« プレイバックおんな太閤記・(06)一夜城主 | トップページ | 大河ドラマどうする家康・(09)守るべきもの ~家康vs正信~ »

2023年3月 3日 (金)

プレイバックおんな太閤記・(07)上洛への道

永禄10年8月、稲葉山井之口城を陥れ念願の美濃を手中に収めた信長は、ただち井之口を「岐阜」と改めて、居城を小牧山から岐阜へ移した。また引っ越しである。

永禄10(1567)年・秋。男たちが家財道具を荷車に乗せて岐阜へ運び入れ、ねねも受け入れをして忙しそうです。夫の弥助が出陣している間 ねねの世話になっているともは、犬千代を抱いたまつに挨拶を交わして荷解きを始めた途端、口を押さえてしゃがみ込みます。奥に行って休ませるねねですが、その様子を見ていたまつは、ともが身ごもったのではないかとねねに伝えます。

中村で畑仕事をしていればいいものを、と寝込むともに聞こえるように言うややですが、ねねがたしなめるほどいら立ちは増幅していきます。ともに大きな顔をさせないためにも早く子をと迫るややの言葉に、もとより早く子供が欲しがっているねねには一瞬凍り付くような間があります。しかしともの前ではそんな表情は見せずにこしらえた粥を食べさせます。

秀吉たちが帰ってきました。浅野弥兵衛も無事に戻ったと知ると、油を売っていたややは慌てて家に帰っていきます。臥せっていたともを労わるあまり、引っ越しで無理をさせられたのだろうと弥助に言われ、ムッとしたねねはともが身ごもったことを口走ってしまいます。弥助も秀吉も大喜びですが、そんな様子を見ていたねねは複雑な気持ちを抱えて出て行きます。

嘉助は、ともが男子を生んだら秀吉の跡継ぎにすることもできるなどと無責任に言ってしまい、ねねは肩身が狭そうです。ねねの複雑そうな表情に気づいていた小一郎は嘉助をたしなめます。そんなやりとりを台所で聞きながら、ねねは聞こえないふりをして家事を続けています。

戦勝の宴会も終わり、ようやくねねは秀吉と二人きりになれました。秀吉は今回の働きで500貫文の禄をもらう侍大将に出世し、さすがのねねも「うわっ」と反応するほど驚きます。これからは秀吉も家臣たちを抱え、下男や小女も雇う必要が出て来ますが、収入面のことを考えると人を雇うのはまだまだ分に過ぎるとねねは笑います。「所帯向きのことで音を上げるような女子ではありませぬわ」

仲良さげな秀吉とねねのイチャイチャが、畑仕事だけではきいに着物一枚買ってやれないからと侍になった嘉助を複雑な気持ちにさせます。ねねは、なかを岐阜に呼び寄せるために近いうちに中村に赴くつもりです。ともが身ごもったことで孫を見せてやりたいという気持ちもあり、中村と岐阜とで別居状態になっている嘉助ときいへの配慮もあります。

 

ねねは供をつけて中村へたどり着きます。ねねの来訪に嘉助の身に何かあったのかと心配するきいですが、息災と聞いて安堵します。そしてなかはチラリとねねを見、供を連れて出歩くほど出世したのかとつぶやき、今日はねねにも辛口です。秀吉の活躍を伝えてねねをかばうきいですが、なかはイライラを隠しません。「人を殺して出世して何が偉い!」

ねねはともが身ごもったことを報告しますが、なかには取り付く島もありません。なかの夫は戦で受けた傷がもとで死んでしまい、幼子3人(+腹の中に1人)抱えて途方に暮れた経験があるからこそ思うのです。岐阜に移っても不自由はさせないとねねはなかを説得しますが、なかの心は変わりません。秀吉が討たれたとき、落ちぶれた時のためにここは死守したいのです。

結局ねねは、なかもともも説得しきれずひとりで帰ってきました。なかには秀吉たちへの深い愛情があって中村の家と土地を死守しているのだと、話を聞いた前田利家も感心します。ともかく平和な日が来なければなかはてこでも動かないと小一郎はいうのですが、「いつそのような時が……」とねねはつぶやきます。すぐじゃ、と秀吉は自信たっぷりに答えます。

秀吉の言葉どおり、信長は京へ上り天下に号令する日のことを虎視眈々と狙っていた。岐阜移城と同時に桑名を下したのを手始めに、翌11年には北伊勢8郡を手にした。近江の浅井長政にはすでにお市を嫁がせて縁戚関係にあり、京への道は徐々に開かれつつあった。そこへ信長にとっては願ってもない幸運が舞い込んできたのである。それは足利義昭という男であった。

同じころ、ともは男の子を出産します。孫七郎、後の関白豊臣英次です。ねねが孫七郎を抱き上げてかわいがっているところに秀吉が帰宅します。7月25日に美濃立政寺に足利義昭を迎えるにあたり、織田信長はその接待役にねねを指名します。将軍と聞いて固まるねねですが、秀吉は「信長さまのご裁量、頼んだぞ。大事な大事な客人じゃということを忘れるな」とニヤリとします。

当日、義昭と信長の対面は無事に終わり、接待の席が設けられます。義昭はねねとまつに接待してもらって、あまりの美女ぞろいにご機嫌になっています。信長は頼りになる人だと大笑いしますが、ねねは義昭があまりに貧相で信長に取り入る姿が気に入りません。信長に頭を下げる将軍という関係が理解できないねねに、まつは「腐っても鯛」と義昭をバッサリと下げ落とします。

ねねの義昭への愚痴は家に戻ってきてからも続き、止まりません。秀吉は、義昭が松永久秀に滅ぼされた13代将軍足利義輝の弟で、捕らわれていたところを細川藤孝の尽力で脱出し、庇護していた朝倉義景は上洛しようとせず、業を煮やして信長を頼ってきたのだと経緯を説明します。上洛を狙って天下統一を果たすのが悲願であった信長にとっては好機到来と、秀吉の眼が鋭く光ります。

岐阜では、信長が定めた楽市楽座によって自由な商いができるようになり、これを全国に広げれば平和な世の中になると秀吉は胸を張りますが、やはりねねには上洛の必要性について納得できません。そして翌日、浅井長政のところへ向かうと聞かされたねねは、行先がお市が輿入れした城だと知り用向きを尋ねますが、秀吉のお市への思いをうすうす感じ取っていて、少し不安なわけです。

信長は上洛の協力を要請するため、小谷の長政を訪れます。お市が輿入れして4年目、かわいらしい茶々も生まれ、来春には次の子も誕生する予定です。それはめでたいと笑う信長は、お市は立派に浅井の人間になってくれたと感謝しつつ「信長の妹であることを忘れるな」とお市を見据えます。茶々に変顔をして笑わせる秀吉ですが、後に淀殿となって秀吉と結ばれるわけで、この時が初めての出会いです。

「女子の幸せとは不思議なものじゃの」 家に戻っても家臣たちにも顔を見せない秀吉を心配して、ねねが寄り添います。秀吉は人質同然で小谷に入ったお市が気がかりでしたが、今や茶々を儲け女のしあわせを進むお市に、秀吉の心にぽっかりと穴が開いて寂しさを感じずにはいられなかったのです。「おかかは幸せか? お市さまに負けぬよう、幸せにせねばのう」

 

義昭を迎えて1ヶ月足らず、戦備を調えた信長は美濃・伊勢・尾張・三河・遠江5か国の兵6万の兵を率いて上洛の途につき、怒涛の勢いで南近江を攻撃します。9月26日に入京し、義昭を正式に15代将軍に就け天下に覇を唱えます。戦国武将が理想とした上洛の大業を、信長がついに成し遂げたわけです。

しかし信長が上洛しさえすれば戦は終わると思っていたややは、まだまだ戦が続くことに嫌気が差しています。単身帰ってきた小一郎は、秀吉たちは義昭を守るために京に滞在するそうで、弥兵衛も弥助もしばらくは京暮らしと伝えます。ややは、美しい京女に弥兵衛が惑わされないか心配ですが、信長は軍勢をきつく戒めていてその心配はなさそうです。

秀吉は二条館造営について義昭への目通りを細川藤孝に求めますが、身分の差を理由に拒絶されます。二条館造営と京都守護の役目を担っていると秀吉は胸を張りますが、その役目については京の事情にも禁裏のことにも詳しく、茶の湯や有職故実にも心得のある明智光秀に任せればいいと軽くあしらわれてしまいます。何も反論できない秀吉は顔を真っ赤にして座を蹴ります。

夕餉の時間になると、秀吉は筆で立派そうなひげを書き加えています。京では自分は何の役にも立たないと、秀吉は女遊びに羽目を外し始めます。一方で、ねねのもとには全員息災であると秀吉からの書状が届き、ねねとともの二人は安堵します。とはいえ、慣れない京で大変な役目に立ち向かう夫の苦労を知り、ねねは秀吉をおもんばかります。

のちのち十何人もの側室を持つ秀吉の浮気は、このころから始まったらしい。ねねの夢にも思わぬことであった。一方、信長は将軍義昭の指令と称して諸国の有力大名に呼び掛け、全国平定に協力させようと努めた。が、信長の京における覇権は、義昭によって覆されようとしていた。天下統一はまことに遠く険しい道であった。


永禄11(1568)年9月26日、足利義昭が東山・清水寺に入り、上洛を果たす。

慶長8(1603)年2月12日、徳川家康が後陽成天皇から征夷大将軍に任命されるまで、

あと34年4ヶ月──。

 

作:橋田 壽賀子
音楽:坂田 晃一
語り:山田 誠浩 アナウンサー
──────────
[出演]
佐久間 良子 (ねね)
中村 雅俊 (小一郎)
浅芽 陽子 (やや)
音無 美紀子 (まつ)
尾藤 イサオ (浅野弥兵衛)
──────────
藤岡 弘 (織田信長)
夏目 雅子 (お市)
長山 藍子 (とも)
──────────
滝田 栄 (前田利家)
赤木 春恵 (なか)
前田 吟 (蜂須賀小六)
西田 敏行 (木下秀吉)
──────────
制作:伊神 幹
演出:北嶋 隆

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『おんな太閤記』
第8回「小豆(あずき)袋」

|

« プレイバックおんな太閤記・(06)一夜城主 | トップページ | 大河ドラマどうする家康・(09)守るべきもの ~家康vs正信~ »

NHK大河1981・おんな太閤記」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« プレイバックおんな太閤記・(06)一夜城主 | トップページ | 大河ドラマどうする家康・(09)守るべきもの ~家康vs正信~ »