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2023年3月10日 (金)

プレイバックおんな太閤記・(08)小豆(あずき)袋

信長が上洛を果たした翌年の永禄12(1569)年4月14日、信長が15代将軍の座に就けた義昭のために建造中の館が落成した。それは贅をつくしたものであったが、義昭のためというより、信長にとっては自分の威信を世に示す手段のひとつに過ぎなかった。信長上洛以来、京の治安維持にあたっていた秀吉は、改めてその守護職を命じられ京に留まった。いつ帰るとも分からぬ秀吉を待って、岐阜の留守宅を守るねねの暮らしも、はや一年を超えていた。

ねねは下働きのあさと縫い物に勤しんでいます。いろいろ気を遣って大変だとほほ笑むねねですが、ややは木下秀吉に対して怒り心頭です。「お姉さまはお気の毒じゃ。秀吉どのにはちゃんと女子がおられるそうじゃ」 浅野弥兵衛が手紙で教えてくれたらしいのですが、ねねは流言に惑わされるのはならぬとたしなめ、秀吉をかばいます。ややの顔を見て奥に引っ込んだともの部屋から、赤子の鳴き声が聞こえています。

京の守護職館に小一郎と蜂須賀小六が戻りますが、不機嫌そうな明智光秀とすれ違います。義昭家臣としていろいろうるさく、木下秀吉は幕府守護職とはいえ義昭の家臣になった覚えはないと煙たがっています。小六も、義昭家臣ながら隙あらば信長に乗り換えようという魂胆が気に入りません。小一郎が引き止めるのも聞かずに、秀吉は上機嫌に身なりを整えて女のところへ遊びに行ってしまいます。

もう我慢がならぬわ! と義昭は信長に対して立腹しています。自分を担いで天下を己の思いのままに進めようという信長の思惑は義昭にも読めているのです。光秀は信長が支払った代償を思えばとなだめますが、自分のために立ち上がってくれる大名はたくさんいると義昭は鼻息荒いです。そんな義昭を光秀は複雑な表情で見つめています。

足利義昭はなかなかの策士で、また筆まめな人物であった。兄の将軍義輝が松永久秀に殺され自分も捕らわれの身となり、越前の朝倉を頼っているが、義景頼むに足らずとみるや、諸国の群雄たちに幕府再興の尽力を要請する手紙を書き送っている。人のふんどしで相撲を取り天下に君臨しようとする虫のいい軍略家だったのである。天下の政権の座の争いは、義昭を台風の目にしてますます熾烈になろうとしていた。

前田利家とまつが別れのあいさつに来ました。利家の父が亡くなり、3人の兄たちを差し置いて利家に跡継ぎとして荒子城へ帰るようにお達しがあったのです。ご城主とご内室にねねは祝いの言葉をかけますが、ねねはまつという大親友を失って寂しそうな表情を浮かべます。「良き友、いつまでも心は変わらぬ」と利家はまつをなぐさめ、再会を約束します。

 

永禄13(1570)年・春。心の友を失って迎えた新年は、秀吉の留守を預かる妻としての仕事が山積しています。お花見のために餅をついてふるまっている時、みつがねねを訪ねてきました。秀吉に従って京に滞在する父親に2年近く会えていない、子どもたちへのねねの思いやりに、みつは感心しています。

みつは小一郎から、ねねへ内々に文を預かっていました。京に来てほしいという内容にねねは不審に思いますが、小一郎は、信長の威光で平穏であるし、京の季節も最も美しい時期だけにその風景を見せてやりたいとだけ言っているようです。ねねは なぜ? とますます不信感を募らせます。ねねに上洛を求めるのはよほどのことだと、ねねは翌日、きいを伴って京への道を急ぎます。

初めて京に足を踏み入れて、きいははしゃいでいます。そしてようやく秀吉の屋敷にたどり着くのですが、秀吉の軍勢は昨日出陣したとかで、すでにこの屋敷にはいませんでした。怪しむ門番にみつが襲い掛かっているすきにねねときいは一目散に逃げ、茶店に飛び込んで追ってきた男たちをやり過ごします。出てきた茶店の女には「お団子! 2皿!」と注文するねねは少しかわいらしいです。

ねねたちを追ってきたみつは、信長が大軍を率いて若狭へ向かったらしいとねねに伝えます。それが義景を討つ出陣と知って、お市を嫁がせた浅井とは、朝倉と戦をするなという盟約が結ばれているはずと、その出陣はねねには信じられない話です。しかし義昭が信長を裏切って朝倉と内通していると知り、お市の辛い立場に同情しつつも、きいと再び岐阜に戻るねねです。

 

38,000の大軍を擁した織田・徳川連合軍は4月24日に敦賀に到着し、25日に手筒城を攻略すると、26日に金ヶ崎城になだれ込みます。地図を見ていた小一郎は、もし浅井が離反したらと気にかけますが、信長と義兄弟である浅井が裏切るはずがないと秀吉は笑います。しかし長政は朝倉攻めには加わっていないわけで、離反の兆しはあるようにも思えます。まさかと秀吉は表情を固まらせます。

小一郎と小六の主張に納得した秀吉は、信長に浅井離反の可能性について進言しますが、サルでも臆病風に吹かれてつまらぬことを言い出すと信長は一笑に付します。長政には信長に反旗を翻すほどの器量があるとは思えず、しかも長政にはお市がついているわけで、秀吉のその心配は軍勢の士気に関わると聞き入れません。

小谷城では出陣でざわざわしています。長政はお市に、今回の信長の朝倉への当たりが不本意だと表明します。南近江の六角から浅井家を守れたのも朝倉のおかげであり、朝倉を攻めないという約束を破っての信長の出兵に、長政は朝倉に加勢すると決断します。とても幸せな日日ながら、長政に沿えないなら信長の元へ帰れと告げますが、お市はこのまま置いてほしいと返答します。

ねねときいは無事に岐阜に戻ります。ややは朝倉攻めも間もなく終わり勝ち戦なら岐阜に戻って来ると笑いますが、ねねは決まってもないことを言ってとややをたしなめます。勝ち戦なら帰って来るに決まっていると信じて疑わないややですが、勝ち戦で終わればいいがとねねの心配は尽きません。

長政に添い遂げると伝えたお市でしたが、長政の言う「袋のねずみ」にヒントを得て、陣中見舞いとして信長宛てに小豆を贈ります。お菓子にでもして陣中のなぐさめにとの心遣いです。小谷に控える兵たちにとがめられ中身を改められますが、本当に小豆しか入っていないようで、信長は小豆が好物か、と笑って通してくれます。使者を送り出した後、お市は観音像に手を合わせて兄の無事を祈っています。

 

信長軍が出陣しようとしていたその時、お市の陣中見舞いが届けられます。両脇が縛られたねずみ色の小豆の袋を見た信長は、緊急で武将たちに招集をかけます。「ただちに軍を引く!」 出陣間際の撤退命令に戸惑う武将たちですが、信長は浅井の裏切りを悟ります。小豆袋をお市の精いっぱいの知恵だというのです。殿(しんがり)役を募ると秀吉が名乗りを上げます。「秀吉、必ずや敵を食い止めてみせまする」

養父・浅野又右衛門も不測の事態に備えて岐阜城に詰め、又右衛門の話をややはねねに伝えます。負け戦に乗じてどんな敵が岐阜へやって来るか分からないとねねは不安になりますが、それよりも秀吉が殿を務めていると聞かされてねねは衝撃を受けます。「もしものことがあっても取り乱すなと、お父さまが……」 ねねは目を押さえて外に飛び出して行きます。

思いがけぬ浅井の離反で、信長軍は全軍総退却となった。琵琶湖の西・朽木谷を越えて京へ、信長軍の必死の逃亡が続く。もちろん「信長敗る」の噂はたちまち岐阜にも届いていた。結婚して9年、秀吉の消息も分からず、生死を案じるような事態は、ねねには初めてであった。「命さえ無事であれば」、ねねはただそれだけを神に祈った。永禄13年4月、元亀元年と改元されたその年のことであった。


元亀元(1570)年4月30日、盟友北近江の浅井長政が裏切ったという情報が入り、織田信長が撤退を余儀なくされる。

慶長8(1603)年2月12日、徳川家康が後陽成天皇から征夷大将軍に任命されるまで、

あと32年9ヶ月──。

 

作:橋田 壽賀子
音楽:坂田 晃一
語り:山田 誠浩 アナウンサー
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[出演]
佐久間 良子 (ねね)
中村 雅俊 (小一郎)
浅芽 陽子 (やや)
音無 美紀子 (まつ)
尾藤 イサオ (浅野弥兵衛)
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藤岡 弘 (織田信長)
夏目 雅子 (お市)
長山 藍子 (とも)
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滝田 栄 (前田利家)
前田 吟 (蜂須賀小六)
西田 敏行 (木下秀吉)
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制作:伊神 幹
演出:宮沢 俊樹

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『おんな太閤記』
第9回「秀吉生還」

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