プレイバックおんな太閤記・(02)足軽女房
藤吉郎とねねの新婚生活が始まった。ねねにとって足軽組頭の暮らしは、実家である浅野の養父も同じ足軽組頭であることから、慣れているつもりであった。が、藤吉郎との所帯はいろいろと勝手の違うことばかりであった。
寝起きの藤吉郎は大きく伸びをして、満面の笑みです。その視線の先には、家事に精を出すねねの姿があります。ねねは井戸からくみ上げた水で野菜を洗うと、桶の背面を洗って泥を落とし、その上で野菜を切ります。藤吉郎は一人暮らしで調理は全くしなかったので、調理道具は持っていなかったのでしょう。近所の女たちによろしくと挨拶している時、藤吉郎から呼ばれます。
「これで暮らしのことは賄うてくれ」 木下藤吉郎は、織田信長からいただいた銭をすべてねねに預けます。そして出来上がった雑炊をかきこみ、妻がいる幸せをかみしめる藤吉郎です。そこに足軽組の男たちがわんさか現れます。組頭の女房としてふるまってやれと藤吉郎は笑いますが、その人数の多さにねねは言葉を失います。困っていれば力を貸し、喜びは分かち合う。それが藤吉郎の考えです。
信長は清須城の雑穀類を保存する蔵を視察します。そこにひょっこり現れた藤吉郎は、この程度の備えでは美濃と戦うことはできないと、信長に聞こえよがしに言います。でしゃばるな! と信長は叱責し、それでも「織田家の先行きを案じるあまり」「国を守ることも満足には」と食い下がる藤吉郎を蔵から追い出します。怒り肩で蔵を出ていく信長を追いながら、台所方奉行は藤吉郎に反感を持ちます。
ややが姉のねねを訪ねてきました。藤吉郎が信長にお手打ちを食らう危機だったと心配して、その様子を見に来たややは、とんでもない人と添うたものだと冷やかです。ねねは足軽30人を束ねる組頭の女房と胸を張ります。母のこいが用意してくれた道具一式をややから預かり、藤吉郎からもらった金に手をつけずに済むと大喜びです。
そこに帰宅した藤吉郎ですが、どういうつもりか! とややはご立腹です。うわさが立つのは早いと半ば感心しながら、思ったことを口にしたまでと弁明する藤吉郎に、姉を泣かせたらすぐに連れ帰るとややはクギを刺します。「口が過ぎます。余計なおせっかいじゃ」とねねはややをたしなめ、藤吉郎をかばいます。ねねの背後から見守っていた藤吉郎は、嬉しそうに微笑みます。
信長は馬場から馬駆けする際、そばに控える藤吉郎に薪掛かりと台所方奉行を命じます。藤吉郎が蔵を見て指摘したようなことを信長も考えていて、そこまでいうならと藤吉郎に任せたのかもしれません。そしてまた藤吉郎も、あまりに手薄な状況に自分であれば立派に貯えてみせると狙っていたようにも見え、信長の背中を目で追いながら、藤吉郎は内心ニンマリします。
薪掛かりとは薪や油などを一手に仕入れそれぞれの部屋に割り当てる仕事、そして台所方も城内で使う食料を預かる仕事です。1年間に城で使う薪は一千貫文にも及びます。戦をするには銭がかかり、日ごろから出費をできるだけ抑えて貯えを増やし、そして戦の際には多くの兵糧を戦場へ出す。藤吉郎は腕の見せ所と笑いますが、あまり無理はしないようにとねねは藤吉郎を心配しています。
藤吉郎は毎日のように台所方の面々を引き連れ、山々を歩いて回ります。薪に使えそうな手ごろな木を見つけると、山の持ち主に木を売ってくれともちかけます。薪を売る商人もいるのですが、山の持ち主にすれば商人に売るのも自分たちに売るのも同じことと、藤吉郎はまずそこから改めることにします。「常道じゃ仕来りじゃとそのようなものに捉われていると、いつまでも改まりはせぬぞ」
そのころ藤吉郎の長屋には、清洲城に新炭を卸す商人が挨拶に来ていました。お近づきのしるしにと、商人は袖の下を渡そうとしますが、ねねはこれを固辞します。何度か押し戻しが続いたとき、前田犬千代が駆け寄って「迷惑じゃ、失せろ」と追い出します。直接藤吉郎に対しても歯が立たず、ねねを懐柔しようと企んだのだろうと犬千代は笑い、ねねは安堵しています。
湯を欠かすなと組頭に命じられ湯をたぎらせ続ける男たちにも、藤吉郎は薪の割り当てはしないと運び出す実力行使に出ます。おしゃべりしている侍女の部屋では、おしゃべりには明かりは不要と灯火の灯芯を短くして薄暗くします。宿直部屋では宿直たちが使っている火も明かりも消してしまいます。反発する宿直たちは藤吉郎に誘われるまま外で木刀で襲い掛かりますが、藤吉郎はヒラリと攻撃をかわします。
城内に詰める藤吉郎はめっきり家に帰ってこなくなり、その間も病で臥せる母親の代わりによその子のお守りをするねねに、ややは呆れてしまいます。戦で首を取って手柄を立てるならいざ知らず、信長の目に留まるためにわざと大きなことを言う藤吉郎は根性がないと非難します。そしてそんな男と結婚したねねを、もう少し利発な人だと思っていたとややは悔しいのです。
藤吉郎は実家の中村まで足を伸ばし、畑で採れた作物を高値で直接買い取ると小一郎に相談します。なかは露骨にいやな顔を見せますが、小一郎は銭になるならと話に乗ることにします。ただ小一郎は、藤吉郎が百姓として戻ってくることを期待していますが、それはきいが百姓の男に嫁ぐことが決まって、家から出ていくからかもしれません。なかは、ねねさんに渡してくれと草履を預けます。
なかに渡された草履を持って、藤吉郎は久々の帰宅です。ねねは、寂しかったと藤吉郎の手をギュッと握りしめます。いまの藤吉郎の仕事ですが、城内には陰口をたたく者もいますが、そうしなければ信長の目に止まりませんし、実力を発揮することもできません。無駄を省けという使命は人々の恨みを買うことにもなりますが、藤吉郎はねねが自分の味方であると信じています。
永禄5(1562)年正月、義元亡き後も今川の属将であった三河岡崎の松平元康(後の徳川家康)は、清洲へ赴いて信長と攻守同盟を結び今川と縁を切った。信長と家康の軍事同盟によって、京都上洛を狙う信長を阻む者は美濃の斎藤竜興だけになった。そしてやがて信長の美濃攻略が始まることになるのである。
春、藤吉郎は全力で駆け戻ります。薪掛かりと台所方の功績が信長に認められ、120人を抱える足軽大将に出世しました。清須城内の莫大な光熱費を従来の3分の1にし、台所のほうも出費を抑えて兵糧を貯蔵することに成功したのです。足軽大将として少し広い家に引っ越すことに難色を示すねねでしたが、その家は犬千代の家の隣と聞いて、新しい場所への不安も吹き飛びます。
新居での生活が始まったころ、小一郎が姉のともと夫の弥助を連れてきました。足軽大将に出世した藤吉郎に、一言どうしても祝いを言いたかったのです。藤吉郎は、とも、小一郎、きいは大事な兄弟であり、もっと出世して楽をさせてやると笑います。そしてもっと忙しくなるからと小一郎を誘うのですが、畑を守るのが自分の役目と小一郎は断ります。
足軽大将になってから、藤吉郎に奇妙な行動が目立つようになりました。何日か家を空けたかと思うと、得体のしれない者たちを連れてフラッと帰って来る。誰かと問い詰めても藤吉郎は知らぬ顔で、風呂じゃ酒じゃとたいそうなもてなしをする藤吉郎に、ねねは大いに悩みながらも何も言わずに黙って従います。
嵐による城壁の修理を進めていますが、その箇所が100間(182m)と長すぎてなかなか普請が進みません。視察に来た信長にしばらくの猶予を求める奉行ですが、そこでも藤吉郎は普請奉行に対して怠慢と言い退け文句たらたらです。3日もあれば、と片膝つく藤吉郎を睨みつけた信長は、士分に取り立て城普請の奉行を命じます。「サル! 3日と言った言葉を忘れるな!」
その話は瞬く間に城下に知れ渡り、またしてもややはねねの元に駆け付けます。ねねはまたかと失笑ですが、その内容を聞いてねねは心臓が凍り付くほどに固まります。士分となれば、約束を違えば切腹になることもあり得ると、浅野又右衛門も心配しているようです。ねねは清須城の城壁を見に行き、その修理箇所の長さに腰を抜かします。
清須城の土塀は城の周囲にめぐらされたもので、100間に渡って崩れたという。それを3日で作り直すなど、ねねにはとても信じられないことであった。命と引き換えを承知で、自ら信長に売り込んだという藤吉郎の真意がねねには測りかね、藤吉郎の無謀さに生きた心地がしなかった。
永禄4(1561)年、松平元康が今川氏を見限り織田信長と同盟、家康と信長が会って同盟の確認をする。
慶長8(1603)年2月12日、徳川家康が後陽成天皇から征夷大将軍に任命されるまで、
あと42年──。
作:橋田 壽賀子
音楽:坂田 晃一
語り:山田 誠浩 アナウンサー
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[出演]
佐久間 良子 (ねね)
中村 雅俊 (小一郎)
浅芽 陽子 (やや)
音無 美紀子 (まつ)
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藤岡 弘 (織田信長)
長山 藍子 (とも)
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滝田 栄 (前田犬千代)
赤木 春恵 (なか)
泉 ピン子 (きい)
西田 敏行 (木下藤吉郎)
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制作:伊神 幹
演出:宮沢 俊樹
◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆
NHK大河ドラマ『おんな太閤記』
第3回「同胞(はらから)」
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