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2023年2月10日 (金)

プレイバックおんな太閤記・(03)同胞(はらから)

木下藤吉郎が城壁を3日で修復すると大口をたたいたことを知り、家事も手につかず心配するねねは、帰宅した藤吉郎に「どうして3日で……どうして」と不安をぶつけます。藤吉郎は、もし約束が果たせなかったら首が飛ぶか腹を斬るかと笑い、余計にねねを不安にさせます。その心配をよそに藤吉郎は誰とも知らぬ客人と酒盛りで、愉快そうな笑い声も聞こえてきます。ねねは藤吉郎の気持ちを測りかねていました。

藤吉郎が普請奉行を仰せ付けられたと聞かされたねねは、気が気ではなかった。当の藤吉郎はいたってのん気な顔をしているが、事の重大さはねねにも分かる。ねねは中村への道を急いでいた。なかは、しとしと降る雨の中を家の前で入りかねているねねに気づき、きいとともに出迎えます。

ねねから事情をひととおり聞かされたなかは、あの性格はいつになったら直るんだと腹を立てます。ねねは小一郎に藤吉郎への助勢を頼むのですが、小一郎は塀など作れないし何もしてやれないとうつむきます。藤吉郎の側にいてくれるだけでどれだけ力になるかと食い下がるねねに、なかは「行ってやれ」と小一郎を諭します。ねねは、そこに偶然やってきた きいの許嫁(いいなずけ)の嘉助と顔合わせをします。

雨も上がり、ねねは小一郎を連れて帰ってきました。水を使いたいという小一郎を台所へ案内するねねですが、そこにはみつという女が水を使っていました。諸国を巡って隠密行動をとっている女で、藤吉郎が連れて来た“大事な客人”のひとりです。ねねも今ではみつが家の中にいても何も感じないほどになっていますが、小一郎は戸惑いを隠せません。

そこに藤吉郎が帰ってきました。大工を集めるのに苦労しているらしく、自由に動ける人物を欲しがっていたところです。小一郎はそのようなことならできるかもしれぬと藤吉郎の願いを聞き入れます。100間の修築をどうするのか小一郎は尋ねますが、人は頭で使うと笑う藤吉郎は、ねねに20貫文の銭、本物の酒と空の徳利を用意させます。

ねねは浅野の実家に走ります。浅野を頼って来たのは自分の一存であり、ここで無理なら前田犬千代にも頼んでみるとねねはつぶやきます。久しぶりに実家に戻ってきたかと思えば銭の無心をするねねが労(いたわ)しく、悔し涙を流すややと姉妹で口げんかになります。養母のこいは、藤吉郎は浅野の婿だから困りごとは浅野で面倒を見ようと言ってくれます。

家に戻ったねねは、大工たちのもてなしのために家中を走り回り、みつと小一郎まで加わって大工たちをもてなします。どうあっても酒が足りないとねねは困り顔ですが、「酒はたいして飲まぬ。いや、飲めぬ」と藤吉郎は笑います。そして銭も用意できたことを知らせると、藤吉郎はこれで万事うまくいくとつぶやきます。その言葉を聞いて、ねねは少し光が見えた気がしました。

宴は進み、藤吉郎は大工たちに工事の手順を説明します。100間を10人で分担しそれぞれがその場所の長とする。長は職人を好きなだけ集めてよく、分担場所を最速で修復できた組には手当とは別に10貫文、2番手には5貫文……と賞金を渡す。なるほどとうなずく小一郎とねねです。藤吉郎は酒をさらに勧めますが、大工たちは賞金欲しさに酒を断り、職人集めに奔走します。

 

清須城の土塀修理がいよいよ始まり、職人たちは走り回って修復を急ぎます。小一郎は水を配り小休止を取るように勧めますが、工事が遅れれば恥だと、職人たちは休みなく働きます。ねねは観音像に手を合わせ、うわさを聞きつけたややが藤吉郎批判に口を動かす中、それを避けるように台所に観音像を移し、祈り続けます。日が暮れた後も工事は続き、長は職人たちを鼓舞します。藤吉郎は満面の笑みです。

「姉さま! 終わりました。いま殿が見分しておられます!」 工事が済んだことを小一郎が知らせに来ました。緊張状態から解放されたねねは倒れそうになりますが、ともかく一安心です。見分していた信長も、その出来栄えに満足そうです。藤吉郎の才覚は見事当たった。余に言う「秀吉の割普請」である。人心を収攬(しゅうらん)し人を使うことに長けていた藤吉郎の才能を如実に物語る逸話である。

藤吉郎が帰ってくる前に、小一郎は中村に戻ることにします。引き止めるねねですが、自分の仕事はなくなったし、田んぼが待っているのです。小一郎は、藤吉郎がおかしな男だと思っているだろうと断ったうえで、継父と折り合いが悪く家を出ざるを得なかった藤吉郎が、生きるために侍を選んだ事情を説明します。「ただの功名心だけではない。自分で自分に鞭打ってやり遂げようとする兄さの知恵なのじゃ」

帰宅した藤吉郎は、信長から加増を賜り「秀吉」という名ももらったことにご満悦です。藤吉郎はねねが金策に浅野の実家を頼り、小一郎を呼びに中村に走ってくれたことに手をついて頭を下げます。これから織田は小牧に移ることになり、土塀修理も無駄だったかとねねは考えますが、清州は織田家の本城であり、小牧は美濃攻略のための出城なのです。いよいよ美濃攻めが近づいていました。

 

永禄6(1563)年7月、信長は清須を出て小牧山を居城とします。南には尾張や伊勢の平野、北には木曽川を隔てて美濃平野に接する小牧山は、美濃攻略には最高の条件を備えた軍事基地です。藤吉郎はその列を眺めながら、後方にお市の輿を見つけて下馬し片膝をつきます。信長が片時もそばから離そうとせず、かわいがっていると考える藤吉郎ですが、犬千代改め前田利家は お市は不憫なお人と表現します。

新宅に移り掃除に明け暮れるねねですが、お隣に住むのは清須と同じ利家とまつです。前田の本拠の城は利家の兄が受け継いでいて、まつは利家とともにこれからもこんなふうに移り住む暮らしが続くのかと不安を打ち明けます。ともかく今は、留守を預かる女同士力を合わせていくためにも、まつはねねを頼りにしています。

小牧山への引っ越しが一段落つき、藤吉郎は生まれて初めて一軍の指揮官となります。といってもこれは、互いの旗指物を取って勝敗を決する戦闘訓練であり、藤吉郎の指揮官としての力量を信長は図っていたのです。藤吉郎は一軍に酒を呑ませて身体を温めさせ、川を隔てた対岸には適役の指揮官が、サルが仕掛けてくるまで待てばいいと余裕の構えです。

藤吉郎は一斉に対岸に向かって石を投げさせます。始めこそ放っておけ! と指揮していた敵将ですが、何発か頭に石を食らうと、カーッと血を上らせて進撃を開始します。対岸から川を渡る軍勢は、足を取られてみな転倒します。川の中に兵士を潜らせていたのです。突然現れた藤吉郎軍に浮足立った敵兵から旗を奪い、一軍は雄叫びを上げます。その様子を見ていた信長と利家は、おかしそうに笑います。

永禄7(1564)年、春。藤吉郎の妹・きいの祝言の日が近づいていました。なかはきいのために小袖を仕立てます。きいは清須から小牧へ移った藤吉郎は祝言に来てくれるか気にしていますが、小一郎はねねは来ると約束したと主張します。どちらにしてもなかは、とんでもない災いに巻き込まれてしまうと、違う身分になった藤吉郎は家に入れないつもりです。

小牧では、御用繁多で中村へは帰れないという藤吉郎をねねが説得していました。出世している兄を頼れば足軽ぐらいとは妻(めあわ)せることもできたのに、という気持ちがあるのです。ねねは、農民であるきいにひどい言動をする藤吉郎をこんなに冷たい人だと思わなかった! と怒ってしまいます。ねねのそんな姿を見たことがない藤吉郎は慌ててなだめ、中村に里帰りすることにします。

ねねの提案もむなしく、家に入るのはなかの許しが下りず、藤吉郎は近所の子どもたちと庭から祝言の様子を眺めています。祝言も終わり、やれやれと足を伸ばすきいですが、とも、藤吉郎、小一郎、きい、そしてなかと、身内が一緒にいるのは久しぶりだとともは懐かしみます。ともの夫の弥助、きいの夫の嘉助は、藤吉郎の出世に鼻が高い思いですが、なかは自分たちが土に生きる者だとクギを刺します。

なかが目くじらを立てねねが伏し目がちになる中、気分を良くした藤吉郎が舞っていると、尾張の土豪・蜂須賀小六が謀反だとみつが知らせに来ました。藤吉郎はねねのことを小一郎に任せ、急いで戻っていきます。「あれが侍というものよの、おかかを泣かせて。人を殺せば、女房子どもが泣くのじゃ。たわけ者よ藤吉郎は!」 なかが冷たい目で見送り、なかは心配そうな表情を浮かべます。

信長の美濃攻略は始まっていた。藤吉郎の役目は木曽川沿いの土豪たちを信長側につかせることである。いまその一人、蜂須賀小六が謀反を起こしたのである。これが藤吉郎にとって、長い美濃攻略戦の最初の試練であり、ねねにとっては、戦国武士の妻としての苦労の始まりであった。


永禄6(1563)年、織田信長が美濃攻めの拠点として小牧山城を築城し、移り住む。

慶長8(1603)年2月12日、徳川家康が後陽成天皇から征夷大将軍に任命されるまで、

あと40年──。

 

作:橋田 壽賀子
音楽:坂田 晃一
語り:山田 誠浩 アナウンサー
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[出演]
佐久間 良子 (ねね)
中村 雅俊 (小一郎)
浅芽 陽子 (やや)
音無 美紀子 (まつ)
せんだ みつお (嘉助)
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藤岡 弘 (織田信長)
夏目 雅子 (お市)
長山 藍子 (とも)
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滝田 栄 (前田利家)
赤木 春恵 (なか)
泉 ピン子 (きい)
西田 敏行 (木下藤吉郎)
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制作:伊神 幹
演出:富沢 正幸

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『おんな太閤記』
第4回「美濃攻略」

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