プレイバックおんな太閤記・(10)小谷落城
元亀3(1572)年の元旦、信長は新年の年賀を機に長男信忠、次男信雄に次いで、三男信孝の元服を行い、諸国の城主武将たちが慶賀のために参集した。これはまた戦局打開の作戦会議の集まりでもあった。将軍義昭の画策する包囲網作戦に、信長は一大危機を迎えていたのである。前田利家の妻・おまつも、利家について岐阜に来ていた。
木下秀吉が利家を伴って帰宅し、ねねとまつを交えて酒盛りです。小一郎は小谷城包囲のために横山城に詰めています。包囲網も解けず、徳川家康に援軍を送れず、本願寺宗徒も蜂起するこの危機を信長がどう乗り切るか……。心配を振り切るように秀吉が舞っていると、孫七郎が入ってきました。孫七郎を抱き上げあやす秀吉に、子煩悩だから大変だとまつは笑いますが、その言葉は子どものいないねねの心を突き刺します。
そこに浅井軍が横山城に攻め込んだと弥助が知らせに来ました。秀吉は、ともと孫七郎と過ごさせようと伝令の弥助に休息を与えますが、横山城へついていくと伝えます。秀吉に従って出発する弥助を呼ぶねねですが、ともは引き止めます。「弥助さんもやっと侍らしくなってくれました。これでよいのじゃ」 ともかく横山城に立ち戻った秀吉は浅井軍を一蹴し、再び長い包囲作戦が続くことになります。
11ヶ月後、武田信玄は三方ヶ原で家康を打ち破り三河へ攻め込みます。二条館では、信玄が着々と進軍する様子に、信長の命運はこれまでと将軍足利義昭の高笑いが止まりません。浅井朝倉はじめ石山本願寺など信長追討の軍勢の士気を挙げる意味で、ここで義昭は挙兵すると宣言します。細川藤孝は義昭が将軍に慣れたのは信長の支援のおかげだと反論しますが、義昭は逆臣信長を討つとの態度を崩しません。
翌元亀4(1573)年4月、病を得た信玄は雄図(ゆうと)半ばにして没してしまいます。信玄の死を知らずに京で兵を挙げた義昭は、たちまち信長に敗れて京から追放され、235年間続いた室町幕府はついに滅亡しました。年号が元亀から改められた天正元(1573)年8月、信長は浅井朝倉に最期の総攻撃をかけるべく近江へ進軍します。
蜂須賀小六のように、義昭にかまけているから回り道をしたと信長を批判する声もある中で、信玄の脅威がなくなったからこそ戦ができるのだと秀吉は説明しますが、小一郎は浅井長政がお市の婿だから降伏するのを待っていたという説を持ち出します。しかし小六は、肉親でさえ裏切った者を平気で討つ信長がそんなに優しい人物なわけがないと一蹴します。
朝倉義景が進軍してきたため、信長は浅井との援路を絶つべく陣を移し、朝倉軍を一挙に叩く作戦に出ます。包囲された朝倉義景は自害して果て、小谷城は孤立無援の城となってしまいました。長政はお市に辛い日日を送らせたことを詫び、父とともに小谷城と運命を共にする覚悟をお市に告げます。お市は悲しくて、顔を伏せてしまいます。
信長は秀吉に小谷城総攻撃を命じます。秀吉は、長政と父浅井久政の間にある京極廓(くるわ)を攻めて父子を分断させるつもりですが、信長は信長のために浅井に嫁いだお市と、茶々、初、小督の3人の娘も助け出せと極秘の命令を秀吉に伝えます。「が……万福丸は是非もない。草の根を分けても探し出すのじゃ」 秀吉の表情がたちまち曇ります。
秀吉による総攻撃により京極廓が陥落、お市は覚悟を決めて、嫁ぐ日に信長から授かった懐刀を取り出します。子どもたちが見守る中、介錯を頼みます、と懐刀を手にしたお市を止めようとして、仕える侍女が必死になってもみ合います。その間にも小谷城攻撃は続き、城が落ちてからでは間に合わぬと、秀吉は城に近づいて長政の取り次ぎを求めますが、天守の兵は抵抗しています。
落ち着きを取り戻したお市ですが、秀吉軍から矢文が放たれ、長政はお市と子どもたちに城から出るように促します。みんなが城を枕に果てれば浅井の血は絶えてしまう──長政の必死の説得に、お市は従わざるを得ませんでした。ただ万福丸は織田に下れば命はないと、長政は万福丸を確かな者に預けて生き延びさせる道を模索します。
城からの返事が来ず、秀吉はじっと待っています。やがて城門が開き身構える秀吉軍ですが、お市と3人の娘たちが出て来ました。お市母子を信長の陣中に送り届ける秀吉に代わり、小一郎に総大将を任せます。そして小六には万福丸救出を密かに依頼します。小谷山を下りる際にも初が座り込んでぐずりますが、秀吉は猿真似をして笑わせます。その間も、お市の視線は頂上の小谷城に注がれていました。
ようやく本陣にたどり着きました。久しぶりの対面に信長は感無量ですが、信長の労わりの言葉にも無反応なお市は頭を下げたまま微動だにしません。手を差し伸べる信長に茶々は拒絶し、気丈な姫だと信長は笑うしかありません。「久政、長政、ともに自害して果てたそうじゃ。敵ながらあっぱれな最期じゃった」 信長の言葉に、お市はギッと睨みつけます。
救出を頼んでおいた小六ですが、女に化けて逃げる万福丸を捕らえ、串刺しにして信長の目のつくところにさらしてある、と言ってきました。青ざめる秀吉は、小六が指さす方角を見て衝撃を受けます。秀吉は主命に背いた小六を斬ろうと刀を振り回します。「お主の言うた通りにしたら、お主こそ信長さまの主命に背くことになるんじゃぞ!」 膝から崩れ落ちた秀吉は、万福丸に手を合わせて冥福を祈ります。
岐阜で秀吉や小一郎、弥助の帰りを待つねねは、今回の小谷攻めでほとほと戦が嫌になっています。そこにみつがやって来て、小谷落城と秀吉たち全員の無事を知らせます。お市も3人の娘たちも救出されたことに安堵するねねでしたが、長政は自害し、万福丸も亡くなったと聞いて、どうして! とみつを問い詰めます。お務めがありますので、と去っていくみつです。
信長軍が岐阜城に凱旋し、総出で出迎えに出ている中、ねねは家にこもったままです。ややはねねを誘いに来ますが、ねねは身動きひとつしません。「たとえ面白うないことがあっても、せめて今日は機嫌よう……それがおかかとしての務めじゃ」と、普段はねねがややを諭すような言葉を言われ、ねねは顔をそむけます。
秀吉が家に戻り、出迎えるねねとともですが、ねねは秀吉を直視せず、どことなくよそよそしい感じが気になります。今や太鼓持ちの嘉助も、秀吉の大手柄! と持てはやしても、ニコリともせずにねねは家の中に入ってしまいます。小一郎はともに事情を聴きますが、ここ2~3日は口も聞いてくれないそうで、気にしていては一緒に暮らせないと笑っています。小一郎は困惑しています。
「一つだけ伺っておきたい……万福丸さまをお手討ちになされたということはまことでございますか」 秀吉は言葉を失います。その手で頑是ないお子を……それを手柄と思っているのかとねねの口撃はひどくなり、秀吉は初めてねねに手を上げます。今日限りお暇を、とねねは涙を流し、秀吉が号泣して出ていきますが、小一郎は秀吉が万福丸を助けようとしていたことをねねに説明し、かばい立てします。
庭の木の陰で涙に震える秀吉、その背中に向かってねねは手をつきます。
天正元(1573)年9月1日、織田信長軍に攻められて浅井長政は自害し、小谷城が落城する。
慶長8(1603)年2月12日、徳川家康が後陽成天皇から征夷大将軍に任命されるまで、
あと29年5ヶ月──。
作:橋田 壽賀子
音楽:坂田 晃一
語り:山田 誠浩 アナウンサー
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[出演]
佐久間 良子 (ねね)
中村 雅俊 (小一郎)
浅芽 陽子 (やや)
音無 美紀子 (まつ)
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藤岡 弘 (織田信長)
夏目 雅子 (お市)
長山 藍子 (とも)
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滝田 栄 (前田利家)
前田 吟 (蜂須賀小六)
尾藤 イサオ (浅野弥兵衛)
西田 敏行 (木下秀吉)
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制作:伊神 幹
演出:佐藤 幹夫
◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆
NHK大河ドラマ『おんな太閤記』
第11回「筑前守任官」
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