし (飯富昌景)
角田 晃広 (松平昌久)
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藤岡 弘、(織田信秀)
渡部 篤郎 (関口氏純)
真矢 ミキ (巴)
松重 豊 (石川数正)

里見 浩太朗 (登譽上人)

阿部 寛 (武田信玄)
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制作統括:磯 智明・村山 峻平
プロデューサー:堀内 裕介・国友 茜
演出:村瀬 直樹

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『どうする家康』
第3回「三河平定戦」

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