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2023年2月17日 (金)

プレイバックおんな太閤記・(04)美濃攻略

信長の美濃攻略の下工作として、秀吉が密かに懐柔した尾張の土豪・蜂須賀小六が突如裏切って、美濃の斎藤につこうとしているという。その報に接した秀吉は取るものもとりあえず、単身蜂須賀の屋敷へと馬を駆っていた。

永禄7(1564)年・春。蜂須賀小六の屋敷にたどり着いた木下秀吉ですが、門のところで番人たちに捕らえられてしまいます。斎藤龍興のところへ参じるところの小六は、今日からは敵と味方とニヤリとします。蜂須賀側にもいろいろと事情があり、これまでの盟約を反故にしてでも寝返るしかないわけです。それでも食い下がる秀吉に、誰を主に選ぼうと自分の勝手! と聞き入れようとしません。

きいと嘉助の婚儀を終え、ねねと小一郎は小牧の屋敷に戻ります。少し広めの邸宅にねねがひとりであることを心配した小一郎は、小女を雇うように勧めますが、一人での留守番には慣れていると笑います。ただ、秀吉の役割についてはねねは何も聞かされておらず、今回の急報に接してねねは秀吉の身を心配しています。

隣家の前田利家が訪ねてきました。まつが臥せっているそうですが、病でというわけではなく子を身ごもったわけです。小一郎から、秀吉が小六の屋敷に向かったと聞かされた利家も、実は小六に謀反の疑いを耳にして教えに来てくれたのです。織田信長の密命なので、利家はその役割についてねねに教えるわけにもいかず、救出に向かおうとする小一郎には下手に動かないようにたしなめます。

奥でガタッと音がして利家は身構えますが、いたのは秀吉の密偵・みつでした。みつも、密命については何も言いませんが、今は無事とだけ知らせに来てくれました。それを聞いて安堵するねねです。みつはねねのために己の一存で知らせに来たとのことで、また慌ただしく戻っていきます。

 

小六と向き合う秀吉は、ずっと慰留にあたります。小六は秀吉につくと約束はしましたが、信長という男が好きになれないと考えを変えたのです。自分一人が美濃に寝返っても大したことではないし、すでに裏切りの件は信長に届いているだろうから遅いと開き直る小六ですが、幼いころに出会った小六との恩を大切にし、苦楽をともにしたいと秀吉は言葉を尽くします。その様子を天井裏からみつが覗いています。

秀吉は戻らず、みつや利家からも何の知らせもないとねねは焦りを隠せません。きいが嫁いでから、中村の家はなかが一人になっているからと、ねねは小一郎に帰宅を勧めますが、秀吉の顔を見るまでは帰れないと黙々と薪を割ります。まつも体調がいいのか、元気そうな顔を見せてくれました。そこに秀吉が客人を連れてひょっこりと帰ってきました。「小一郎、お前は中村に帰れ。客人には顔を見せるな」

客人は、小六と弟の蜂須賀又十郎でした。数少ない情報でも、ねねは小六が夫を裏切ろうとしていた人物だと知っています。慌てふためくねねですが、黙って世話をしろと言って城に向かってしまいました。そして小一郎も中村に発った後でした。又十郎はありとあらゆる戸を閉め、そんな中でひとり取り残されたねねは、ガタガタと身体を震わせながら酒の支度をしています。

何のおもてなしもできませんが、と盃に酒を注ぐねねの手は明らかに震えています。田舎武士で夜盗のように言われている荒くれ者を前に、怖くないわけがありません。秀吉はいま、小六たちの処遇で信長に会いに行っていますが、事と次第によって小六たちが逃亡するための人質なのです。正直に打ち明けガハハと大笑いする小六ですが、ねねは小六の告白に安堵します。

「ねねどの?」と小六は呆気にとられます。秀吉のことを信じ切っているねねは、秀吉が見殺しにするはずもなく、命を懸けられてもそれで果てるのは本望と胸を張ります。又十郎は小六の決定に不本意ですが、秀吉を敵に回したら怖いと小六は感じたのです。小六はねねに惚れ、ねねに惚れた秀吉に惚れたと大笑いします。「信長などどうでもええ、わしは秀吉どのにお仕えするのじゃ」

城から戻ってきた秀吉は、信長への目通りをしぶしぶ承諾した小六を連れて登城します。深々と頭を下げる秀吉に対し、小六は信長に平伏しようとしません。信長は美濃攻略に重要な人物を取り込めたと満足げですが、小六は信長ではなく秀吉に仕えたいと言い出して秀吉を慌てさせます。怒り出すかと思いきや、信長は小六の提案を認めます。信長直参でなくても、織田のために働くことには変わりないのです。

帰宅した秀吉は大役を果たした割にしょんぼりしています。信長は妹・お市を近江の浅井長政に嫁がせることにしたのです。近江と尾張がつながれば、美濃を反対側から脅(おびや)かすこともできるわけですが、政略の具として使われてお市がかわいそうだと、秀吉は同情します。ねねは信長が大切にしてきた妹や妹婿を滅ぼすようなことはしないと考えますが、人の心は分からないと秀吉はため息交じりです。

 

お市の輿入れ前日となりました。長政は、六角義賢からもらった諱を捨てて賢政から改名するような気骨ある若者で、信長に惚れ込んでおり、その妹であればかわいがってくれようと優しい表情を見せます。信長は、もし長政に心変わりがあれば刺せと、引き出物として懐刀を授けます。「これで兄上をお討ちするようなことになるやもしれませぬな。一度嫁しましたら一生長政どのに添い遂げるつもりで参ります」

永禄7年の春、お市は浅井家へ輿入れした。信長ほど女性を政略に利用した者はないと言われる。三河の松平家康、近江の浅井長政、また美濃平定の後、甲斐の武田信玄にも、妹婿の娘をわざわざ自分の養女にした上で娶(めあわ)せている。これらの婚姻政策は、すべて美濃平定、ひいては京都上洛のための布石である。が、長政との結婚はお市にとって悲惨な運命をたどる幕開きであった。そして秀吉のお市への密かな思慕は、ねねにも大きな悲劇をもたらすことになるのである。

お市の嫁入り行列を、土下座して見送る秀吉、利家とまつ、そしてねねの姿がありました。行列が過ぎ去り、ひょっこり顔を出したややは、養母のこいが実家で呼んでいると伝えに来ました。

ねねが浅野家に戻ると、幼馴染みの弥兵衛が蔵の屋根の修理をしていました。こいは、弥兵衛とややが結婚することになったとねねに知らせます。浅野の婿としてねねと結婚を果たした秀吉でしたが、大出世で今さら浅野に戻ってもらうわけにもいかないのです。秀吉と違って出世出世とハラハラさせられることもないし、第一本人がそれを望んでいない。ややは弥兵衛とお似合いとねねは笑います。

ねねが浅野から戻ると、小六と又十郎が小牧に来ていました。小六の口利きで木曽川添いの土豪たちはほぼ信長に臣従し、次に狙うのは鵜沼城主・大沢基康です。信長でさえ手こずった相手で、叩き潰せと小六は主張しますが、戦は最後の手段だと秀吉はたしなめます。基康は龍興にさんざん使われた挙句に見放され、疲れ切っている今の好機を狙うのです。秀吉は小六に基康との仲立ちを依頼します。

今生の別れになるやもしれぬ! と酒盛りで盛り上がる秀吉や小六たちの声を、ねねは耳を塞いで聞くまいとしていました。様子を見に来た秀吉に、敵中に単身突入などこれ以上危険なことはやめてほしいとねねは訴えます。秀吉はむざむざ命を落とすようなことをするわけはないと、秀吉なりに勝算があって赴くのです。「案ずるな。おかかを泣かせるような真似はせぬ」 秀吉は泣きじゃくるねねと約束します。

ねねの心配をよそに、明朝早く旅立った秀吉と小六たちは、無事に鵜沼城に入り基康と対面します。信長の意向であれば考えると前向きに捉える基康に、秀吉が信長との対面を勧めます。小牧山におびき出して斬るつもりかと合点がいった基康は、どこまで信じていいのかとつぶやきます。秀吉は、基康が小牧に行って信長と対面し、鵜沼城に戻るまで人質としてここに残ると言い出します。

 

この懐柔策が功を奏し基康が小牧山に赴きますが、その報告を受けた信長は基康を斬り捨てよと命じます。信長としては、これまでの基康による自分自身への盾突きに恨みを募らせるほどだったのです。利家は、鵜沼城には人質として秀吉がいるから、基康の切り捨てだけはと食い下がりますが、構わぬ! と信長は頷きません。

ややは弥兵衛から、小牧山城には小六だけが戻ってきたと聞かされて、慌ててねねのところへ駆けつけます。鵜沼城から秀吉が戻らない? という現実に、ねねは不安に駆られます。そこに小六が現れ、信長の裁断に小六も立腹し、織田ではなく斎藤についておけばよかったわ! と吐き捨てます。そのころ秀吉は鵜沼城で鼻毛を抜き取りながら、くしゃみするほどのんびりと待っていました。

信長が基康を斬ってしまえば、もちろん秀吉の命はない。小六から事情を聴いたねねは驚きで言葉もなかった。今度のような危機は結婚して以来初めてである。ねねが秀吉と祝言を挙げてから4年目。このころ信長は美濃攻略のために墨俣の築城を計画し、翌年京都では将軍足利義輝が三好三人衆と松永久秀に殺されている。時代の流れは大きく変わろうとしていた。


永禄7(1564)年、尾張の国衆・蜂須賀小六が織田信長に仕える。

慶長8(1603)年2月12日、徳川家康が後陽成天皇から征夷大将軍に任命されるまで、

あと39年──。

 

作:橋田 壽賀子
音楽:坂田 晃一
語り:山田 誠浩 アナウンサー
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[出演]
佐久間 良子 (ねね)
中村 雅俊 (小一郎)
浅芽 陽子 (やや)
音無 美紀子 (まつ)
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藤岡 弘 (織田信長)
夏目 雅子 (お市)
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滝田 栄 (前田利家)
前田 吟 (蜂須賀小六)
尾藤 イサオ (浅野弥兵衛)
西田 敏行 (木下秀吉)
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制作:伊神 幹
演出:北嶋 隆

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『おんな太閤記』
第5回「墨俣(すのまた)築城」

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