大河ドラマどうする家康・(06)続・瀬名奪還作戦
忍! 忍! 忍! 未だ駿府にて囚われの身のご家族を救うため、忍びを送り込んだ我らが神の君。その救出作戦は、あと一歩のところで失敗。
今川氏真は氏純、巴、瀬名、竹千代、亀姫を打ち首にすると沙汰を出し、関口家の面々は牢に押し込まれます。企て失敗に責任を感じた本多正信は、上ノ郷城の鵜殿長照とその子どもたちを生け捕りにし、関口家と人質を取り換えると提案。できるかと問われた服部半蔵は、命じられたことをやるまでとつぶやきます。石川数正は、わずかでも望みがあるならと背中を押します。「半蔵……やれ」
しかし、新たに集められた服部党40名は、明らかに大鼠や穴熊より頼りにならない者たちばかりです。一方で正信は、甲賀衆のツワモノたちを集めていました。信じていないわけではないと笑う正信に半蔵は不満顔です。そこで半蔵の背後に忍び寄った女が手裏剣を的に投げ、円の中央を貫きます。彼女は見ない顔ですが、死んだ大鼠の娘と知った半蔵は名を尋ねます。「今日から……大鼠」
岡崎城の台所では於大の方が音頭を取って、戦に勝てと祈りを込めて女たちに握り飯を握らせています。そして元康の出陣に際し、小姓に上がって半年の榊原康政が初陣をしたいと言い出して、方々から継ぎはぎの鎧をもらい受けて登場します。小姓ごときが自分で決めるなとたしなめる数正を横目に、最も危ない役目を負っている本多忠勝の隊に加わりたいと主張し、元康は苦笑しながら承諾します。
そこに於大は、久松長家の手を引いて割り込んできました。いきなり連れてこられて戸惑う長家ですが、攻め手の大将は長家にしてほしいと頼み込みます。そして見事に攻め落とした時には、上ノ郷城を長家に与えてくれと遠慮を知らぬ物言いで、元康の家臣たちも口を尖らせて無言の反抗をしますが、元康は成り行きでそれを認めてしまいます。
上ノ郷城とは、三河湾を背にして断崖絶壁の上に建てられた堅牢な山城です。かつて瀕死になりながらも大高城を死守し、瀬名奪還作戦では妹の田鶴と協力して奪還を阻止した長照が城主です。元康は上ノ郷城の北西にある名取山に陣を敷き、城に向けて鉄砲を放たせます。長照は城から鉄砲玉や矢を降り注がせ、大きな石を落とすなどして攻め手を崖から落とします。長家はなすすべなく撤退を余儀なくされます。
岡部元信に牢から出された関口一家は、氏真による上ノ郷城救援の出陣についてこいと命じられます。元康が今川の軍門に下らなければ、元康の目の前で一家の首を刎ねると見せしめの意味もあるのです。子どもたちに長距離歩かせるのは無理だと訴える瀬名たちに「無理なら捨てろ」と厳しいことを言いつつも、元信は瀬名たちの捕縛の縄を切ってやります。侍女のたねは同行を許されず、城に置いていかれます。
元康は激しく貧乏ゆすりをしながら服部党の到着を待っています。今川軍も吉田城に入ったとの報を受けますが、どうやら関口一家が引き連れられているらしいと知り、元康は驚愕します。正信は「人質を向こうから連れてきたと考えましょ」と他人事ですが、元康はどうすればいいのか、いよいよ八方ふさがりになってきました。
討ち死にした者たちを改める上ノ郷城の兵ですが、鈴の音に振り向くと舞い手の女が立っていました。失せろと追い出そうとしますが、逆に隠し持っていた刀で殺されてしまいます。それを合図に身を隠していた服部党の者たちは兵たちの鎧や幟旗(のぼりばた)を奪い、城内に忍び込みます。見張りの兵も倒した服部党は、城内から黒つぶを投げ落とし、死んだふりをしていた服部党の者たちが城の崖を登り始めます。
まだか! と元康はイライラを隠せません。そうしているうちに、上ノ郷城から合図の大砲が天に向かって打ち上げられます。それを確認した元康は、前と後ろからの城攻めを命じます。城内は大混乱に陥り、長照は「忍びか……元康卑劣なり!」と怒ってみせますが、三河湾からも何艘もの船が城に向かって来ています。もはや落城も目前に迫っていました。
それでも長照は恨みに奮起して戦い、服部半蔵と女大鼠を追い込みますが、甲賀忍者たちに取り囲まれてしまいます。虫けらどもの手にはかからぬと長照は自害し、甲賀衆は長照の子どもがいるはずだとその探索に向かいます。女大鼠はまだ息のある長照を覗き込みますが、天井裏に気配を感じて手裏剣を投げつけます。確実に負傷し、逃げ出す足音を聞いて、服部党はその後を追います。
服部党に追い詰められた鵜殿氏長と氏次兄弟ですが、決意を固めて絶壁から身を投げます。しかし彼らの足元を鎖で巻き付けて落下を阻止し、無傷のまま引き上げられます。長照自害の報告を受けた元康たちは、瀬名奪還の切り札となるべき長照の命を救えなかったことを悔しがりますが、氏長らを生け捕りにできたことに安堵します。氏真との交渉には数正が当たることになりました。
元康にとって長い長い夜が明けました。服部党は松平家のお抱えとなり、半蔵は握り飯を持って仲間たちの元に戻ってきました。人の心を持っていないケダモノのように思えて半蔵は忍びが嫌いでしたが、役目を果たしてくれて「だが今はお前らのことが」と考えを改めたようです。笑顔で振り返ると、半蔵の言葉には一切耳を貸さず、握り飯に集まり夢中に貪(むさぼ)っていました。「……嫌いじゃ」
再び氏真の前に引き出された関口一家に、上ノ郷城落城が伝えられます。一片の情けをかけるにも値せぬ、と氏真は一家の首を討ち取って見せしめとして元康に届けてやることにします。突然半鐘が鳴り響き、物見やぐらに上がった氏真の眼中に映ったのは、捕縛されて連れ出される氏長らの姿でした。そこに数正が氏真の陣に踏み込みます。
逆賊と取引はしないと氏真は数正の取り引きを拒みます。忠臣の子どもを見殺しにすれば氏真の名に傷が入ると数正は食い下がりますが、今川義元亡き後、次々と今川家が家臣たちに裏切られていく現状もあって、氏真は逆上します。巴は、気持ちが昂(たかぶ)ると抑えられずわめき散らすのはみっともないと声を上げます。氏純も、自らの命と引き換えに娘と孫たちの助命を訴えます。
対岸に姿を現した氏真に続いて数正と瀬名たちも出て来ました。縄を解かれ、晴れて自由の身となった両者は大きな川を渡っていきます。瀬名の背中が遠のくことは、松平が今川からの決別を意味します。鉄砲隊の銃撃用意をしていた氏真は采配を振ろうと持つ手を握りしめますが、向こう岸にたどり着いた竹千代の「父上……父上!」と叫ぶ声が響き渡り、氏真は我が身に投影して我に返ります。
元康を前に瀬名はようやく笑みを見せます。2年ぶりの再会です。瀬名と両親の別れ際、女は大切なものを守るために命を懸けるものだと諭す巴は、命を懸けるべき時はいずれ必ず来ると瀬名を見据えます。「それまで強く、もっともっと強く、生きるんです」 やり取りを見ていた氏真もそのやり取りを思い出し、対岸の元康を睨みつけて引き返していきます。
駿府に戻った氏真は、次々と離反が相次ぐ現状に、亡き義元の陣羽織を前にうなだれます。「父上……」
永禄5(1562)年、松平元康軍が上ノ郷城を攻撃、鵜殿長照が討ち取られ、子息と交換する形で瀬名が元康の元に送られる。
慶長8(1603)年2月12日、徳川家康が後陽成天皇から征夷大将軍に任命されるまで、
あと41年──。
作:古沢 良太
音楽:稲本 響
語り:寺島 しのぶ
題字:GOO CHOKI PAR
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松本 潤 (松平元康)
有村 架純 (瀬名)
松嶋 菜々子 (於大の方)
大森 南朋 (酒井忠次(左衛門尉))
山田 裕貴 (本多忠勝(平八郎))
杉野 遥亮 (榊原康政(小平太))
音尾 琢真 (鳥居元忠(彦右衛門))
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溝端 淳平 (今川氏真)
リリー・フランキー (久松長家)
松本 まりか (女大鼠)
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松山 ケンイチ (本多正信)
山田 孝之 (服部半蔵)
渡部 篤郎 (関口氏純)
真矢 ミキ (巴)
松重 豊 (石川数正)
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制作統括:磯 智明・村山 峻平
プロデューサー:大橋 守・釜谷 正一郎
演出:川上 剛
◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆
NHK大河ドラマ『どうする家康』
第7回「わしの家」
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