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2023年3月28日 (火)

プレイバック徳川家康・(15)陰謀

天正元年夏、岡崎三郎信康は父家康から初陣を命じられた。目指すは信州から岡崎へのもう一つの攻め入り口・足助(あすけ)である。足助には甲斐の下条伊豆守が立てこもっていた。信康に付き従うのは兵糧支援役の大賀弥四郎と、家康から派遣された本多作左衛門です。苦労をかけると言う信康に、弥四郎はニッコリとほほ笑みます。

そこに瀬名が加わり、出陣の盃が振る舞われます。信康は身ごもっている徳姫に言葉をかけ、凛々しい息子の姿に瀬名は目を細めています。手柄をお待ちくだされと信康は自信満々ですが、そんな信康を見て弥四郎はフンと鼻を鳴らします。武田勝頼軍を引き入れる企てを信康は知らないわけです。家来に促されて、信康は岡崎城を後にします。

長篠城は三河に対する武田の攻め入り口でした。その北方にある足助城に信康軍を向かわせたのは、長篠に向かう武田軍の兵力を分散させるためで、家康の作戦に則ったものです。そして補給を受け持つ弥四郎は岩瀬まで信康軍に同行し、見送った後に岡崎へ引き返します。

岡崎に戻ってきた弥四郎は、帰ってきた途端に信康を小ばかにするような発言をして、家来の山田八蔵にたしなめられます。しかし弥四郎は続けて、八蔵に企てを打ち明けます。足助城で戦い、武田の兵がサッと引くと勢いづいた信康は深追いする。そこで戦をしている間に武田の兵が岡崎へ入り松平を岡崎から追い出す。信康は生きて岡崎へは戻れまい……。その企てを聞いた八蔵は、みるみる青ざめていきます。

長篠に敷いた家康の野陣では、足助城での信康軍の奮闘ぶりが報告されていました。足助城が落ちれば次は長篠での戦いになりますが、家康はその前に、三河土豪の山家三方衆の動きを掴みます。中でも奥平美作守は作手城を武田信豊に明け渡して臣従を誓いつつ、内心は武田の侵入を快く思っていないようで、家康は奥平に密書を送って徳川方になびくように仕掛けます。

夜、弥四郎の家臣たちは彼の邸宅に集まります。弥四郎は足助城の甲斐寄りにあり同志の減敬がいる武節城の下条伊豆守に密使を送り、武田勝頼の誓書を得てくるように命じます。誓書とは、無事に徳川家を滅ぼした暁には、この岡崎城と旧領を我々に──。くじ引きで密使の役目は八蔵が請け負うことになりました。

八蔵たちが帰った後、気分のいい弥四郎は上機嫌で酒を呑み続けます。妻のお粂は弥四郎の企てなど知るはずもなく、ひたすらに出世を望む武士の妻ですが、もしも“御台さま”と呼ばれる身分になったらどうするか聞かれて、夢のようなことをと笑って聞き流します。「いかにも夢じゃが、わしの夢は必ず叶う。正夢じゃ!」

 

7月20日、家康は長篠城二の丸に火矢をいかけ、それを焼き払った。総攻撃の時は刻々と迫っていた。そして家康の本陣を密かに訪れた者がいた。今は甲州勢に屈服したと見せかけて作手の城にある、奥平美作守貞能の使者である。使者の夏目治貞は家康と対面し、武田信豊と土屋昌続(まさつぐ)が長篠近くの設楽原で家康を挟み撃ちをすると情報を流します。

治貞は策を献上する前に、本領安堵に加えて家康の娘・亀姫を嫡男奥平貞昌(九八郎)に入嫁されたいと取り決めを求めます。その上で、人を通じて“奥平は武田方に異心あり”と信じさせ、作手城内の武田方の動きを封じる策を家康に伝えます。奥平が武田に出した人質・おふうは貞昌の妻で武田を裏切れば斬られる運命にありますが、実はおふうが治貞の娘と知って家康は約定を誓紙にしたためます。

信康の出陣が甲州行きの段取りでしかない瀬名は、重箱から勝頼の誓紙を取り出してニンマリしながら、甲州での暮らしに思いをはせていました。信康が徳姫に送った文によれば、足助城に入った信康は、そのまま下条を追って怒涛の勢いで武節へ進んでいます。浜松ではお万がまたも懐妊したそうですが、嫉妬に怒り狂う瀬名は、祝い言上に見せかけて出産前にお万を殺すように徳姫侍女の喜乃に命じます。

兵糧の荷駄を武節まで送れとの信康の命に従い、弥四郎はその用意にかかります。家康の言に従わない信康を非難する作左衛門は、信康を帰城させるよう弥四郎に説得に当たらせます。掛川から浜松に攻め込む動きがあり、家康が信康の到着を待って浜松に戻り戦に備えるため、作左衛門も加勢することになりました。作左衛門がいなくなれば動きやすくなると弥四郎と倉地平左衛門はニヤリとします。

瀬名は面会に訪れた弥四郎を労わり、勝頼が信康に家康の旧領と信長の領地を与え、弥四郎にも引き立てを約束するような口ぶりに、弥四郎はそのたびに怪訝な表情を浮かべます。瀬名はなぜそんな顔をするのかと問いかけますが、ことがうまく運んでいる弥四郎にはむしろどうでもよく、適当に耳障りのいい言葉を並べ立てて聞き流しています。

瀬名は、岡崎を出るときに伯父の今川義元の仇として徳姫を殺していきたいと弥四郎に打ち明けますが、弥四郎は態度を一変させ、たわけたことを! と一喝します。主筋に対して無礼と睨みつける瀬名ですが、徳姫とその子は織田を押さえる格好の人質であり、その人質を殺すとは何事かとあまりの剣幕です。事を誤れば瀬名と信康の命はないと脅され、さすがの瀬名も言葉を失います。

長篠にいる家康は、奥平の計略の成り行きを見守って武田と対峙したままです。弥四郎は武節城を目指し、食料と見せかけて信康を討ち取れるほどの武器を積んで岡崎城を後にします。

 

そのころ浜松城には、瀬名の密命を帯びた喜乃がたどり着いていました。お愛の案内で居間に通された喜乃は、お万の手首を掴んだと思うとお万を引き倒し、懐から短刀を取り出し振り上げます。お愛は喜乃から短刀を取り上げ、喜乃は観念して座り込みます。お愛は喜乃とお万に騒がないように言い、後の裁きを作左衛門に任せてお愛の自室にお万を避難させます。

喜乃が藤川久兵衛の娘と知っていた作左衛門は、「斬ってくださいませ! お情けでございます」と懇願する喜乃を落ち着かせます。作左衛門は、どう見ても人を刺せるような娘に思えない喜乃にお万の殺害を命じたのは、日ごろから接して喜乃のことを十分に知っているはずの徳姫ではないということだけ確認しておきます。

実は浜松に向かう喜乃を、同じく岡崎を出発した作左衛門が追い越したのですが、その思いつめた目に、喜乃の姉が瀬名の侍女であったことを思い出したわけです。喜乃を斬れば親や姉に類が及ぶと、作左衛門は「浜松にたどり着いたときにはお万は城外の産屋に入った後で、祝いの品だけ預けて戻った」ということにします。たわけた娘じゃ……と作左衛門に優しい表情を向けられ、喜乃は泣き崩れます。

このようなことが二度とあってはならないと、作左衛門同伴の上でお万を城外へ移すことにします。お万は、身ごもっているのが徳川の大事な子でもあるし、作左衛門に納得してもらいたいと願い出られて渋々承諾しますが、瀬名の憎しみにお万は涙を流します。「築山どのは……どこまでわらわが憎いのじゃ……」 こうしてお万は、作左衛門の配慮で城外の中村源左衛門宅に移ります。

お愛は喜乃に事情を尋ねます。織田を恨む瀬名は喜乃に徳姫の動向を見張れと、始めから徳姫付きに命じていたようです。しかもお万の子が姫であるように修験者に祈祷させるほどで、呆れるお愛は喜乃に祈祷の話は他言無用と諭します。もし信長に知れれば家康も信康も危ない立場に陥るのです。「岡崎へ帰ったら、拾った命を懸けても徳姫をお守りなされ。それが父親と姉をも救われたこなたの御奉公」

武田に対して先制攻撃を仕掛けた家康に対し、武田側も奥平の本心を問う動きに出ます。武田信豊は奥平にさらなる人質として末子の千丸を要求し、九八郎が引き止めるのも聞かず、奥平はそれに従うことにします。自説を曲げて武田に屈したことを悔やむ奥平は、家康の一の姫を嫁にもらったことで先祖への詫びに代え、たとえ斬られても無事に帰ってもそれを合図に徳川に付くように九八郎を諭します。

長篠総攻撃が開始されます。作手城では人質千丸を伴って奥平が信豊と対面している間、武田軍は奥平の動きに気を取られて援軍としての役割を果たせません。屋敷に戻ってきた奥平は鎧を着けて戦に出る準備を始めます。武田を裏切ればおふうや千丸は磔ではすまされまいと覚悟の上です。奥平軍の突然の発砲に、逃げ遅れた武田軍の混乱に乗じて奥平軍は作手城を出て、徳川軍とともに長篠城攻撃を始めます。

この日、天正元年9月10日、家康は宿願の長篠城を落としたのである。


天正元(1573)年9月、徳川家康の攻撃により長篠城が陥落する。

慶長8(1603)年2月12日、徳川家康が後陽成天皇から征夷大将軍に任命されるまで、

あと29年5ヶ月──。

 

原作:山岡 荘八
脚本:小山内 美江子
音楽:冨田 勲
語り:館野 直光 アナウンサー
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[出演]
滝田 栄 (徳川家康)
池上 季実子 (瀬名)
宅麻 伸 (徳川信康)
田中 美佐子 (徳姫)
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江原 真二郎 (石川数正)
東 てる美 (お万)
田中 好子 (あやめ)
原 日出子 (亀姫)
渡辺 篤史 (奥平九八郎)
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長門 裕之 (本多作左衛門)
近藤 洋介 (奥平美作守)
竹下 景子 (お愛)
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制作:澁谷 康生
演出:兼歳 正英

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『徳川家康』
第16回「無情の風」

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